呼ばれる
騒ぎから、どの位、経ったか解らないが、俺は部長に呼ばれ、部長室に居る。…。この女性…なんか…。そう思っていた時、「そこに座って。」 低い声だけど、優しい口調…。俺は、言われるまま、椅子に座った。向い側に、部長も座る。…俯き加減の俺。「”切られんのかな?…まあいいか。彼女が、無事だったし”…。」 そう思っていると…。
「う~ん…?…大人しい方…と、思っていたんですが…意外と強いんだね?…それに、人を観察するのが、得意?なのかな?…。」
面と向かって、話す近衛部長。…なんで、急にそんな事?…ていうか、さっさと終わらせて帰りたい…。疲れていた俺は、「”あの…”」 と近衛部長に声をかけた時だ。
「……。久々に加藤さんの声、聞いたけど、やっぱり、優しい声をしてるね…。今回の件は、大変な事だったのですが、貴方は、ただ、渡賀を止めただけ。それだけ。…ですが、ことが事ですので、処罰は、受けて頂きます。謹慎9日間…。これだけです。減給も、まして、解雇もしません。」
…たった、謹慎のみ?…アレだけ騒ぎを起こしたのに?…い…いいのか?…マジで。と思っていると、部長は、「加藤さん…」と
俺を呼んだ…。”なんだ?”…
「私から、お願いがあります。もし、これから、周りを見て、また、何か変だと感じたら、私や仁科室長に、報告してください。…貴方には、それだけの、力があるのだから。それと、もう少し、周りとコミユニケーションを取ってね。…大人し過ぎて、どう接したらいいのかと、頭を悩ませていた方がいましたからね…。お願いします…。さっ、今日は、もう帰りましょう。この際だから、ゆっくり休んでね。」
そう部長が話した後、俺が部長室から、出ようとした時…。
「…のナイトか…。」
そう呟いていた。俺は、部長室から、出ると、PC科へと戻り、引き継ぎ書を作ろうとした時だった…。休憩室のドアをノックする音が聞こえた。ドアを開けると、青野さんが立っていた。青野さんの顔は、疲れた表情をしている。…「…ひどかったもんなぁ…。」 そう思いながら、俺は、彼女を椅子に座らせ、コーヒーを薦めたが、断られた。彼女は、俺に、助けて貰った礼を言った。俺も謹慎だ。と話したら、血相を変えて、俺に聞いてきた。「”まさか、河本主任も”?!」 俺は、黙ったまま頷いた。俺は、彼女に、2、3、伝えたっきりまた黙ってしまった…。河本も…と聞いて、悲痛な表情…そこに、涙まで見えた…。…!…やっぱり…彼女…河本が…。
「…今日は、もう帰って…休んでください……。俺も、すぐに帰ります。」
それしか言えなかった…。彼女が休憩室から、でた後、俺は、河本に連絡した…。そして、河本に彼女へ連絡する様、伝えた…。その時だった。
「加藤君、君、青野さんが好きなのか…?」
その言葉に俺は、”アンタの隠し事で、散々、俺と彼女を、巻き込んだ挙句、好きなのか?…。…好きじゃなきゃ…あそこまでデキねーよ”?
「アンタがダラダラしてっからだよ!!!惚れたオンナなんだろ?!ちゃんと見とけよ!アンタが何時まで経っても、離婚したって青野さんに言わねーから、もう少しで、青野さんの手と心に傷をつける事になるところだったんだ!!わかってんのか?!!!」
キレた俺は、そう言って、河本への電話を切った。
”河本だけ”がマジだったら、彼女をヤツから奪って彼女と一緒になりたかった。だけど…彼女は、河本に、”本気で惚れて”いる…。ソレがさっき、わかった。好きじゃなきゃ、騒ぎ起こしてまで、護れねーよ?…。だけど…彼女が傷つき、泣いている姿だけは、見たくない…。




