準備中
アパートの内見が終わり、ビジネスホテルに戻った、まきちゃんと私。まきちゃんが経営してる、アパート。1階の左側の角部屋を内見した。寝室の窓から、大きな桜の木が見える部屋…。葉桜だったけど、”来春”には、満開の桜が見れる。…でも…。私はホテルの部屋で、まきちゃんに聞いた。
「まきちゃん、ありがとう。凄く素敵なアパートだよ。…でも…」
まきちゃんは私が、何を悩んでいるのかが、すぐに解ったようで、こう話してくれた。
「…お金ならこのくらいかな?…”保証人”は、どうしようかなぁ…。うみちゃんだから、いいけど…形なりともちゃんと?したいんでしょ?」
なんと言うか…。話が早くて助かる。まきちゃんが話した”保証人”…。私には家族が居ない。蒼空が唯一の肉親?だった。私が小さい頃に、私の両親は亡くなった。父は病死、母は…母は当時、妊娠中で…お腹の赤ちゃんと共に亡くなったらしい。私は、母方の親戚に引き取られた。親戚の伯母夫婦には、子供が居らず、私を実の娘のように可愛がってくれた。だけど…私が高2の時に…。「”うみちゃ…。うみちゃん”?」 まきちゃんの声に、我に返った私…。「…?!…。あ…うん?…”保証人”…。どうしよう…。」 今は、伯母夫婦は、伯母は、昨年の暮れに亡なり、高齢の伯父は、病気で、寝たきりになった後、認知症が進んで、面倒見きれず、介護施設に入った。まきちゃんに、「…保証人になってくれる人、探すね。…それまでアパート…。」 まきちゃんは、「大丈夫。あの”部屋”、予約にしておくね。…それよりね…」 まきちゃんはそう言って、買ってきた荷物の袋から、ガサガサと”何か”を取り出した。
「うみちゃん、これ、着てみない?」
袋から取り出したのは、濃い青色のワンピース…。思わず、「”これ…どうしたの??”」 私が驚いて、まきちゃんに聞いた。まきちゃんは
「うーん…?むふふふ。」
とイタズラぽく笑う。そして、
「たまにはオシャレしなよ!さっきの”人”、あれ、絶対、見惚れてたんだって!じゃなきゃ、ずっと、見てないよ!」
私は、ポカンとなっていた。それに”さっきの”…って……。”!?!”
「ないない!!絶対に無理!!…あの”人”って、あの”人”でしょ?…さっきのコンビニで!」
私が必死に否定するも、まきちゃんには、伝わらない。
「とにかく、ちょっとはオシャレしなよ。髪も染めてさ。ね。」
私の頭には、所々に、たち白髪があるのを、まきちゃんは、見逃さなかった。
「”まきちゃん”…には敵わない……。」私はまきちゃんの笑い声と明るさに救われている。