2-21.「鷹の目」
この作品は、『ジャンル 異世界〔恋愛〕』ですが心の交流系異能バトル小説(恋愛系約3割)となります。
がっつり恋愛系を希望する方は適度に読み飛ばしていただけるとよいかと思います。
俺が目を開けると、30を優に超えるオオカミに似たものが俺を待ち構えていた。
――お前に小僧の力の一部を戻してある。初めて本物のそいつらと対峙した時のことを思い出せ。
はじめての? あの時は確か――よく見て――っ?
――今ならわかるだろう……それが「鷹の目」だ。心まで読めずとも十分だろう。
「あんた本当に魔物なのか? 俺が知ってるやつとは全然違うぞ」
――当然だ、私はお前だからな。お前を死なせるわけにはいかない。
「俺たちが神になるために、ってか。冗談きついぜ」
オオカミ達が体勢を変える。飛び掛かる寸前だ。
――お前との会話は楽しいが、時は待ってはくれぬ。さあ、無傷ですべてを倒して見せろ。
「何言って――って、無茶言うぜおっさん」
ツッコミを言い終わる前に襲い掛かってくるオオカミ達。
俺の手には武器はなし。防具の類もない。これを無傷で? 冗談が過ぎるぜ。
――――――
――――
意識せずに意識する。あの時のように俯瞰する感覚で敵の位置を把握する。
飛び掛かってくるものを確実に一撃で仕留める。
時には2体3体と連携を取るものもいる。……ホントによくできてるな、本物そっくりだ。
――
「はぁ、はぁ、っ……これでどうだ」
何時間そうしていたかわからない。俺は何度も偽物の魔物達と戦っていた。
初めは30ほどの仮魔物をすべて倒すのにかなりの攻撃を受け、多くの時間をかけていたのだが、ようやくだ……無傷で全滅させたぞ……。
俺は少しずつ「鷹の目」を使いこなし始めていた。
「すぅーー、はぁーーー、ふぅ……もうそろそろいいんじゃないか?」
この部屋には窓がない。なので仮に朝になっていたとしても全くわからない。そこまでではないと思うが。
……今日は昼前には町に行ってみようと思っていたのだが、どうやらそうもいかなそうだ。体が重い。
――そうだな、今日の所はこの辺りでいいだろう。次からはもっと数を増やしていく。
「りょーかいです。さすがに疲れた……」
体をろくに動かせない……このままこの部屋で寝てしまおうか。
――ではまた明日以降も修練を続けるぞ。ある程度の数を相手できるようになったら次は得物を使い戦ってもらう。
「そっちの方が楽そうなんだが、そうじゃないんだな」
明日も、とは口には出さない。
――得物を使い行うのは最終段階だ。……お前は誰かを護りたいんだろう?
「――そうだな、俺は俺が大切に思うものすべてを守る力が欲しい。……アンタの教えてくれた話だと俺にはそれができそうな気がしてるんだ」
そんな物語の英雄のようなことができたなら、じーちゃんも「ぼく」も……リトさんだって皆満足してくれるだろう。そうなればきっと――。
――最後に一つ。「King」は力を奪う異能ではない……お前の信ずる王に私は期待する。
「ああ、ありがとな。そういえば……あんた名前……」
――再び会えた時、お前が覚えていたならば答えよう。
ダメだ、意識が持たない。もったい付けずに教えてくれ……黒い影の……おっさん……。
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