小休止.フィオーネとベルタ
中間子、というのはいろいろ思うところがあるらしい。
ホイットモー家のベルタは、自分の上に3人、下に1人、脇に2人(外腹の兄弟)、と四方を兄弟に囲まれたまさに中間子。
「ベルタ、このドレス着ない?」
お下がりで悪いんだけど、という調子で新品のドレスを渡そうとしても、決して首を縦に振らない。
「着て行くところがありません」
「今度の夜会に着て行きましょうよ!」
「似合いません」
伏し目がちに微笑み、そう言う妹が可愛くて愛しくて、フィオーネはいつも抱きしめたくなる。
ベルタの髪は、すんなりとしたさらさらの、絹糸のようなシルバーブロンド。まるで妖精のようだと思うけれど、ベルタはいつもフィオーネの髪を見ては微かに唇に力が入る。
「お姉様は、素敵です」
うっとりするように、少し寂しそうに目を伏せるベルタ。涼やかな目元も、憂いを含んだ眉も、嬉しい時にはほんのり赤らむ白い肌も、全て素晴らしいのに。
自信がなくて、諦めていて、人の良い。家族みんなに愛されているのに、気付かない。いつもどこか遠くを見ていて、掴みどころがない。
「ベルタ」
「はい?」
「貴女はわたくしの、……」
「?」
首を傾げると、さらりと落ちる真っ直ぐな髪。彼女の性格を表すような、素直で澄んだ色。
「お姉様?」
「大事な妹です」
華奢な身体は、女の力でも潰してしまいそうで、壊れ物のような危うい存在。
家族以外には分からないだろう、この娘の素晴らしさは。
ギルフォード伯爵家から、ベルタに縁談が来た。
わたくしがいたら、ベルタは気兼ねするか遠慮するかして、縁談を受けることは無いのでしょうね。
それでは、わたくしは家を出ましょう。
大事な、最愛の妹の幸せを阻まぬように。
わたくしは、外の広い世界を見てまいりましょう。
「愛する妹 ベルタへ ――――」