1.追放もしくは厄介払い
新しい冒険の始まり、どうぞお楽しみください!
あまりに子供のころのことなので聞いた話になるが、俺の一族は俺を除いて皆死んでしまったらしい。
何でも一族の「心を読む力」を恐れた他の国々が手を組み一族の住処をすべて焼き払ったんだと。
……じゃあなんで俺が生きてるか、って?俺も知らん。
俺を偶然拾って育ててくれたじーちゃんは「この力を世のため人のために使えばきっと良い国になる」なんてこと言っていたが、そんな世界を見ることもなく先日ぽっくり逝っちまった。
だからこれからは自由に生きるつもりでいたのだが――
「はぁ?俺が一族の再興を?」
「さようでございます。あなたの育ての親であるこの国の王の遺言です。きっとこの世の中さえよくできる子だからよろしく頼む、と」
はぁ……無茶言うぜじーちゃん。俺が王になってもまた狙われて今度こそ一族滅亡じゃんか。
――それにさ、じーちゃんにだけなんだぜ。俺が心を開いていたのは。
――――――
「明日には貴方様の城の改修が終わります。今日中にここを出発してください」
――さっさと出て行ってくれ、気味が悪い小僧め!
おー、今日も盛大に聞こえてますよ心の声。
ここの人たちはじーちゃんが信頼していた古株はもちろんごくごく最近の新参でさえ俺の異能を知らされているという。
つまりこれはわざと言っているんだ。厄介払いできて清々すると。
まあ、心の中見られてるとなったら気味悪いわな、普通。じーちゃんが変わり者だっただけで。
いいんだけどね。使用人たちにも嫌われていたし、じーちゃん亡き後のこの城に俺の居場所はない。
「王子さん達に挨拶したいのだが、どうだろう」
「あいにくですが、皆所用でして。申し訳ない」
――これ以上王子の腹を探られると迷惑だ。しっしっ!
いや、やっぱりわざとだろこれ。いっそもう口に出してくれ。
「ああいや、すまない。では最後に馬を1頭貸してくれないか?」
「それでしたら既に城門前に用意させております。返却は不要ですのでどうぞお使いになってください」
――お前にしか懐かんじゃじゃ馬だ。好きにしろ。
お、これは本音か?いいねぇ、じゃ遠慮なく。
「すまない、遠慮なくいただこう。この礼はいずれまた」
「いえいえ、今まで国王のお相手ありがとうございました。ではお元気で」
――この国には迷惑かけるなよ。
「ああ、達者でな」
そうは言っても、思い返してみると本音が見えている人の中では十分会話のできる人だったな、あの人は。
「じーちゃんの大事にしていた城、ちゃんと守ってくれよな」
つい口から独り言が漏れてしまう。ただの他人が今更とやかく言うことじゃないんだが。
「さて、俺の一族の城とやらに向かいましょうかね」
馬に乗っていけばそう遠くない距離だという。いったいどんなところなのか。
その前に、俺乗馬なんて歩かせるくらいしかやったことないんだけど、昼までにつけるかな?
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