新生活
私の名は藤原海。最近、離婚して”お独り様”になったばかり。結婚していた頃は、家庭と仕事を両立しながらの生活。元夫の蒼空は仕事を辞めて日長1日を何もせずゴロゴロしているばかり。私が仕事でヘトヘトになって帰ってきても、”夜ご飯どうする?”とか聞いてくる始末…。”勝手に食べててよ”と思いながらも、私は蒼空に「冷蔵庫に昨日作った、残り物あるから食べてよ。」と伝えた。蒼空はさっさと冷蔵庫の中から残り物を出して、電子レンジで温め始めた。私が疲れて、ソファで休んでいると、「いただきます。」…と聞こえた。蒼空は何時も自分の事しかない…一言”食べる?”とも聞かず、自分だけさっさと食べて終わらせる。食べ終えた蒼空は、”ご馳走様”と呟くと食べ終えた食器を台所の流しへと持って行く。「洗い物よろしく。」休んでる私にそう言うと、リビングの反対側のソファに寝転んでスマホで動画を見ていた。時折聞こえる笑い声に、私は我慢の限界になっていた…そして、ある日とうとう蒼空に
キレた私。それは、蒼空が私の大切にしていた貴金属を勝手に売った事…。とうとう堪忍袋の緒がキレ、ありとあらゆる罵詈雑言をぶつけ、私は、離婚した。蒼空は最後まで「別れたくない」と泣いて縋ってきたけど、私はもう冷めきってたので、「今後、用がある時は弁護士を通してください。さよなら。」…生活費も入れず、人を労わる事もしない…挙句に人の大切な物を売りお金にした。そのお金を生活費として入れるならまだしも、自分の払わないといけない物に使った…。
”金の切れ目が縁の切れ目…”やっぱり本当だったなぁ…と思いながら、引っ越したばかりのアパートの部屋で思い出していた。
「明日から出勤か…皆元気かなぁ…。」
私は離婚後の手続きやら、引っ越しやらで仕事を1週間、休ませて貰った。”全て落ち着くのはもうしばらくかかるけど、とりあえず、雨風は凌げるからいいか…。”
新しく買ったソファ型の長椅子から起き上がると、テーブルに置いてある、コーヒーを飲んだ。
スマホを手に取ると、職場の仲のいい先輩にメールする。引っ越しが無事に終わった事、後は、弁護士に全て任せた事…。メールが返って来て、先輩は”お疲れ様。とりあえず、自分を労わってね”と返してくれた。私は先輩に何時も助けて貰ってばかりだ。私より3つ歳上の先輩は、部署こそ違うけど、ある時を境に仲良くなって今は連絡をとる仲だ。
「ありがたいなぁ…」
そう思いながらメールを返す。スマホの時計を見ると17︰30と表示されている。私はスマホをテーブルに置き、台所に向かった。夕飯の支度をする為に。今日のメニューはサラダとチキンライスだ。簡単に済ませてしまおう。ついでに明日のお弁当のおかずも作ろう…新たな生活が始まった。