後悔…
昨日の夜…。彼女は、慌てて、俺の腕から、抜け出し、貴重品のカバンを拾い上げ、走ってアパートに入って行った。…。まだ、俺の口から、妻と離婚し、独りになった理由を、話さないまま…。好き過ぎて、愛しくて…思わず、抱き締めた。耐え切れなかった。…彼女を、怯えさせてしまい、傷付けてしまった…”後悔”…。…胸が…苦しい…病気では無い、あの独特の…人を好きなった時に…その人を傷付け、泣かせた時に、感じる痛み…。ゴロリと寝返りを打つ俺の頭の上で、スマホが鳴った…。…”誰だ”? スマホの画面を見てみた。…”秋田 まき” と表示されている。…「”はい”?」 掠れた声で電話に出た。「”河本さん?…おはようございます。昨日は、ありがとうございました。まだ寝てました”?」 俺は、”いえ、起きてました…。ちょっと、色々あって眠れなかったので…” と
まきさんに話した。俺の掠れた声を聞いて、何があったと、まきさんは尋ねた。流石に、昨日の話しは…出来ずにいると…「”もしかして…うみちゃんの事…かな”?」 …。まきさんには、敵わない…。俺は、昨日の夜の帰り際に、俺が彼女を抱き締めてしまった事…そして、それを後悔している事を…。”多分、怒られる”…。母親?に説教される前の…ガキと同じ様な感じになっていた俺。すると、まきさんは、しばらく考えていたのか…黙ったまま…そして、”それ…多分”…。と俺に、こう説明した。
「河本さん、多分だけど、うみちゃんは、驚いただけだと、思いますよ?…海で遊んだ後、みんなでお昼行った時、うみちゃん、何処と無く、緊張して、話してたの。あのうみちゃんが、”上がって”、話していた。私たちに話すの時は、ちゃんと、話してたのに。河本さんに話す時だけ…。緊張してた。後、海に行く時、チラチラと運転中の、河本さんの顔、見ていたの。”あの目”はね、”気になる人を見る目”…。うみちゃんは、河本さんの事、好きだと思うよ?多分ね。」 そ…そうなんですか?…。後ね…とまきさん。
「これは、うみちゃんに対する、私の勝手な憶測ですけど…。あ、そうだ、車の中に、小さめのポーチありませんでした?」
そう話して、まきさんは、俺にポーチが無かったかと尋ねた。「”見てみます。見つけたら、連絡します”。」 俺は、ベットから起き上がり、ボサボサの頭のまま、アパートの駐車場に止めてある、車に向かった…。車の中をよく見てみた…。と…あ…これか?シートと窓の席の間に挟まっていた。拾い上げて、その場で、まきさんのスマホに電話をかけた…。「”ポーチありましたよ。今度、届けます…それじゃ…あ、そうだ…。まきさん、ありがとうございました…”。」 そう話して、電話を切った。…”あ、確か”…俺は、トランクも覗いた。…”これ、中に入れとくか…。明日、渡そう”。彼女が買った、職場への土産のクッキーと鮭のふりかけ。ポーチと2つのビニール袋を、手にして、アパートへと戻った。




