散らかった部屋
か…彼女が、食事を届けて…?…マジで?…。俺は、離婚してから、食生活が荒れていた。仕事ある日は、3食、食べてはいたが、休みの日は、バナナ1本。空きっ腹にカフェオレ飲んで、終わり…。まぁ夜は、食べるけど…。…。この散らかった部屋に彼女を…?…いや、玄関で対応すれば…。だ…ダメだ…。何も考えられない。…そうこうしている内に、スマホが鳴った。彼女からの電話。”…はい…河…本…です”。 覇気がない俺の声に益々、心配そうな彼女の声が聞こえた。
「…大丈夫…ですか?……アパートの駐車場に居ます。窓から、私が見えますか?」
カーテンを開け、窓から駐車場を見てみた。彼女が立っている。…ベランダに出て、スマホを持ったまま、手を振った。…”あ”。…そんな顔をしていた…。何時もの、デニムに…?…アレ?…何時もは、デニムにブラウスの彼女…。今日は、デニムに、Tシャツ姿…。…。ベランダから、玄関に向かいドアを開けた。「…こんにちは…。」 緊張している彼女の顔…。彼女は、1本に束ねた髪を、シュシュ?とかいうヤツで束ねていた。Tシャツは、ネイビーのプリントシャツ…。猫のワンポイントが入ったヤツ…。だが、その猫の絵が…ちょっと変わってる…。白猫の額に、三日月状のキズがある…。書いてある…?あの、コレ…。そっと、紙袋を俺に、手渡した。彼女の手料理…。
「ありがとう…ございます……。あ、あの…もし…よかったら…その…ち…散らかって…ますが、上がってぃぃいきま…す?…」
き…緊張で…声が…ヤバ…イ……。
すると彼女は、”い…いえ…すぐに…か…帰ります…”
と言って、帰ろうとした。俺は、咄嗟に、彼女の肩を掴んだ…。「待ってくだ…。」
驚いた彼女が、肩に置いた俺の手を、はら…いや、握りしめた。温かな彼女の手……。そして…。
「…何も、食べて無いんですか?…手が…。」
そう言って、そっと、俺の首筋付近を、片手でそっと触った…。夏場で暑いハズなのに…完全に冷えていた俺の身体。彼女の手の温もりが、心地よかった。…少しフラつきも出ていた…。彼女は、迷っていたが、それでも、俺の背中をそっと触って、俺のアパートの部屋へと入った。1Dkの部屋…。…何も話さない彼女…。部屋の汚さに呆れているのか?…すると…。
「…私、特に気にしません…。動けなかったんですよね…。」
……。そんな事…言われたら…。家に返したくなくなる。…このまま…居て欲しい…そう言いそうになったが……
「最近、掃除もサボってたんで…。」
それしか言えなかった。




