2.一人の食事
やはり水道は欲しいかな
「おおお……結構でかいじゃん、昔聞いてたのより」
何とか乗馬していくことしばらくして、ようやく見えてきた建物は俺の想像を超えていた。
うろ覚えだが、確かそんなに大きな建物じゃないとか言ってたような……。あれはじーちゃん基準だったのか。
もしかしてじーちゃん、デカくしてくれたのかな、俺のために。
……やばいな、またなきそうになるじゃねーか。
「とりあえず入ってみるか」
城の入口に馬をとめておき、中に入る。
「おおおお……中もやっぱ豪華じゃん。これ結構かかったんじゃ」
俺なんかに財産割いてる場合じゃないと思うんだが。
――いや、そうじゃないか。
これは王子達から俺への警告と、いざという時のコネのため、だろう。
余計なことはするな、なにかあったら異能で手を貸せ、とまあそんな感じかな。
それならそれでいいけどね。殺されないなら十分だ。
一通り城を見回してみたのだが、特にこれと言って不審な点はない。
プロではないので見ただけではわからないと言われればそうだが、じーちゃんのいた城にあった装置は使用人の心から聞いている。
それと同じかよく似たものなら見て判断できると踏んだのだがそんなものはなかった。
そして、人が隠れているようなこともなかった。……心を無にされていたらもうそれはしょうがない。
「さて、どうしよう。俺に家事スキルはないぞ」
なんたってじーちゃんが甘やかしたからな。おかげで勉強はできるぞ!
「……とりあえず何かあるか見てみるか」
そのまま食べられるもの、次点でゆでて食べられるもの。焼きは生焼けになっても、なので今日のところは除外。
これはラッキー。焼いてあるパンと、じゃがいもがあった。パンはそのまま、じゃがいもはゆでればいいか。
幸い鍋も水も熱源もある。ゆでることも、温かい飲み物も用意できるな。
「では、いただきます」
ひとり、食事を始める。おいてあったパンと、ゆでたじゃがいも、そのゆで汁。塩気がきいていておいしい。
「……やはり食事が一人なのは寂しいな」
じーちゃんが死んでからここに来るまでの間も、向こうの使用人と同じ部屋で食事ができた。
会話がなくとも俺は嬉しかった。相手はどうだか知らないが。
「……そういえばこの城他に人が住む予定はないのか?」
一通り見回した際には個人の持ち物が運び込まれている部屋は1つもなかった。鍵がかかった部屋も。
「いやいや、城いらないじゃん。でかすぎて俺じゃ維持できないだろ」
カランカラン。
「失礼しますぅ。ぼっちゃまいらっしゃいますかー?すいません職人さんを見送ったついでに街の方で買い物をしていましてー」
遠くの方で声が聞こえる。気を抜きすぎていたのか心の声を聞き逃した、って訳じゃないか。この声は会長か?
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