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なんだかんだでこの世界に来てからの方が働いてる


「最近はやっとここに来る冒険者たちが増えてきたな。一時期はどうなることかと思ったよ」


 ここ最近、俺はDP稼ぎに勤しんでいた。王国騎士団がやってきてからというもの、冒険者たちの客足がパタリと途絶えた時期があった。まあ、ダンジョン攻略に乗り出した精鋭の騎士団が帰ってこないともなればそりゃ警戒もする。だが、俺が騎士団を無傷で帰したという噂がだんだん広まってきたようで、ここの安全性を信じた冒険者たちがどんどんとやってくるようになってきていた。それなりにお宝も放出しているしな。


「お菓子がもらえなくなった時は終わったかと思ったぞ。本当に」


 カーラはポテチをバリバリと食べながら俺を睨む。そんな顔をするなよ。


「しょうがないだろ。失った戦力補充にDPをかなり使い込んじまったんだ。あの時は娯楽にかけてる余裕はなかったんだよ」


 俺のダンジョンから強い魔物があらかた消えたからな。メリルのせいで。合成で作った魔物は再び合成で作らないと戻ってこない。必死に合成を繰り返してどうにか戦力が整ってはきたが、そのためにかなりDPを使った。その時の残金はたったの575DP。冒険者も全然こないし、かなりカツカツになってしまったのだ。ちなみに現在は5680DPにまで増えている。


「それでも! お菓子だけは私から奪ってはダメなのだ。たった1DPで作れるのにケチケチするでないわ」


「1DPを笑うものは1DPに泣くんだよ。だいたいお前、最初の目的忘れてねえか? このダンジョンを強くして、お前の力を取り戻すとか言ってたじゃねえか」


「う……。それはそうなのだが。だからと言って私のしたいことを我慢して生きるなど性に合わん」


「わがまま言うんじゃありません」


 ガキかこいつは。いや、見た目はガキだが一応邪神なんだよな。威厳も何もない。今も俺が出してやったポテチを平らげ、コーラで胃に流し込んでいるところだ。贅沢なやつめ。


「マスター。お話し中申し訳ありません。第二階層を突破する者たちが現れました」


 あずきの声が聞こえ、そちらを振り向く。モニターの前に座るあずきがいる。彼女にはダンジョン内部の監視をお願いしてあるのだ。俺も四六時中見てられるわけじゃないからな。この前のように誰かが攻めてきたりした時もすぐに発見できるように俺と交代交代で監視している。あずきは最初『私がずっと見ています』とか言ってたけど、流石に却下した。休憩なしでやらせるとか、俺はそんな鬼じゃない。ちなみにカーラは『やりたくない』とか言いやがった。


「へえ。どんな奴らだ?」


「私からすれば取るに足らない相手ですが、マスターの作った第二階層を突破するなど、相当な手練れのようです」


「えっと、まあ、ね。あずき、俺も座らせてくれ」


 俺がそう言うと、あずきは椅子に座ったまま体を後ろに引き、にっこりと笑って膝をぽんぽんと叩いた。は? なに?


「どうぞ、マスター」


「どうぞ、じゃないんだが」


 膝の上に座れということだろうが、誰がそんな恥ずかしい真似するか。俺はしっしっと手であずきを追い払い、モニターの真正面に椅子を置き座る。


「残念です……」


 正直、あずきの膝はとても座り心地が良さそうではある。だって俺とあずきでは大人と子供くらいの身長差があるし。当然太ももだって広い。俺の体がすっぽり収まってしまいそうだ。でも、そんなことをしてしまったら俺の中の何かがおかしくなりそう。主に、性癖とかが。

 

 じっとこちらを見つめてくるあずきを努めて無視しながらダンジョン内を写すモニターをチェックする。そこには第二階層を突破して第三階層に降りてくる冒険者5人組の姿があった。


「うーん。なかなか強そうな奴らだな」

 

「ほお。どれどれ」


 カーラも俺の隣にやってきて座り、3人で一緒にモニターを眺める。この冒険者たち、結構ガチガチにこのダンジョンの対策をしてきたみたいだな。1人が罠を確認しながら進み、2人の前衛職が列の前と後ろを固めている。後衛には魔法使いが2人。それぞれ違う属性の魔法を使うようだ。少数精鋭といった感じでダンジョン攻略のセオリーを守って行動している。


「蜘蛛の巣ゾーンに入ったようだが、あまり苦戦しておらぬな。巣が炎で焼き払われているぞ」


「罠の位置も全て感知されているようですね。おそらく探知系の魔法を使っているのでしょう」


 第三階層の前半には迷宮蜘蛛を放してあり、全体に蜘蛛の巣と罠が張り巡らせてある。だが、その冒険者たちは的確に罠を避け、向かってくる迷宮蜘蛛も次々に討伐していく。


「まあ、俺のダンジョンってランク低い魔物ばっかりだからなあ。特性を活かしたダンジョン構成にはしてるけど、対策されたらこんなものなのかもしれないな。ダンジョンができてからしばらく経つし、もしかしたら攻略情報も出回っているのかもしれない」


 インプ、ウィスプ、ハウンド、迷宮蜘蛛。どれもランクはE以下だ。正面戦闘ではそのへんの冒険者に簡単に狩られてしまう魔物ばかり。その代わりそれぞれいやらしい特性を持っているので運用次第では化けるが、それもひとたび手の内がばれてしまえば簡単に対策されてしまう。


「それは良くないのではないか?」


「ああ。まあでも問題はないよ。第二階層までは別に攻略してもらってもいい。魔物部屋からポップする奴らは倒されてもすぐ復活するし、収支はむしろいいくらいだから」


 こちらとしては、より多くの人にダンジョンに来てもらえるだけでウハウハなのだ。


「ならよいが。だがあまり油断しているとマスタールームまで辿り着くやつが現れるかもしれんぞ?」


「はは。そういえばまだお前たちに見せてなかったな。まあ見ててみろよ。このダンジョンは第三階層後半からが本番なんだ」


 そう、そこまでは正直攻略されようがされまいがどうでもいい。俺が力を注いだのは第三階層後半の構成だ。ここにこのダンジョンが保有する全戦力が集まっている。


「せっかくのお披露目だ。俺が手塩にかけて育てた精鋭たちの実力、こいつらで試してやる」


 俺はコンソールを弄り出す。作るのは、ここまでやってきた冒険者たちを歓迎するのに相応しい部屋。俺が目の前に浮かび上がったディスプレイでダンジョンの編成をしていると、その様子をカーラとあずきが面白そうに見ていた。



 おまけ

 ハウンド ランクE

 〈スキル〉

 ・遠吠え(範囲内にいる魔物を呼び寄せる)

 ・麻痺毒


 犬のような見た目をした魔物。体長1メートルほどで、全身が黒い毛に覆われている。鋭い牙と爪には麻痺毒があり、これで獲物を動けなくさせ食い殺す。


 迷宮蜘蛛 ランクE

 〈スキル〉

 ・蜘蛛の糸


 体長40センチほどの巨大な蜘蛛。迷宮蜘蛛と名付けられているが、あくまでも生息地の違いでそう呼ばれているだけである。蜘蛛の糸は強靭で、人の力では千切れない。


 

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