好きで愛しくて…
皆と遅い晩飯を食った後、まきさんのホテルに向かった俺達。衣織は、ホテルに着いても眠ったまま…。まきさんとけいさん、豊川君を、ホテルの駐車場に降ろして、俺は、衣織達を送る。先に衣織を送ってもと、英と彼女に尋ねた。2人とも、いいよと言ってくれた。俺の実家へ英と2人で衣織を送る。兄が、衣織を抱き抱えて、沙織が、荷物を受け取った。「”大学で一緒だった、秋田君。いつも世話になってるんだ”。」 兄に紹介した。車に戻る前に、「”兄弟だけど、あんまり似てないね”」 と英は言う。「”兄貴は、親父似、俺は、母親に、似てる”」 そう話して、車へと戻った。次は、英を送った。英のアパートに着くと、「”河本君、海ちゃん、本当に楽しかった。また皆で行こう!気をつけて帰って”!」 と言って、英は、荷物を持ち、アパートへと歩いていった。次は…彼女を送る。時間も時間だから、アパートまで送ると話したが、俺にアパートがバレたく無いのか、頑なに断ってくる…。同じ事を繰り返し話す俺…。「”危ないし、心配だから”…。」 根負けしたのか、渋々だったが「…お願いします…。」 と彼女は、軽く頭を下げた。英のアパートから、彼女のアパートまでは、車で15分位だ。その時間も、早いような短いような…。「”あ、ここです。”」 駐車場は、それなりに広く、数台分の、空きがあった。彼女に、今回の旅の礼を述べた。そして
「時間があったら、私の話しを聞いて貰えませんか?」
彼女の目をしっかり見て、伝えた。彼女は、明日は、少し休みたいと、近いうちに…土曜日か日曜日なら、休みだからと…。俺に話す…。彼女が俺の車から降りた…。荷物を取りに、トランクへと向かう…。俺も後を追った……。出来れば…このまま、帰したくない…。もう1日…いや…ずっと一緒に居たい…。付き合う前だけど…もう…無理だ。
彼女が、車のトランクに手をかけた…俺は、咄嗟に…彼女の手首を掴んだ…そして……キャッ……。小さな悲鳴が聞こえた…。
「……ごめん……。」
それしか言えなかった。俺の腕は…彼女をしっかりと強く抱き締めていた…。…好き過ぎて、愛おしくて、耐えれなかった。驚き…震えている…彼女の身体…。それでも、温かい彼女の身体…。髪の甘い香りと首筋の色香…。全部が恋しくて…愛おしくて…。付き合う前に、抱き締めてしまった…。しばらく…抱き締めたまま…時間だげ過ぎた…。
「は…は…な…して…。」
その震えた彼女の声。その声だけが、俺の耳に…聞こえていた。




