シャンプーハットって地味に売ってないよね
「あー! やっと来たデース!」
どうやらフードコートに着いたのは俺らが最後だった様で、既に皆着いて席にいた。
「デートだからってワタシの腹が黒い内はイチャイチャさせないデスヨー!」
「目じゃなくて?」
お前ただの腹黒じゃねぇか。 既にお変わりねぇよ。 性格面ではヒロイン失格だよ。 なお、主人公と同じ次元に存在している時点でヒロインを名乗れない模様。 あ、じゃあヒロイン失格もクソもねぇや。
「あれ、会長そんな上着なんて着てました?」
「……奏士が無理矢理」
「脱がせたんですか」
「着せたんだよ。 イルカショーで濡れたから」
僕もうこれくらいじゃ怒らない。 落ち着いて冷静に。 そっと地球大切断しちゃう。 せっかくだからマグマ地獄や異次元タマゴも追加しちゃおうかな。 その前に土星の円環持ってこないと。
土星のあの特徴的な円環。 あれ氷と塵の集合体みたいなもんだけど、まぁイケるっしょ。 何を持ってしてイケると判断したのか。 その謎を解き明かすために我々はジャングルの奥地へと向かった。 そのまま二度と帰らなくていいよ。
「へ〜 2人でイルカショー見てたんですか。
…………何・故・言・わ・な・かっ・た…………」
「顔怖」
後輩が血の涙を流してる件。 軽くホラーや。 取り敢えずその血の涙拭こうか。
「そんな美味しい撮影シーンに私が居ない不覚! なのでもう一度見てきて貰えませんか? なんならもう一度会長濡らしますから」
「頭いかれてんのかお前」
紅葉が風邪引くからやめなs────いやバカは風邪引かないから大丈夫か。 どっちにしろタフガイだし。 あ、紅葉ガイじゃなかった。 ガールだ。
まぁガールってGirlって書くし、ガイと読めなくもないとは言いきれないけど可能性が微レ存。 文章から自信が抜け落ちてる。 というかGirlってどう頑張ってもガイルだろ。 なんか待ち伏せしてそう。
「ほうほう二人でイルカショーデスカ……その手があったかー!」
「お前うるさいよ。 人様の迷惑だろ」
ただでさえ面子の半数が目立つ容姿してんだからさ。 俺の胃に穴空いちゃうよ。
……あ、そういやもう穴あき過ぎて胃がないんだった。 これは失敬。 胃が無いとか俺は鯉か? 屋根より高いのか?
「会長! イルカショーの感想とか出来事とかお聞かせ願います!」
「めげないねぇ君」
その時、「キュー」と腹が鳴る音がした。
「紅葉、腹減ったのか?」
「……何故ノータイムで私だと思ったのか聞きたい」
それはこれまでの日々の全てが物語ってるからじゃないでしょうか。
「…………」
「いふぁい」
ものっそい顔握られた。 俺のイケメンが歪むからやめれ。
「…………」
一方、顔を真っ赤にしてお腹を抑えてる泉ちゃんの姿が。 ふーん。
「紅葉じゃないなら誰でもいいや。 いい時間だし、飯にするか」
「……ちょっとムカつくけど、ご飯は賛成」
「ワタシも三世デース!」
「……多分、イントネーションから漢字が違う」
こんなのが3世も続いたら終わりだよ。 というか、ベル3世ってなんか響きがフルモンティみたい。 まぁこいつ度々全裸もしくは同様になるけど。 なんでだろう寒気がする。
「では皆さん。 これよりお昼ご飯にします。 各自お店でお昼を買って、席に集合にしましょう。 今なら先輩がお昼奢ってくれますよ」
「おい」
この後輩は人の財布を無尽蔵か何かだと思ってるのかしら。 一応それくらいの稼ぎはあるけど。 紅葉の食費を完全に賄えるかは分からん。
「…………席、取れますかね」
莇の一言で皆が一斉に同じ方を見る。 人で賑わっております。
学園の食堂とか普通に飲食店でもそうだけど、人って飯食った後暫くは席から退かないよな。 飯食ったらさっさと帰れ。 邪魔だから。 予約客もうすぐ来るのに全く帰らない客見るとなんとも言えない感情が湧き出てくる(作者談)
「じゃあ誰か1人が席取りしておきますか?」
「じゃあ俺がやっとく」
サッと行えるイケメンアピール!
とかじゃなく、店の列見たら並ぶ気失せたから。 それとなんかどっと疲れたから席座りたい。
「…………」
ベルが顎に手を当てて何か考えている。 何? お前何企んでんの?
「……(パンパン)」
突然、軽く手を叩いた。
「何してんの?」
「いや……何となくデス」
「はぁ?」
こいつ突然気でも狂ったか。 元から狂ってるか。
「手を叩けば従者が現れるとでも?」
「……そんな2次元あるあるみたいな」
「うーん……やっぱりそうデスよねー」
ベルがあっはっはと笑う。 まぁそれで現れたら普通に怖いわな。
「お嬢様、参上仕りました」
「うおっ!?」
「……びっくりした」
突然現れた黒服に、俺と莇を抜いた全員が目を丸くする。 何故か呼んだ本人が1番驚いてる。
「ア、アズサ……何時から居たデス?」
「最初から。 何時でも何処でもお嬢様のお傍で御守りしております」
「そ、そうデスカ……」
凄い。 ベルが若干引いてる。 ショッピングセンターでの1件からベルの近くに潜んでたのは知ってたけど、普通にめっちゃ近くに居たし、このクソ暑い中ダークスーツ暑そう。
「え、えっと……ベル先輩。 此方の方は……」
「えっと……名前をアズサっていうデス。 イギリスというか、ロリの頃からの付き合いで────」
「普通に子どもの頃って言え」
なんかロリの頃って聞くと別の感じ出るだろ。 今はロリじゃない? なんか貧乳と書いて「わたし」って読みそう。
「私はお嬢様の忠実な犬です。 この通り日本語は話せますので、ご心配なく」
「は、はぁ……どうも」
あの頼金が流れを掴めていない。 あずにゃんはこれ程の実力者か。
「其方はお嬢様のご学友の千聖様ですね? 同じく、紅葉様と泉様」
「……どうも」
「はっ、初めまして……」
紅葉はいつも通り無表情。 泉ちゃんは驚いてさっきから後ろに隠れてる。 こんな泉ちゃんも可愛い。
「そして柳奏士」
あれなんか俺だけ違くない?
「青葉、息災か」
しかも俺だけ何も無いし。 別にいいけどさ。
「ええ勿論。 平和な学生生活を楽しませております」
「そうか。 お嬢様に迷惑はかけてないだろうな」
「どちらかと言うと、お嬢様が迷惑をかけてる方ですね」
「それは良いのだ。 我々”律”はお嬢様の手となり足となり、椅子となり踏まれる事こそ史上の喜び」
「椅子と踏まれて喜ぶのは貴方だけです」
成程。 莇とあずにゃんの仲は良いようだ。 軽口叩ければ仲良し判定。
まぁ莇はSであずにゃんはMだから、不仲ってことは無いと思うよ。 莇のSが多方面なのに対してあずにゃんはベル限定のMだけど。
「ほー お2人が並ぶと姉弟……いや兄妹かな。 なんというか、絵になりますねぇ」
頼金の意見に同感。 2人とも黒髪でクール系、そして顔が良い。 性格は悪い。 単純に見た目がいいから映えるね。 見た目は良い。 見た目は。 中身はお察し。
「それではお嬢様、なんなりとご命令を」
「お、おう……アズサ、この場の全員が座れるスペースの席を取っておいてほしいデス」
「かしこまりました」
なんか最後に殺意の眼で睨まれた。 あずにゃんストレス溜まってる? 俺と一緒だね。 俺の場合その原因は君のご主人様だけど。
あずにゃんは最後に1礼すると、残りの黒服を呼んで普通に歩いて探しに行った。 なんかシュンって一瞬で消えるのかと思った。
「えー…………はい! じゃあ皆さんご飯買いに行きましょう!」
チサチサめっちゃ有能。 一瞬黒服の増員で呆気に取られてたけど即座に流れを戻した。 流石放送部。 今のところ放送部としての活動皆無だけど。 兼部設定活かせてないよ。
─────────────────────────
飯買って席を探していると、どうやら俺が最初の1人だった様で黒服以外誰も居なかった。 この空間だけ威圧感凄ぉ……
まぁあずにゃん除いて5人全員がダークスーツとグラサンのセットだし、1人は色黒ドレッドヘアーに口髭、1人は色白のガチムチとケツアゴ。 1人は全体的にひょろ長だし、1人はオールバックと黒いハーフグローブ着けてる。 なんか強そう。
そして逆に1番インパクト強いのが、最後の1人だけ顔に皺がある。 ヨボヨボのジジイって程じゃないけど、なんというか中年。 ヨーロッパ系の色白だな。 多分50くらい。 金髪だ。
その程度? って思われるかもしれんが、まだこれから。 インパクトの理由は弱そうなこと。 護衛役なのに戦闘力というか、ある程度技術を身につけてる者特有の気配が無い。
俺もそれなりに鍛えた身だからこそ胸張って言うが、偽ってるとかじゃなくて本当に弱い。 多少護身術の心得はあるみたいだけど、直接戦闘だとか銃器の扱いはど素人だ。 つまり怪しい。 これは鍵キャラだな。 こいつ次第でストーリーが進む。 今度から皺鍵と呼ぼう。
「……貴様か」
「……ご苦労さま」
明らかに敵視されていても奏士君めげない。 なぜなら世の中敵だらけだから。 大半は俺が一方的に敵としてるだけだけど、最近は紅葉やベルらと行動することが増えたからね。 殺意の視線は昔以上に浴びまくりよ。 俺だって相手がどうであれ男女が共に歩いてたら殺意沸く。 腕組んでたりしたら憤死する。
「……暑くないの?」
「気にするな。 これも仕事だ」
その割には汗凄いけど。 本人が涼しい顔してるなら良いのかな。
そういや今更だけど、前会った時はメイド服だったけど、今回はダークスーツなんだね。 メイド服は流石に暑すぎるのかね。 着た事無いから分からんけど。
「…………本当に暑くない?」
「…………本音を言えば凄く暑い。 日本の夏はどうなっているんだ」
ああとうとうあずにゃんですら限界らしい。 イギリスの夏って涼しいらしいね。 いいなぁ。 行こうとは思わないけど、その気温は羨ましい。
「……飲み物、買ってくる?」
「……貴様に仮は作りたくないが…………頂こう」
「えっと……他の人は────」
全員無言で手を挙げた。 そうかそんなに暑かったか。
「じゃ、じゃあちょっと買ってくる」
「一同を代表して、礼を言う」
……とりあえず、スポーツドリンクとなんか持ち運べる冷たいものでも買ってこよう。 熱中症マジ危険。
※ 莇を除いた皆の食事は奏士が奢りました。 男にも優しくね。
─────────────────────────
「…………」
昼食も終わって午後。 土産コーナーに居ます。
あ、さっきの黒服集団”律”の人達は俺が再び戻ると席を離れてどっか行ったから知らん。 去り際になんかめっちゃ手を振られたけど。 特にドレッドヘアー。 アイツ良い奴だな。
そういや、なんか皺鍵が最後にこっち見て微笑んでたけど、あれかな。 お忍びでベルの親類縁者か何かが来日してるとかかな。 未だにベルの実家が何してんのか知らねえけど、護衛に混じってるってことは相当デカいんだろ。 つーか娘にあんな護衛つけてる時点でヤバい気配凄い。
「ふむ…………」
でもそんなことより今はお土産選ぼう。 つっても、もう欲しいやつは既に買ってあるから、いっそコンプリートでも目指すか。 でも土産売り場の品って定期的に更新されるからなぁ。
「ソージー」
「あー?」
声がして、誰かと思って振り向く────なんてことは無く、棚のぬいぐるみを見たまま返事だけする。 だってこんな呼び方するの1人だけだし。
「お土産決まったデス?」
「悠ちゃんの分はな。 自分の分が見つからん」
「どんなのをお探しデス?」
「なんかこう……新しいの」
「……鉄砲とかデス?」
「それは今だと骨董品よ」
鉄砲で喜ぶとかわしゃ信長か。 確かに遺影に抹香投げつけたこと無いけど。 無いのかよ。 無いんだなぁ……それがし。 だから一人称独特だって。 信長の一人称なんだったんだろ。 「ノッブ」とかかな。 それは別の信長だしそっちの一人称「わし」やねん。
ちょっと待ってちょっと待って。 すんごいことに気が付いた。 「わしゃ」も「わし」も変わらないし、同じ日本人だし、男だし。 俺は実質信長じゃね? じゃあちょっと天下とってくる。
でも信長って天下一歩手前で負けるよな。 つまり信長に勝った幸村の方がいいな。 それは多分バーニングな魂の世界線ですね。 作者が今でも1人で八°トスピやってることがバレる。 相手? そんなの居たらこんな小説書かない。
「お前は決まったのか?」
「んもー 前から思ってマシタケド、『お前』じゃなくて『ベル』デス。 『ハニー』でも可」
「貴様は決まったのか?」
「おっと更に口悪くなったデス」
「いや貴様は本来相手を敬う意味が込められてたんだから口悪くないだろ」
「いやそれ過去の話で今は敵対意志が込められてるデス」
「いや俺信長だから今の話とかされても」
「さっきの話回収しなくていいデス」
なんかちょっとスッキリした。 これが綺麗で薄汚れた伏線回収か。 これが伏線だとしたら百均で売ってそう。 百均グッズで1番壊れやすいのはヨーヨーである。 ソースは作者。 今までに50個近く買って、その全てを壊している。 これはもう百均云々以前に作者が物を壊すだけでは? そこんとこどうなの作者。
作:僕は悪くない。 だって僕は悪くないんだから。
えー、どうやら作者はこの暑さで脳が壊死した様です。 残念な事だ。 本音漏れちった。
「まあハニーって呼ばれるのは後にするデス。 でもソージはちゃんと人を名前で呼ぶデス!」
「えダル」
「3文字で終わらせないで、ちゃんと呼ぶデス! ワタシの呼び名なんて2文字デスヨ!」
まぁベルフローラを略してベルな訳だし。 その略し方が合ってるかはさて置き。 外国人名の愛称って分かりにくいのよ。 ベルだけならイザベルだとかあるの知ってるけど、フローラ付いてるの知らない。 ローマ神話の花と春の女神付いてるの知らない。
「ちゃんと『愛しのベル』って呼んでくれないとシクシクおーいおいデス」
「2文字じゃなく無くなってるじゃねぇか」
「あー…………てへっ♡ 可愛くてごめんデス」
「それ便利な謝罪構文じゃねぇからな醜女」
「あなんか今世紀1酷い罵倒受けた! こんな世界一の美少女に向かって醜女とは何様デスカー!」
「だから世界一は泉ちゃんだって何度も言ってるだろ自惚れんな所詮第2位。 1位と2位はどれも絶対的な壁があるの知らねぇのか」
「えーなんかマジギレで怒られたデス。 これ悪いのワタシデスカ?」
「お2人共痴話喧嘩してるとこ入りますけど、土産屋でそんなイチャイチャしてたら目立ちますよ」
「おい後輩。 お前は頭は良くても眼は良かった筈だが?」
「あーもう先輩黙ってください。 素直に名前で呼んであげたらいいじゃないですかもう。 最初から名前呼びって聞きましたよ」
「いいか。 ベルみたいな奴は1度付け上がると天井無しになる。 そういう奴は大抵デカい失敗して甚大な被害をもたらすんだ。 そうならないように、心優しい俺はあえてだな」
「そうですか。 で、本音は?」
「名前呼ぶと一々嬉しそうな顔するのがクソムカつくというかウザイからお前呼びしてる」
「だ、そうですベル先輩。 これからはゴミを見る目で見てあげたら名前で呼んでくれるそうです」
「言ってないんだけど。 本当に頭悪そう」
「えー でもそんな目を向けたらソージが喜んじゃうデス」
「お前は俺をなんだと思ってんの?」
「ドM」
「OK分かったお前沈める」
「そんな沈めるだなんて……そんなエッチなことこんな公衆の場で言うなんてソージはSなんだからっ♡」
「えぇ……この娘怖ぁ……」
沈めるでエッチってどんな想像したんだろうこのピンクは。 ある程度候補はあるけどどれも嫌な予感しかしないから俺は絶対言わない。 この件には関わらんとこ。 閉店だ閉店。 閉店ガラガラヘビ。
「ちなみに沈めるって何にですか?」
しかし後輩が広げやがった。 閉じたシャッターぶち破るとかこの強盗強すぎる。
「それは愛デス」
あれ、意外とまともだった。 普段の言動からそっち方面だと勘違いしてしまったか。
「あと氵○液だとか〜」
いややっぱりまともじゃなかった。 いやなんかこっちの方が安心感あるの怖いな。 いつものベルって感じがしてなんか落ち着く。
「でもその場合、先輩そんなに”射○”せますかね」
そして後輩が全てを俺で賄おうとしてて怖い。 死ぬ。
「うーん……いっそ、ワタシのdadに薬を送ってもらうデス」
え、解決出来る薬あんの? そんな2次元エロみたいな精力剤が。 どっちにしろやらねぇけど。
「今更ですけど、ベル先輩のご実家って何されてるんですか?」
「あれ、言ってなかったデス? ワタシの家……というより、dadは製薬会社の社長デス」
あ、本当にデカいところのお嬢様だったこのアホ金髪。 そうか……突然変異な脳異常か。
「具体的にどんな薬作ってるんですか?」
「えーと、健康? の薬とか作ってるデス」
そりゃ製薬会社はどこもそうでしょうよ。
「確か……そうそう、健康食品系デス」
健康食品って字面がもう胡散臭く感じるのは俺だけでしょうか。 健康サプリも同様。 健康○○が全て胡散臭く感じる。
「で、その過程というか別枠で性に関する薬も作ってるデス」
おっと胡散臭さが字面から一気に会社にジョブチェンジしたぞ。 その会社傘のマークとかシンボルにしてない?
「で、今作ってるのが超強力精力剤デス。 モデルは2次元」
多分それが認証されたら今後のAV技術が進歩から飛躍に変わると思うけど凄い副作用ありそう。 使用後の疲労感とか、急激な精力増強による栄養不足とか。 1番可能性高いのは理性の崩壊だよねやっぱり。
「何回戦でも可能にする事はクリアしたらしいデス。 でも、効果まで数時間必要な事と、効果が切れるか本人の体力が限界迎えるまで止まらないのが課題だってこの前手紙に書いてあったデス」
「危ねぇなその会社も企画も何もかも」
それほぼ危険ドラッグの域じゃん。 つーかその試験ってどこでどうやってんの? なんか怖いわ。 「実際に使ってヤってんのかな」よりも謎の恐怖が勝る。 こいつ娘が娘なら親も親だな。
「そうなんですか〜 ちょっと後で詳しいお話聞かせてもらっていいですか?」
おっとそれはマズイ。 塩素系と酸性の洗剤混ぜちゃアカンのと同じ様に、頼金と道具は混ぜちゃアカン。 赤ちゃんにミサイルボタン与えるなんてもんじゃない。 こいつは扱い方を確実に理解してる上で使う。 絶対阻止しよ。
「……あれ、そういや何の話してましたっけ」
「えーと……あれ、何の話してたデス?」
よかったバカで。 すぐ忘れる奇跡のアホで助かった。 ダチョウと呼ぼう。 オールマイティじゃねぇか。
「土産の話じゃね?」
「あーそれデス! ソージは結局何にするデス?」
「それが決まらんのよね」
あれだな。 特に欲しい物がある訳じゃないのにこういう所来たらなんか買わなきゃって気分になる。
「そんな時はとりあえず限定クッキー買っとけば万事解決って聞きますね」
「いやここの限定クッキーは全部買って自分で複製できたから今はいい」
「この人無駄に器用だな……」
しかしどんな限定クッキー、限定ケーキ、限定マドレーヌ……限定品は同じ味のものを作っても、決して同じ味にはならない不思議。 包装とか買った場所の思い出補正かね。 難儀だ。
「まぁ先輩が悩んでいようがいまいが、私はただ写真撮るだけなんでどうぞ頑張ってください。 という訳ではい」
「は?」
俺のカゴに水族館仕様のメモ帳を入れる頼金。 は?
「なにこれ。 メモ帳は間に合ってるぞ」
家に予備が後7冊残ってる。 今使ってるのが4代目。 メモ帳ってかネタ帳だけど。
「いや私のですけど」
「俺のカゴに入れてますけど」
「気にしないでくださいって。 これくらいどうってことないですよ」
「なんでお前が心広い感じ出してんの?」
買うの俺だよ? いや買わねぇけど。
「…………パパ〜 買って〜」
「おいやめろ」
「あ! じゃあワタシも! パパ〜 ワタシも欲しい〜 ○ィトンのバッグとか買って〜」
「買うものがガチすぎる」
それにお前言っちゃあれかもだけど、金髪だから妙に八°八°活が似合っちゃうのよ。 見た目がギャルギャルしてるから。
「まぁ冗談です。 理事長からお土産費用も預かってるので」
「なんだこいつ」
「それに、高級ブランドってよく分からないデース」
それでいいのか社長令嬢。
「という訳で、全部まとめて会計するんで先輩持っててくれます?」
「まぁそれくらいなら良いけど」
「ではでは〜」
そう言って頼金は離れていった。 物凄く怖かった。 何あの子、精神攻撃系?
「じゃあワタシももうちょっと見て回るデス」
ベルも手を振りながら雑踏に紛れて消えた。
「あ、ソージ」
と思ったら戻ってきた。しぶといな。
「何」
すると、ベルはコソッと耳打ちしてきた。 ちょっとビクビクしちゃう。
「今夜を楽しみにしてるデスヨ♥」
それだけ言うと、再びどこかへ行った。
……何あれ怖い。 とりあえず今夜は部屋の全ての鍵かけて物で封鎖して寝よう。 風呂トイレも気をつけなきゃ。 それいつも通りなんだよなぁ……
「…………」
あ、最初からずっと隣でぬいぐるみ選びに難航してる紅葉はスルーします。 気付かなかったってことで。
「…………」
ちなみに、今シロワニかジンベイザメかで迷ってる。 それそんなに迷う差か?
「……奏士はどっちがいいと思う?」
話しかけられたけど俺は気付かなかった振りを続行します。
「……奏士?」
続行します。
「……(ゴッ)」
「ゴバァッ」
横っ腹どつかれた。 なんか左から右へと貫通した感じするんだけど。
「……無視はダメ」
「だからって横っ腹に拳ぶちかますか普通」
「……ちょっと触れただけ」
「触れてこれ?」
君悪いこと言わないからその力と技術で女子格闘の頂点立っちゃいなよ。 多分3日後くらいには絶対王者になれるよ。
「……私の拳は時速55km」
「速度パタスモンキーかよ」
とある動画投稿者によって一躍有名となったサル。 動物好きにとってはメジャーだけど、やっぱり知ってるものが有名になるってのはいい。
でもなんかあまり知られてないって付属がすごい価値あるからちょっと惜しい。
「で、なんだ」
「……どっちがいいと思う?」
まぁだよね。
「……ジンベイザメとシロワニのぬいぐるみで迷ってる」
「じゃあコイントスで決めれば?」
「……真剣に」
ダルっ。
「分かったから足を踏むな」
おまんサンダルじゃけん、靴底固くて足の甲うずくわ。 これが方言として正しいのかは不明なので怒らないでね広島の人。
「ちょっと交互に持ってみろ。 こう、ギュッて」
「……こう?」
紅葉がジンベイザメのデカぬいぐるみを胸に抱く。 なんかすんごくメルヘンというかファンシー。
「次、そのシロワニ」
「……ん」
シロワニもぎゅっと抱く。 ふむふむへーへーそーなんだー
「よし分かった。 シロワニ」
「……こっち?」
先行理由はシロワニの方が人気らしいから。 ジンベイザメも好きだけどね。 人気品はある内に買っておくが吉。
「……(ムフーッ)」
「……気に入ったのか?」
「……ん」
それは何より。 俺なんもしてねぇけど。
「じゃあカゴ入れるか?」
「……持ってる」
「さいですか」
「……♪」
お目当ての物が見つかって上機嫌の紅葉。 何とかやり過ごした。 俺の内臓と引き換えに。 これさっきの衝撃でぐちゃぐちゃになってたりしない? ホラーやぞ主人公がこんな中途半端な死に方するのとか。 俺別にα版使ってるからライフ99個あるとかそんな設定無いし。
俺も自分の探そ。 店内をフラフラ〜っとしてればなんか見つかるやろ。
「…………」
おめでとう! お土産は見つかってないけど泉ちゃんは見つかったよ! それそんな盛大に報告する程か?
「…………」
なんか泉ちゃんがぼーっとしてる。 そんな姿を写真に収めたい。 頼金ェ! お前の出番だぞ!
そうじは なかまをよんだ!
しかしだれもこなかった!
まぁどうせそこら辺に潜んで盗撮してんだろ。 どっちにしろ、こうも人が多いと頼金の気配を探るのは至難の業だし。
「…………」
どうしよう。 声とかかけた方がいいのかしら。 あたし年頃の娘の対応が分からないわ! じゃあまずそこおネエ帰ろうか。 時々出てくるこのおネエは一体誰なんだろうか。
「おいそこのチキン」
声がして振り向くと後ろの棚────のその奥から頼金が現れた。 ほぼ幽霊じゃん。
「泉ちゃんが悩んでるんだから早く声掛けろ。 そんなことも出来ないのかヘタレめ」
「口悪ぅ……でも泉ちゃんも年頃の娘だし、大人が手出ししていい問題じゃないことってあるじゃん」
「そういうのいいから早く行って解決してきてください。
原因アンタですから」
「俺?」
「アンタが会長やベル先輩にばっか構ってるから泉ちゃんがしょんぼりしてるんですよ。 多分。 きっと。 恐らく」
「自信ないのによくそこまで言えたな」
「黙らっしゃい! いいから泉ちゃんと思い出作ってきなさい! このヘタレチキン略してタレチキが!」
「略して美味しくなってんだけど」
「はよ行け」
「えぇ……」
後輩に脅迫された。 先輩に容赦ないなこの後輩。 泣きそう。
「……あー……うん……あ……」
泉ちゃんに近付いたは良いけど、俺よく考えなくても人見知りだった。 自分から話しかけるのって難しいね。
「泉ちゃん」
「ふひゃっ!?」
ビクッてめっちゃ驚いてる。 泉ちゃんめっちゃ驚いて胸に手を当ててる。 心臓飛び出た? 出た?
「えっと……今暇?」
「今、ですか? はい、時間あります」
「えっとね……さっき頼金が
「やっべ途中写真撮り忘れちった。 先輩誰か誘ってもう1回館内回ってくれません? 先輩暇ですか暇ですよね暇じゃなくても暇になれ」
って言っててな。 それで泉ちゃんはどうかと」
「わ、私ですか? で、でも私なんかよりも紅葉さんやベルさんの方が写真写り良いですし……」
「いんや、あの二人は今忙しいし、何より泉ちゃんとは今日1度も一緒に回ってない。 俺個人的に泉ちゃんと回りたいと思ったんだけど……無理そう?」
我ながらよくもまぁこんなにポンポンと吐き気するセリフが出てくると思う。 数多のエロゲーギャルゲーをやり、ラブコメ本を読み、アニメを観、そしてラブコメを書いている俺の引き出しがこんなところで役に立つとは。 役に立つ機会ないと思ってたのに。
「わ、私で良ければ……奏士さんの頼みですし」
よーし流石泉ちゃん。 良く言えば優しい、悪く言えばチョロい。 これがお兄ちゃんパワーよ。
「あ、行く前にお土産買ってく? それとも後でにする?」
「えっと……で、では後ほどで」
「了解。 チケットはまだ持ってる?」
「は、はいここに」
「それあればもう出ちゃった今でも再入場できるから。 じゃあ行くか」
「お、お願いします(?)」
お願いしますって何? とりあえず泉ちゃんと館内回る旨を伝えておかないと。
─────────────────────────
「わぁ……綺麗、です」
「だねー」
純粋な目でキラキラと水槽を眺める泉ちゃん。 そして少しだけ後ろからそれを眺める俺。 ああ違います誘拐とかそんなんじゃないです。 仲のいい兄妹です。 血も戸籍上も繋がり無いけど兄妹です。
あ、じゃあ若妻って説明した方が早いかな。 ああいや違います俺ロリコンだけどロリコンじゃないです。
「奏士、さん……あっちも見て良いですか?」
「ん、ああいいよ。 どこ?」
「あ、あっちです」
泉ちゃんが先行し、俺が後ろからついて行く。 前見ないと危ないよ。
「〜でさ〜ww」
「え〜マジ〜?」
「きゃっ」
予想通りというかご都合というか、よそ見する泉ちゃんと接触寸前のギャル集団。
「ほら、危ないよ」
素早く丁寧に泉ちゃんを回収。 あっぶね。
「ダメよ人多いところでよそ見しちゃ」
「あ、えあ……はい」
顔真っ赤で硬直する泉ちゃん。 さては俺の眼が邪眼だと知ってしまったか……
「怪我無い? 」
「はっはい! 怪我ありません!」
泉ちゃんがなんか軍隊っぽくなっちゃった。
……あーなるほどね。 回収する時に抱き寄せる感じでやったから、泉ちゃんの脳回路がオーバーヒートしてるのか。 あっつ。
「ほら、危ないから手ぇ出して」
「────────はっ!」
泉ちゃん今意識飛んでた? 謎の間があったけど。
「えっと……し、失礼します」
泉ちゃんがそっと伸ばす手を掴む。 はぐれたりしたら危ないし俺が泉パパと悠ちゃんに殺されちゃう。 まぁその前に腹切るけど。
「っ!」
手を握った瞬間、真っ赤だった泉ちゃんの顔が赤超えてもう何色なのか分からんくらい赤くなる。 それ身体的に大丈夫なの?
「……大丈夫?」
「だだだ大丈夫ですっ!」
これは大丈夫じゃなさそうですね。 カチコチだし焦点合ってるのか不安だし。
「……本当に大丈夫?」
「らいしょうぶれすっ!」
本当に大丈夫じゃなさそう。
─────────────────────────
「あ、あれペンギンです」
「ん、あれね」
「わぁ……可愛いです」
「ペンギンか……」
可愛い顔して割と残酷と言える生態だったりするよね。 でも可愛い。 ペンギンも泉ちゃんも。
「あそこのペンギン、なんだか紅葉さんみたいですね」
泉ちゃんが指さした方を見ると、餌を頬張ってる雌ペンギンが。
「じゃああそこの岩陰から小さな子どもをじっと見てるのは莇か……ペンギンでも末恐ろしいな」
「あ、あの岩の上のペンギンは奏士さんみたいです」
「じゃあ後ろに居る2羽は泉ちゃんと────なんか全力で攻撃して来てるからたぶん柚希だな」
「あ、あはは……あ、あそこから奏士さんペンギンに走って抱き着こうとしてるのはベルさんみたいですね」
「見事に揃ったもんだなぁ……」
ところで岩の上にいるペンギンを俺だと思った理由を聞きたいんだけど。 ポッツーンと突っ立ってるからじゃないよね。
「あっちには何があるんですか?」
「あっちは────」
─────────────────────────
「……戻ってきちゃいました」
「全員待ってるだろうし、最後にお土産買って帰ろうか」
頼金に車の鍵渡してあるから熱中症でバタンキューは無いと思うけど、エアコン使いすぎるとバッテリーがお釈迦になっちゃうしそろそろいい時間だし。
「……そうか、頼金居ないのか」
金預かってる頼金が居ないから俺が払うのか。 まいっか。
「泉ちゃん、何か欲しいのがあったら買ってあげるよ。 家族分含めて」
「えぇ? いえそこまでは悪いですよ」
「いーのいーの。 どうせ金は悠ちゃんから出るし、ここは兄上におまかせあれ」
泉ちゃんならお兄様って呼んでもいいよ。 お兄・お兄ちゃんは限定品だから別。 兄・兄上・兄ぃなら良し!
「え、えっと……あ、あれをやってみたいです」
泉ちゃんが指さした方にはプリクラ見たいなブースが。 あーあれね。 水族館限定で撮れる記念撮影みたいなやつ。 俺も1人でやったことある。 涙は見せない。
「ん〜」
写真かぁ……たぶん一緒に撮る前提だろう。 写真かぁ……シャーペンの芯を略すと? シャー芯かぁ…… 頼金千聖は? あれは写真家じゃなくてただのゲスい盗撮パパラッチだ。
「まぁうん。 記念だし、撮ろうか」
「あ、ありがとうございます」
泉ちゃんにっこにこ。 やーん最高ランクのロイヤルタルト超えちゃってる。 あれは微笑みだ。 つーかあれの美点は顔じゃなくて美脚だろ。
『3・2・1』
変身! ってなるわけでもなく、普通に撮る。 俺めっちゃ頑張った。 動かないようにめっちゃしがみついた。 褒めろ。 俺を褒めろ。 凄いね君ィ〜
「はい、泉ちゃん」
「ありがとうございます……奏士さんも1枚要りますか?」
「俺はいいや。 俺遠出した時は写真撮らないタイプだから」
まぁ飯とかの写真は撮っちゃうんだけどね。 あとアキバという実家とか。
「……ふふっ」
車に戻る途中、泉ちゃんがニコニコやってんほんまカワユス。 ギリギリ尊死しなかった俺をもっと褒めろ。 もう教科書に載るレベルの偉業だろ。 家庭科の教科書に載るべき。 何故家庭科……
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「ふぃ〜」
夜 別荘に帰った俺は風呂で寛ぐ。 疲れが湯に溶けて消える様だ……そしてまた疲れるんだろうなぁ。
ベルが言ってた「今夜をお楽しみに」の一言。 大丈夫部屋に鍵かけたし洗面所のドアは封鎖してある。 風呂場の扉にもつっかえで開かないようにしてある。
でもこれも突破されるんだろうなぁ……こんな自信持ちたくなかった。
「……スケキヨー」
もうやけくそになって浴槽の中で犬神っちゃう。 うわあっつ! 風呂の湯意外とあっつ! 顔くっそ熱!
「し、失礼しま────すっ!?!!!?」
風呂の戸が開く音と共に泉ちゃんの声が。 んもう泉ちゃん俺がまだ風呂入ってる途中でしょうが。
……あ、今俺くそみたいな格好じゃん。 風呂入ろうと思って戸を開けたら湯から生える両足とちんぶらりんってトラウマもんだな。 失敬失敬。
「よっと……俺入ってまーす」
「あわわわわわわわわわわわわわ……」
「あーだめだ固まってる」
顔を真っ赤にして停止する泉ちゃん。 タオル落としてるって。 ちゃんと身体に巻いて巻いて。 泉ちゃんのサービスシーンは見せない。 俺も見てないからセーフ。
「んもー 何やってるデスカソージ」
「お前が言うなっ」
「ふっふっふ……甘ホギャーっ!!」
俺の桶石鹸ボトルの連投をモロに食らって撃沈する全裸のベル。 俺がトラウマできちゃうよ。
「……何してるの」
「なぜお前もいる」
そして1人だけタオルで隠して現れた紅葉。 俺もタオルを腰に巻く。 もう見られてるから巻かなくていいかもしんない。 こうして羞恥心は失われていく。 これもう投げやりだろ。
「……ベルに誘われてお風呂入りに来た」
「そのクソアマ足元で撃沈してるから連れて帰れ」
「……生きてる?」
「殺しはしない」
紅葉がしゃがんでベルをツンツンする。 生きてるって。 あと乳を突くな。
「はっ! 何するデスカソージ!」
「こっちのセリフだ。 まずお前どうやって扉開けた」
「それはこう……クレハの力でグイッと」
「怖ぁ……」
もう鍵とか意味ないじゃん。 俺の安らぎ頂戴。
「……泉は大丈夫なの?」
「暫く再起不能だと思うよ。 多分」
男の男。 奏士くんの奏士君見ちゃったからね。 泉ちゃんに見せちゃったからには責任取って嫁に貰おう。
「帰れ」
「NO! ちゃんとした目的があってここに居るデース!」
「いや目的とかどうでもいいから帰れ。 もしくは俺が出てく」
「おっとそうはさせないデス。 クレハ!」
「……分かった」
ベルの合図で紅葉が捕まえようと向かってくる。 出口はベルが封鎖、紅葉はタオルを抑えているから片腕だが避けて流すので精一杯。 泉ちゃんは戦闘不能。 俺、風呂入ってたんだよね?
「……面倒だから逃げない」
「いや逃げるわ」
段差や引っかかっりを利用して風呂場の隅の壁に張り付く。 片腕ではここまでこれまい。
「……ALS0K?」
ああ確かにそうだわ。 今の俺めっちゃ吉田。
「コラー! 逃げないで降りてくるデース!」
「お前らが風呂から出てったら降りる」
「……下から見えそう」
「見んなよ」
「あっ……」
股間のタオルが空気読んで静かに落下。 俺の俺ちゃんぶらぶらりん。
「……降りてきた」
タオルを回収して腰に巻く。 ふぅ……
「何見とんねん」
「いや今のをなかったことにするのは難しいデス」
「お前はまずタオル巻け」
「ワタシの胸が収まるサイズのタオルが無いんデスヨー」
「…………」
紅葉が何故か俺を向かってゴミを見る目を向けてきます。 ベルのサイズに嫉妬するのはお門違いだ。 規格外に嫉妬しても意味ないからな。
「……ぽっ♡」
「なぜ頬を赤らめる」
「ソージの亀さん……ぽっ」
「紅葉、こいつの顔殴ったら記憶って飛ぶかな」
「……奏士の首が飛びそう」
でも今がチャンスだと思うんだよね。 今なら風呂ってことでプライバシーの配慮なのか、あずにゃんらの気配が無いし。
「ほらほら、ソージは椅子に座って座って。 イズミー? そろそろ目覚めるデース」
「…………はっ」
「座らん。 出る」
「んもー クレハー」
「……大人しくする」
「技決めんな」
見事に腕を取られて椅子まで連行される。 紅葉はまず男と風呂に入ってるって事実を受け止めてはよ出てけ。
「はーい、1名様天国へご案なーい」
何? ベルって死神だったの? 俺が天国に行けるとは……暇そうだから地獄で頼む。
「まずはシャワーで軽く身体を流して……ボディーソープをおっぱいに……」
「……それは18禁になるからダメ」
「え〜 ワタシは今すぐ18禁になってもいいデスよー というかこの作品登場人物全員年齢不詳なんだから18禁とか「おい黙れ」」
それ以上はいけない。 この作品とか言っていいのは俺だけだ。 ベルが言っていいセリフじゃない。
「じゃあ大人しくボディータオルに着けるデス……」
最初からそうしてくんない? とは声に出さない優しさ。 俺ってば聖母以上に優しいじゃん。
「はいクレハ。 これでソージをやっておしまい!」
えなにされんの怖い。 このドロンジョ様怖い。 ちょっとお助けメカ頂戴よ。 骨あげるから。
「……こう?」
普通に背中を擦り始めた。 わしゃわしゃって。 何? これ風呂奉仕されてる? 俺今恐怖でビクビクドキドキ。
「……力加減は大丈夫?」
「ん……大丈夫」
元の力が強いから、男女の違いでも丁度いいくらいの力加減。 人に身体洗われるなんてそんな展開漫画に活かせそうとか思った。 これちゃんと活かせるかな……
「……痒い部分はある?」
「んー大丈夫」
「……ん」
そのまま、背中、腰、腕ときで次は問題の前。 俺の俺とか俺の大胸筋とか。
「……こっち向いて」
「いや前は自分でやるから」
「……気にしなくていい。 奏士のも男の子のも見慣れてるから」
「たぶん2次元って意味で言ってんだろうけど、俺が問題だから。 最終ラインの問題だから」
「……ごちゃごちゃうるさい」
「おい離せ。 俺のタオルから手を離せ」
「……ベルも居るから問題無い」
「それがより問題ってか泉ちゃんめっちゃ見てるじゃん。 目を手で覆ってるけどめっちゃ見てるじゃん」
「……泉はむっつりだから」
「むむむ、むっつりじゃないです」
顔真っ赤で否定する泉ちゃん。 でも多分この場の全員がそう思ってるよ。
「……しょうがない。 下は奏士に任せる。 上は私がやる」
「ぐっ……それが妥協ラインか」
二兎を追って全滅はシャレにならんし、これは受け入れざるを得ないのか。
「良いだろう」
「……じゃあ再開」
ゴシゴシと泡だらけのタオルで胸板を擦られる。 絶対にしたは見ない。 だって紅葉タオル巻いてないもん。 隠してるだけで巻いてないもん。 万一視界に入ったら俺は何されるかわからんから万一がないようにしないと。
「……乳首大きくならない」
「お前は何しとんのじゃ」
さっきからやけにじっと見てると思ったら。 そんな状況でなるかそんなん。
「……下もテント張らない」
「お前は何しに来たんだよ」
どっちにしろ張らないし、この状況で張ったら俺は死ぬ。 死ぬったら死ぬ。
「……終わった。 はいじゃあこれでいいな。 終わったなら帰れ」
下半身を洗ってシャワーで泡流しながらしっしと手で促すが、誰一人としてそれに従うもの無し。 泣ける。
「次は頭デース。 シャワー貸してクダサーイ」
貸す前にひったくられた。 貸すとは一体。
「はいかけマース」
「うわっぷ」
髪を濡らされて濡れ鼠。 濡らす過程で手櫛も加えられた。
「シャンプーしていきマース。 はーいシャワシャワ〜」
シャカシャカシャカと泡立つシャンプー。 垂れて目に染みるシャンプー。 悶え苦しむ俺。
「どこか痒いところあるデスカー?」
「……! ……!」
「んー……目? 眼球は洗えないデース」
「ー! ー!」
「あの……これ多分違うこと言ってます」
「……目に染みてる」
「おっと! シャワーで少し流すデ────うおっ!?」
目が開けられない以上音で察するしかないが、ベルが蛇口を捻った瞬間「ブシャァァァァァッ!」って音がしたから多分水か湯が暴発した。
「うー……ビショビショデース」
「で、でもお風呂で助かりました……」
「……タオル、透けてる」
何が起こったのかマジでわからんねんけど。 声から察するに俺は今目が見えなくて助かった。
「……奏士はアンラッキースケベ体質」
「どうでもいいけど早く泡流しちゃくれねぇかな」
俺今めっちゃ染みてるの我慢してる。 早く流せこの泡。
「じゃあ続けるデスヨー シャワシャワ〜」
再びベルの手が動く。 人に身体のあれこれ任せるって凄い怖い。 次何されんのか分からんのが怖い。
「ソージって男の子にしては髪長いデース」
「ん、ああ切る時間面倒くさくて渋ったらこうなった。 あとは最低限の視界は確保して毛先整えてるから大丈夫」
「これ自分で切ってたデスカ……」
「……男の子の髪って、もうちょっとボサボサなイメージだけど綺麗」
「ちゃんと手入れしてりゃ綺麗だろ。 つーかお前がそれを言うか」
サラサラな輝く銀髪の持ち主たる紅葉がそれを言うのか。
まぁ学園の生徒は良くも悪くも金持ちだらけだからな。 見た目の手入れにも金かけてるやつばっかだから、だいたい整ってる。 普通に一般学校行くと割と平均男子高校生っぽい人多いぞ。
「シャワシャワ〜」
やはり長い髪に関しては俺以上に扱い慣れてるベル。 的確且つ丁寧に洗ってケアしていく。
「泡流すデスヨー」
シャワーで流されて、漸く目に入ったシャンプーも流された。 なんでさっきスルーされたんだろう……
「終わった? 終わったな。じゃあ俺上がるから」
「いやいや、まだ次が残ってるデスヨ」
「いやいや。 俺もう十分風呂入ったから」
「んもー まーだワガママ言うなんて悪い子デスねー」
ウッザ。
「じゃあソージは部屋で待っててクダサーイ。 ワタシ達もお風呂入ってから向かうデース」
純粋に嫌すぎるから鍵かけて内側から全力で封鎖しよう。
「ちゃんと鍵かけないで待ってるデスヨー」
……鍵はかけずに封鎖しよう。
─────────────────────────
「…………」
そろそろだ。 そろそろ帰ってくる。
「Heyソージ! そこにいるデスね? クレハ、GO!」
「ごふぁっ!」
扉越しに衝撃が来た。 本当に紅葉ちゃん何者……
「さぁ最後のイベント……ヒーリングタイムデース! クレハ! イズミ! ソージをモミモミしやおやるデース!」
「……だから、大人しく」
「し、失礼します」
「はっ、離せ! 嫌だ! 俺は今日ゆっくり寝るあーっ!」
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朝目覚めたらクソ暑い
冷房入れ忘れたとか、夏の陽気とか、そんなんじゃなく普通にクソ暑い。 夏に重政と寝た時より暑い。 猫カイロは冬にこそ真価を発揮する
「……すー」
「スピー」
「すぅ……すぅ……」
暑い
そりゃ暑い。右はベル、左を紅葉、前を泉ちゃん。 そして背面にマットレスが包囲していた。四天王最強のマットレスに後ろを取られるとは不覚。 まぁ俺敷布団派だからマットレスメタな訳だけど。 ベッドはどうも落ち着かん。
そして全体的に柔らかい。 なんか怖い。 動けん! 助けて重政。
両腕を抱き枕にされ、泉ちゃんが上に乗っかってうつ伏せで寝ているから動けん。 そして暑い。 熱中症と脱水症状で倒れちゃうよ。
みんな、夏場は水分摂ろうね。 寝起きは口の中がアレだからうがい歯磨き舌磨きの後で水分を摂ろう。そして電気代云々とかガン無視で涼しくしよう。電気代と入院費比べたらそんなの気にならないぞ! 病院のベッドって割と寝にくいし。
今何時だと思ってスマホを取ろうと手を伸ばしてみる。
「…………」
「……ん〜」
「んふふ……」
格闘時間10秒。 モゾモゾ試してみるが動かない。 抱き枕潰れちゃうよ。 血が止まっちゃう。 このまま両腕壊死したら俺は今後ボタニカルアームで生活することになっちゃう。 シャンプーかよ。 正確にはメカニカルな。 デウス・エクス・マキナの方がカッコよくね? でもそれだとなんか俺が操られてる感じするな。
スマホが取れないので念で引き寄せる事にした。 来い! ハイテクゲーム機よ!
「…………」
まぁ、無理なんですけどね。 この作品そんなファンタジー要素無いし。 呪いとかは有るけど。 我が家は蔵の中身が曰く付き。 俺一人暮らしだったけど、どんな時も、どんな時も、一人の気がしないぜ! 普通に物音とか足音とかするしね。 常に大家族。 最近はしなくなったけど。
腕は動かず、念も使えない。 過去に水見式とかやったけど無理だったし。
仕方ないので高速移動術の応用、高速拘束抗即を発動。 名前うっさ。 普通にアレだ。 あのー忍者が回避する為のやつ。
そう! カワセミの術だ。 鳥になるのかな? じゃあ川上の術。 カワセミに引っ張られてるな。 正確には空蝉ね。 川上の術ってなんだし。 AGCに聞いてみるか。ガラス作ってる会社に聞いてどうする。
というか、これ空蝉っていうか最早瞬間移動に近いな。
そういや、瞬間移動って実際にやると、物質を粒子に分解、予め移動先に目印作っておいて、そこまで高速で移動or物質構成情報を移動。 移動先で再構築って流れらしい。 じゃあこれからクアンタム・シフトって呼ぼう。 カッコイイ。
厨二病とかじゃないけど、やっぱり名前がカタカナだったりするとカッコイイ。 でも安易なカタカナ化は認めない。 カッコイイ呼び方と意味があってこそのカタカナだと思うから。
改名 《クアンタム・シフト》を使って一瞬で抜ける。 なら初めからやれやと思った人はそういうもんだと分かれ。 これ疲れるんよ。
スマホをタップして時間を確認すれば、まだ6時ちょっと。 俺にしてはだいぶ寝てたが、今は夏休みだ。 俺も流石にもう少しゆっくりしてる。
しかしベッドは不法滞在者によって選挙されてしまった。 どうしよう。 やはり母国もといお部屋に強制送還か。 寝てる人って重いんだよなぁ……泉ちゃんはまだしも、紅葉とベルは重い。 俺の筋肉なんのため? なんかカッコイイから鍛えてるだけ〜
そうだ、3DSやろ。 ヒーローバ`ノクで遊ぼう。 なんか今謎に冷静だし、海へとダイブでもいいかもしれない。 冷静さを欠いてますねこれは。
昨日の夜は怖かった……揉まれて踏まれて引っ張られて。 全身まさぐられた俺はもうお嫁に行けない。
でも不思議と少しだけ身体が軽い。 疲れて疲労回復とはこれ如何に。
とりあえず心の中で礼だけしておこう。 その後で望まぬことをしてくれた首謀者2人にはお礼参りしよう。 泉ちゃんは問答無用で無罪。
あー、今日で海とはおさらばか。 そんな遠くには行かねぇけど。 実家に帰らせて頂きます。 じゃあちょっとアキバ行くわ。 実家ってそういう意味じゃないと思う。
でもそろそろ夏コミだし、アキバは行こう。 前入りして観光するか、終わってから滞在延期して観光するか。 はたまた両方か。
どっちにしろ紅葉とベルに見つからんように出よ。 見つかったら連れてけ言いそうだし。
「すー」
「すぴー すぴー」
「すぅ……すぅ……」
呑気に寝てやがる。 なんかムカつくな。 でも泉ちゃんの寝顔は可愛い。 つまり泉ちゃんのみ無罪。
恨み辛みは今日はもういいか。 なんかする気力も無いし。 家帰って重政に癒してもらおう。 カメラ越しに見てた感じ、熱中症とか急病って訳でもなさそうだから安心した。 早くケモノを……アニマルセラピーを…… そろそろ限界。
さーて、こいつらが寝てる内に朝のことやっちゃうか。
そうと決まればググッと背伸びして骨を鳴らす。 あ……ちょっと腰が。
ズキズキ痛む腰を押えながら、3人に肌掛けをかけて部屋を出た。 とりあえず小さな復讐としてピーマン入れてやろうかな。
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「帰ったぞ重政ー!」
「ニャーっ!!(なんだてめぇーっ!)」
疲れた! 寝る! おやすみ!




