日程
近衛部長に報告を済ませた俺と仁科室長は、早速、介護福祉科へと向かう事にした。仁科室長は腕時計を見ながら、「今は…介護福祉科は休憩に入る所かな?」仁科室長の腕時計は、15時を表示している。仁科室長の腕時計は仁科室長のスマホと連動している機能が付いた腕時計。俺は、仁科室長に尋ねた。「”また…休憩?…ですか?”」 俺が不思議に思っているのが、仁科室長には分かったらしく、こう説明した。「”今日、介護福祉科は受講者が多かったからね。13時から13時30分まで休憩して、残りは30分は15時から15時30分で、1時間にしているんだよ。相当体力を使うから。気力も必要だしね。…我々には無理な事…だよ。」 と、仁科室長は歩きながら、説明し、介護福祉科の扉の前に立つ。ここの扉はちょっと変わっていて、鉄製の扉で、観音開きになる扉だった。”前まで病院だったからか?”と思っていると、仁科室長は鉄製の扉をノックする。「”コンコン”」 鉄製の割にあまり響かない…これでは中の職員が気が付か…「”ガチャ”」
扉が開き、中から、根岸さんが顔を覗かせた。
「”はい?”」 と答えて、俺達を見ると、介護福祉科の中へと、通す。根岸さんは平澤さんを呼んで、俺達の対応を求めた。実習用のベットシーツを交換していた平澤さんは、一旦、手を止めてこちらへと歩み寄ってくる。仁科室長と俺は、同時に頭を下げた。平澤さんは「”お疲れ様です。”」 と一言話し、頭を下げる。仁科室長が平澤さんに、俺の非礼を詫びた後、本題へと話しを移した。平澤さんは、”はい…。”と返事をしながら目線をカレンダーへと移し、しばらく考えた後…俺達を見て、確認をした。
「では、こちらの都合に、合わせても、宜しいでしょうか?……藤原さんと日にちを決めさて頂き、場所は、PC科で…あ、藤原さん。」
シーツ交換を終えた藤原さんが、こちらへと視線を向けた。彼女は疲れきっているのか、心做しか元気がない。俺は、”あの時”の藤原さんのイメージがあるからか、少し緊張している。彼女は、俺達に近寄ると、「”お疲れ様です。”」と挨拶をした。声にも覇気が無い…。一体何があったんだ?
仁科室長が藤原さんに、俺の非礼を詫びている。その後、仁科室長は、俺に声をかけた。
「河本主任からきちんと説明してください。」
仁科室長は、俺を平澤さんと藤原さんの目の前に、差し出した。俺は2人を目の前にして、緊張しながらも、まずは、謝罪した。その後、”研修会”の件を正式に了承してもらった事を報告した。
俺の話しを聞いて、先に口を開いた平澤さんは、藤原さんと相談している。「”じゃ…この日がいいかな?…メンバーも揃っているし”…。」と日程を決め、平澤さんが仁科室長と俺の方を向き直した。
「今週の金曜日、16時から”研修会”を行います。場所は、PC科で宜しいでしょうか?…こちらから、”車椅子”も持っていきます。この件を近衛部長とPC科の職員にもお伝えください。よろしくお願いします。」
平澤さんがそう述べると、仁科室長は「”分かりました。必ず、周知させますので、よろしくお願いします。近衛部長の方には私から…いや、河本主任から報告させますので”…。」と そして、「”ありがとうございました。では、失礼いたします。”」お礼を述べて、介護福祉科を後にした。廊下に出ると、仁科室長も俺も、安堵よりも疲弊した。
「…”強さ”が半端ないね…。」
仁科室長の一言が俺の耳から離れなかった。




