2-23.記憶のかけら
この作品は、『ジャンル 異世界〔恋愛〕』ですが心の交流系異能バトル小説(恋愛系約3割)となります。
がっつり恋愛系を希望する方、この辺りからはしばらくはその方面なのでご期待ください。
まずは町長の言っていた町の案内所に行ってみた。どうやら俺(正確には「ぼく」のだが)の領土は俺の想像のはるか上をいく大きさのようだ。
その中でもこの町の町長はリーダー格らしく、他の町に出向く場合は町長の委任状があるとスムーズに事が運ぶらしい。
なんでも領主よりはこの町の町長の方がまだ信用できる、とのことらしい。……俺も委任状をもらっての訪問が望ましいだろうな。
そんなわけでまずは昨日訪れていない系統のものを扱う商店を巡ってみる。
昨日もそうだったのだが、どの店も何も問題なく営業できているな。……これもじーちゃんのおかげなのかな?
売っているものにしても品質に対しての価額がそう大きく離れているようなものがないように思える。
まあ、俺の知識はじーちゃんの所で仕込まれたものだから、そのじーちゃんが領主代行をしていたのだからその方式で運営されているのかもしれない。
町の人からの視線は相変わらずだ。心を読まれないために、なのか遠巻きに観察する者、逆に堂々と本音のみで会話してくる人など様々だ。
この辺はまあ時間をかけていくしかないだろう。俺、心読めないし、人当たりも良くないみたいだし。
俺はリトさんとマカロンを食べた広場で思考を落ち着かせる。
……この町の人たちにも化け物だと思われても、俺はこの町を含めた領土を守りたいと思えるのだろうか……。
――裏切られることも悪くはない……それで人の痛みが分かるからね。
――君も、後悔しないように生きるべきなんだ。自分の人生を狭くするのは、他人じゃなく自分自身なんだから。
昔、じーちゃんの所で俺に戦闘術を教えてくれた先生の言葉をなぜか今になって思い出す。確か先生も何かの研究の対象だったはず。
今思うに、俺に戦闘術を教えのが先生だったのは、二人の接触による影響を観察するためだったのかもな。当時の空っぽな俺に先生は、戦闘に限らない心得なんかも話してくれたんだっけ。そんな人の言葉を、存在を、何で俺は忘れていたんだ? ……そうか、心の中であのおっさんが「鷹の目」と共に俺に戻してくれたのか。俺の大切な記憶を。
そうですよね先生、今は感傷に浸っているときじゃない。まずはこの町のことをもっとよく知って、この町の人たちを俺が信用しないとな。
それに、力の修練にももっと向き合っていこう。俺の力でこの町を護れるように。
商店の視察は大方終わったはず。今日の所は少し町の風景を目に焼き付けてから、城に戻るとしよう。その後は修練だ。
「すみません、今日もマカロンをいただけますか? できればお土産用に」
「いらっしゃ、あんた昨日の……いくつ入用で?」
「そうですね……6つ入りを2つ。あと、今食べる用に2つください」
「あんたの口に合うかどうかはわからんが、昨日とは違うのも食べていきな」
店員のおじさんが出してくれたのは白と黒のマカロン。どちらも昨日の物とは違うがこれらもおいしい。
「はいよ。こっちのも3種類を2つずついれてある。あんたの表情を見て決めたがよかったか?」
「はい、よりミルクの味がする白い方も、ココアのような味のする黒い方も、本当においしかったです!」
「そうか……全部で12ゲニだ」
「え、ひとつ1ゲニなんじゃ……。それにこの包みも」
「また、来てくれるんだろ? ほんのさっきまであんたを疑ってたんだ、その詫びさ」
「わかりました、それじゃあ遠慮なく。また買いに来ますね!」
「おう、頑張ってくれな、新領主様」
少しくすぐったい言葉をもらいながら、俺は「異国館」へと向かった。
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