元同僚
介護福祉科に慌てて来た河本主任。「根岸さん。すみません。お忙しい所。」 「どうしました?」「実は、田山さんが、体調悪くて…どうも、熱がある様なんです。…インフルエンザの可能性があるとか…伊原さんが…体温計と…」 すぐに理解した私。「分かりました!すぐに…あ、ちょっと待っててください!」 私は、休憩室に戻り、仕事用の鞄から、パルスオキシメーターを取り出し、以前調剤薬局で購入した、サージカルマスクを取り出して、着けた。体温計とパルスオキシメーターを手に、PCへと向かう。廊下で、近衛部長と合った。「…根岸さん!…私もPC科へ向かいます!」 「インフルの可能性があると、つきさんが…。」 「…分かりました。」 そう話して、近衛部長と共に、PC科休憩室へと向かった。PC科の休憩室で、田山さんの対応をしてくれていた、つきちゃん…。”…あの時の…つきちゃんだ…”…普段のつきちゃんは、怠そうにしていて、眠たそうな目をしている。だけど…今は、昔のつきちゃん。顔付きが、変わる…。目も…。つきちゃんは、具合が悪い患者さんを見逃さない。小さな異変にもスグに気が付く…。そして、私や他のナースに伝える…。以前、つきちゃんに聞いた。「なんで分かったの?あの患者さん、普通だったよ?」 その問いかけに、いっちゃん…。「…朝のケアの時、瞬きしてた。今のケアでは、しなかった。目みたら、真っ暗だった。光が無かった。だから、頼んだ。後、爪。」 それだけだった…。爪…は、解る。…瞬き?目?光…?最初、意味が解らなかった。後、つきちゃんのもう1つの鋭さ…それは、嗅覚…。患者さんの匂いが変わったのが分かるのか…「…小川さん…夜勤入り?…あの患者さん、早めに個室に移動した方がいいかも。…匂い変わった。」 私には、分からなかったけど…でも、確かに、血圧が少しだけ低かった。何時もは、120台の血圧が、今日は、100台…。さっきは90台と…変わっていた。「…分かった。師長とチームリーダーに話してみる。」 そう話して、ステーションで、チームリーダーと個室移動の件を話していた矢先…「急変!!」 と聞こえた。たまたま同じチームのナースが、その患者さんに、声をかけた所…全く反応が無く…呼吸も…。スグにBLSを開始…。「…戻って来て!!」 そう思いながら、心マを続けた。一命を取り留めたけど…予断は許さない状態だった。その2日後…その患者さんは、亡くなった…。「…つきちゃん…。もう無理…。ここに居たくない。辞める…。」 そう言って、この病院を辞めた。その後で、つきちゃんも辞めた。…そして、今日…ココで再会した。最初、「もしかして…小川さん?…伊原です。伊原つき…”元看護補助者”の。」…「…え?!つきちゃん?!」 驚いた…。あのつきちゃんが、PC科に居たのだから…。「久しぶり!つきちゃん!…辞めたんだね…。あそこ。」 「うん…。流石に、限界だった。ばあちゃんだけなら、まだしも…父親も。うちの体調もあってね。…後…。」 「…そっか…。あ、私、今は根岸ってなったの。根岸 蛍。でも…」
「…そっか…。実はうちもバツ。今は、アパートに1人でいだよ。…暇なら、遊びに来てな。…あ、じゃまたな。」 そう話して…いっちゃんと別れた…。…昔と変わらない…いっちゃん…。でも…なんで、辞めたのかな?…そう思っていた…。




