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ないけん

陽高市内の、まきちゃんが所有するアパート。このアパートは、まきちゃんが、経営するビジネスホテルで、前まで、住み込みで働く方の寮を、今は、アパートとして貸出をしている。2階建てのアパート。階段を登った、2階の1番左側の部屋に、大家さんは住んでいる。元々、大家さんは、まきちゃんの経営するホテルの従業員さんで、この寮に住み込みで働いていた方。部屋も当時のまま、2階に住んでいる。普通かどうかは、解らないけど、大家さんは1階にいるイメージ…。まきちゃんにそう話すと、まきちゃんは、「”引っ越し大変でしょ?だから、そのままね…。”」…”まきちゃん、優しいなぁ”

と、いつも、私は思う。2階の角部屋に着くと、まきちゃんは、インターホンを押した。しばらくすると、ドアが開いて、中から、大家さんが出迎えてくれた。

「やぁ、まきちゃん。久しぶり。よく来てくれたね。…あ、この方かな?…入居したいって方?」

まきちゃんはニコニコしながら、「”こんにちは。久しぶりです。…昌…大家さん”。」

一瞬、まきちゃんは、大家さんの名前を口にしたけど、すぐに、呼び直した。私は、まきちゃんが、”昌”と言ったのが、ちょっと気になった。大家さんがにこやかに、まきちゃんに話しかけた。

「経営大丈夫そうだね。…”お父さん”に、似て、しっかりしてるからかな?」

まきちゃんは気恥ずかしそうに、「”昌”…大家さんのおかげです。あ、これ、差し入れです。晩酌でどうぞ”。」…と紙袋を大家さんに渡した。大家さんは「”ありがとう。…お、日本酒だね。後、おつまみも。早速、夜にでも頂くよ。”」紙袋を手にした大家さんは、一旦部屋に戻り、テーブルの上に紙袋を置いて、”部屋カギ”を手にすると、まきちゃんと私の元に戻り、「”さっ…部屋に案内するよ。1階の右の角部屋と、左の角部屋の2箇所ね。”」 そう話して、私達を案内してくれた。まずは、1階の右側の角部屋。2階の大家さんの真下の部屋。大家さんは、鍵を開けて、「”どうぞ”」と声をかけた。まきちゃんと私は、部屋に入った。廊下を歩いて、居間へ。8畳ある部屋で、対面式のキッチン。寝室と別れている。リフォームしたてという事もあり、新しい、独特匂いがしている。寝室は4畳。こちらは、大きめのクローゼットがある。トイレとバスは別々。私は、まきちゃんと大家さんに思わず「”すごい、キレイだね。本当に”寮”だったの?”」…と尋ねた。まきちゃんも大家さんも笑いながら、私にこう説明してくれた。

「住み込みでも”家族”で暮らせるように…て、”父”が、こだわったの。…私も聞いた話だからよく知らないけど…。」

まきちゃんは嬉しそうに…どこか誇らしげに話す。私はまきちゃんと大家さんに、「”…左の角の部屋も…?”」 と尋ねると、まきちゃんは、「”あっちの、左の角部屋は、”一回り”小さめ。…うみちゃんなら、左側かも。多分、気に入ると思うよ?」

今度は、左側の角部屋を内見する事にした。左側の角部屋に行き、大家さんが鍵を開け中へ。居間に通じる廊下で、突然、まきちゃんが私にこう提案した。

「うみちゃん、目閉じて。私が誘導するから。」

そう話すと、私に目を閉じさせた。まきちゃんが私の手を引いて、大家さんと共に、誘導する。

扉の開ける音がした。…。

「うみちゃん、目開けていいよ。」

私はゆっくりと目を開けた。暗い寝室に、案内された私は、窓からの光で、中々見えずにいる。徐々に目が慣れてきた。よく外を見てみると…

私は、まきちゃんが、「”うみちゃんなら左側の角部屋”」 と話した理由がわかった。窓の外に見えた、桜の木。もう葉桜だけど、立派な木が見えた。

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