エピローグ
野々神社の境内で手を合わせた。
摩耶にはお願いばかりするなと言ったはずだが、俺は今、お願いばかりしている。
「何をお願いしたんですか」
優花が俺に訊ねてきた。
「そりゃあ、決まってるだろ。麻耶のことだよ。優花は?」
「わたしも同じです。今日まで麻耶が元気で幸せに過ごせたお礼と、明日からの麻耶の結婚生活が幸せになるようにですよ」
「同じだな。南野くんと麻耶は幸せになれるかな」
「きっと、大丈夫です。親バカかもしれませんけど、麻耶は優しくて愛情豊かな子ですから」
「確かに、優しい子だ。きっと南野くんとうまくやっていくな」
「麻耶はあなたに愛情をいっぱいもらいましたから愛情豊かに育ったんですよ。わたしもあなたのおかげで幸せです。麻耶が遠くにいって寂しくなりますけど、ふたりでこれからも幸せに暮らしましょう。よろしくお願いします」
「こちらこそだ。俺も優花と麻耶のおかげで幸せだよ。ところで、神様って本当にいるのかな」
野々神社を出てから振り返り鳥居を見上げて言った。
「わたしは、いると信じてますよ。だからこうしてお参りしてるんです」
「そうだな。いるよな」
「はい。これまでに辛いことや大変なことはありましたけど、何とか乗りきって今、幸せなのは、きっと神様のおかげですよ。わたしたちが前向きにさえいれば、神様はきっと手を差し伸べてくれます」




