キレた
介護福祉科の休憩時間は少し変わっている。13時から14時までの1時間休憩だけど、たまに13時から13時30分まで休憩し、残りの30分は、15時30分から16時までとなる。これは、実習で休憩時間が、過ぎた時の、休憩時間になる。今日は13時から14時までの休憩。休憩室では、お昼を食べ終えると、各々が持ち寄ったお菓子をテーブルに広げて、コーヒーやお茶を飲みつつ談笑している。コーヒーもお茶も持参。私は、ちょっと早めに休憩を切り上げていた。そして、さっきあった”PC科”の件をメンバーと話していた時だった。私は休憩室の入り口を見て、驚き固まる。気配無く佇んでいる、”彼”…いや、”アイツ”がいたからだ。
PC科主任、河本雷斗。
コイツがPC科の”件”の人だ。驚きのあまり声が出ずにいた。平澤さんも私の様子に気付いたのか、振り返って休憩室の入り口を見た。そして
「今、休憩中ですが、何か!?」
と話す。怒鳴り声にも似た低い声…。その声に私は我に返る。…と。
「あら…随分貫禄のある方ねぇ。」…「その割には細いね。」…と
ベテラン介護福祉士の浅田さんと佐藤さんが同時に声を発した。もう1人、根岸蛍さんは、私を見て、アイコンタクトを送っている。「”もしかして、この人?”」と…私も目で「”そう…この人。”」と返した。「”何か…?”」と私は、やっと声にして河本主任に尋ねた。河本主任は、私達の休憩室のテーブルの持ち寄りの、お菓子の山に、食べた袋が何枚も置いてあるを見て、引いている様にも見えたけど、すぐに目線を変えた。
「すみません。何度もドアをノックしたのですが…。あの、藤原さん、ちょっとお時間ありますか?」
私は、休憩室から外にでて、河本主任の話しを立ったまま聞いた。
「先程はすみませんでした。仁科室長と田山さんに、相川さんの件を伝えた所、しばらく田山さんに、相川さんの講習を、担当してもらう事になりました。…それでですね…。私もここに異動してきたばかりなので…一度藤原さんに”研修”をして貰えないかと…?」
「…はい?…今なんて??」
思わずでた声が裏がえる…。河本主任はもう一度
「ですから、”研修”を…」
とあっけらかんといい放った。私は”研修”と聞いた瞬間、頭の中で何かが、弾けた…そう…私はとうとうキレた。
「…い…いい加減にしろよ?!!アンタのせいで、相川さんがどんなに傷ついたか、わかってんの!!?…なんだ”研修”って?!!!…引き続き書も読んでないクセに!!!偉そうな事言ってんじゃねーよ!!!」
その怒号が介護福祉科中に響きわたる。
「あーぁ…キレちゃった。」
呑気に浅田さんと佐藤さん、根岸さんが話していた。実は前にも同じ様に、キレた事がある私。それは、もう退職したから、いいけど、もう一人の同僚にこの、”キレた”私を見せた事があった。普段は、あまり言わないようにしていた私。だけど今回ばかりは無理だった。ただ一人、平澤さんはまだ私がキレたのを見た事が無かったから、驚きを隠せずにいる。




