そのまま
土曜日の朝、子供に起こされて、妻が居ない事を知った俺。妻が帰ってきたのは、朝の6時過ぎ。俺は、妻に問いただしたが、妻から”男モノの香水”の匂いに、逆上した俺は、部屋着のまま、自宅から出てきた。無我夢中で車を運転し、気がつくと、”ここ”にいた。ここは、俺の住む、長沢市から車で40分の所にある、小鷹町の自然公園。湖の畔の駐車場に車を停め、フロントガラス越しに、呆然と湖を見ていた。風があるのか、微かに波打っている湖面。朝日が反射して時折、キラキラと光る。俺は、車のシートを倒して、今度は、車内の天上の一点を見ている。
「”アイツが…紗織が…他の男と…いたのか?”…」
ボソボソと声にだしながら、天上を見ていた。…妻と…紗織と出会ったのは、俺が、まだ、別の職種に就いていた頃、出張で、たまたま行った、カフェでバイトしていた、紗織と久々に出会った。同じ中学の後輩。久しぶりにあった沙織は、美人で、笑顔が素敵な、女性になっていた。久々にあった彼女に、「”時間があれば、話したい”」 と思い、携帯の番号を教えてもらったが、全く、連絡を取らずにいた俺。
そのまま、何ヶ月か過ぎた、夜中、11時過ぎ…残業を終えて、帰宅途中の俺の携帯が、鳴り響いた。車を路肩に停めて、携帯を手にした。「”誰だ?こんな時間に?”」…携帯の画面には「”二宮 沙織”」と表示されている。俺は電話に出た。すると、彼女の声じゃない、女性の声が聞こえた。要件を聞くと、”彼女がお酒を飲み過ぎて、眠ってしまい、起きないから、迎えに来て欲しい”…との事だった。
「…俺、”彼氏”じゃねーけど…。」
そう思いながら、彼女のバイト先の、カフェに迎えに行った。カフェに着き、彼女の同僚と2人で、彼女を俺の車に乗せた。車の中に、酒の匂いが……。窓を開け、換気しながら、車を走らせる。彼女のアパートに着き、酔った彼女を起こした…。運転中に窓を開けて、少し風を浴びたからか、微かに意識を取り戻した、彼女。それでも、歩ける気配は感じられず、俺は仕方なく、彼女に、「”俺の背中に掴まられる?”」 と聞いた。…彼女は、何も言わず、よろめきながら、俺の背中に、倒れ込むような感じで、抱きついた。…「”よっ…と…”」
おぶって、彼女のアパートへと送った。彼女の鞄から、アパートの鍵を探す。鞄から鍵を取り出して、アパートの鍵を開け、室内へと入る。部屋の電気を点けて、おぶった彼女を、寝室へと連れていく。ベットに掛けてある、タオルケットをはぐり、彼女をベットに寝かせた。「”…部屋着いたよ…起きて。”」…声をかけると、同じくらいに、彼女は、目を開けた。虚ろな目をして俺を見ている。
「……帰るよ。」 声をかけ…
立ち上がろとした時、俺の腕を掴んだ彼女…。
「…行かないで…… 」
彼女は、泣きながら、話す。俺は、また膝を付き、彼女をなだめようとした…。
「……。わかっ……?!…」
突然、彼女からのキス…。…俺は、彼女を離して、彼女の顔を見た。彼女は、大粒の涙を流して…また「”…独りに…しない…”」…俺は何も言わず、彼女を抱いた。ベットに倒れ込むようにして、夢中で彼女の身体に触れていく…。時折、俺を呼ぶ声…
「…せん…ぱい……」
呼ばれる度に、キスをして、「”ここにいる”」 ことをつたえる。…どれぐらい時間が過ぎたか分からないが、気が付けば、朝になっていた。彼女はバイトが休み。俺は仕事だった。職場に電話して、仮病を使い休んで、彼女の身体におぼれた。




