アシカショー
”そろそろ時間だから、行こっか”。目の前に彼女がいるのに…遠くにいる様な声…。告白に失敗した俺…。衣織の手を引いて、トボトボとアシカショーへと向かう。多分、今の俺の後ろ姿は、哀れな姿なんだろうな…。周りの歓声が…俺の意気地の無さを笑ってる様に聞こえて仕方ない。「”…はぁ~”」
アシカショーの会場のベンチに座り込み、深いため息をついた…。「…?”パパ?どうしたの”??」 衣織が心配そうに、声をかけてきた…。「”ん~なんでも無い…”?」 と突然!「”こんにちはー!!!」 とマイクを通した、デカい元気な声!アシカショーが始まった。「みんな!今日は、クラゲ水族館に来てくれてありがとう!!みなさんと一緒に楽しい時間を過ごしたい、おともだちを紹介しまーす!」…ぼーとアシカを見ている…。ふと、彼女が目に入る。衣織は、アシカの輪投げを見て、楽しそうにしている。「”パパ、すごいね”!」…”うん…そうだね”…。半分気抜けの声と、空疎な笑みで、返事を返す。「”…もう一度なんて…いえねぇ”。」 と、俺の隣に座っていた、けいさんが…そっと、俺に聞こえるか、聞こえないかの声で、声をかけた。「…”やってみたら?…マジなら”…」
そう話して、またアシカショーを見直した…。
……。”もう一度…やって…いや、伝える!!…マジだし”!!…「”ありがとう…ございます!けいさん”!」 そう伝えた。
《アシカショー》
輪投げを器用に投げるアシカ…。
「さっき…河本主任…。」
私は、アシカショーが終わるまで、河本主任の言葉が気になって仕方なかった。
「”俺と付き合って”…」
緊張して、声が震えていても、真っ直ぐに私を見て、告白する河本主任…。…。河本主任が、”離婚して独り”なのは、知っている…。でも、”本人の口から直接”…聞いた訳じゃないし…それに…。もし、本気なら、”職場恋愛”…になるんだよね…。随分前に、カフェでどこかのお姉さんたちが、「”職場恋愛ってキツいよね。付き合ってる時は、いいけど、別れたらキツいよ~。自分から、別れたらそれまでだけど、相手から捨てられたら、マジでキツイ…それに逃げ場無いし、切ないしね…”。」…付き合ってないのに、この心配…。変…かな?…。「”今日は、来てくれて本当に、ありがとう!みんな、気をつけて帰ってねー!またねー!バイバーイ!”」 アシカも一緒に手を振っている。…可愛い…。




