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魔物合成の成果


「お、やっと来たか」


 5人組の冒険者パーティは蜘蛛の巣ゾーンを抜けて第三階層後半へと足を進めていた。そこに待ち受けるのは、俺がさっき作った罠部屋。その名も『〇〇しないと出られない部屋』だ。


 ……別にふざけているわけじゃないぞ。R18なあれじゃない。〇〇に入る内容は俺が設定できるのだ。今回は『勝利しないと出られない部屋』にした。俺がこの部屋に配置した魔物は3体。一度この部屋に入ったら、こいつらに勝たなければ出ることができない。


「おおお、なかなか強そうな奴らじゃないか」


「ふふふ。そうだろう。わかってるじゃないか、カーラ」


 俺は魔物たちのステータスを映し出す。


 ギガ・ウィスプ ランクB

〈スキル〉

 ・精神汚染

 ・物理完全無効


 ケルベロス ランクA

 〈スキル〉

 ・魂喰

 ・猛毒


 アラクネ ランクA

〈スキル〉

 ・操糸術


 まず向かって右側にいるのがギガ・ウィスプだ。ウィスプ同士をひたすら合成していき、キロ・ウィスプ、メガ・ウィスプと来てギガ・ウィスプとなった。ウィスプ系統は強化していくとほとんどがエレメントに種族変化してしまうのだが、こいつはウィスプのまま強くなった珍しい個体だ。体を構成する魔素の密度が高まったのか、ガスというよりは巨大なわたあめみたいな見た目をしている。

 

 次に向かって左側にいるのがアラクネ。迷宮蜘蛛をひたすら合成強化していってできた魔物であるクイーンスパイダーにグレムリンを合成した結果できた魔物だ。蜘蛛の体に女性の体が生えたみたいな見た目をしている。上半身は裸で目のやり場に困ったので俺が作った服を着せた。魔人化する一歩手前なのかもしれないのでこれからが楽しみだ。


 そして真ん中にいるのがこのダンジョン内であずきを除いた最強の魔物、ケルベロスだ。三つの頭を持つ巨大な犬。ハウンドをひたすら合成して作ったヘル・ハウンドを三体合成したら生まれた。スキルの【魂喰】は倒した相手の魔素を吸い尽くし自らの力にするというもので、戦闘をすればするほど強くなっていくというぶっ壊れスキルだ。ただ、殺した相手に限るのでこのダンジョンにおいては使う機会はないだろうな。殺人はNGなのだ。それを差し引いても【猛毒】のスキルはやばい。対策しなければ擦り傷でも致命傷となる。


「せっかくここまで来たんだから、簡単にやられてくれるなよ?」


 せっかくだからスピーカーをオンにしよう。これで冒険者たちの声がこっちに聞こえるようになる。


『ねえ、あれ……どう考えてもヤバいでしょ』


『ケルベロス、だと? なぜ急にあれほどの魔物が!? 今まではランクE程度の魔物しかいなかったのに』


『落ち着け。いいか、速やかに撤退する。あれは俺たちの手に負える相手じゃない。来た道を全力で戻るんだ』


『リーダー! 入ってきた扉が開きません! 扉に何か書いてあります。“勝利しないと出られない部屋”と』


『なんだって!? 一体どう言うことだ!!』


 だいぶ混乱してるな。突然魔物のいる部屋に閉じ込められたら無理もないか。


「さてあずき。こやつらが何分持つか賭けをするか? 買った方がこのプリンを食べられる。私は5分に賭けるぞ」


「わかりました。それでは私は1分で」


「それはいくらなんでも早すぎるぞ。これはもらったな」


 カーラとあずきが楽しそうにモニターを眺めながらお菓子をばくばく食べている。いや、あずきはあまり食べてない。この子は控えめなところがあるからな。俺が出したものを粗末に扱わないのだ。カーラやメリルと違って。


『ええい! 皆戦闘体制をとれ! やるしかない! なんとしてもここから生きて出るんだぁ!』


 戦闘が開始される。冒険者たちは見事な連携を見せて三体の魔物に攻撃を放つ。後衛2人の放つ攻撃魔法に合わせて前衛2人が切り掛かる。もう1人の後衛は補助魔法や防御魔法を仲間にかけ、素人目から見ても鮮やかな連携だと思う。まるで何かの演目を見ているような完成された動きだ。


『うおおお! 【獣破斬(じゅうはざん)】!』

 

『やあああ! 【剛破槍(ごうはそう)】!』


 スキルによる2人の連撃。だが、それを繰り出そうとした瞬間2人の動きがピタリと止まる。


『どうしたの!?』


『う、動けな……』


『これは……糸?』


 俺は目を凝らしてモニターをよーく見てみる。微妙にだが、細い糸のようなものが前衛2人の身体を覆っているように見える。


「アラクネの糸か!」


 アラクネは【操糸術】というスキルを持っていた。いつのまにか蜘蛛の糸を張り巡らせていたわけか。やるな。


『炎を撃て! 糸を燃やすんだ』


 こいつ、的確な指示を出すな。この隊のリーダーとか言われてただけある。しかし、その指示が通る前に動いたものがいる。ギガ・ウィスプだ。


『うわあああ!』


 ギガ・ウィスプはそのガス状の体を大きく膨らませて前衛2人にのしかかる。それを食らった2人は膝から崩れ落ち、絶叫を上げながら気絶した。【精神汚染】か。すごい効果だな。


『きゃああああ! 2人とも、起きて!』


 残った冒険者たちが必死に呼びかけるが、反応はない。そこにケルベロスがのっしのっしと近づいていく。


『あ……あ……』


『く、来るなあ!』


『もう、終わりなのね』


 絶望に打ちひしがれる冒険者たちにケルベロスはその巨大な前脚をゆっくりと振り翳し、振りおろす。その強烈な一撃はダンジョンの床を大きく砕き冒険者たちを吹っ飛ばす。壁に叩きつけられた3人はそのまま意識を手放した。


「35秒、でしたね。さすがマスターの作った魔物。私の予想など遥かに超えていきましたね」


「ぬああああ! 私のプリンが!」


 きっかり秒数を計っていたあずきと、その結果に絶叫するカーラ。これが言い出しっぺの法則ってやつか。


「カーラ様。賭けにはあずきが勝ちましたが、このプリンはあなた様がお食べください」


「い、いいのか? ありがとう、あずき!」


 にっこりと笑みを浮かべてプリンを差し出すあずきに、喜び満面の笑みでお礼を言うカーラ。お菓子をねだる子供とその母親みたいだ。


「おいあずき、あんまりそいつを甘やかすなよ」


「しかしマスター。あずきはお二人のしもべ。しもべが主人の食事を奪うなど、できるはずがございません」


「俺とカーラだったらどっちが優先度上なんだ? あずきの中で」


 ふと沸いた疑問を口に出したはいいが、答えづらいこと聞いたかもな。


「ふん。そんなの邪神である私に決まって……」


「それは私の直接の創造主であるハジメ様でございますね」


「おい!」


 カーラのツッコミが入るが、あずきは動じない。この子意外と図太いよな。


「というか、俺があずきの創造主ってことはもしかしてあずきは0歳なのか?」


「ええ、そうですよ。私の自我はあの時発生しました」


「マジ、かよ」


 ロリってレベルじゃねーぞ。もはや赤ちゃん。


「その割にはずいぶんと大人っぽくないか? 記憶だとか知識だとかも、一体どうなってるんだ?」


「どうなんでしょう。 魔物だった頃の記憶は知識としてある程度残っていますが、それ以外の知識は一体どこで手に入れたものなのか、全くわかりません」


 人間らしい所作とか性格とか、言葉遣いとか。生まれたての赤ちゃんが持っているわけないのに、あずきはちゃんとできている。不思議だ。


「ハジメの影響だろうな」


「え? どういうこと?」


 カーラの言葉に思わず聞き返す。


「創造主のハジメから知識を分け与えられたのだ。ダンジョンマスターの力を通じてな。ちなみにその力の源流は邪神である私なのだ。つまりあずきには私の力も分け与えられているのだぞ」


「へー」


 知らなかった。そんなことできるのか。ずいぶんと便利な力を得たものだ。


「つまり、マスター。ハジメ様があずきのお父様で、カーラ様がお母様みたいなものなのですね」


「ぶふぉ」


 飲んでいたコーヒーを吹き出してしまった。ポタポタと机の上に垂れる。


「そ、そう言われるとなんだか……照れるな。なあ? ハジメ」


 カーラは若干頬を赤らめてこちらを上目遣いで見てくる。


「いやいや、ご冗談を」


 この世界に来てからなんだか見た目が若返っているがこちとら32歳童貞だっての。いきなり一児の子持ちとかバカ言うな。


「ふふ。もちろん冗談でございます」


 くすくすと笑うあずき。とても0歳児には見えん。妖艶さすら感じる大人っぽい雰囲気だ。カーラのがよっぽど幼児っぽい。


「……父娘では恋仲にはなれませんものね」


「ん? 何か言ったか」

 

 あずきが俯き、小声で何かを言う。何を言ったのかはわからなかった。


「なんでもありません。マスター」


「そうか? ならいいが」


 いつもより深い笑みを浮かべるあずき。変なやつだ。まあ、そんなに気にすることじゃないだろうな。

 おまけ

 

 エレメント ランクE

 〈スキル〉

 ・属性魔法

 ・物理完全無効


 ウィスプが属性魔法の影響を受けて種族変化することで発生する魔物。ウィスプの体を構成する魔素は属性の影響を受けやすく、ほとんどのウィスプはエレメントへと変化する。ファイアーウィスプ、ウォーターウィスプ、サンダーウィスプ、アースウィスプなど種類は多岐にわたる。

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