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『あの山にはおっかねぇ怪物が居るんだ。ブラックボアを簡単に仕留めちまうんだよ、ありゃラージグリズリーなんかも目じゃ無いぞ』


何処にでもよく発生する噂だ。

目撃者は恐怖や興奮、又は仕留められなかった悔しさから大袈裟に話を広げる。


キアン・アンソニー調査員はそんな噂の調査の為に王国の南西にある村に来た。


村を担当範囲に含む管理官が集めた情報によると、どうやら"ホンモノ"がいる可能性があるらしい。

今回の任務はその山に入って生態の調査を行うというものだった。


「オークとかのオチならありがたいんだけどねぇ…」

アンソニー調査員はぼやきながら村へと馬を走らせるのだった。


---


村の入り口までたどり着くと、門番がおり簡単な確認を行なっていた。

村自体は家屋が10あるかわからない程度の小さな村だ。周囲の守りが木の柵がある程度の村にしては厳重だ。


怪物の件で多少警戒しているのだろう。


「こんにちは、山に出た魔物の件で冒険者ギルドより調査に来ましたキールです。中に入っても?」


「おぉ、そいつぁありがてぇ。どうぞどうぞお入りください」


「ありがとうございます。ちなみに村長の家はどちらに?」


「村長の家は1番奥にでさ、大きいもんですぐ分かりますよ」


「ありがとうございます」


門番は荷物の検査もしないでアンソニーを村に入れた。

よほど噂の魔物に悩まされているのだろう。すんなりと村に入ることが出来た。


非常に小さな村だが宿があるようで、そこに部屋を借り馬を預ける。


「珍しいねぇ、おっかない魔物が出たって噂が出てから客が随分と居なくなったんだが。アンタは何でこんな村に?」


部屋を借りる際に店主が話しかけてきた。

情報収集が必要なアンソニーには渡りに船だ。


「私はその魔物の調査に派遣された冒険者ギルドの職員なんです。ソウストーンの領主様から冒険者ギルドに依頼がありましてね」


「へぇ、そりゃありがたい!村長が請願書を出した甲斐があったってもんだ」


「はい、森の中に入って調査をしますので部屋は開けることが多いかと思います。勿論代金はお支払いしますので、よろしくお願いしますね」


そう言ってアンソニーは部屋を借り、そのまま村長の部屋へ向かうのだった。


---


「冒険者ギルドから調査に来ました。村長のハーデンさんはいらっしゃいますか?」


村長の家は程なくして見つかった。

玄関から声を掛けてみると中から女性の声がする。


「まぁ、ソウストーンからわざわざ来てくださったんですね。今夫を呼んできますので、中に入ってお待ちください」


出てきたのは村長の妻のようだ。

通されたリビングで待っていると、壮年の男性が現れた。


「この村の村長のケリー・ハーデンです。遠いところからお越しくださりありがとうございます」


「ソウストーンの冒険者ギルドから派遣されました。キール・ワグナーです。早速ですがお話伺っても?」


「もちろんです。噂が広まってからは山に入るのを皆怖がってしまい狩りが出来ません。どうかよろしくお願いします」


村長の話では、今から3ヶ月程前に山に入った村人が見つけたブラックボアの死骸が発端だと言う。


「私も確認しましたがそのブラックボアの死骸は異様でした。体の横に大きく広がった傷があったんです。そんな事ができる魔物はこの近隣では見た事がありません」


ブラックボアは基本的に通常の人間であれば狩るのに8人は掛かるような魔物だ。

全高は小さいものでも1.5m程、体重は700kgはある。


体長も2m以上はあり、その身体に大きく傷をつける事ができる魔物は多くはない。


「なるほど、確かにそれは尋常ではありませんね。その他にはどんな事があったんですか?」


「その日の夕方になって別の村人が顔を蒼白にして私を訪ねてきました...。何があったか聞いてみると、山で化け物を見たと言うのです」


「化け物ですか」


村長は顔を顰めて頷く。


「夕方ではっきりとは見えなかったそうなのですが、小山のような巨体が遠くに見えたと言うのです。それとブラックボアの話と紐付いて、『この山には化け物がいる』と噂になったのです」


「ふむ、となると明確に姿を見た人はいない訳ですね。貴重な情報をありがとうございました」


アンソニーはそう言うと立ち上がる。


「もうよろしいのですか?」


村長の表情は不安げだ。

アンソニーはそれを解す様に笑顔を作り、


「問題ありませんよ、私はこの手のお仕事は何度も受けていますので。今日は準備をして明日から調査に山に入ります。村人には山に入らない様に伝えてください」


そう伝えアンソニーは村長の家を出たのであった。












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