別人?
一度自宅に、帰る事にした俺は、小鷹町から長沢市へ向う途中の、コンビニに寄った。コンビニの駐車場には何台か、車が停めてあり、俺は1番右端の駐車場に車を停めた。財布を手に取り、車を降りて、店内に入る。レジでお茶を買っている女性がいた。その女性に見覚えがあった俺。
「?……?……!!」
”彼女”は、俺に気付いたのか、買ったお茶を手にすると、顔を隠すように慌てて、コンビニから出ていった。その姿に、目が点になっていた俺。しばらく、コンビニの駐車場を見ていた。”彼女”は俺の車から離れた、1番左端の車の助手席に飛び乗った。何か慌てふためいているのは、よくわかった。俺は、彼女の乗った車をしばらく目で追った後、適当に朝メシを買った。コンビニから車へと戻り、買ってきた、おにぎりを袋から取りだす。どっか温かいおにぎりの封を切って、かぶりつく。
「……確かに…”彼女”…だよな?」
”彼女”とは…金曜日に”研修会”で、講師を務めてもらった、”介護福祉科”の職員、”藤原 海”…。
俺がヤラカシタ事で、色々な”迷惑”をかけた後に、”PC科”と”介護福祉科”とでの、”合同研修会”をしてもらう事になった。この”合同研修会”を、提案したのは、”俺”…。無事に”研修会”が、終わったが…終わった後に、”魅せた彼女”の姿に俺は、魅了されてしまっていた。おにぎりを食べ終え、お茶を飲む。冷たいお茶が、身に染みた。
「…ホットにすれば良かった…。」
俺は、おにぎりを食べ終えると、自宅へと車を走らせた。コンビニから、自宅までは15分くらいだ。自宅が見えてきた。
「……沙織の車が無い…。」
俺は、自宅の駐車場に車を停め、エンジンを切った。車から降りて、自宅のドアに手をかけた。…鍵がかけてある。自宅の鍵をポケットから取り出し、鍵を開けて、玄関に入る。妻…沙織の靴も子供達の靴も無くなっていた。俺は、靴を脱いで、リビングへと向かい、リビングの扉を開けた。リビングは、人の気配が全く無いからか、しんと静まり返っている。俺は、リビングに足を踏み入れて、中へと進む。テーブルに目をやると、何やら、白い紙が置かれていた。テーブルの紙を手に取り見てみた。
「しばらく、子供達と実家に帰ります。」
俺は、出ていく際、スマホを、持っていかなかったためだろ…手紙が置いてあった。俺のスマホはリビングの、ソファとカーテンの間に落ちていた。寛いでる間に眠ってしまい、適当に触れた事で、サイレントモードに切り替わっていた。スマホを拾い上げ、画面を見てみると、沙織からの着信が何回かあった。俺は静まり返った、薄暗い、リビングで、スマホを持ち、佇んでいる。