出勤
今日から出勤。私の職場は車で10分位の所。本部は隣の市、長沢市にある。私は長沢市の隣の市、陽高市にある、支部に勤めている。本部の人達とはあまり顔を合わせる機会が無い。枝に勤めている私は、そこのとある部署にいた。部署の人数は全部で10人、他部署を合わせると、100名居るか居ないか…。長年勤めてると、顔見知りも多くなる。名前は分かるけど、話した事は無い。が常だ。朝8時半に業務開始。私は早めに来て、1週間休ませて貰ったお礼にちょっとした菓子折を休憩室に置いてきた。部署の休憩室は決まっていて、部室内の奥に、10人位が会議をするのに使う個室があり、そこが休憩室になっている。
”お休み頂きありがとうございました。皆さんで召し上がって下さい。藤原海”
メッセージを書いたカードを菓子折りに貼り、休憩室を後にした。部室に戻ると、朝から事務の江部事務長が来ていて、書類を渡していた。書類を受け取って居るのは、私の直属の上司で課長の福山課長。2人は何やら話していたけど、江部事務長が私を見るやいなや、声をかけた。
「あ、藤原さんおはようございます。…大変だったね…。ところで、どうする?今まで通り、”藤原”さんで呼んでいい?それとも旧姓がいい?」
ワザと周りに響く声で言ってるのか、普通に尋ねただけなのか…他の職員が居る目の前で聞いてきた。その様子を見て、福山課長が口を挟んだ。
「藤原さんには後で私から聞いときますよ。…あー戻って来るんですか…彼。」
書類を手にしながら、福山課長が江部事務長に話した。江部事務長は浮かない顔をして、
「本部で何かやらかしたのか、1年で戻ってきたよ。まぁ…彼自ら異動希望したらいけどね…。とりあえず、明日から2階の部署に配属になるからよろしくお願いします。」
江部事務長が福山課長に伝え終えると事務室へと戻って行った。福山課長は書類を手にし、しばらく
読んでいる。私は、自分のデスクに付くとパソコンを起動させた。私の仕事は書類作成とあるデーターの入力。後は在庫確認が仕事。以前は2階の部署にいて、慌ただしく仕事していたけど、身体を壊してどうする事も出来なくなり、途方にくれていた私を助けてくれたのが、福山課長だった。
パソコンを使い慣れていた私は前々から文書や書類を作るのが得意だった為、福山課長が目を付けていた。仕事辞めようとした時にすかさず、福山部長が今の部署においで。と言ってくれなければ私も元夫同様の生活になる所だった。本当に運が良かった。パソコンを打ちながら、そんな事を振り返っては安堵感を感じている。