戻ってこい
伊原さんは、退院した月曜日。とある方から、
「伊原さん…復帰…いや、戻って来ない?」
と…。言われたらしく、悩んでいた。
「…この方の素性は、お教え出来ません。…。帰る時に…「…つきさん…復帰…戻って来ない…?…。」って…言われて…。」
復帰?戻って来い…って…?…。
「…看護補助者に…戻ってこい…。入院していた、場所が、私の前の勤め先なんです。…あの時…兄は私をソコに連れていきました。目が覚めた時には…病室で…。見覚えのある病室に焦りました…。」
伊原さん…。
「…逃げた…報いなんですかね…?…」
「…そんな事ないです。」 「……。」
俺は、伊原さんにこう…伝えた。
「伊原さんは、その当時いた、仲間たちに、迷惑をかけたくなくて、辞めた。…だけど…伊原さんが必要だから、戻ってきて欲しい…と…。伊原さん。決めるのは、伊原さんです。私たちには、引き止める権利はない。…もし…戻りたいならば…こうやって、相談はしない…。冷たいようですが…。もう一度…やってみたら?本気なら…。」
前に…青野主任が…豊川君に…伝えた言葉…。
やってみたら?…本気なら…。
…それしか…言えなかった。
休憩時間が少し過ぎた頃…伊原さんは、戻ってきた。もし、今の話を加藤主任が聞いたら…ショックを隠せないのが…目に見えていた。この事を知ってるのは、俺と、青野主任だけ…。伊原さんが…戻るか戻らないか…それが分かるのは…まだ別の機会に…。




