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元帥の力

展開を少し変えたかったので昨日あげた話を書き直して再投稿しています。


「行くぞ、嬢ちゃんら」


 元帥とかいうジジイが腰から金棒を抜き仕掛けてくる。メイン武器である騎士剣は俺がすでに奪っている(前話読んでくれ)が、サブ武器も持っていたようだ。準備がいいな、クソ。


「先手はあげないよ」


 シルクがふっと笑う。ジジイの向かう先にはすでに蜘蛛の糸が張り巡らされている。あそこに突っ込んだが最後、全身をぐるぐる巻きにされて転がされることだろう。だがジジイはあろうことかさらに走る勢いを上げて真っ直ぐ向かっていく。


「こんなもので儂が止められると思ったか?」


「なんだって!?」


 ジジイに次々と絡まる糸はすぐにぶちぶちと千切れ、その勢いを少しも殺すことができない。生身であれかよ。化け物か。


「ギガ・ウィスプ。行け!」


 俺が指示を出すと、ギガ・ウィスプはその体を大きく広げてジジイを包み込む。【精神汚染】だ。熟練冒険者ですら即気絶するほどの威力だが、どうだ?


「なんじゃこれは? 目眩しにもなりゃせんぞ」


 腕の一振りで爆風を起こし、ギガ・ウィスプは霧散する。


「そんなのありかよ!」


「グオオオ!」


 次に向かうのはケルベロスだ。三つの頭をもたげて噛みつきにかかる。その牙には毒がたっぷり染み込んでいる。


「しつけのなっとらん犬じゃな」


 横っ面を素手でひったたく。ただそれだけの動作でケルベロスの巨体は宙を舞い地面に叩きつけられる。


「あずき!」


「はいマスター」


 あずきは振りかぶった大剣を大上段から振り下ろす。めちゃくちゃな破壊力を秘めたその攻撃は、激しい金切り音をあげて金棒に受け止められる。鍔迫り合いをするあずきとジジイ。どちらも2メートル越えの巨躯同士のそれはものすごい迫力だ。


「ふむふむ。なかなかの剛力じゃな。魔人にしておくのが惜しいくらいじゃ」


「戯れをっ……」


 必死のあずきに対してジジイはまだ余裕を浮かべている。こいつ、底が知れない。一体一体かかっていたんじゃ勝ち目はない。連携しないと。


「シルク、糸を!」


「うん、マスター」


 大量の糸がシルクの体から発生し、ジジイをぐるぐる巻きにする。このまま拘束できれば、あとは袋叩きで――


「【炎鎧(えんがい)】」


 突如ジジイの体が炎に包み込まれる。ぐるぐる巻きにしていた糸は熱で溶かされ解けていく。


「炎魔法を使うのかよ! 相性悪いな」


「あ、相性悪い……」


 やべ、失言した。シルクは俺の言葉になんかショックを受けている。呼び出したのは俺なのに、そりゃないよな。すまん。


「そんなもんか、嬢ちゃん!」


「くっ」


 あずきの大剣が弾かれクルクルと宙を舞う。まずいぞ。戦況が傾いた。


「あずき姉様!」


 シルクがすかさず糸を操りフォローに入る。だが、ジジイはそれをすり抜け、あずきに向かって金棒を振り上げた。


「避けろ!」


 俺は必死に叫ぶが、あずきは体勢を崩していて間に合わない。このままじゃ……ヤバい!


「【咲け、白椿】」


「ぬう!?」


 突如地面から大輪の氷の花が咲き、ジジイを氷漬けにする。この魔法は……メリル!?


「うわわわわ、やっばい。やっちゃったよ私……」


 自分でやったくせに、今にも泣きそうな顔でオロオロと焦っている。だが、よくやってくれた。


「助かったメリル! サンキューな」


「も、もう。あんたら、しょうがないんだから」


「【炎鎧】」


 バリンと大きな音を立てて氷の椿が崩れていく、中からは当然のようにジジイが出てくる。その顔は怒りの形相で染まっている。体からはその怒りを表すように激しい炎が迸っていた。


「メリルぅ、おめぇ誰に何をしたか分かってんじゃろうなあ」


「あわわわ。す、すみません元帥。体が勝手に動いてしまって」


「剣、構えろやぁ!」


 やばい。めっちゃキレてるぞあのジジイ。


「メリル。お前もう後戻りできないな。王国に楯突いたんだ」


「な、なんてこと言うのよハジメ! ……でももう、ほんとにそうかも」


「これからは私たちの奴隷確定ですね」


「はあ!?」


 あずきが軽口を叩くが、なんだか嬉しそうな顔をしている。


「さて、こっからは反撃開始といこう。俺もちょうど準備が整ったところだ」


「あんた、頼むわよ。これで負けたら承知しないんだから」


「お前、ほんと面の皮厚いのな」


 こちらを泣きそうな目で見てくるメリル。なんだか頼りない感じだが、それでもかなりの戦力だ。今はめちゃくちゃありがたい。

 

「魔人。貴様は捕らえるつもりじゃったが……気が変わった。生かしておくには危険すぎる。王国のためにこの場で死んでもらおう」


「そんなに怒ったら頭の血管が切れちゃうぜ、おじいちゃん」


「ほざきおる!」


 ものすごい勢いで突進してくるジジイ。さて、作戦開始だ。まずは俺の用意した迷路を通ってもらう。目の前に表示されているコンソールを操作して、さっき作った迷路をジジイの目の前に作り出す。ジジイの目の前には壁ができ、突進の勢いのまま激突する。ダンジョン内を地響きが鳴り響く。


「ぬうううあ! いってええ!」


 壁がぶっ壊れたかと思うほどの衝撃だったが、ヒビ一つ入っていない。よかったいくらこいつが化け物でもダンジョンのルールには抗えないようだ。“ダンジョンの壁は壊せない”。だってそれができたら地面を全部ぶち抜いてマスタールームまで行けちゃうからな。ジジイは頭を打ってクラクラと目を回しているようだ。老人への仕打ちとしては極悪だが、今回ばかりは許せよ。


「ハジメぇぇ! 無事か!」


 奥からカーラが飛び出してくる。マスタールームから走ってここまで来たのか? 息がゼエゼエと上がり、額は汗ばんでいる。


「カーラちゃん! 空いたかった」


 メリルが喜び駆け寄る。ちょっと待て、再会の挨拶はまた今度にしてほしい。

 

「カーラ! お前なんでここに来た」


「なんでではないわ! 空前絶後のピンチだと言うのに私のことを置いて行きおって! ここまでくるのにかなり迷ったぞ!」


 半狂乱になりながらこちらに抗議してくるカーラに、俺は笑ってしまった。


「なんだよ。心配してくれたのか? ありがとな。でも大丈夫。あいつは俺がなんとかするから」


「ぬ? どういうことだ?」


「いいから! 今はダッシュであいつから逃げるんだ! 走りながら作戦を話す!」


「わ、わかったのだ」


 ジジイが目を回しているうちになるべく距離を取りたい。ここからは俺の力をフルに活用した総力戦だ。


「みんなにも協力を頼みたい。俺たちの力であの化け物ジジイを倒すんだ」


 俺は周りを確認する。カーラ、あずき、メリル、シルク。このメンバーでダンジョンに攻めてくるボス(ジジイ)を倒す。なんか“勇なま(勇者のくせになまいうな)”を思い出す。昔めちゃくちゃやってたゲームだ。


「マスター。何なりと」


「僕はせっかく作ってもらったのにまだ活躍できてないからね。どんな命令でもこなしてみせるよ、マスター」


「ここまで来たら最後まで付き合うわよ。カーラちゃんは私が絶対守るんだから」


「嬉しいぞメリル! この戦いが終わったらまた一緒に暮らすのだ!」


 ちょっとフラグみたいなこと言わないで。せめて戦いに勝ってからにしてくれ。でもまあ、負ける気はない。


「それじゃあ、まず一つみんなには頭に入れておいて欲しいことがある。いいか?」


 みんなが頷くのを見て俺は話し始める。


「あいつを、怒って怒って怒らせるんだ。それがこれから言う作戦のキモだ」

 

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