PC科オリエンテーション
俺は、今月から陽高支部PC科に講師として勤務する事になった。今日は初日で今は仁科室長からこの部署の説明を聞いている。仁科光貴室長。俺より15歳歳上。この施設が設立当初から居る”古株”だ。温和な性格で物腰も柔らか…と言った感じだ。仁科室長は講師休憩室に俺を案内すると、空きデスクに荷物を置くよう、指示をした。そして、パーテーションの裏側へと案内し、「”どうぞ。”」と声をかけた。パーテーションの裏側は、食事を取る場所になっていて、俺は、1番端の席に座った。その間、仁科室長は書類を自分のデスクに取りに行っている。…と。「”コンコン”」…休憩室のドアをノックする音が聞こえた。仁科室長は「”はい…?どうぞ?”」とドアに向かって声を出した。ドアが開くと、そこには見覚えのある姿が…。
「”…あれ…?あの人…?”…さっきの…」
何やら仁科室長と会話している。
「明日から”彼”が引き継ぎます。今まで本当にありがとうございました。」
そう話すと、”彼女”は書類を手渡して帰って行った。要件が終わり、書類を手にこちらへと向かって来た。そして、書類をテーブルに置くと、
「改めまして…PC科室長、仁科光貴です。これからよろしくお願いします。」
俺も同じ様に挨拶をする。
「本日、本部より異動しました、河本雷斗です。よろしくお願いします。」
挨拶を済ますと、仁科室長は「”では、早速ですが当施設とPC科の説明をさせて頂きます。まずは、ここの施設は昔病院だったのですが、当時のこちらの院長、横田院長が経営が難しいと言う事で、病院を閉院する事にしたのですが、現理事長、池澤陽一理事長の機転で、この施設を再建、設立に至りました。」
俺はまず、この施設の経緯を聞かされた。
「そして、PC科は本部とは違う点。それは、”身体が不自由な方がパソコンを学べる”と言うところです。これは、前院長の横田院長と池澤施設長の要望なんです。どんな方にも”学ぶ”権利があると。幸いここは病院でしたので、バリアフリーになってますから可能でした。本部の建物よりも新しいので、耐震性もあります。」
仁科室長は、そう説明すると、俺に突然、課題を出した。
「河本主任は、本部のPC科で講義を行う際に自己紹介をなさいますよね?その時の紹介の仕方を、私に見せて貰えませんか??」
唐突な課題…しかも挨拶?…俺は一瞬戸惑うも、室長をモデルにし、自己紹介を始めた。…”これがなんの役に立つんだ…?…何か試しているのか?”…俺の戸惑いをよそに、仁科室長はその様子をジッとして俺の挨拶を見ている。