2-8.町長宅
この作品は、『ジャンル 異世界〔恋愛〕』ですが心の交流系異能バトル小説(恋愛系約3割)となります。
がっつり恋愛系を希望する方は適度に読み飛ばしていただけるとよいかと思います。
「これはこれはお忙しいところよくお出で下さいました領主殿」
「この町はいいところですよ。どうぞ見て回ってくださいな」
町に着いて一番最初に訪れたのはこの町の町長宅。
なにせ俺がここの領主になってから今日で5日目、それまで一度も自身で訪れていないのは気になってはいた。
しかし、今の俺にはここの領主の能力である「心を読む力」が使えない状態なのだ。それがバレるとどうなるか……この町の人たちの領主に抱く感情が分からないので俺にうまく対処できるかどうかわからない。
そもそもあまり好かれてはいなかった、という話は会長から聞いている。何より不本意ながら俺自身が地雷を踏みぬくのが得意なのだからもとよりどうしよもない。
それでもこの町の町長は領主が選定した人だと聞いたので他の住人よりは話ができるだろうと思っていたのだが、思っていたよりも嫌悪感を感じない。……まだ子供だから御しやすいと思われているのかもしれないが。
いや、そもそもこのセリフも心が読めないのだから本音かどうかはわからない。用心していこう。
「ありがとうございます。俺……私はタカオ。領主殿なんて柄じゃないので名前で呼んでください」
「いえいえそんな……ああいや、好意を無碍にするのはいけませんな。私はドゥート、こちらは妻の――」
「コントナといいます。どうぞよろしくお願いします、タカオ殿」
またしても頭を下げられる。居心地が悪いので素早く右手を差し出す。
「町の繁栄をこれからも頼みます」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
握手成立。これで何とかなった――っ?
少しだか何か嫌な感じがしたような……。
「して、そこの方は?」
町長がリトさんをみて俺に問う。確かに説明がまだだったな。……なんといったらいいものか。
「私はリトと申します。今はこの方の所でお世話になっているものです。主に外交を担当しております。よろしくお願いします」
そう淀みなく言い夫人に手を差し出す。
「そうでしたか、こちらこそよろしくね。……外国語が得意で?」
「ええ、私はここより北の方出身なのですが領主代行のサヴァン様の紹介でここの現領主に厄介になっています」
「厄介だなんて謙遜を。とても流暢ですよ」
「本当にね……素晴らしい部下をお持ちのようで」
「いえ、彼女は口下手な私に代わってよくやってくれていますので」
2人の視線と言葉が引っかかったのだが、すぐさま訂正を入れる。
どこか彼女を軽んじているような……いやそれは俺に対してもか。どうも心は読まれないと思っているようにみえる。
「そうですか……これは大変失礼を。馬の方は家にとめて行ってくれて構いませんので」
「町にはいろいろありますよ。楽しんでいってくださいな」
こちらの意図を汲んでくれたのか話を締めてくれる2人。
「いえ、お気遣いなく。それではお邪魔しました」
「失礼します」
俺たち2人は町長宅を出た。……なんというか、いかにも前領主の選んだ人だな、といった印象だった。
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