課題
俺は、オリエンテーションを終えて、自分のデスクの荷物を片付けたていた。片付けながら、俺は”ある事”が気にかかっている。俺はオリエンテーション中に、仁科室長からある”課題”を出題された。その内容は仁科室長を受講者に見立てて、”挨拶”をする…という。意味が解らず、俺はとりあえず、仁科室長を受講者に見立てて、”挨拶”をした。最初は、”立っていた”仁科室長に。こちらは”大丈夫”ですね。と仁科室長は頷きながら、”今度は…” と話しがら、仁科室長が座っていた椅子の向きを俺が立っている側に向けて座った。そして俺に
「この状態の受講者さんに”挨拶”をして見てください…。」
俺はやはり理解出来ず、普通に立ったまま、椅子に座った状態の仁科室長に”挨拶”をした。…仁科室長は、「うん…。」…と頷き、突然立ち上がると、俺に
「今度は河本主任がこちらの椅子に座って、私の”挨拶”を見てください…。」
と話しかけた。俺は言われるまま、椅子に座る。すると仁科室長は身体を少しだけ、くの字にする様に俺に”挨拶”をした。椅子で座った状態で見上げているからか、顔や目がハッキリと分かる…けど、なんだが…解らない…圧迫…いや威圧感を感じる。しばらくして、”今度は違う”挨拶”のやり方で…”と話すと、俺が座る椅子の少し斜め右隣に、膝を下ろして、目線を合わせて”挨拶”をした…。俺は、この”挨拶”に温和な感じの室長が、さらに温和な…いや、安心感というべきなのか?…俺は、堪らず質問した。
「あの…これは、何かの試験?…ですか?」…と。
俺の質問に仁科室長は、何も答えずに、立ち上がると、俺に椅子の向きをテーブル側に変えるように指示をし、室長は、反対側の椅子に移動した。そして、反対側の椅子に腰を下ろして、テーブルの上に置いてある、2枚の書類を俺に見えるように並べた。
「今、私の”挨拶”を聞いてみて、どう感じましたか?…感じ事をすべて話して見てください。」
俺は、仁科室長が”何を試して”いるのかが、解らずも、その質問に答えた。
「先程、室長が立って”挨拶”を交わした時は、何も…普通に感じましたが、私が椅子に座った状態で、”挨拶”をされた時、身体をくの字に…凄い圧迫?…いえ…威圧感を感じました。ですが、仁科室長が膝を付いて、”挨拶”をされた際は、安心感がありました。」
仁科室長は並べた2枚の書類のうち、1枚に手を差し述べて、こう話してくれた。
「今の”挨拶”はこの方にも、今後、河本主任が担当する受講者さんにも関係してきます。…この受講者の方は、車椅子で受講されています。左手が不自由で右足も不自由な方です。」
仁科室長の説明…いや、答えに俺は、困惑しかなかった…そして、これが今後、俺が頭を抱える”課題”になるとは思いもよらずにいた。