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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
8章ってことは、これが8番目ってことなんですよ。 つまり前に7つあるという意味
90/133

猫は遠回しって聞くけど、感情表現が割とダイレクト

お説教も終えて対戦はラウンド2に突入する。 次からは脱ぎません。


「……次何する?」


「なんでもいい」


勝てるならなんでもいい。 今ここで拳を交えるのだけは勘弁してね俺負けるから。 初撃で負けるから。


「ケースケース……あった。 ほれ、こん中から選びたまへ」


「……たまへ?」


ちょっと時代を逆行しただけじゃないか気にするな。


「……移植版ばっかり」


「あん?」


紅葉に言われてケースを受け取る。 あ、これCS版ケースだ。 やっべー俺の嗜好がバレちまうぜ。 今更感あるけど。


「……私のは?」


「なんで俺がお前の分持ってなきゃならんのだ」


「……私が担当したゲームは?」


「そっちかー」


君が原画担当した作品ってCS版出てないでしょ。


「ところで隠す気はもう無いのか?」


「……隠すとかちょっと何言ってるか分からない」


「もう手遅れだろ」


この娘未だにイラスト云々がバレてないと思ってんだろうか。


ちなみにちゃんと原作は持ってます。 初回盤・通常版・限定版全て持ってるし特典も全部集めた。 まぁ推し絵師が原画やってたら買うよね。


「……普通のゲームは?」


まるでギャルゲーが普通のゲームじゃないような言い分ですな。 エロが無いエロゲーだから普通です。 いやエロゲーも普通ですけどね。 エロゲーみたいな人生を生きてみたかった。


やっぱ主人公は面倒臭いからいいや取り消す。 俺は俯瞰者でありたい。 モフではない。 登場すらしない、世界の外から見る存在でありたい。


「普通のやつはこっちやね」


取り出したケースを投げる。 もしこれを忘れていたら今から朝までギャルゲー鑑賞会になるところだった。 エロが無いなら気まずくならないからまだ良し。


いやヒロインとのラッキースケベイベントとか一緒に見るのキツイな。 アニメ見てたらお色気シーンで親に見られた時と似た感覚がある。 俺に親なんて居ないけど。


「……ぎっしり」


1ケース24つ収納可能な奴がMAX2つ。 ゲームがいっぱい遊び放題だよ。


「……これ、どのくらい遊んでるの?」


「2つ3つ遊びまくってるだけでほっとんど買って10分程度やったきり」


「……新品同様」


子どもにはわかるまい。 大人は金を手に入れた代わりに時間と体力気力精神力その他諸々を失うんだ。 子どもの頃欲しかったものは代償が凄まじいものなんだよ。


なんというか、あれだよね。 1回1回が短いちょい対戦系とか、時間が自由なアクションゲームとかはとりあえずで遊べるんだけど、美少女ゲーとか育成ゲームとかはいざ遊ぶと思ったより短い時間で出来たりするのに遊ぼうとすると体力的にキツイのはなんでなんだろうね。 作者は現在87本+追加5本積んでます。 体力がキツイ。


「中には全く手をつけてない、アカウントすら設定してないやつもあるからそれはやるなよ?」


「……そう言われたらやらざるを得ない」


「お前『彼氏持ち・事実上恋人のヒロインが処女と知って寝とる竿役』みたいなことすんなよ」


「……例えが微妙に分かりにくい」


そうか。 まぁ長ったらしいし伝わりにくいし俺純愛ガチ推しだからNTR嫌いだし。 言ってて吐き気してきた。


俺が望むのは何時だってヒロイン全員と主人公の幸せ。 ラブコメに付き物なBSSだってどうにかしてみせる。


ラブコメ作家のくせにそんなこと言っていいのかはさて置き、お約束→ハッピーエンドでいいから皆幸せになろうぜ。 祝福の鐘は別に1つだけじゃなくていい。 ヒロイン全員分用意するくらいなんて事ないのが主人公ってもんだろ。


なお、俺はご勘弁。 俺程度に用意出来るかい。 ちょっと速達便で届けてもらおうかな。 俺プライム会員だから無料だし。 ちなみにココ最近密林で買ったものは「睡眠の重要性!」とプリントされたあのTシャツ。


大事だよ、睡眠は。 たぶんこれが俺史上最も意味がある言葉。 逆に今までの発言が無意味過ぎるって一瞬思ったけど基本クソみたいな独り言垂れ流しだった。 本来ならもっと会話したりモノローグで状況説明とかするんだろうけど、作者にそんな技量は無い。 現状と正解が正反対過ぎる。 逆だったかもしれねェ。 いやそれだと正解が異常になるな。 つまり俺は永遠に間違う運命にある。 《不正解者アンチトーカー》と名付けよう。 ほら25行(作者ページ換算)も無駄に使った。


「……私はNTRなんてしない」


そういやそんな話してたな、と続ける紅葉。 駄文が多すぎるよ駄文が。 本編稼働率20%くらいでしょ。


「……ただ新品の消しゴムを見ると角を潰したくなるだけ」


「とんでもねぇ凶悪犯おった」


「……その消しゴムが奏士の物なら悔しがる顔を見れて2倍美味しい」


「性格ゴミがよ」


このクソガキがなんでちょっと満足そうなのかはさて置き、こいつは後で泣かす。 俺の消しゴムの恨みだ。


※ 彼はこの前実際にやられました。


「……これやる」


紅葉がソフトを1つ取り出してハードに刺しに行った。 俺なんのゲームやるのか聞いてないよ。 上司の「これはこうしてやれって言ったろ!」くらい聞いてないよ。


席に戻った紅葉は当然の如く人のアカウントでゲームを始めて設定し始めた。 なんでお前が1Pになっとんねん。


「……奏士のものは私のもの」


「突然のジャイアニズム」


「……私のものは────誰のもの?」


「自分見失ってんじゃん」


「……間違えた。 奏士のものは奏士のもの、私のものは私のもの」


「小泉構文?」


「……………………逆だったかもしれねェ」


「お前それ言いたかっただけだろ」


「……私NARUT○は全巻読んだ」


「で?」


「天下一中忍ハンターヒーロー試験の回は熱かった」


「それ別作品。 いやパロディだから別でもないけど」


「……ギャグだったかもしれねェ」


「やかまし」


「(ムフーッ)」


「顔ウッザ」


言いたいこと言い終わったのか即座にゲームに戻る紅葉。 こいつ自由の具象化かよ。 人の形した自由じゃん。


「レースか」


ゲームが起動し、有名な配管工とその他大勢の道交法違反者達が画面に映し出された。 アイテム制レースゲームの表現が超独特。


「? 私の下着はレースじゃない」


「おっとここにも異星人が」


さっきまで日本語通じてたのに急に翻訳機でも壊れたの? 母星に帰れ。


「……冗談」


「わーおもろい」


冗談ってのは笑えて初めてそう呼べるのであって、お前のは何の変哲もないあたおか。 もしかして脳の回路に白滝使ってない? もしくは春雨。


ちなみに白滝と糸こんにゃくの1番の違いは地域で呼び方が違うことで、それそのものにこれといった差は無いらしい。 くっそ要らねぇ豆知識だ。 またつまらぬものを語ってしまった。 つまんねぇなら黙れ。


俺がそんな脳内1人芝居をしてる間に紅葉は既にキャラを選んでカートカスタムをしていた。 お、俺は無意識下でキャラを選んでいたみたいだぜ……まぁ冗談だけど。


普通に芝居しながらコントローラー動かしてるだけ。 冗談ってのはこんな時に使うんだよ。 つまらんとか知ったことか俺がルールブックだ。 この短期間に同じネタを2度も使うとか作者の深刻なボキャブラリー不足が懸念されるな。 今更『極』だな。


紅葉は今回もヨシお。 好きねそのザウルス。


俺は仮面道化師兵法を選ぶ。 なんか妙な肩書き付着してっけど。


「……負けたら相手の言うことを聞く」


「そういうこと二度としねぇから」


─────────────────────────


「おいバナナ投げんな」


「……私、不法投棄検定第2級持ってるから」


「何そのクソみたいな資格ってツッコミの前にそこはせめて1級持ってろよ」


─────────────────────────

落パズ中


「……奏士は連鎖が苦手」


「と、思うじゃん?」


「……まじか」


─────────────────────────

ワールドの遊戯


「……無口でクールキャラな私にトランプで挑むとは浅はか」


「そのキャラ勘違いだぞ。 お前はただのアホだ」


「……(ムカッ)」


「おいリアルファイト禁止。 近日公開予定だった俺の本気今見せんぞ」


「……具体的には?」


「大人の男がみっともなく泣き叫んで命乞いする」


「人としてのプライドは?」


「安いもんだプライドくらい。 俺が無事でよかった」


「……みっともなさすぎる」


─────────────────────────

一時休憩の3DS


「……あっ」


「えお前もしかして死んだ?」


「……やっぱり全裸縛りは難しい」


「言い出したのお前だけどな」


「……なら奏士が止めてくれてもよかった」


「えぇ……(ガチの困惑)」


─────────────────────────

お昼


「……(キュー)」


「腹減ったのか?」


「……(コクン)」


「つってもお前の分は無いぞ。 今朝昼飯どうするか全員に聞いた時にお前言わなかったし」


「……なら奏士を仕留めてその分を私が」


「よし落ち着け話し合おう。 ここは穏便に行こうじゃないか」


「……穏便に暴力?」


「それは今使うべき手段じゃない」


「……暴力は否定しないの?」


「暴力は正しく使えば解決の最短距離になる」


「……チキンハートな奏士にできるとは思えない」


「俺が聖人君子で良かったな小娘」


「……(プススーッ)」


「(´・ω・#`)ピキビキ」


─────────────────────────

昼飯後休憩


「……(ケプ)」


「美味かったか他人ヒトの飯は」


「……美味」


そうかそうかくたばれ


「……次は烏龍茶もあるとよろしい」


「舐めんな」


「……奏士もお腹いっぱい食べた?」


「食べた食べた。 お前が俺の非常食2日分を平らげてくれたから明日食おうと思ってたカップ麺食った」


「……そもそも3泊4日なのに4日分の食べ物を持ってきてるのがおかしい」


「俺は元々引きこもる予定だったんだよ。 それは連日連夜押し寄せてきやがって……」


「……迷惑だった?」


「逆に乱入を迷惑じゃないと思えるなら精神科の通院を勧める。 良いヤブ医者紹介するぞ」


「……奏士はいつも一言多い」


「そう言いながら人の頬を抓るのをやめてもらおうか」


「……ヤダ」


─────────────────────────

食休みのゲーム


「……桃鉄って2人でやるゲームじゃないと思う」


「何を言うか。 俺は1人でNPC3人交えて100年フルタイムプレイしたんだぞ」


「……暇人過ぎる」


「無論、桃鉄と別ゲーも並行してやっていた。 重政の世話も含めてな。 家事は事前に終わらせた」


「……本当に暇人の極み」


「ちなみに飲まず食わず不眠不休不動でやったから3日目に死にかけた」


「……アホがいる」


「お前もやればわかる。 5時間経過で後悔し始め、10時間経過で後には引けず、20時間経過で自分の存在意義を問い始める。 36時間過ぎるとな、自分は何をしているのか分からなくなってきて、最後の方は無心無意識無感情」


「……心壊れてる」


「事実俺はその時の記憶が殆ど無い」


「……やる意味あるの?」


「愚問だな。 ある訳ないだろこんな愚行。 修行僧でもやらねぇよ」


「……本当にバカ」


「はいそんなこと言ってる隙にビンボードーン!」


「……卑怯」

─────────────────────────

5時間後(桃鉄10年やるとか暇なんか)


「……もう夕暮れ」


「ん? ああそうだな。 俺はここに居る間は一切の家事を休むことにしたから洗濯物やらなくていいのは久しぶりだ」


「……今朝のは?」


「あれは無意識下的な何かだろ」


「……染み付いてる」


「否定はしない。 そんなことより海と水平線に沈む夕日でも眺めてろ」


「……ベランダでお絵描きしたい」


「ご自由にどうぞ。 俺はお前が散らかした部屋の掃除でもしてる」


「……奏士も描く?」


「ぬ……………………ん。 描くか。 折角の絶景だしな」


「……隣空けとく」


「はいはい」


─────────────────────────


「おい奏士。 入るぞ────何やってんだお前ら。 明かりくらい点けろ」


「画面の明かりが必要最低限照らしてくれるから要らん。 そんな暇があったらこいつ泣かす」


「……花伝。 お前が奏士の部屋にいることは今更つっこまないが、何があった」


「……少し本気を出しすぎた」


「具体的に言え」


「……格ゲー対戦で57連勝した」


「お前ら子どもか」


「それで何の用だ悠ちゃん」


「そうだった。 お前ら夕飯はどうするんだ? 今夜はバレンタインが作るらしいが」


「すまんが俺に一緒に食う余裕は無い。 自分の分は自分で洗うから部屋までデリバリー」


「……私も」


「分かった。 そう伝えておこう。 風呂は入ってから寝ろよ」


「多分寝るの明日だけど分かった」


「今日寝ろ」


─────────────────────────

夜の11時頃


「……む、もう時間だ。 ゲームは1時中断するぞ」


「……何か急用?」


「アニメの時間だ」


「……おへそ」


「なるへそを端折るな」


「……今日は木曜日だから3本?」


「爆炎は欠かせない」


「……私も見る」


「俺アニメは個人視聴タイプなんだけど……」


「……大丈夫。 ちょっとエッチなシーンでも私は寛容」


「そういう意味じゃないしお前の場合寛容ってか自ら行くだろ」


「……人を盛った中坊みたいに」


「実際普段の猥談傾向から反応するのは中学生と大差無いけどね。 ちょっと内容のレベル上がっただけで」


「……そんなに褒めても毒ガスしか出ない」


「今直ぐ離れろそして二度と俺に近付くな」


─────────────────────────

視聴後


「次のアニメまで1時間か……丁度いいし風呂入ってくる」


「……私も終わったら入る」


「んじゃ」


「……行ってらっしゃい」


─────────────────────────

入浴中


「いきなりですが!(ベル全裸で乱入)」


「いきなりにも程があるわ!」


「ひでぶっ!?」


─────────────────────────


「たでーまー」


「……おかえり……疲れてる?」


「ちょっとな」


「??」


「それよりほれ、次お前だぞ」


「……ん。 言ってくる。 私の着替えは?」


「お前の部屋だろ」


「……奏士の事だから、私が着替えを家に忘れた時のことを考えて持ってきてる可能性にかけた」


「下手くそギャンブラーめ。 それ以前に俺がお前の服と下着を持っていたら問答無用で変態だろ」


「……既に変態だから大丈夫」


「大丈夫って言葉の意味を調べて出直せボケカス」


─────────────────────────


…………ふぃー


紅葉も風呂に行き、ベルは手足を縛って猿轡を噛ませた。 部屋に放り込んで鍵を外からかけたから暫くは出てこないだろう。


つまり目的通り、やっと1人になれた。 もう日付変わってるから達成とは言い難いが。


そうか、もう日付が変わっているのか。 つまりは半日以上一緒に居たということ。 俺史上最大の快挙だな。 赤の他人と12時間同じ部屋で過ごすなんて。


まぁそんな事より、今は風呂上がりでホカホカのこの身体を冷やそう。 水分補給だ水分補給。 水はちゃんと飲もう。


水と言っておきながら俺はクーラーボックスを漁ってドクペを取り出す。 ぎっしり詰め込んだはずなのに半分くらい無くなってやがる。 虎の子のマッ缶は飲まれていないようだ。 やはり最初にドクペだけを見せて興味を薄れさせたのが幸をそうしたみたいだな。


「……あん?」


均等に冷やすために偏った缶の位置を変えていると、見慣れない缶を見つけた。 俺はこんなの入れてねーぞ。


「酒じゃねぇか」


チューハイ缶だ。 度数3%の弱い酒だ。 俺はこんなの飲まんぞ。 弱い酒っていうかジュース系を好むのは悠ちゃんだ。 も助はガツンと強い酒をストレートで飲むし、瑠姫さんはビールとカクテル大好きだしそもそもあの人今回の旅行に無関係だ。


まぁどうせあの2人のどっちかのだろ。 昨日の酒盛りの余りか?


一応、念の為酒はクーラーボックスの隅に隠しておく。 万一紅葉とかが飲んだらアレだし。 アレ。 詳しくは言わないけどアレだから。


と、部屋の扉がノックも無しに開けられた。 誰じゃワレェ。 お前の頭で千本ノックすんぞコラ。


「おう金玉。 居るか?」


「滅べ」


現れたのは開幕失礼なメスガキでした。 えぇこれ選んだの? まだ脳死で綾鷹選んだ方がマシだし綾鷹美味しいし。


「何の用だクソガキ」


「誰がクソガキだぶち殺すぞバラガキ」


「誰がバラガキだ滅ぼすぞ」


「「…………あ?」」


争いは同じレベルでしか起きない。そうか……悠ちゃんが漸く俺という高みに辿り着いたか。 自己評価ゲロ甘じゃん。


「1階の奥に部屋があるのは知っているな?」


「それはまぁ」


この別荘に来た時に全ての部屋の位置も広さも頭に入れた。何かあった時のために経路の把握は大事。


「そこからある物を取り出したいんだが、物が物でな。 男手が必要だ。 手伝え」


「俺今忙しいから莇にでも手伝わせろ」


「あいつなら『闇夜に浮かぶ月と星空の闇海やみを見てきます』とか言って出ていったぞ」


「ロマンチックかよ」


あいつ割と外出多いな。 夏休み小学生か? クソ蒸し暑いのに外出たがるとかあいつはドMか? 小学生の時点でドMに目覚めるとは中々成長が楽しみな逸材だ。


「わーかった。 さっさと終わらせる」


「話が早くて助か────あれ、早いか?」


「そこ気にしなくていいから。 とりあえず出入口で突っ立ってないでそこ退け」


「はいはい。 じゃあ行くぞ」


悠ちゃんがスタコラサッサと先に行く。 紅葉が風呂から出るまで残り20分程。 それまでに戻れば問題ないだろ。 紅葉が自分で髪を乾かすことに花京院の魂を賭ける。


「おいさっさとしろ。 時間は有限だ」


「その有限を奪ってるお前が言うか。 今行くっての」


渋々部屋を出る。 なーんか嫌な予感がする。 俺の予感は大体的中率70%だ。 微妙。


─────────────────────────


物置部屋の前まで来た。 この部屋鍵かかってたから入れなかったけど、ここがそうだったか。 てっきりヤバめのもの封印してる系かと。


悠ちゃんがポケットからレトロォな鍵を取り出して鍵を開ける。 そういうどシンプルなロマン鍵って俺好きよ。 実用性も大事だけど、男ならロマンに生きなきゃ。 むしろロマンで生きている。 モンブランはマロンでできている。 身体は剣でできていない。 じゃあ知らねぇよ。


「おい……こっから探すのか?」


「そうだ。 この中から望遠鏡を探せ」


「クソゲー乙」


お部屋には隅までお荷物ぎっしり。 わぁい嬉しいなぁ。


その点トッポってすげぇよな、最後までチョコたっぷりだもん。


「こん中から望遠鏡探すとかガチめに辛たんヤバたんマジ帰っていい?」


「良い訳ないだろ」


だって入口から既に積み積みだし。 ねぇなんで初手謎の着ぐるみなの? これ何、チュパカブラ?


「望遠鏡はホコリ払ってその部屋の前に置いておけ。 出した物は部屋に戻しておけよ」


「おいこれ完全に時間外労働だろ。 対価払え」


「お前の分の旅費を出してやってるんだそれでチャラだ」


「生徒会行事かつ強制なのに上から目線とかゴミクズが」


俺の抵抗虚しく悠ちゃんは去っていった。 もう疲れたから俺これから無抵抗で行こうかな。


「これかぁ……」


衛生的にも見た目的にも触りたくないチュパカブラらしき着ぐるみを引っ張って取り出す。 埃凄。 せめて風呂入る前に声かけろや。


「ヴぉぇっ! お゛ぇっ! ゲホッ!」


奏士くん基本的に丈夫な身体だけど埃はダメよダメ。


「……あん?」


積み上がった荷物がさっきから微妙に動いてる気がする。 うんこれ気のせいじゃないな。


「おぶっ!?」


次の瞬間、部屋の扉と着ぐるみという支えが無くなった荷物が弾け飛んだ。 これ内部爆発してる?


「おぉぉぉぉぉぉぉ……っ!」


箱が顔面直撃、釣竿が何本か槍の様に顔の横を掠め、小物は散弾銃の如く俺の全身を穿つ。 いや貫かれてはいないけど。


「クソっ、誰だ前回しまいやがったの。 後で説教してやる」


大事なお鼻がジンジンキタキタ。 これ鼻血出てないよね。


「……あんらまぁ」


禍福は糾える縄の如し。 弾けた荷物が空いた結果部屋の中が見渡せるようになり、その中央にポツンと望遠鏡が立てかけたあった。 福に対して禍がデカすぎる。


埃を払って望遠鏡を外に出す。 んもう身体が少し汚れたじゃないか。 穢れは浄化しなきゃ。 急急如律令とかしなきゃ。


「さて、と……」


弾け飛んだ大量の荷物が残る。 これどうしよう。


時計を見れば紅葉の入浴終了予想時間まで残り16分だ。


っーーー行けるか? 俺の長年磨き上げた清掃技術なら行けるか? 奏士くんの掃除なら行けるか? 行こうじゃないか。


そうと決まれば即行動。 先ずは物のジャンル分け。 これは箱これは封印されてる箱(無視)これは禍々しい箱(無視)……あ! この釣竿すっげぇ良い代物じゃん。 こんな高級品を無造作に突っ込むとか物の価値の分からん奴め。


…………釣竿あんじゃん。 つーことはルアーも網もあるだろうし、海だから近くに釣具店もある。 これで明日は釣りができ


「そうだ奏士。 釣り道具がその部屋にあるが、間違えても明日やろうなどとは思わないことだな」


ないみたいですね無念。


悠ちゃんとかいうアホ毛がクソバナナなガキに釘を刺されたから釣竿は鑑賞だけに留めておこう。 いいもんいいもん。 この監禁生活が終わったら朝釣りに行ってやるもん。 早朝に車でこっそり行ってやるもん。


おら覚醒じゃい。 身体を赤く発行させれば3倍の速度で動けるってどっかの人が言ってた。 情報源に関する情報がうっすい。


まぁトラ○ザムの話しといてなんだけど、俺はRGシステムの方が好き。 最終進化形態(コスモスは除く)且つこれまでの集大成の機体で独自システムって。 誰も死なず、戦争なんか起きず、プラモデルに想いを乗せて遊ぶ世界だからこその良さがある。


そんなモノローグ垂れ流しても動きは止めない。 カメラも止めない。 あの映画最初はちょっとびっくりする。


俺の本気公開日早めて今お見せしちゃう。


まぁ文字だし細かくやってる暇無いから延期だけどね。


─────────────────────────

紅葉 side


「……ただいま」


湯上りホカホカな紅葉が帰ってきた。 奏士の願いが通じたのか、髪は乾かされている。


「…………?」


が、部屋に奏士の姿は無く、窓から月明かりが差し込んでいるだけだ。 未だに部屋の明かりは点けていない。


「……トイレ?」


紅葉は見当違いな事を呟きながら自分の場所に座り、パタパタとほんのり赤い頬を手で扇ぐ。 薄手のワンピースの胸元を開けてそこも。


「…………」


紅葉は「もし、この場に奏士が居たら今の行いをどう思うだろうか」と一瞬考えたが、普通に無視されるだけだと気付いて考えるのをやめた。 奏士は良くも悪くも女性の胸を見ない。 その点は密かに遥から好印象を持たれているが、乙女視点だと複雑な気分である。


(遥からはあくまで好印象であって好意では無い。 NTRとかBWSSはアカン)


「……暑い。 ジュース」


紅葉はそう呟いて奏士のクーラーボックスを漁る。 許可は1度も取っていないが、紅葉なりに奏士の境界線を見極めて行動している。 怒られはしても見限られない・逆鱗に触れない範疇であることを確認しての行動だ。


もしくは、「奏士ならなんだかんだ許してくれる」という信頼か、甘えか。


だがあえて何度でも言おう。 奏士に一切許可は取っていない。


「……MAXコーヒー、は甘すぎ。 ドクペ、ドクペ、ドクペ、ドクペドクペドクペ……依存症?」


どれだけ探しても同じ銘柄同じ味、同じジュースの缶しか出てこない。 10本に1本の割合でMAXコーヒーが見つかるの 事に紅葉は微妙にイラッとした。


「……これはジュース?」


紅葉が漁って漁って明日を漁った結果見つけたのは、奏士が隅に隠したチューハイ缶。 酒である。


「……多分ジュース」


運悪く紅葉には酒のマークが見えなかったのかとかそんな問題ではなく、そこそこ時間をかけて若干のストレスを溜めた結果見つけた普通のジュースらしきものに飛びついた紅葉は、ろくに確認せずプルタブを開けて喉に流し込んだ。


「んくっ、んくっ、んくっ…………プハッ。 ジュース? にしては少し変な味」


これが人生初の酒であるとは露知らず、少し首を傾げながらも冷えたチューハイを飲む。 なお、この作品の登場人物は皆年齢不詳である。


「んくっ、んくっ、んくっ……」


嚥下する度、火照った身体は冷え、そしてアルコールの効果でほんのり赤くなる。


度数は低い。 そしてハーフではあるが紅葉は酒豪の代名詞たるロシア人の血が流れている。 本人も、いつか飲むであろう酒に酔わない自信があった。


だが────


「……んにゅ………………ヒック」


3% たかが度数3%の酒は、初飲酒の少女を酔わせるのに十分過ぎる量だった。


「…………」


缶を机の上に置いてポーっとする紅葉。 奏士が帰ってきたらどうなるだろうか。 それはこの後すぐ分かるだろう。


─────────────────────────


あーしんど。 予定より4分も遅れちまった。 まさかゴキが出るとは……持っててよかった対ゴキブリ用の投擲釘。


時間的に紅葉はもう戻ってるな。 The我儘姫な紅葉に何言われるか。 とりあえず土下座と足舐めで勘弁してもらおう。


「たでー」


扉を開けて部屋に入ると、紅葉は窓の外の月をじっと見ていた。 今宵は満月、遮るものがないこの場所はいい月見場所だ。


「すまんな。 悠ちゃんに呼ばれて遅れた」


紅葉は無反応。 空をじっと見て振り向きもしない。


ふむ……これあれだな。 振り向いたら紅葉がバケモノになってるパターンだな。 銃用意しなきゃ。


「まぁいい。 ゲーム再開すんぞ」


テレビを点け、ハードのスリープを解除してソフトケースを開く。 次は確か紅葉がやりたがってた移植版をやるんだったな。 朝飯まで7時間ちょい。 アニメはこの際録画でいいから、ぶっ通しでやれば共通ルートくらいは終わるギリギリか? 俺声無しの奴は目を通して即行動Enterだから他の人のやり方わかんね。


「…………」


紅葉は無反応。 ちょっと面白そうだからこのまま無言で過ごしてみようかな。


「…………」


とりあえず暇だからゲームはやろ。


\SAGAP○LANETS!!!/


うわ音でっか。 俺がいない間に誰かリモコン操作しやがったな。 紅葉か? 紅葉なのか? このために無言なのか?


「…………」


それでも紅葉は無反応。 これ死んでんじゃね?w 何わろとんねん。


「……おい紅葉。 ネタはもう飽きたから再開すんぞ」


コントローラーを置いて紅葉に近付いて呼びかける。 無視。 えぇ無視? 4分遅れで拗ねてる? 子どもか! 子どもだったわ。


「はぁ……おい紅葉」


紅葉の肩を掴んで180度回転させる。 体温が高いな。 風邪か? 湯冷めでもしたか?


「…………」


漸く紅葉と目が合った。 焦点が殆ど合ってないな。 やばい薬キメてんのか? 大麻とか。 大麻忍モミジなのか?


瞬間、本能に従って後ろへ飛び退く。 なんだ今の嫌な予感は。 まるで肉食獣のテリトリーに入ったみたいな────


「…………んにゅ」


紅葉と再び目が合ったと同時に、俺は固まった。 金縛りにでもあったみたいに身体が動かない。


月の光に照らされた紅葉の銀髪はキラキラと輝いて、青い眼は暗闇でも光って見える。 まるで猫の眼の様に。


「…………」


ゆっくり、ゆっくりと紅葉は膝立ち四つん這いで近付いてくる。 動きは遅いが、確実に。


シュリ……シュリ……と衣擦れの音が聞こえる。 普通に立ち上がれば距離は離れるのに、俺の身体はピクリとも動かない。


位置的にも、紅葉の服装的にも紅葉の胸元がよく見える。 豊かな胸は、両腕で挟むように、動く度に形を変える。 何コレドッキリ? 俺は仕掛ける側なんだけど。


距離を詰められ、とうとう顔1つ分まで紅葉が迫ってきた。 あーこれホラー映画でよく見る、『音で察知する敵を目の前に息を殺して耐える』ってやつだ。 つまり俺死ぬの?


紅葉との距離20cmを切る。 心臓バクバクよ。 心臓だけじゃ足りないから仮想領域もフル活用よ。 心臓の仮想領域って何処。


距離10cm。 恋人ならキス間近の距離だ。 ちょっと待って俺の純潔オサラバ? 初体験は恋人とやりたいぞ。 つまり来世に期待。 童貞の偉人も居るし多分俺もなんとかなる。


距離5cm。 紅葉は顔を更に近付け────────


「スンスン……スンスン……」


鼻をひくひくさせて匂いを嗅いだ。 はっはーんさては引き伸ばしてるな? 尺余ったからって。


「スンスン……スンスン……」


めっちゃ匂い嗅ぐやん。 顔周り首筋鎖骨手に腹。 背中だけは壁に接してるから嗅がれなかった。 そんなに匂い嗅ぐとか俺臭い? 汗かいたからね。 決して加齢臭でないと思いたい。 ま、まだ枕から変な匂いはしてない!


「スンスン…………ん〜〜〜〜♡」


匂い嗅ぎを辞めたと思ったらスリスリ頬擦りしてきた。 猫かよ。


手に、脚に、胸に。 でっかい猫はスリスリしてくる。 なんだこれ。


「んーーっ!」


首に手を回して対面座じゃなかった。 熱烈なハグからの頬同士を擦り付け。 これ顔ダニ移し替えてるとかじゃないよね。 ムードもクソもないこと言うけど。 どっちにしろ死活問題なんだけど。


「…………」


突然、紅葉が頬擦りを止めた。 正気に戻ったか。 早く俺の首をギュッとねする前に退け。 俺今お前のせいで服乱れまくりだから退け。 片方の肩出ちゃってるから。


「……アグアグ」


違った右肩噛んできた。 甘噛みだ。 猫か。


「〜〜〜〜♪」


気に入ったのか、甘噛みを続ける紅葉。 俺ってそんなに美味しいの? それとも猫ガム? いや犬ガムか? どっちにしろ歯型付けんな。


「アグアグ……」


離れない。 俺このまま食べられちゃう? いやー美味しくないですよ。 俺不摂生の塊みたいな存在だし。 運動してるだけで不摂生しまくりだし。


「…………」


10分間噛み続けた紅葉が漸く口を離した。 感覚的に歯型バッチリ残ってるし、なんなら横目でキラキラのヨダレブリッジも見える。 汚ね。


「ん〜〜〜〜〜♡」


通ってたらまた頬擦り再開。 俺って猫が好むフェロモン的な何かが出てんのかな。 確かに重政のために体臭には気を使ってるけど。


「っ」


ふと、頬に痛みが走る。 ここ噛むか?


と思ってみたが、紅葉も不思議そうな目で見ている。 めっちゃ顔近いっす。


そっと痛みがした箇所に触れてみると、何かが擦れたような後と微かな痛みが。 あー……さっきの掃除の時吹っ飛んできた箱と釣竿か? あれは痛かった。痛かったぞー! ベニヤ板買ったぞー! 文化祭かよ。


「…………ペロッ」


突然、紅葉が頬を舐めてきた。 嘘ついてなんかないぜ。 お前猫かと思ったらブチャラティかよ。 ブチャラティネタはこの前やったやろがい。


「ペロペロ……」


めっちゃ舐めてくる。 傷口めっちゃ舐めてくる。 お前やっぱり猫だろ。 うちの重政だって俺の事しょっちゅう舐めてくるぞ。 下に見るって意味で。


※ 猫の舌はザラザラしているから舐められるとちょっと痛い時がある。 可愛いから許すけど傷口舐められた時は迷う。 人間の舌で良かったね紅葉ちゃん!


「…………(ムフーッ)」


満足したのかドヤ顔をする紅葉。 そして頬を唾液まみれにして今直ぐ洗い落としたい俺。 例え相手が美少女だろうと人の唾液が頬に付着してたら不快(泉ちゃんは美少女で表せない次元だから別。 いややっぱ無理)


ウエットティッシュで顔を拭こうとテーブルに手を伸ばした瞬間、ある物を発見する。 あれは……酒だな。 チューハイ缶だ。


「………」


試しに紅葉の口元の匂いを嗅いでみると、無事アルコール検出。 間違いない。 こいつ呑みおった。


えぇ……お前ロシアと日本のハーフって設定だろ。 ロシア人=酒強いとは限らないけどさ。 流石に3%で酔うとは思えないじゃん。 お前弱過ぎだろ。


つまり紅葉は酔うと猫化するってことが分かった。 つまりどうしろと? 酔いが冷めるまでこれの相手してたら精根尽き果てるわ。


そうだ。 ベッドで寝かせてみるなり、最悪ベルに押し付けるなりすれば解決するんじゃなかろうか。 試してみよう。


「ほら紅葉。 寝る時間だぞー」


「ん〜〜〜〜っ!」


分かっていたけど微動だにしない。 引き剥がそうとすればするほど逆に腕に力込めて密着してくる。 酔ってもゴリラか。 人間に近いゴリラかこいつ。 なんならゴリラより力強い。


とにかく全身ふわふわで柔らかいけどそんなことより頸動脈締め付けられて落とされそう。 斬新な絞首刑だね。 絞首刑って頚椎への刺激だけど。


「離しなさい。 怒るぞ」


「…………やっ」


「グオ死ぬ」


割と首の締りがヤバい。 気絶する前に窒息で死ぬ。 俺は5分も息止めができないんだ。


「分かった。 分かったから力を弛めなさい。 俺死にます」


「…………んぅ」


漸く紅葉の締め付けから開放された俺は深呼吸。 呼吸って素晴らしい! 生きてる最高。


「おい奏士。 私の酒が1本見当たらないんだが、お前の方に────」


なんということでしょう。 俺の中の加藤みどりが覚醒した。 悠ちゃん襲☆来!


今の状況はなんだ! 服を乱して頬を上気させた紅葉が、同じく服が乱れてる俺に抱き着いてるな! はい1発レッドカードで退場です。 グリーンカードが欲しい。


「あー…………避妊はしろよ?」


「待て貴様。 最悪の誤解をして帰るな」


「邪魔したな。 防音壁じゃないから声はなるべく、な」


「待てっての」


「邪魔したなー!」


「待ってマジで待って! 誤解は解けなくていいからもう一度問いを出させろ!」


俺の叫びは虚空へ消え、悠ちゃんは扉を閉めて走り去った。


「畜生……このままあらぬ噂が広まったら……」


生徒会メンバーに伝わるのは必然。 ベルの暴走、泉ちゃんの軽蔑、莇の────あれは多分いつも通りだけどキツい。


そしても助と瑠姫さんからおもちゃにされ、学園の皆には我らが生徒会長を傷物にした罪(冤罪)でボコボコにされ警察沙汰。 学園の諸々が問題視され閉鎖→借金→破産→如月家終了。 親族の柳家にも響くかもしれない。 泉ちゃんが通う場所もなくなり最終学歴的に就職難。 フリーターになって最終的にニートに。 ヤバい……泉ちゃんだけでも養わないと!


よし、とりあえず養う大義名分として結婚指輪と婚約指輪買いに行かないと。 指のサイズは知ってるからいいとして、泉ちゃんにはなんの宝石が似合うか。 シンプルにダイヤか? 茶髪だからトパーズとか。 石言葉で選ぶならローズクォーツとかも有りだな。 とりあえず月給12ヶ月分の指輪買わないと。


「…………〜♪」


「むぐ」


何を思ったのか、俺の頭を掴んでギュッと胸に抱いた。 顔全体が大変柔らかいけどそんなに押さえつけられたらまた窒息死しかけちゃう。 人生50年って言うけど、だとしたらまだ30年近く残ってるよ俺の人生。


「~♪」


紅葉の顔は見えないけど多分ご機嫌。


「…………」


一方俺は再び瀕死。 最後に聞いた音が心音ってのもオツかなとか考えちゃってるし取っておきの辞世の句も読んじゃう。


春を過ぎ

秋に抱かれて

冬来たる

夏の灯火

しき悟る夜 柳奏士


四季と死期をかけてるのがポイント。 ちなみに柳の木は春の木だから夏の樹木ならなお良かった。


「……っ! っ!」


「…………」


最後の足掻きというか生存本能というか、無意識で紅葉にタップしていたのか幸をそうして開放された。 呼吸最高! マジ最高! 人生万事塞翁が馬って言っても激し過ぎるわ。 今落馬と徴兵逃れを連続で繰り返してる。


「はぁ…………死ぬかと思った」


紅葉は心配そうな顔で頭をそっと撫でてきた。 うん、マッチポンプ。


「お前なぁ…………」


つっても酔って自我が無い奴に言っても意味無いか。


どうするかと悩んでいたら、紅葉がフラフラと重心を不安定にさせる。 瞼も下がってきた。


「眠いなら無理しないで寝なさい。 ほら、ベッド使っていいから」


「…………(コクン)」


酔っていても流石にもう眠気には勝てないのか、のっそりとベッド移動した。


そして即座に寝息が聞こえてきた。 これだけ自由に生きてるなんて羨ましい限りだ。


「俺もソファで……」


まだ寝るには早いから、ベランダで夜風に当たりながらゲーム再開しようと立ち上がろうとしたが、中腰以降上がらない。 何かと思って後ろを見れば、寝ている紅葉が服の裾をがっちり掴んで離さない。 ヤダ〜この小娘。


「……まぁいいか」


掴まれた上着を脱いでTシャツになる。 脱皮ができるのだよ。


「……にゅふ……」


俺の上着が布団の中へ吸い込まれた。 吸い込まれたというか、紅葉の腕の中。 また会えたら全力で選択してやるからな。 選ぶだけなのか……もちろん洗う。


ゲーム機とスマホ、それと相棒のドクペと重政カメラを持ってベランダに移動する。 初期装備で椅子と机があるの便利やね。


音も最小、明かりも最低限にしてギャルゲーの続き。 PC版との違い発見が楽しいのがCS版の1番の利点。 CGに規制かかるのだけがちょっとアレだが。




……ふと気になって、スマホで調べて見た。 匂いについて。


『匂いを嗅いできたら?

ずっと近くで嗅いでいるなら、貴方の匂いが好きなのかも! 匂いが好きな人とは相性抜群だからずっと一緒にいるといい事あるかもね♡』


ふーん……とりあえず加齢臭じゃなくて良かった。 マジで良かった。


まぁ所詮はネット記事だ。 千の記事を読もうが一の言葉には勝てんよ。 本人が直接言ったならそうなのかもしれんが。 俺にはよく分からん。


やっぱ人って分かんねぇな。 どれだけ知ろうとしても結局は「怖い」に行きつくんだ。 やめだやめ、ヒロインとイチャつこう。 やはり2次元は正義だ。


つーか夜の海辺って風強っ。 部屋戻ろ。


─────────────────────────


「んがっ」


目覚めた。 朝だ。 いつもの時間だ。 やはり染み付いてるのか。


辺りを見回す。 別荘内の俺の部屋だ。 ベッドで紅葉が寝てる。 ネグリジェが割とはだけて着てるのか怪しいけど。 まぁそこら辺は脳内編集でなんとかなる。


どうやらベッドに寄りかかって寝ていたらしく、身体中が痛い。 特にケツ。 更に言うと尾骶骨。 俺のおケツが……尾骶骨って折れやすいらしいね。


立ち上がって寝起きの背伸び。 全身がバキバキ言っております。 俺はバキバキ童貞です。 唐突なカミングアウト。 いや周知の事実だけど。 泣いた。


紅葉はまだ寝息を立てて寝ている。 当分目覚めない。


俺はどうするか。 いつもなら洗濯機回して朝飯の準備して道場で鍛錬して……あれ、それが普通だからよく考えたら最近の朝って何もしてない日が無いな。 一人暮らしなら多少削っても問題無かったから自由にやっていたが……共同生活は難しいね。


「んんん……にゅう…………すぴー」


布団を蹴飛ばした紅葉に掛け直して部屋を出る。 とりあえず顔を洗って歯を磨こう。 話はそこから。


折角だし、朝の海辺を散歩するのも有りだな。 中々良さそうだ。


「ん〜〜にゃっ!」


また布団を蹴飛ばした紅葉に掛け直して部屋を出る。 寝相治そうね。


─────────────────────────


早朝散歩から戻り、朝飯の準備を進めていると丁度皆が起き始めてリビングに集まって来た。 今更だけど、年頃の男女が同じ屋根の下で寝るってだいぶ凄いね。 俺は年頃じゃないからノーカン。 この場合だと莇の独占ハーレムだ。


「ふわぁぁぁぁぁぁぁ……おはよーデス」


「…………おはよう」


「おはようございます」


「お、おはようございます」


「おはようございまーす!」


「はい、おはようさん。 飯にするから顔洗って髪とかしてきなさい」


「ほわっ!? 髪が凄いことになってるデス!」


「アハハハハ! ベル先輩の髪爆発しすぎですよ」


「……というか、結局奏士さんがお料理してますけど」


「ん、いや……なんか落ち着かない。 働きたくないはずなのに働かないとソワソワする」


「これが相反する力ですか」


「……ただの休み下手」


「年中夏休みなお前に言われたくねぇ」


「貴方は逆に休むべきでは?」


「少なくともベルと紅葉これが居る時点で休めん」


「だそうですお嬢様。 ここは奏士殿の休息の為にご自身の息の根を止めてなさっては」


「朝から主人になんてこと言うデスカ!?」


「はいベル先輩。 お先マッフラーです」


「これただの縄! 自分で締めろと!?」


「というか、その縄どこから出したんですか……」


「ワハハハハ!」



寝起きなのに煩い。 寝不足の頭にはガンガン来てキツい。 相変わらず朝っぱらから騒がしい奴らだ。 そんなことより朝っぱらって方言らしいね。


くいくいと裾を引かれる感覚。 何? あらヤダ紅葉ちゃんじゃない。 ご飯はまだもうちょっと後よ。


「…………」


……なんか紅葉が無言で顔見上げてくる。 俺何かした? むしろめっちゃ甘やかしたよ。 服与えてちょっと涼しかったけど普通に寝にくかったし!


「どしたよ」


「…………なんでもない」


そう言い残して紅葉は洗面所へ。 そういや服返してもらってねぇ。


なんだアイツ。


「ははーん、ソージも隅に置けないデスね」


「おいやめろマジで。 お前だけでこっちはストレス過多で胃に穴あく場所もうねぇんだよ」


「だそうですお嬢様。 やはりここは奏士殿の命のために息の根を」


「それワタシの命が散る奴デス! アオバはワタシとソージの命どっちが大事デスカ!」


「いえ正直どちらでもいいと言いますかどうでもいいと言いますか……奏士殿が死ねば泉殿は私に。 お嬢様が死ねば私は晴れてお役御免自由の身になれますので」


「なんて自分勝手な理由!」


「つーか死んでもお前に泉ちゃんはやらんわ」


「まぁ先輩のフラグも命もどうでもいいです。 早く朝ごはん作ってください」


「クソ後輩が……」


「あ、あのあのっ! 私もお手伝いしますから!」


「ありがとう泉ちゃん。 でもその前にこの中で1番爆発してる髪をとかしてこようか」


「へっ!? あっ! うぅ……」


爆発した髪で赤くなる顔を隠す泉ちゃん。 いつ見ても表情がコロコロ変わるから面白い。 1024変化くらいか。七十二どころの話じゃない。


「……じー…………」


柱の影から紅葉が顔を出して除いていたことについては無視させていただきます。 ダルいし。

珍しく焦りませんでしたって言ったら嘘になります。

じゃあ焦ったと言うと……嘘じゃない。


どうも、昨日今朝6時まで小説を書いていて寝不足な作者です。



喉の痛みは治り、快調かと思いきやお次は時間不足。 つらたんです。


ちょっと時間押している&本編が長いので後書きは手短に


海会も丸一日は明日が最終日。 4日目は殆どが移動と自宅での話になる予定ですので、次回が実質最終日です。 誰が登場しますかね……それは明後日の私次第です。 それより5億円ください。

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