ハンバーグは美味しかったです。 厨房は特別に貸した
「HappyyyyyyyNewwwwYear!!!!!!!!!」
「急にうるさっ」
バイト開始してから1分経過し、「暑い暇だ」と言っていたベルが唐突に立ち上がって叫び出した。 頭いかれた? 元からか。
「なんなのお前急に」
「いや……なんか言わなきゃと思って……」
そう言ってベルはバツが悪そうに座る。 ほんとなんなのお前。
読者の皆は知っているだろうが、今現在の作中季節は夏だ。 夏休み真っ最中だ。 つまり新年はまだ先。現実世界と作中で季節が反転するのはラノベあるある。夏に夏ネタ書いても世に出るのは冬だったりするらしい。 俺はラノベ作家じゃないから詳しくは知らんけど。瑠姫さんに聞けば分かるかね。
始まったバイト2日目、早くもだらけてるが、外はギラギラサマーデイズだし客は来ないしやる事ないしの三拍子揃っている現状、これくらいしかすることが無い。
だから俺はカウンター内の椅子に座ってスマホを弄っている。 まぁゲームじゃなくて瑠姫さんと原稿についてのやり取りしてるだけなんだけど。
カメラ通話が出来ればもっとやりやすいが、顔バレ身バレはしたくないからベルの前では出来ん。 出版社に直接出向くとかちょっと厳しいし。 まぁどうせアキバ行く予定あるしその時でいいか。
一方ベル。 始めはそこかしこにある駄菓子を物珍しそうに眺めていたが、直ぐに興味を失った。 今はカウンター挟んで向こうの椅子に座ってガラス張りのカウンターにピタッと頬をくっつけて「ダルーン」としている。
そんなことよりさ、「ガラス」って漢字で書くと「硝子」じゃん? なんかカッコイイ感じしない? 文字が。
「暇デース」
ベルが腕をバタバタさせて目の前の俺に言ってくる。(多分) これで独り言だったら恥ずかちい。 勘違いクソ野郎の汚名は別の人に与えてくれ。
だから「私聞いてませんでしたモード」に移行した。 要するに無視。 無を有にできても、有を無にすることは出来ないからな! 後ろから名指し無しで声かけられたら聞こえてないフリするのと同じ。
まぁ俺に声かける奇人なんて居ませんでしたけどね。 今は奇人だらけ。 更に今はダラダラだらけ。 つまんな。
「暇デース!」
ベルの声がちょっと大きくなったけど無☆視。 無視してスマホの画面を見る。 るきさんのおしごと!
学生は夏休みでも社会人は絶賛お仕事タイム。 やっぱり時間に融通効く仕事ってのは最高だね。 常に締め切りに追われてるのを「融通が効く」と言えるのかはさて置き。 締切と寿命からは逃れられない。 あと紅葉とベル。 これと同格なのかこの2人……全肯定。
「ひ! ま! デェースっ!」
「ちょうるさい。 黙れ。 喚くな小娘」
「酷い!」
ベルが「うわぁーん」と泣き叫ぶ。 (嘘泣き) 何こいつかまちょ? とことん俺とは対極に位置するんですけど。
「暇なら外で遊んでこい。 そしてそのまま家に帰れ」
「なるほど……つまりソージはワタシの日焼け跡が見たいと」
「曲解やば」
「残念ながら日焼け止め塗ってあるから日焼けしないデースよ! はーっはではっはっ!」
ベルは立ち上がって反り高笑いをする。 揺れた。
どっかで読んだ記事だが、形のいい胸は揺れた時の重量感が半端ないらしい。 このモノローグに意味は無い。
「……」
ちょっとイラッとしたから椅子から立ち上がって、ベルの後ろに移動する。
「んー? どーしたデスかー?」
ニマニマウザイ笑顔だ。 殴りてぇ。
そんなベルを無言で持ち上げる。 椅子ごと。
「……へ? ソージ、急に積極的になって……夏の暑さでおかしくなったデス?」
こいつは俺にどうなって欲しいのだろうか。 一切をシャットダウンしたら文句を言う、しなかったら文句を言う。 これが世に言う乙女心か?
ベルが座ってる椅子ごと持ち上げて店の入口を開ける。 両手が塞がってるから足で。
そして────
「ふべっ!?」
ベルを椅子から落とした。 店の外に。 顔から行った。
「日焼けしないんだろ? ほら炎天下で遊んでこいよ」
そう言いながらドアを閉めて鍵をかけた。 あー店内涼し。
「ちょっとー?開けて欲しいデース」
ベルがガラスドアの向こうでカリカリと爪を立てて抗議するが、俺は既にカウンター内に戻ってスマホを弄っている。 無視無視。 あー快適。
「ソージー? 聞いてるデスかー? 開けて欲しいデース」
今度はドンドンとノックしてきた。 無視無視。
「ソージー? 日焼けしなくても暑い事には変わりないデスよー? 開けてクダサーイ」
今現在外の気温は37℃、猛暑だ。 でも俺はこの快適な空間から動けないからドアを開けないのは猛暑だろうともうしょうがない。
「ソージー? 美少女がこんなにもお願いしてるデスよー? 美少女の汗を舐めたいその性癖は認めマス。 でもその前に熱中症で倒れちゃうからここを開けてクダサーイ」
あいつ今からサウナにぶち込んだろか。 もしくは海浜公園のアイスワールド。 夏冬関係なくクソ寒い-30℃の世界に。 内装がリアルでちょっと怖いのは内緒。 作者はこの前久しぶりに入ってクソビビったらしい。
しかし、熱中症で倒れられると処置が面倒だ。 仕方ない……
「……あ、ソージ」
ドアを開ける。 地面にペタンと座り込んでるベルとご対面。 そして────
「ほらよ。 これでも飲んでろ」
スポドリのペットボトルをベルの目の前に置く。 キンキンに冷えてやがるぜ。 まぁ吸収云々考えたら温いのが1番だけど。
そして再びドアを閉める。 店内快適。
「ふぐっ……ソージの優しさが目に染みるデス……この涙は嬉し泣きか、それとも悲しみの向こうへ到達したことによる涙か……」
泣き崩れるベル。 嘘泣きだろうからつっこまないし温情も無い。
「……はぁ」
再びドアを開ける。 見上げたベルの顔は涙の跡すら無かった。 やっぱり嘘泣きかてめぇ。
「ソージ……」
ベルの表情に徐々に光が戻る。 だが現実はそんなに甘くないし優しくない。
「暇なら外の掃除でもしとけ」
ベルの前に箒とちりとりを置く。 ベルの表情が一瞬で凍った。
「じゃ」
そう言ってピシャっとドアを閉めた。 これで良し。 好感度操作は基本だよな。 好感度下げ下げタイムだから。
……そういうの意識しないでやってた部分もある。 否定しない。
外から「ぬぉー! こうなったらやってやるデース!」 って声が聞こえたけど俺は無視することにした。 なんか怖いし。
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あの時からおよそ30分ほど経過しただろうか。 外で騒がしかったベルはすっかり大人しくなった。 というかなんも聞こえなくなった。 死んだか? 飲み物は渡したからくたばってはないだろうけど。
ちょっと様子見の為にドアを開けて外を確認した。 すると────
「ぬぉーっ!!?!?」
鳥の群れにボコボコにされてるベルが居た。 俺はそっとドアを閉めた。
「ちょーっ! 見たなら助けるデス!」
俺もさすがにこれはマズイと思って渋々ドアを開けて近寄った。 鳥の羽音ってこんなに煩かったっけ?
「ピィーっ!」
指で輪を作って指笛を吹くと、ベルに群がってた鳥たちは徐々に離れた。 代わりに俺の周囲に集まってベルを睨みつけてる。
肩から、頭の上から、足の近くからベルに対する怨みが伝わってくる。 つーか敵意MAX。 何したお前。
「何がどうなってこうなった?」
俺がそう言うと、ベルはヨロヨロと立ち上がった。 髪はボサボサで身体中羽だらけ。 服とかちょっと規制入りそうなくらい乱れている。 これ18禁じゃないから謎の極光入れないと。
「え、えーっと……実はカクカクシカジカで」
「おい鳥たち、あいつもっぺんボコっていいぞ」
そう言うと周囲の鳥は「クケェーッ!」と騒ぎ出した。 この鳥の名前何? 俺の知識外なんだけど。
「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょーっ! 分かった、真面目にやるデス!」
なぜ最初からそうしないのかこいつは。
「えーっと、まずワタシはソージから掃除用具を渡されたデス」
「だな」
「で、仕方なく外を箒で掃いたデス」
「それで?」
「誤ってこの子達のエサまで掃いちゃったデス」
「だからブチ切れてんのかこいつら」
まぁ飯食ってる途中で取り上げられたらブチギレるわな。
「じゃあよそ見してたことを謝罪して、あとは代わりの飯でも持ってきてやれ。 トウモロコシとか」
パンは与える意味が無いらしい。 つまりパンちぎって与えてる公園の老人は鳥を太らせてるだけ。
「わ、分かったデス……本当にすまなかったデス!」
しかし鳥たちはまだ納得してない様子。 やはり飯か? もしくは言語が通じないか。
すると、肩に乗っていた1羽の鳥が話しかけてきた。
「ゲッ、ゲッ」
「ふむふむ」
鳥の言葉を解釈するとこうだ。
「代わりの飯を寄越すか、嬢ちゃんが俺の卵を産んでくれるなら許すってさ」
「ワタシが!?」
「良かったな。 貰い手見つかったぞ」
「何を言ってるデスかこの鶏肉はー!」
ベルは俺の肩に乗ってるその鳥を掴もうと動くが、鳥は既に空を飛んでいた。
それとな、ベル。 お前は一つ間違いを犯している。
鶏肉って鶏限定だから正確にはただの肉だ。 だってこいつの品種知らねぇし。 謎肉だと日清になっちゃうし。
再び肩に留まった鳥の顔はドヤ顔に見えた。 こいつなりのキメ顔なのだろうか。
まぁ所詮は鳥と人間ってことでね。 種族の壁は越えられなかったみたいだ。
その後、なんやかんやあったけどババアの冷凍庫からトウモロコシを強奪することで事なきを得た。 許せババア。
そして────
「ほら、腹膨れたなら住処に帰れ」
ピュイっと指笛を吹くと鳥達は羽ばたいて去っていった。
「ずっと気になってたけどそれどうやってるデス?」
「知らん。 やってみたらなんか出来た」
やっぱりイメージの力は偉大だ。 「こうすれば出来る」と思えば大抵の事はできるようになる。 つまり想像の具現化。
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「暑っついデス!」
さすがにベルを店内に入れてやると、汗が一気に吹き出してきたのかベルは汗だくだ。 ちょっと汚ね。
「ソージー タオルクダサーイ」
「タオルぅ? ちょっと待ってろ」
草履を脱いで奥に行く。 ババアはどうしてるかいなっと。
「あ、ババア。 タオル1枚借りるぞ」
「あいよ。 洗面所にあるから自由に持っていきな」
ババアは今日も元気だ。 野球中継見てら。 俺はアストロプラネッツ推し。 多分だけど名前がカッコイイチーム名ランキングトップ3に入る。
「タオルだじょー」
タオルを持って店に戻ると、上半身裸の痴女が居た。 よく見なくてもベルだ。
いや、ブラは着けてるから裸では無いが、とにかく絶賛脱衣中のベルが居た。
「通報する前に一応聞いておこう。 何してんだお前」
「通報する前提なのおかしくないデスカ!?」
ベルは男に見られているというのに隠そうともしない。 そういやこの女自室では裸族だった。 部屋着はTシャツ1枚だった。
「もう一度聞く。 何してんだお前」
「見ての通りデス!」
「俺が見て得られた情報はお前が外で脱ぐ痴女だってことだけだ」
「酷い感想!」
ベルはガクッと崩れる。 服着ろや。
しょうがないからタオルを渡してそれから話を聞く。
「あまりにも汗が凄くて、服が濡れて透けちゃうから脱いでたデス! どうせ人来ないしソージなら見られても構わないし。 なんならもっと見て!」
「やっぱ変態か」
「No! 恋する乙女デス!」
「お前今乙女に有るまじき格好なの理解してる?」
まず男の前で下着姿(こいつしれっとスカートまで脱ぎやがった)なのアウトだし、そんでもって俺は俺で平然と話続けてるし。 俺悲鳴あげた方がいい?
「それを言うならソージだって! 年頃の男の子なのに爆乳美少女の下着姿を見てなんとも思わないなんて異常デス!」
「自分に対する自信がすごいなこいつ」
タチが悪いことにその通りなのがムカつく。 とても大きいです。
ベルが着替え終わるのを待つ。 何か言われても面倒だから極力見ないようにした。 見ても今更感あるけど。 俺は既に紅葉という女に全裸を見られてるから失うものは無い。
「ん〜〜ぷはっ! 着替え完了!」
ベルからタオルを受け取ってそこら辺に置いておく。 洗濯機に入れるのは帰りでいい。
「……本当にやる事なくなっちゃったデス」
さっきの出来事含めても経過したのは僅か1時間程。まだまだ時間はたっぷりある。
「ソージ、お話しましょ〜」
そう言いながらベルは再びカウンター挟んで向こうの椅子に座って、カウンターに身を任せる。 ガラス張り……
「……まぁ、暇だしな」
「ヤッター!」
俺も瑠姫さんとのやり取りにひと段落着いた所だし、スマホのバッテリーを消費しまくるのもあれだし。 人見知りとコミュ障激しい俺にまともな会話ができるのか。 俺はナチュラル無礼な所があるから気をつけないと。
「じゃあ早速……ソージのナニのサイズを教えて欲しいデス!」
「もう1回外行くか?」
まぁ相手が無礼なら容赦しないけどな。 マジで。
「冗談冗談……じゃあお互いに一つずつ質問しあうというのはどうデス?」
「それなら、まぁ……」
「ちなみに質問には絶対答える義務があるデス」
「やっぱ辞めるわ」
「No! 逃がさないデス!」
なるほど魔王からは逃げられなかったな。 じゃあ今ここでこいつ殺すか。とりあえずマヌーサかけてからザラキで。 無理ならパルプンテに賭ける。
「じゃあソージからどうぞ!」
「あー……じゃあ無難に」
前々から気になっていたことだ。
「お前がうちの学園に来た時、何故か俺の隣に席があったのはお前が仕組んだことですか」
しかしベルは無言で横を見た。
「……黙秘権を行使するデス」
「おいてめぇ早速ルール違反してんじゃねぇよ」
「違うんデス! ちょーっとユウにお願いしてみただけデス! 本当にそうなるとは思わなかったんデス!」
「やっぱてめぇじゃねぇか。 じゃあ同じクラスになったのは?」
「……てへっ♡」
「おっしゃちょっとあのロリガキしばいてくる」
「ストーップ! ストーップ!!!」
ベルに宥められて大人しく席に座る。 でもいつかしばく。
「じゃあ次お前な。 性関係以外なら答えてやる」
「じゃあソージの性癖を」
「もしかして日本語が不自由?」
「イギリス人ですから☆」
「なんだこいつお前だけ夕飯にサルミアッキ出すぞ」
「それ、イギリス関係無いデスよ……」
サルミアッキ、要するにクソまずい飴。 俺は食ったことない。
「じゃあ……ソージの好きな人のタイプを!」
「それも性に関することだろ」
「まぁまぁまぁグレーゾーンってことで」
「それで誤魔化すには限度があると思うが……」
しかし今言われて振り返る。 俺の好みねぇ……特に「これ!」ってのが無いんだよなぁ……なんとなくビビッときたキャラを好きになったりするけど。 傾向あるかねぇ……
「…………わからん。 傾向が無さすぎる」
「まぁソージの推しが大きい胸寄りなことは知ってるデスけどね」
「マジかよ」
そうか……まぁ小さいよりは大きい方がいいか? でも小さいのも好きだし。 つまり良さがある。 でもそうだな……うん。 俺は巨乳好きだな。 おっぱい好きは陥没乳首を好きになって初めて真理に到達すると思う。
「髪は長い方が好きデスか?」
「まぁ、ショートよりはロング派」
「家庭的な女の子は好きデス?」
「嫌いじゃない」
「金髪は?」
「嫌いじゃない」
「つまり貴方のような好きな人はワタシデスね?」
「制度ガバガバなアキネイター辞めろ」
何この無駄な時間。 こいつランプに封印して空の彼方に吹き飛ばしてぇ。
「でもおっぱい大きくて金髪ロングで家庭的な女の子ってワタシくらいしか居ないデス!」
「奢り昂りが凄い」
次元を落として出直してこい。 2次元になってから来い。
「でもソージは処女厨デス」
「は?」
「つまりソージとワタシは相性抜群!」
「ダメだこいつ手遅れだ。 病院紹介してやろうか?」
「凄く優しい目で見てきた!」
ベルが叫ぶ。 うるさい。 声高いから耳痛くなるわ。
それと俺は処女厨じゃない。 俺はただお互いに初めての関係でありたいだけのロマンチックボーイだ。 ほら、キスも行為も誰かと比べることになっちゃうし。 それが嫌なだけ。 つまりは臆病。 おk?
「じゃあ次俺か…………あ、そういやお前以前のインタビューで「Gカップ」とか言ってたけどあれ嘘だろ」
「ギクリ」
「だってお前のブラ選択した時見えたけどさ、タグにGってかかれてなかったぞ」
何よりそのサイズでGは無理があると思う。
瑠姫さん>遥さん>ベル>紅葉>天音さん>皐月さん>泉ちゃん>>>>>>>>>>>>>>>>>>悠ちゃん
だもの。 要するに俺の視認サイズではGを超えているのだ。
「バレてしまってはしたかないデス……そう! ワタシのホントのサイズは〜I! Iカップがワタシのサイズデース! はーっはっはっは!」
ベルが胸を主張するように身体を反らせて高笑い。 気になってたから聞いたけど実際を知ると興味が一気に無くなるな……正直もうどうでもいい。
「ちなみに、Gってのはクレハのサイズデス」
「えその情報言う必要あった?」
正直クソどうでもいいんだけど。 どうせ紅葉の下着も俺が洗ってるからサイズなんて知ってるし。 あの女、途中から俺に干させてるからな。
ちなみに、初期では紅葉はだったのにGになってるのは初期とその後で胸のサイズが違う現象。 要するに筆が慣れてくるとサイズも変わってくる奴。 某少女みたいに。 まぁ紅葉は実際に大きくなってきてるけど。
「じゃあ次はワタシデスねー」
ベルは人差し指を顎に当ててうーんと唸る。
「……あ、式はいつにするデス?」
「お前の葬式なら明後日だぞ」
「あれワタシ今日死ぬデス?」
ベルは「そうじゃなくて」と話を区切る。 でももう打ち合わせ済んでるし……
「結婚式デス!」
「誰の」
「ソージとワタシの」
「俺と同姓同名の人が近くに居たとは驚きだな」
「もろソージデスよ」
「え……ダルっ」
「人生で初めて結婚式の日程について聞いたけどそんな返しされるとは思わなかったデス……」
項垂れるベル。 俺もこんな返しするとは思わなかった。
「む〜……何が問題デスか」
「問題?」
「さっき聞いた通り、ワタシの容姿はソージの好みの範疇デス。 ワタシは自分が美少女であるように努力もしてきたし、セールスポイントであるおっぱいだってかなり大きいし形も良い自信があるデス」
「あっそ」
「あっそって……」
でもそうとしか言えない。 こいつがどう努力しようと結果は変わらない。
「お前がどうしようと俺の結論は変わらねぇ」
1回深呼吸して心を込めてはっきりと。 俺の絶対価値観は変わらない。
「お前がこの次元に存在している時点で対象外だ」
「元も子も神も仏もぉ!」
ベルが膝を着いて床に拳を叩きつける。 汚れるぞ。 もう手遅れかもしれんが。
「こうなったら無理やりにでも既成事実を作るしか……」
ベルが不穏な呟きを放った。 おい、てめぇ次やったら家追い出されるのわかってんだろうな。
「ソージ! 今日は一緒に寝てもいいデスか?」
「絶対ダメです」
「そんなぁ!」
逆になぜこれでいけると思ったのか。 こいつやっぱり病院行った方がいいんじゃね?
「じゃあ次俺か……あ」
今の今まで忘れてたけど、1番聞きたかった事があったんだった。
「お前俺の過去を知ってる云々言ってたけど、それは本当か?」
なんてことないように聞くと、ベルは真面目な顔になる。 え、なんで?
「……本当デス」
「そうか……」
つまりこいつは俺にとって最警戒人物に正式認定することになる。 危険だ。
「じゃあつまりお前は…………」
ベルの喉がゴクリと音を出す。 唾を飲んだ。
「俺がノートに必殺技の詳細設定を書き込んでいた事を知っているのか?」
「いやそれは知らないし知りたくなかったデス」
「あれー?」
知ってると言われたからこーゆー知られると恥ずかしいことかと思ったんだが。 あのノートはちょっと前に書いてたファンタジー小説に活用されてました。
「じゃあ俺が蔵に隠してるブツの事か?」
「いやそれも知らないデスけど……」
「じゃあ! 俺が泉ちゃんの成長記録を書いている事か!」
「どうしよう……夫の知りたくない秘密が次々に明かされていくデス」
じゃあ何を知っているんだこいつは。 泉ちゃん成長記録なんて俺の最重要機密の一つだぞ。
「そうじゃなくて、ワタシが知っているのはソージの子どもの頃についてデス!」
「あそっち。 なーんだそんなことか」
「そんなことって……」
別に俺のガキの頃なんて誰も興味無いだろうし、それを知ってる程度なら別にいいや。
「あんなことがあったのにそれでいいんデスかソージは!」
「あの程度のことだから別に。 お前が誰かに話そうと黙っていようとしょーじきどうだっていい」
それで同情哀れみ憐憫エトセトラ、そんな感情抱かれたって過ぎたことだ。 過去は変えられないし、時は不可逆だ。 死者が生き返らないのと同じだ。
それに、それが関係して学園に居づらくなって俺が不登校になったとしても別に困ることは無い。 生活費なら家に入れば稼げるし、そもそも通う理由が「悠ちゃんに強制されて」な以上、自主退学は不可能でも行かなきゃいい話だ。 不登校になって特待生取り消しになってもあの学費程度余裕で稼げるし。
「良いんだよ気にしなくて。 振り返るとしょーもないイベント、ちょっとした出来事、運営に問い合わせするまでもない小さなバクだ」
「当人のソージがそれでいいならそうするデスけど……」
ベルは何か言いたそうにするが、諦めたように口を閉じた。 それでいい。 無関係なら傍観決め込むのが得策だ。下手に手を出して悪の正義マンになるか、正しき傍観者になるか。 この問いに意味は無いだろうが、俺は傍観主義だ。この世界の神みたいに。
「でも……」
「あん?」
「もし辛くなったら、いつでもワタシが力をあげるデス」
ベルがカウンター上の俺の手を両手で包み込んできた。 汗でべちょっとしてる。
「…………」
俺はこの時何かを言うべきだったのかは分からない。 ただ、ベルのその姿に少し目を奪われたのは黙っておくことにする。 小さな秘密。 つまりは緻密な機密。 ネタの擦りが凄いな。
その後、客が数人来たりチンピラが来てちょっとした騒ぎになったりベルが不穏なこと言ってたりしたけど今日のバイトは終わった。 ベルはチンピラを引き寄せるフェロモンでも出してるんだろうか。
「んじゃなー」
「あいよ」
ババアの世話をして店を後にする。 戸締り確認。 鍵は受け取っておいた。
帰り道、ベルと歩いて帰る。 逃がさない意志なのか、がっちり掴まれて逃げられない。
「今日の夕飯はなんデスカー?」
「お前はサルミアッキで、他は……」
「あれ本気だったデス!?」
相変わらず騒がしい女だ。 こいつが静かになる時は死ぬ時じゃなかろうか。
「ねぇソージ」
「何?」
「今夜は部屋にお邪魔していいデスか?」
「……邪魔するだけな」
「イヨッシャァー!」
ベルは天高く拳をかかげる。 まぁ、うん。 それくらいなら許容しよう。 切肉断骨だ。
「それと……」
「まだなんかあんの?」
「今日の夕ご飯はワタシが作ってもいいデス?」
「……爪とか髪とか血とか唾液とか入れない?」
「入れるわけないデス!」
「じゃあ……まぁ」
そう言うとベルは満足気な表情で見てくる。 何わろとんねん。
「ふっふっふっ……楽しみにしてるといいデス」
「もしかして挑戦受けてる?」
「愛情たっぷりの晩ご飯で悩殺デス!」
「愛情とかいう異物混入なら食わんぞ」
「やん♡ ひねくれ者を演じてる照れ屋さん♡」
「うっざ」
うざすぎて引き剥がしたいが、謎の馬鹿力で腕を抱かれてるから逃げられないし、ちょっとでも離れようとすると更に力を込められるから逃げられない。 助けて○ュオーラ。 持て余すな。
「ソージ」
「だから何?」
ベルは夕日を背に笑顔を浮かべる。
「愛してるデスよ〜♡」
「はいはい」
ここで本気で離れようとしないあたり、まだ俺も甘ちゃんだと思い知った。
ただ────
次元を問わずに心から笑う乙女の美は変わらないと思った。 これも秘密。
─────────────────────────
「そういやお前、今日ずっとブラ透けしてたぞ」
「ハッハッハそんなまさかメタルマサカー」
「冗談じゃなくてマジだ。 ずっと黄色のブラが見えてた。 お前透け対策しろよ」
「いやいやいや。 ワタシはちゃんと中に着てるデスよ。 ほら!」
「シャツのボタン開けて俺に確認させる奇行は今更だけど、覚悟して聞けよ? インナーも何も見えねぇ」
「……あっ……」
「そっと閉じたって事は自覚したって事か」
「ソージのエッチ」
「これが理不尽ですか」
「見られたからには責任取って結婚してもらうしかないデス!」
「もしそうなら俺は紅葉と結婚することになるが?」
「……ソージはワタシと一緒にナイジェリアの籍を取得する気はあるデス?」
「重婚目指すな」
HNY!!!
新年、あけましておめでとうございませんでした。
皆さんは新年を越せましたか? 中には2022年に取り残されてしまった人もいると思います。 かくいう私も取り残されてしまいました1967年に。 出てくるネタが古いのはこれが原因です。
子どもの皆さんはお年玉を貰えるというということで、ウキウキしていた人もいると思います。 そのお年玉はどれだけの人がお母さん預かりになりましたか? 私の家では中学生までは1部残して親預かりでした。
私はあげる側ということで、少ないお給料からどうにか年収して5人ほどに配りました。 年齢によって値段が変わるシステムなので、全員合わせて2、3万円消えましたね。 なので私にもお年玉ください。 もしくは賃上げ。
三賀日ということで、色々食べすぎて太ってしまったって人もいるだろうと予想しています。 このデブが。
私は1月入ってから殆ど食べておらず、一日一食、もしくは水のみという日が多かったです。 超省エネで生活していました。
というわけで私は先月と比較すると結構痩せましたね。 不健康に磨きがかかりました。
というわけで次回も駄菓子屋バイト編は続きます。 3日目は予想通りあの娘です。 それでは次回01/20でお会いしましょう。 ではではー




