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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
6……6……6……3回言ったから悪魔の数字だね
64/133

シュレディンガーの○ん○ん つまり一般向け男キャラは女である可能性があるということだ

「────っはぁ!」


そこで目が覚めた。 まさかの夢オチ!


いや、ここが現実とは限らない。 落ち着け。 落ち着いて数を数えるんだ。 えーっと口座の暗証番号が9901で俺の年齢が不詳で俺のスリーサイズが上から94-59-89だ。 俺にそんなくびれ無いけど多分女体化したらこんくらい。 自分の女体化とか想像するんじゃなかった。


次は現状確認だ。


まずここは俺の自室。 今は寝起きで左右に紅葉とベルが寝ている。 重政はまだお眠。 時刻は5時12分。 今日の日付は考えてないから忘れたけどだいたい7月上旬。 よし、同衾してる以外は大丈夫だ。


自分の頬を抓る。 ほっぺ抓りってなんつーか離した後が痛い。 ジンジン来た来たーっ!


とりあえず現実で間違い無さそうだ。 いや、2次元だから現実ではないんだけど、俺にとっては現実で間違いないな。


つーか、そもそも現実ってどうやって判断するんだ? 基準と定義が無いじゃん。


仮に現実が自分の生きてる世界、存在する世界の事を指すなら、2次元も俺の世界で、画面の向こうだろうと俺は存在する。 俺ではない俺が存在する。


つまり、現実とは本人が現実だと思った世界が現実で、たとえ画面の向こうだろうと2次元バーチャルじゃなくて現実リアルなんじゃなかろうか。 その理論だと俺は可愛い恋人が居て娘も居るってことになるな。 そして童貞じゃない。 俺は勝ったのか……




とまぁ、脳に深刻な異常があること以外は無事だからとりあえず大丈夫だろう。 よし、さっさと準備するか。


顔を洗って歯を磨いて、色々やった後厨房に向かう途中でふと思った。


なんで……夢のあの生徒は女装してたんだろうか……


─────────────────────────


時飛んで放課後。 久しぶりの生徒会活動である。 久しぶり(2日)


生徒会活動といっても、目安箱の中身を処分もとい処理して、各書類に目を通して予算精査。 その程度。何より、この生徒会執行部、役員こそ少ないが精鋭揃いだ。


紅葉という1人でこなしてきたハイスペック生徒会長を始めとして、対人最高戦力のコミュ力の権化ベル、調整から後始末まで何でもござれ莇、皆のヒーリング泉ちゃんが居る。


そして、それら全てを兼ね備えてはいないが超ハイスペックな柳奏士副会長が居る以上、何の問題も無い。 問題を起こすのは決まって外部の者じゃなくて身内だ。 うん、それを除けば無問題。


俺の猟奇的ポジティブと自画自賛が炸裂(不発)したが、この星の泉ちゃんは可愛い。


で、今は仕事が一段落して休憩中。 ふいー。


「奏士さん、お、お茶をどうぞ」


「ん、あぁ1009せんく


泉ちゃんから泉茶んを受け取って飲む。 なんというか泉ちゃんをこの身に取り込んでる気がして興奮して────こねぇよ。 そこまでの狂気は俺に無い。


それにしても、thankyouをどう読むかで数字が変わるよね。サンキューは39、センキューは1009って。 この前悠ちゃんは「ファッキュー」って読んでた。 理事長なのに学が無いのか、ただ俺が罵られただけなのか。


俺お手製のエクレアをお茶請けに泉茶んを飲んでほっと一息。 エクレア美味いな……俺ってばさっすが。 さすがす。


目をしいたけにしながらエクレアを食べる紅葉と、そんな紅葉にエクレアを食べさせて喜んでるベル。 動物園のペンギンの餌やり見てる気分。


莇は無言で食べてる。 これ以上何を言えと?


口の小さい泉ちゃんには少し大きかったようで、両手で持って一生懸命食べてる。 嗚呼……これが†楽園エデン†か……†はちゃんと必要。


ちなみに、俺と泉ちゃん、ついでにベルが湯呑み派で、紅葉と莇がティーカップ派。 意外と上品なのだ、紅葉は。


しっかし……美味そうに食べるなこいつ。


別に食い散らかすとかそんなことはなく、しっかりと残さず(ピーマン等を除いて)綺麗に食べるのが紅葉の長所。 口の周りに少しだけついてるのも見方によっては長所。 まぁ長所の意味の捉え方次第だよね。


紅葉にそっとウェットティッシュを渡しつつ、俺もエクレアをもう一つ齧る。 うーん……美味いけど、今日の緑茶と合わせるとチョコの部分が少し苦いな。 配合変えるか。


泉ちゃんの頬張る姿をしっかりと脳内録画しながら茶を飲む。 その時、生徒会室ここに近付いてくる足音が聞こえた。 俺の耳は地獄耳ヘルみみ


だから消しゴムを投げて扉の鍵を閉める。 これで入ってこれまい。


「失礼しま────あれ、開かない……ちょっとー?」


高い声とドアノブをガチャガチャと捻る音がするが、扉の鍵はかかってるから開くことは無い。 内側から開けなければなぁ!


「全くもう……ソージは毎回何やってるデスか……」


……内側から開けなければなぁ!


しかし願いは虚しく潰えた。 ベルが立ち上がって扉の鍵を開けて来訪者を招き入れる。


「はぁ……君は本当にツンデレだなぁ」


入って来たのは夢に出た女子制服を来た男。 こ、この声は!


「や、お久〜」


「……誰だお前」


なんか気軽に手をヒラヒラさせて近付いて来るけど知らない人ですね。


「いやボクだよ! 同じクラスの滝鞠焔だよ!」


「……紅葉、知ってるか?」


紅葉に耳打ちして聞いてみる。


「……誰?」


「いや記憶力酷いな君たち!」


謎の少年(?)がツッコミを入れる。 でも第2学年首席と次席の記憶力を持ってしても知らないという事は新キャラか赤の他人だな。 じゃあ帰れ。


「おい、新参ならまず名乗れよ。 読者が困惑するだろ」


「誰だよ読者!」


何故かぷりぷりぷっぷくぷーと怒ってる女装男子。 なんでこんなに怒ってんの?


「だから僕だよ! だいぶ前に出会ってからクラスや授業で話してるでしょ!」


ふむ……見た感じ嘘偽りは申してないな。 それなら……


「なぁ、俺たちは昔あったことない?」


「……奏士がナンパ発言」


「バカはエクレア食べて黙ってろ」


「♡〜」


俺が手に持ったままだったエクレアを紅葉に渡すと無言で食べ始める。 あ、そういやあのエクレア俺の食いかけだった。 まいっか。


「ちょっと待ってろ」


滝鞠焔を名乗る少年にはちょいと時間を貰う。 えーっとスマホスマホスマホッホ。


「えーっと……何してんの?」


「お前を調べてる。 あ、出てきた出てきた」


ポチポチしてるとこいつの情報が出てきた。 成程成程……


「俺の独自のルートから手に入れたスマホ────のモバ充で充電したこのスマホで調べたところ」


「それスマホと情報そのものは一般流通してる物じゃん」


「黙らっしゃい。 それで調べたところ、お前は同じクラスの滝鞠焔だと確証が取れた。 久しぶりだな」


「いや2日ぶりだよ」


とりあえずシアター爺ロッソで滝鞠と握手。 のついでになんか手の甲抓られた。


「すまんな。 出番無かったから忘れてた」


「む〜 忘れてたなんて酷いよ〜」


滝鞠が頬をぷくーっと膨らませてプンプン怒ってる。


「うーわ、その膨れっ面ウザ」


「酷くない!?」


というわけで読者も完全に忘れてたであろうキャラ、見た目は女で中身は男、その名も滝何とか! 真実はいつも危篤! まぁ殺人事件だからあながち間違っちゃないよね。


「調べたって、どこで調べたの?」


「な○うに載ってた」


「なんでボクの事が○ろうに載ってんの!?」


俺も知りたい。 でも名前入力したら出てきたから多分偶然の一致。 もしくは俺らの事をどっからか観測して本にしてる奴が居る。


閑話休題


「────んで、何しに来たお前」


さらっと人のエクレア食って茶を飲んで談笑している滝鞠コイツにもう一度聞く。 なお、泉ちゃんは初対面だからまだ警戒中。


「あ、そうそう忘れてた! 生徒会の皆には相談というかお願いというか、手を貸して欲しいんだ」


「手を? なんでまた」


「……もしかしてスワッ○ング」


「右手の恋人をデスカ!!」


「死ぬか黙るか死ね」


「それ選択肢になってませんよ」


「すっ、スワッ……」


泉ちゃんが顔真っ赤にしてるぅ〜 マジヤバみ〜


俺の感想はどうでもいいや。 滝鞠の相談事だ。


「実は……最近ストーカーができちゃって……」


「ストーカー?」


一応聞き返すと、コクリと頷く滝鞠。 でもこいつなんで少し嬉しそうなんだろうか。


「……意外と重大な案件」


「実害は出てるのですか? もしくは証拠など」


「あ、ストーカーっていっても後をつけられてるとかじゃないよ! ただ毎日ラブレターが届くだけ」


「それ家突き止められてんじゃん」


どうやら滝鞠の被害は割とヤバめだ。


「それなら一学生自治の俺らよりもサツにでも行った方がいいだろ」


ただ人との諍いだとか学園の問題じゃない。 立派な事件だ。


「ボクも最初は考えたんだよね。 でも内容が内容でさ。 とりあえず手紙の内容を見てよ」


滝鞠がバッグから白い洋封筒を取り出した。 受け取って中の手紙を確認するとそこにはくっそ汚い字で


『キミが好きだ 俺の女になれ deer you are nightより』


って書いてあった。 うわ汚ったな。


「……読めない」


「幼稚園行った時の子どもの方が字がキレイだったデス……」


「というか、滝鞠殿も奏士殿もよく読めましたねこれ」


「えっと……これは……」


手紙を覗き込んだ全員が苦い顔をしていた。 泉ちゃんですら。


「せっかく貰ったものだからね。 ボクは頑張って解読したのさ」


「俺は……いやそなことより」


「……はぐらかした」


「はぐらかしたデス」


「どうせ自分も字が汚いから慣れてるんですよ。 それで読めたんでしょう」


「陰口は真正面から言えよ。 ほら言ってみろ」


「……童貞」


「早漏」


「粗チン」


「包茎」


「本当に言われるとは思わなかったしなんで全員が全員俺のJrのこと言ってんの? 滝鞠てめぇはなんで参加してんだ」


これ泣こうかな。 生徒会室を俺の涙で満タンにしてやるぜ。


でも俺は長男だから泣くのを我慢出来ました。 流行りに乗っかるのが遅すぎたわ。


「つーかこれ最後の送り主クソダセェ」


まず英語なのに最後だけ日本版なのが気になるし、そもそも英語のスペル違うし。 これだと訳すなら『鹿 貴方は夜』じゃん。 鹿邪魔やんけ。


多分だけど『|Dear your knight(親愛なるあなたの騎士)』って書きたかったんだろうなぁ……そんな努力に生徒会役員が腹を抱えて笑った。 泉ちゃんはどこをどう読めばいいのか解読してる。


つまりこの手紙を書いた人は鹿だけに馬鹿なんだね。 でも間違えた方も正解も発音は似てるからそこは知ってて偉いね。


「一応被害届は出したけどさ〜……ぶっちゃけ手紙が毎日届く以外はなんにも無いからお互いどうしようもないんだよね」


確かに、と思う。 警察が動くのはあくまで事後。 これだけなら届けを受理して終わりだろう。


「……お前はどうしたい?」


「うーん……正直やめて欲しいとは思ってる。 さすがに読んで捨てるのが面倒になってきたし」


「あ、一応読むんだ」


「そりゃ貰ったもんだしね。 ボクは黒山羊じゃないし」


まぁ黒山羊は捨てないけどな。 食べるし。


ちなみに、今の紙は化学物質だとかインクだとか、体内に入ると有害なものを使ってるから食べちゃアカンで。 あくまで、完全植物由来の紙だった時だけね。 つまり現代の白山羊と黒山羊はえげつない分解力を持ってるってこと。 なんの話だったか分かった?


「じゃあ確認するぞ。 依頼内容はストーカー被害の解決もしくは解消。 以上だな?」


「いや、今回は依頼じゃなくて友達に相談しに来ただけだから。 さすがに危ない橋渡らせる気は無いよ」


友達……あ、あいつらのことか。 まぁ確かに仲良いもんな。


「一応言っておくと、君も・・その1人だよ」


「……あっはい」


へー俺って滝鞠と友達だったんだー 初耳〜


じゃあお互い了承してないから知人ってことで。


「なら、とりあえずダミーでいいから監視カメラつけておくとか、効果は薄いだろうが張り紙しとくか。 なんかしらやっておいた方がいいぞ」


「じゃあ帰りにホームセンターにでも寄って帰ろうかな。 じゃまたね〜」


そう言って滝鞠は帰っていった。 結局何もしてないけどあれで良かったのか?


「……と、とりあえずどうするデス?」


「どうするも何も、私達は警察じゃありませんから終わるのを待つしかないでしょう」


「……でも、心配」


「なにか出来ることはないでしょうか……」


滝鞠のことを心配する4人はさておき、俺は冷めた泉茶んでも飲もう。 はー美味。


「ソージは落ち着いてるデスね」


「そりゃ俺らにできることなんてたかが知れてるしな。 下手に首突っ込んで抜けなくなったら面倒だし。 被害者の滝鞠には悪いが、何かしらの被害が出てサツが動くのを待つしかねぇよ」


1番いいのか軽犯罪法とか住居侵入とか、わかりやすくて被害が少ないのが楽。 面倒なのがストーカーの強行突破。 誘拐されたら滝鞠掘られちゃう。 ウホッ


「…………確かに、奏士の言う通り」


紅葉もエクレアを食べ始める。 そうかそうかそんなに美味いか。


ところで、それ最後の1つなんだよな。 俺1本も食べてないんだよな。 食ってたやつお前にあげちゃったからほとんど食べてないんだよな。 まぁいいけど。


すると俺のモノローグが聞こえたのか、紅葉は1口齧ったエクレアと俺を交互に見る。


「……あーん」


そして身を乗り出して、齧った方を俺に向けてきた。


ちなみに、紅葉は生徒会の職務中は特別仕様の会長席に座っているが、こうして茶休憩の時は俺らの席の方に移る。 その時もお誕生日席だが。


「いや大丈夫だ。 それはお前が食べんさい」


「……あーん」


やんわりと断ったら更に押し込んできた。 近い……


エクレアを頬にグイグイと押し付けてくる紅葉から少し離れる。 頬がエクレアのチョコでベタベタ……


「よし、まずは何故こんな行動に出たかその場から動かずに吐け」


「……奏士が欲しそうにしてたから」


「ならそれは誤解だ。 だからそれは食べてよし」


「……分かった。 じゃあ奏士が食べる」


「だからそれはもがっ」


話してる途中で太くて大きくて黒いものを口に捩じ込まれた。 自分でやってなんだけど表現がアレすぎる。 BL担当は滝鞠なのに……


「ぐっ……んっ。 いきなり何してんだてめぇ」


「……? 奏士に食べさせた」


「あれを『食べさせる』と認識してるならお前絶対看病とかすんなよな」


確実に病人の舌と喉がアッツアツのお粥で焼け爛れる。 コイツ変な所で不器用だな……


紅葉が何故こんなことをしたのか気になるが、唐突な奇行はいつもの事だから今更聞かない。 受け流すの器の大きさを持つ俺ってばすっごー────いかもしんない。


「じゃ、俺はこれからスーパーに用があるから先に帰るが、夕飯のリクエストはあるか?」


今日は別に決まってないし、特別に作ってあげちゃう。


「……ローストビーフ」


「作るなら休日だ」


「鮭のムニエル!」


「後2ヶ月早かったらトキシラズが手に入ったな」


「私は……かき揚げを」


「あ、それ採用。 なんか食材の好みはあるか?」


「特にはありませんが……夏野菜、もしくは桜えびを」


「ん、じゃあ桜えびは旬すぎてるから今日は夏野菜とえびの天ぷら使った天丼にすっか」


そして荷物を纏めてたら制服の裾をクイクイと引かれた。 この方法で呼ぶのは大抵紅葉だ。


「どした。 なんか欲しいものでもあったか? 300円までなら買ってやるぞ」


「……じゃあねるねる──じゃなかった」


「何? 要件は手早く手短簡潔に」


チョイチョイと手招きする紅葉。 何? 耳に息吹きかけたいだけならお口を糸状の呪で縫い付けちゃうぞ。


「……気をつけて」


紅葉にコソッと耳打ちされた。 はてさてなんの事やら。


誤魔化すためか、それともただの気まぐれか。 紅葉の頭をグジグジ撫でて部屋を出る。


「……お疲れ様」


「またデース」


「ではー」


「さ、さようなら」


「うーい」


さて、紅葉にも不器用な応援されたし、頑張りますか。


─────────────────────────


奏士帰宅後


「クーレハー なんでソージに『あーん』なんてしたデス?」


「……喝入れ」


「喝入れ?」


─────────────────────────


あの後、約束通り夕飯には天丼を振舞って紅葉にはねるねを渡してそして現在時刻は夜中の27:14! つまり3時! 眠い!


「……来ねぇなぁ」


3人(+1匹)が寝静まってから家を抜け出し、滝鞠宅の前までやってきた。 家は以前入手した生徒情報から知った。 あればこの伏線だったとは作者も知らなかっただろう……だってなんも考えてねぇもん絶対。


あ、ちなみにあれ「ハッキングした」って言ったけど、正確には悠ちゃんの学園長用アカウントのパスワードを見てそこから入手しただけだから、正しくは「クラック」だね。 犯罪だゾ☆ まぁバレなきゃ裁けないよね。


※ちゃんと情報は処分しました。


「時間間違えたかな……」


滝鞠の「毎日届く」発言、手紙は宛名も住所も切手も何も無い真っ白な洋封筒に入ってたことから、今日もここに来る筈。 もし犯人が人を使ってた場合は吐かせるか……


「あっつ……」


夏の夜は蒸す。 俺は髪が長いのと長袖長ズボン(夏は七分)なのも合わさって湿気が苦手だ。 ついでに夏も苦手。 つまり春と夏は俺にとって天敵だ。 秋は飽きるから冬よ来い。 フィンブルとか。


「もう帰ろうかな……」


待てど暮らせど来ぬ人をって言うが、ほんとに来ねぇよ帰りたい。 でも紅葉に応援されちゃったしなぁ……エクレアも貰ったし。


別に滝鞠が心配とかじゃない。 ぶっちゃけた話、あいつが誘拐されようが掘られようが死のうが、俺にとってはどうだっていい。


ただ、俺を友達と呼んで、普通に声をかける奴がどうでもいいことで悩んでいるんだ。 俺も暇だし、何より生徒会に相談されたことなら、執行部副会長として処理位はしてやろう。 こういうのは紅葉みたいな組織のトップじゃなくて、俺みたいな2番手が動くのが1番都合がいい。


それにしても……


「でっけ」


滝鞠の家とされた住所へ向かってみたが、立派なマンションだった。 くっそ……俺ん家の方が広いもんね! いや、無駄に広いから俺としても困るんだけどさ。


「──っ! 来た」


電柱の影に隠れて見張っていると、闇から人影が現れた。


「……あれって──」


デブ・所々欠けたサンダル・ボロジャージ・伸びた髭・フケだらけの髪の欲張りセット。 クソ暑いのに指紋防止の手袋と、白マスクと黒グラサンで顔を隠してるのがムカつく。


「ふーっ、ふーっ」


そう、あの時の痴漢犯だ。 あいつ解放されたのか……


「でゅふふ、フレイムたん……」


フレイム……滝鞠の事か? 確かにあいつの名前は焔だが……


「僕の気持ち、受け取ってくれるよねぇ」


マスク越しでもわかるにやけ顔と、グラサン越しでもわかる目。 巨体の怪しいヤツが息を荒らげながらポストをウロウロしてるシーンは見ていて吐きそウエ。


つーか一人称「俺」 じゃないのかお前。 キモイわ。


まぁこれはこれで最高だ。 なんてったってアイドルじゃなかった不法侵入の現行犯だ。 さーてピッポッパッと。


「ーっ! 誰だ!」


「うわやっぱり無駄にイケボ」


気付かれた。 なんか近付いてぇ〜〜来ぅ〜るぅ〜


「その声……あの時の小僧か」


今の俺はいつもの作務衣じゃなくて、黒単色のスウェットと黒い靴、それと黒のジャンパーを着て、フードを被って目元を隠している。


「分かる……分かるぞ。 俺は怨みを忘れない。 お前はあの時のだな?」


イケボだから目を閉じれば凄くいいのに目を開けたら環境汚染を加速させる姿が。 ねぇもう帰っていい?


「2度も俺の邪魔をしやがって……見られたからには生かして帰さん! ここでくたばれェ!!」


ドスッ、ドスッと迫ってくるイケボの変態。 あいつこんな夜中にうるさいな……


「フレイムたんは俺のものだァァァァァ!!!」


「うるさいちょっとうるさい。 深夜だから静かに」


殴りかかってくる。 動きは前より良くなっているが、それでも遅い。


「ぬぅぅぅん!!」


「だからうるさいって」


拳の側面を手の甲で叩いて起動をずらして、相手が引いて重心が移動した瞬間に腕を掴んで全力で引く。


「ひっ──」


すると相手は腕を引き戻そうとするから、相手が力を込めてから1泊置いて抜く。


「うわっ──」


相手は後ろに片足で大きく仰け反るから、そのまま鳩尾──ではなく、鎖骨と胸の中央の間の胸骨を狙うようにやや下向きのベクトルでショルダータックルをする。


「っだ!」


相手はバランスを崩して尻餅を着くから、少しでも体勢を立て直す前に腕を足で封じて首を、頸動脈洞を絞めて意識を奪う。


これぞ柳流攻護術-護の閉-《蛇締へびじめ》である。 名前のダサさはもう諦めた。 改名して《邪神簒奪》で良くない?


呼吸と意識を確認して後処理だな。


「って訳で、不法侵入罪と暴行罪の現行犯です。後ストーカーの疑いもあります。 一応動けないようにしてありますが、いつ暴れ出すか分からないんで早く来てください。 場所は────」


110押してから繋がったままだったからね。 そりゃこっちの話聞こえちゃうよね。 とりあえず警察が来るまで待つか……


一応、周囲の防犯カメラは確認済みだし、俺がここにいた事もちゃんと言い訳できるようにコンビニで飲み物やら本を買ってある。 読んだ形跡もつけてあるから、とりあえずは大丈夫だろう。


とりあえず買った料理本と週刊誌を読んで待つか。 ちょうどここにデカ目の椅子があるし。 なんか臭いしタプタプしてるけど。


……あ、このレシピ良いな。作ったら喜ぶかな。


─────────────────────────


「よっす」


「んお?」


数日後、学園の廊下を歩いていたら後ろから肩を叩かれた。 振り向かなくても分かるぞ滝鞠だ。


「どした? 俺は今日生徒会室には行かんぞ。 ちとやることがある」


「あっそう? まぁ別に生徒会室には用事ないけど」


「じゃあ何の用だ」


「それがさ聞いてよ! この前のラブレターストーカー、あれっきり一通も来なくなったんだよ!」


「お、それは良かったな」


あの後、サツに事情説明をした後、男は連行されて俺は女も抱かずに朝帰り。 かー虚し。


結局、犯人はあの男で、余罪はまだまだありそうとの事。 警察署の爺さん繋がりの筋からの情報だから多分本当。 ほんと職質された時はお世話になってます。


「ででさ! これってやっぱり奏士が解決してくれたの?」


「んなわけあるかい。 俺は男らしく健全に、家でエロゲーやってただけだ」


「健全って解釈次第だよねぇ……」


などと女装男子(パンツは女物、鉄壁のミニスカート)が申しております。 お前同人誌出たらまっさきに穴専になりそうだよな。


「そ? まぁ解決したなら誰でも良いけどさ」


上機嫌な滝鞠。 でもあんまりピョンピョンすると男のもっこりパンツが見えちゃう。 そうなったらこの作品が18禁になっちゃう。 あ、作品とか言っちゃダメだ。


「そういや、お前なんでストーカーなんてされてんの? こんな外見詐欺を」


「外見詐欺って言うなよ」


「悪いな。 こんなパッケージが本体を」


「更に悪口じゃん。 あ、でもそれってボクの見た目が可愛いって言ってくれてる?」


「いや俺はお前のこと可愛いとは思わないけどな。 所詮性欲盛んな雄猿だし」


「君本当に失礼だな……」


そう言いながらも滝鞠は「ん〜〜」と頭を捻る。


「……やっぱりアレかも」


「アレ?」


そういうと滝鞠はスマホをすいすい操作して、写真を見せてくる。 そこには可愛い系女性キャラのコスプレ写真が。


「ほら、ボクって女装コスプレイヤーじゃん?」


「いや「じゃん?」とか言われても初耳」


「あれ、そうだっけ? まあいいや。 ボクはネット上では『フレイム』って名前でコスしててさ。 イベントとかも言ってる訳よ」


「至って普通の人気コスプレイヤーだな」


「でしょ? でもほら、人気だと色々あるじゃん。 僕の場合、家の住所突き止められたりストーカーとか色々多い訳。 全く、ボクが世界一カワイイからって襲うなんて馬鹿なこと考えるもんだよね」


「馬鹿が言ってるからファンも馬鹿なんだろうな」


「黙らっしゃい! だから、こういうのはちょくちょくある訳よ。 前も、女性用のピンクのブラとパンツが届いたし」


「思いっきり『女装』って書いてあんのにか……いや、書いてあるからこそか? それにしてもブラは無いわー」


「ボクは男だからね。 見た目は1番合うのを、ボクがしたい格好をしてるだけで、中身は男なのに」


「いや男は普通に女物下着は履かないけどな」


「……でね、その下着を履いてみたら普通にピッタリなんだよね……いつサイズを調べたんだろ」


「……え待て。 履いたの?」


「履いたの」


「着けたの?」


「着けたの」


「ああ……うんまぁすげえ気になるけど置いとくわ」


あれ程力説しておいてブラ着けたんだ……貰った手紙は読むし、下着は着ける辺り律儀なのかバカなのか……


「……あ、じゃあ俺はそろそろ行くわ。 用があるならいつでも生徒会室に来い。 俺以外が解決の手伝いをしてやる」


「君はツンデレだな〜」


「うるせぇ。 んじゃな」


「はーい。 ばいばーい」


そうして俺と滝鞠は別れた。 やっぱり変なやつだなとは思う。


その後、話にあった滝鞠の下着写真が送られてきたが、資料用に保存したことは内緒。 さーて飯作ろ。

書く時間なし。 終わり!

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