朝の顔となった吃音者
「傷病休職中は紹介できないんですよー。」
ハローワークの事務員が実に事務的に資料を見ながら事務的私に告げた。
「休職終わってからでないとねえ。」
自分は休職が終わると無職というド級の不安要素があるからここにいるのだ!終わる前に安定を考えるのはダメなんですか?
「それにねえ、前の仕事も休職中っていう宙ぶらりんな状態なの。これじゃあお仕事のしょうかいはできないねえ。」
そういってハローワークの事務員が実に事務的に資料を見ながら事務的にってもういいわこのくだり!
そもそも一回も事務員の人は「自分」とめすらあわさなかった。
ここはハローワークの障碍者用ブースである。私の隣の人はやはり私と同じぐらい暗い顔をしながらも会社の面接の電話をしていた。じつにうらやましい限りである。
こうして私の再就職への第一歩は見事に砕け散ってしまったのである。
それから数日は朝は起きても起きれないというとんちみたいな、しかし「自分」には重病な状態になっていたのである(お医者様に薬を増やしてもらってこれである)。
今日もベットから起きれず日が暮れるのかとか考えながら寝込んでいると突如それは現れた。
「おっざまーーす!」
突如現れたその人はある一定の年齢の人ならみんな知っているいわゆる朝の顔というニュースキャスターその人だった。
「もちろんあなたの憂鬱のもうそうです!」
また現れたか!というかあなたはまだ死んでいないでしょう。なんででくるんだ。
「そんなのあなたの妄想だからに決まっているでしょうが。」
妄想にさとされてしまった。
「今日も憂鬱なあなたの心に晴れマーク!」
うるさいな!
というか吃音症の克服のための妄想なのになんであなたが?
ニュースキャスターなんて吃音症から一番遠い職業なのに。
「それは私が幼いころからひどい吃音症に悩まされていたからです。」
そんな人がまさしく朝の顔とまで言われるニュースキャスターになれたのですか?
いったいどうやって?
「そんなの私は知りません!」
相変わらず大きな声で彼は私に告げた。
「私はあなたの妄想です。私が幼いころからひどい吃音症に悩まされていた事だってあなたの記憶の片隅にあった断片であって私があなたの知るあのニュースキャスターではないのです!」
だったらなんでここに来たのだ。
私の励ましには全くなっていないぞ。
「確かに私は私自身のことはわかりません。何度も言うが君の妄想だからね。だけれども今から学ぶことはできる。」
学ぶ?
「そうさ私の生い立ちをさ。今はインターネットっていう便利な道具が出来たんだ。さあそのベットから飛び出して共に私の過去を辿っていこう。」