8.魔物
「とても強いんですね!リトさん」
彼女に聞こえるように声を投げる。
――何で敬語なんですか?もしかして私を助けようだとか思って現れた、とかですか?
心の声をこちらに飛ばしながらも次々にオオカミを倒していく。
全く危機を感じない。これは……俺いらないんじゃない?
それでもここで彼女を引き留めておかないと、絶対に俺が後悔する。
「俺が、君にここにいて欲しい!……条件は何でもいい……ここにいてくれ!」
俺の言葉に一瞬反応したように見えたが、次の瞬間には残りのオオカミたちの対処に向かう。
やっぱりだめか――
――またそうゆうことを。私、命令されるの嫌いなんですけど。
――でも、いいです。あなたに実力で居てほしいと思えるようにして見せます。
……ほんの少し、彼女の本音が見えたような気がした。心を読んでいるのだから当然のはずなのに。
「――しまった!逃げてください!」
すっかり彼女に近づけたことに安心したのか、オオカミが1匹彼女のところからこちらに近づくのに気づかなかった。
おいおいおいマジか――
頭で流れる声とは違って体が構えをとる。
――まっすぐ向かってくる敵だ。よく見て半身をそらして――
ドッ
俺の膝蹴りが入ったオオカミの姿が消える。そこにはきれいな石が落ちていた。
「一撃ですか……あなた一体……」
リトさんが動けないでいるオオカミ達を仕留めつつ近づいてくる。
彼らも石に変化していた。
「ああこれはじーちゃんたちが仕込んでくれたもので野生動物を――」
「そうじゃなくて。魔物の心を読んだのですか?」
ああ、そっちね。
「いや、なんとなく見えただけ。だから来ない方向へかわしつつ膝をね」
俺の返答を聞きつつ、なにやら難しいことを考えている様子。よくわからん。
「ところでこれは?オオカミが石になったんだけど」
「それは魔物の結晶です。倒すと結晶化することもあるようです」
「そうなんだ、ありがとう」
知らないことは聞けばいい、の精神。てか魔物は普通なのか。
「それも知らないような方が魔物を一撃で……。それで?私にどうしろと」
――一体何者なんでしょう?
口調とは違って、最初の声に戻っているな。これなら。
「俺のもとにいてほしい。君が誰かのもとに行くことを考えた。……ちょっと耐えられなかったから」
――ふふっ、ほんとにちょっとですかー?
微笑みながら心の声で返す彼女。
「ごめんなさい、嘘です。とても耐えられなかったです。どこにも行かせたくないです。側にいてほしいです」
心読まれてるの俺じゃね?なにこれ?
――直球ですね、……いいですよ。必ずあなたの役に立ってみせますので。
彼女が再度深呼吸して、
「すぅー…………、改めて、よろしくお願いします」
彼女が差し出した手を固く握りしめた。
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