②小学6年生、12月まで
どこの公立小学校にも問題児は居ると思います。☆子の通うY小学校にもいましたし、一時期は☆子がその問題児のターゲットになり、軽い暴力をふるわれた事もありました。しかし私が先生に被害を連絡した事と、その後コロナで暫く学級閉鎖になった事が幸いし、また学校が再開する頃にはターゲットから外れたようで安心していたのです。
けれども、5年生の三学期になって彼等と同じX中学に行くという実感がわいたのでしょうか。
「あの子たちと同じ中学に行きたくない」
と、☆子が言い出しました。私としては正直「今更? 遅いよ!」と思いました。☆子は楽観的な性格ゆえ、今までその未来を考えていなかったのかもしれません。
まあ、遅すぎるとは思いながらも一番近所の塾に相談に行きました。そこの塾長のトラネコ先生は「うーん、難関校や人気の学校を目指さないなら大変ではありますが一年で何とかなるかもしれません……でも本人のやる気次第ですから、お約束は難しいですね」と、至極まっとうなお答えをくれました。
そのまっとうなお答えに好感を持ったのと、送り迎えをしなくても何とか☆子一人で通えそうだという場所からそこにお世話になる事にしました。
もう受験本番まで1年を切ったタイミングだったので、すぐに模試が始まります。☆子本人は持ち前の楽観的な考えで「なんとかなる」と思っていたのかもしれませんが現実はそんなに甘くありません。
模試の結果、都立の中高一貫校を狙うのは厳しい点数でした。
さて、国立と同じく都立の中高一貫校は公立ですから学費はかかりません。勿論凄く人気なのですが、学費の他に幾つか私立中学受験と異なる箇所があります。
ひとつは試験が一回限りの勝負であること。(私立中学は何度も試験のチャンスがあります)
もうひとつは試験内容が「適正検査」と呼ばれる方式で、私立中学の試験とは大きく内容が違うこと。
難関校を狙える地頭の良い子なら私立中学と都立の中高一貫を併願して受ける事も可能ですが、試験内容が大きく違うため、普通の子は両方を狙うと両方落ちるリスクがあります。どちらか片方を本命として、それに合った問題集を解きまくる方がいい……というのが先生のアドバイスでした。
また、私がその頃参考に読んでいた中学受験漫画「二月の勝者」にも似たような内容が記載されていました。
この時点で、☆子は地元の公立に行きたくない以上、一回勝負の都立中高一貫は諦めた方が良いなという雰囲気が先生と私の中で共有されます。一応伸びしろがあるかもしれないので最終決定ではありませんでしたが。
半年あまりの間に学校説明会などにも親子で足を運び、通える範囲で偏差値がそれほど高くない私立中学を幾つか選びました。
そうして12月の頭。もうそろそろ本命の学校をきちんと決めないといけない時期にきました。というか、他の子はとっくにもう本命を決めている時期です。それにも理由があります。我が家は最初、A女学園を仮に本命と決め、☆子は頑張っていました。
なんとその頑張りが功を奏し、偏差値40台前半から50、得意科目は55まで上がりました。五年生の三学期当時から考えると凄いジャンプアップです。模試の結果を見ながら、コアラ先生はこう言いました。
「☆子ちゃんはよく頑張りましたね。これならA女学園は余裕で受かりますよ。多分上位で!」
ここで普通の親なら喜ぶでしょう。だが私は一気に心に暗雲が立ち込めました。そうです。☆子の性格を知っているから。
「あの、大丈夫でしょうか。☆子は慢心すると手を抜く子なので……」
そう言うと、いままで笑顔だったコアラ先生の顔も曇りました。どうも指導中の態度に心当たりがあるようです。
「……そうですね。まあ、大丈夫だとは思いますが……」
「あの子は鶏口より牛後の方が良いと思うんです。ここは無理をしてでも、もう少し上を狙った方が」
「ううーん、確かに☆子ちゃんの性格だとそうかもしれません……」
ただ、偏差値というのは皆さんご存知のように受験する全員の中でどのくらいか、を差します。50が中央値ですね。つまり、偏差値40台前半から50に上げるよりも、50から55に上げるのはとても難しいのです。平均以上の子がしのぎを削っているゾーンという事ですから。
コアラ先生はその事を説明したうえで、かなり厳しい戦いになりつつも可能性があるラインで偏差値52のB中学をオススメしてくれました。
B中学は立地、通学面、そして進学率や大学推薦が特にA女学園よりかなり条件が良い所でしたので、コアラ先生と☆子、私の三人で話し合い、本命をB中学に決めました。
(※お気づきでしょうか。この時点で、夫は空気です……ガチで丸投げでした)