星が流れ落ちます
星が流れ落ちます。
真っ黒の夜空に
星が流れ落ちます。
真昼間にも
星が流れ落ちます。
赤い線を描きながら
「ねぇねぇ、つぎの授業はなんだっけ」
少女が後ろを振り向いて質問をしました。
「ええとね、理科だよ。ちゃんと宿題やってきた?」
「もちろんだよ、ハウメア」
「本当かなぁ、いっつもなんか抜けてるからなぁ。ケレスは」
少女は不満を顔に表しつつもチャイムが鳴ったので前を向きました。
「では、授業を始めましょう。
みんなには、地球はどんなグループにいるか調べてきてもらったはずです。
ではケレスさん」
ケレスは勢いよく立ち上がり答えました。
「天の川銀河です」
「正解ですが、今回は広すぎます。もう少し狭めるとなんと言うかわかりますか?」
「えっと……」
ケレスが答えられずにいると
「太陽系だよ」
ハウメアが後ろから答えを教えてくれました。
「はい、そうですね。ハウメアさん合ってますよ。
では火星や木星といった惑星以外にも、準惑星があるのを知っていますか?」
星が流れ落ちます
「また、惑星の持つ衛星以外にも地球の周りには沢山の人工衛星が……」
授業に飽きてケレスは空を眺めていると、赤い尾を引いて星が流れ落ちました。
授業の終わりに、元気な男の子が質問をしました。
「せんせー!なんでせんせーは学校に来たの?」
「それはねぇ、君たちの元気な姿を見るのが幸せだからかな」
そう言って先生は微笑みながら教室を後にしました。
星が流れ落ちます。
放課後、家に荷物を置いて二人は空がよく見える河川敷に向かいました。
星が流れ落ちます。
河川敷に着くと、ふと不安になってケレスは尋ねました。
「ねえ、ハウメア。家族と一緒にいなくていいの?」
ハウメアは答えました。
「お父さんはね、前の戦争で帰ってこなくなっちゃった。お母さんにはお兄ちゃんがついてるし、たぶん大丈夫!
なにより、ケレスといる方がずっと楽しいしね!」
「ふふっ私も!」
星が流れ落ちます。
二人は河川敷に座って空に赤い線を引く流れ星を見ながらたくさん話をしました。
今日の給食のこと。将来のこと。家族のこと。
沢山、沢山しゃべりました。
空が暗くなってきました。
もうお別れだからと思い、ケレスは頬にキスをしました。
顔を朱に染めたハウメアを見つめて、ケレスは照れくさそうに笑いました。
影が濃くなり、夢と現実の境界を曖昧にしていきました。
二人が揃って暗い空を見上げると、空には月よりも大きいクレーターが見えました。
星は流れ落ちません。
人類の文明を崩しながら
星はもう流れ落ちません。
全ての人々に平等に時間はやってきます。
星はもう流れ落ちません。
星と星が今出会いました。
お読みいただきありがとうございます。
流石にポエミーすぎて痛いかなと思ったんですが、なろうはそう言う場所なので供養がてら載せました。
以下は解説というか、作者の勝手な解釈なので読み飛ばしてもらってかまいません。
ではまたどこかで。
作中の、星が流れ落ちます。のフレーズ
これは地球に近づいている隕石の破片、またそれに衝突し落ちてくる人工衛星が流れ星のとなって地球に降り注いでいることを示しています。
地球に隕石が衝突し、地球上の生物の生存の可能性はほぼないと判明したのが数年前。
その間に人類は必死に火星や他の移住地を目指そうとしますが、とうぜん人類全員を載せるノアの方舟は作れません。起こりますよね、命の選別による内紛。さらには宇宙空間、移住後の派遣争いで勃発した戦争により移住自体が不可能に。
この戦争で、ハウメアの父、ケレスの両親は亡くなります。
人類に残された時間は地球を出るのには短く、気持ちの整理をするには長すぎた。
刻々と迫る終わりに人類はなすすべなく
太陽の光を準惑星が遮り、暗くなった空に近づいた準惑星のクレーターがよく見えます。
もう流れ落ちる星はなく、惑星と惑星がぶつかったところでこの話は終わりです。
ちなみに、ケレスとハウメアは準惑星の名前からいただきました。
ここまで読んでくださった方ありがとうございます。