協力
私はPC科の1部の場所を借りて、受講希望申込み書と2枚の用紙に目を通していた。この2枚の用紙はさっきPC科の休憩室で出力し印刷した用紙。星野主任が担当するはずだった2名の今後の講習予定が記載されてある。あの後、私は、近衛部長と仁科室長に順を追って説明した。
「この申込み書の希望欄は、通常なら希望者自らが書くのですが、同じ筆跡だったので、妙だな?と。最初は、2人とも空欄だったのを、もしかしたら星野主任が自ら電話して聞いたのかな…と。」
私の見解に近衛部長と仁科室長はもう一度、希望申込み書の希望欄を確認している。
「…同じ筆跡ですね…。」
と、同時に近衛部長と仁科室長が答えた。
「後…何故、福山課長が私をPC科に要請をかけたのか、分かりました。…星野主任は身体の不自由な受講者さんを専門に講習をしていたのでは?…それで、ひょっとしたら…と思って、こちらのパソコンに今後の講習予定を組んでいるかも…と。そう思って…」
私がそう説明した矢先、休憩室のドアをノックする音が聞こえた。「”はい?どうぞ…”」ドアが開くと、そこには業務サポート課の福山課長が立っていた。仁科室長が休憩室へ招き入れる。福山課長が、休憩室へと入ると、仁科室長へ小包を渡した。
「仁科室長確認をお願いします…。先程届きました。」
仁科室長は福山課長から小包を受け取って、中を確認した。「……?。」
仁科室長は、理解が追いつかないのか、困惑状態だったけど、私は星野主任の凄さを小包で更に実感する。小包の中には、パソコンの光やブルーライトを遮断するサングラス。後は、PC用のヘッドセットマイクが入っている。
「凄いなぁ…星野主任」
私が感慨深い声を出すと近衛部長は理解してくれていたのか、同じ様に賛同してくれた。
「本当にね…。」と。
星野主任は、身体が不自由な小田さんの為に、言葉でもパソコンが使えるよう、ヘッドセットマイクと長時間パソコンを使用してもいいように、このサングラスを取り寄せていたのだった。
「藤原さん。」
福山課長が私に声をかけ、こう話した。
「急な依頼ですみません。ですが、貴女のパソコンスキルは、私は昔から知っていますので、出来る所まででいいのです。講習をお願いします。」
福山課長は頭を下げた。その姿に私は驚きを隠せない。上役が下の者に頭を下げる…。まして、”科”が違う課長が…。いつの間にか、福山課長に私は「…私も、ブランクがありますので、最初の1部だけになりますが…。可能限りお手伝いさせて頂きます。」…気の利いた言葉は返せないけど…。とりあえず今は、役に立てればそれでいい…。…私は福山課長の頭を下げたあの姿を、未だに忘れられない…。