プロローグ
「夢の中で自由気ままに好きなことをしたい」
僕が子供の頃に何度か夢を見た後思ったことだ。結局大人になって現実を知ってからもその願いは変わっていない。
そんな僕の思いが通じたのか、ある日突然願いが叶ってしまった。それどころか僕の願いを聞き入れてくれた神様はとても太っ腹だったみたいで、他にもたくさんのことを出来るようにしてくれた。
「好きな夢を自由に見ることが出来るし、夢の中で気に入ったものがあれば現実の世界に持ち帰ることが出来る」
なんて夢のある話だろうと思った。夢だけにね。
ちなみに僕は何度も夢から現実に好きなものを持ち帰ったことがあるよ。
生産中止のお菓子とか、ちょっとお高い服とか。給料の少ない僕にはとっても助かる。あとはそう……人には言えないような物もね……。分かるよね?
一つ問題があるとすれば、僕以外の人も同じことが出来てしまうことかな。太っ腹な神様は特別な力をみんなに与えてしまったみたい。ちょっとやりすぎじゃないかな……。
みんなが力を手に入れたせいで、世界中の至る所で問題が起きている。現実でも夢の中でも争ってるんだよ。一番多いのは貴重な品々の奪い合いかな。
でも僕はみんなが好き勝手しちゃうのは仕方ないことだと思う。夢の中には『超能力』や『魔法』もあったりして、それを使うなってのはちょっと無理があるでしょ。
個人的な話になっちゃうんだけど、問題はもう一つあるんだ。
僕は色々あって夢と現実の記憶が変になってしまった。大事なことを忘れてしまったり、夢と現実の記憶がごちゃ混ぜになったり……。
あと、僕が夢の中から何かを持ち帰ると違う形に変わっちゃうんだよね。
ちなみにこの不幸な出来事はどうやら世界中で僕だけらしい。ひどいよね。
それでも僕は今もちゃんと生きているし、変わらず夢の世界に飛び込んでいる。一応夢を見た後はちゃんとメモして記録を取っている。
夢をしょっちゅう見ている割には将来の夢は見付かっていないけど、それでもいつか僕にも夢が見付かれば良いなと思っている。
でもちょっと歳を取っちゃったかな……。そろそろ現実に目を向けるべきなのは分かるんだけど、その現実が夢に浸食されちゃってる場合はどうしたらいいんだろう。
長々と難しいことを考えるのは苦手なのでいつも途中で眠ってしまうんだ。
「今日も良い夢が見られたら良いな……」
次の夢はどんな夢なんだろう。