ネタ切れ
皆がプール掃除を初めてから凡そ30分ほど経過し、約束の時間になったから俺も参入する。 交わした約束は守るのが俺の良いところ。
でもなぁ……行きたくないなぁ……
金持ちの子息子女が集まる学園と言っても、俺を覗いて皆遊びたい盛りのお年頃。 プール掃除なんぞ忘れて水遊びをしている。
天音先輩はブラシでプールの底を擦る巌先輩にちょっかい出して遊んでるし、紅葉達二年'sは体操服がびしょ濡れな事を気にすること無くホースで水圧上げて水遊びしたり、ブラシとタワシでホッケーしたりしてるし……頼金はブラシすら持たずに自前のカメラで写真撮りまくってるし。
泉ちゃんと悠ちゃんは隅でちょこちょこ掃除してる。 悠ちゃんは若人についていけず、泉ちゃんは先輩達に混ざりにくくて。 確かに一年生は泉ちゃんと頼金だけだしなぁ……あれだな、入社したら同期も同郷も居なくてポツンと基本一人になるのに近いな。 やっと同い年見つけたと思ったら先輩社員で、しかも皆から頼りにされてるから余計に疎外感覚える的な。 憶測だけど。 イメージだけでここまで語れるって凄いよね別の意味で。
俺が嫌々プール掃除に行こうとしていると、遊び疲れて休憩したいのか紅葉が近寄ってきた。
「……流石に疲れた」
「それが『掃除で』なら良かったのに」
掃除しないで遊んで疲れるとか子どもか。 子どもだった。
「…………」
さて、俺は一つ発見してしまった。 しかしこれを本人に言うべきか、それとも面倒臭いから無視するべきか……
0.136秒ほど迷った結果、俺は気付かなかった事にする方向に決めた。あれだ、シュレディンガーの猫だ。 誰かが観測するまで確定しないってやつ。 だから俺が『紅葉の体操服が濡れてブラ透けしてる』事に気付かなかったらしてないことになるのだ。 違う? 違う気がする。 違ったらごめん。
ところで話は若干それるが、『シュレディンガーの猫』ってのはそのシュレディンガー氏がその理論を否定して、反証実験を行った結果確定したって奴らしいぞ。 皮肉だね。
話の路線を戻す。 あ、トロッコ通り過ぎた。 なんか悲鳴が聞こえた気がする。 幻覚だな。 そこは幻聴じゃないのか。
「…………あ」
しかし俺が言うまでもなく、紅葉は自分で気が付いてしまった様子。 というか普通に気付かないもんなのか。 向こうのあいつらは……うん、見事に全員透けてる。 でも泉ちゃんが無関係だからどうでもいいや。 もし泉ちゃんも濡れ透けしてたらここにいる男の両目を潰して手足を縛り付けて鼓膜を破ってから記憶を消さなきゃならんから面倒臭い事しなくて良かった。 女は──まぁ、泉ちゃんと同性なら良いか。 でもベルはとりあえず危険だから縛る。 縛りますぞ。
「…………」
紅葉は三回ほど自分の胸元と俺を目で往復した後、無言で俺の来ているジャージのを脱がそうとしてきた。 夏でも長袖を着るのが俺流だから、上着がいつでも着れるのだ。 別に紅葉専用とかじゃないけど。 俺専用。
「どうした紅葉、急に俺の上着を奪うなんて。 追剥に目覚めたか?」
結局上着は剥ぎ取られた。 だって紅葉の力強いし破けそうだったから……炎天下で半袖とか焼けない? 俺日焼け止め持ってきてないぞ。 家で塗ったから。
「……エッチ」
「言い掛かりギネス世界記録に認定してやる」
流石の俺もここまで理不尽なものはそうそう見ない。
紅葉は俺の上着を肩に羽織って前を寄せてブラ透けを隠す。 それを最初にやるべきだと思うんだけど。 つーか俺のジャージ濡れたから着れないじゃん。
「っくち」
紅葉が何やら可愛らしいくしゃみをした。 そんなに濡れてるのに放置するから……まだサンシャインはグロウアップで暖かい越して暑いから直ぐに乾くと思うけど……
「このティッシュやるから休むなりなんなり好きにするナリよ」
「プススーっ!」
おっとまさかまさか紅葉にコロ助ネタがウケるとは思わなかったぞ。 僕ちょっと困惑しそう。
「奏士が他人を労る様なこと言うから……」
ブチ殺すぞわれ。
そう言って紅葉は俺が渡したティッシュで鼻をかみ、ゴミ箱を探してるのか辺りをキョロキョロ見回してとりあえず椅子の上に置いた。 ゴミ箱なら更衣室にあると思うが。
「……ココに置いておけば、奏士の使用済みティッシュに見える」
「おっととめどない殺意が」
俺が言うのもなんだけどお前って割とNBAだよね。 特に俺に対して。
「……前から気になってた事がある」
「どうした急に」
紅葉は何やら真剣な眼差しで此方を見ている。 何? もしかしてこの前弁当の唐揚げの味付けを少し変えたのバレた? んな事どうでもいいわ。
「私が来てから、奏士はいつヌいてるのか」
「もしかしなくてもお前の脳みそって欠陥品だったりする?」
流石の俺も予想外の質問だよクソが。 そこはデリケートなんだし誰も触れてねぇんだから話広げんなよ。
「……もしかしてオ○禁中?」
「OKわかった黙れ小娘」
もうヤダこいつ。 遠慮とか配慮とか辞書に無いのかしら。
「……溜まってる?」
「うるせぇ黙れブルマ履かせて校庭10週させんぞ」
なお、ブルマは目を凝らせばパンツの色が辛うじて分かる程度のパンチラのオプション付きである。 これでモテない男共の視線をキャッチできるよやったねたえちゃおっと誰か来たようだ。
しかし紅葉はこれに何か疑問があるのか、眉を寄せている。
「……? ブルマなら今履いてる」
…………そうだった。
何故か我が宿木学園の体操服は、ブルマかパンツ(パンモロじゃないぞズボンって意味だぞ歓喜したか?)か選べるんだった。 この時代にブルマって……よく文句とか言われないね。 選べるからか。 他人の服装とか無関心だから気にしたこと無かった。 学園入った時の説明会とか全く聞いてなかったし。 だって説明会聞かなくても大体の事は知ってたし。 それがコレだけど。
「……じゃあ『コスプレ一人リレー』の方が良いか?」
ルールは単純、一周走る事に違うコスをして走るというもの。 その場で着替えなきゃいけないので、足の速さよりも着替えの速度が重視させる。 着替え場所は申し訳程度のカーテンで仕切ってある。
ちなみに、俺はこれを悠ちゃんにやらされた時『悠ちゃんを泣かす人のコスプレ』をして走った。 悠ちゃんは嫌いなアスパラガスを食べて涙目だった。またやりたい。
「……走るのはちょっと」
「なんでまた。 多少走ったところで疲れるような身体じゃないだろ」
紅葉の身体能力は高いから、5400m程度平気だと思ったんだが。何周走らせる気だつってね。 一周いくらか知らんけど。
「……走るとおっぱいが揺れて……痛い」
ひえ。 殺気が二人分配達されましたよ。 怖っ。 特に悠ちゃんはなんであんな離れてんのに聞こえんの? 皐月さんに至っては無いわけじゃないから止めてその目。 どっかの煩いお嬢様の平野と比べたら有るから。
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「……っくし!」
「お嬢様風邪ですか? 確かにお嬢様はバカですけど、『夏風邪はバカがひく』は迷信ですよ?」
「神鳴……貴方、本当に私に従者ですの?」
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というか、『走ると』って言ってたが、前にバレーやった時も若干胸抑えてたよな。 とある証言では『左右バラバラに動いて根元から引きちぎられる感じ』とあったが、俺は男だからその感覚は理解出来ん。 悠ちゃんも別の意味で理解出来ん。 おっとやべ。 悠ちゃんが泉ちゃんの胸と自分の胸を触り比べて確かめ始めた。 泉ちゃんも悠ちゃんも大差無いぞ。 泉ちゃんの方が二センチ大きいだけだ。
「そうか……なんかスマン」
とりあえず目の前の紅葉──の後ろの誰とは言わないけどとある二年生ととあるロリババアに謝る。 二重の意味でそこには触れちゃいけないから。
「さて、と……やるか」
とりあえずプールサイドに置いてあるブラシを一本持ってそのままピョンとジャンプしてプールへ着地。 今更足を滑らすなんて馬鹿な真似はしない。 裸足だから衝撃が痛いけど。
「……とりあえずあいつらは無視しよう」
多分だけどあそこで遊んでる奴ら掃除する気無いよね。 確実に当初の目的忘れてるよね。 そんな奴らは無視して掃除始めy──
「あっ!?」
その時、背後から声がして振り向くとえげつない回転をしながら真っ直ぐ飛翔するタワシが。 一瞬ゴキブリかと思った。 危ねぇ危ねぇみっともなく悲鳴を上げる前に気絶して羞恥を晒すところだった。 そんなこと皆知ってるって? 羞恥の事実ってか。
……マジで知ってるとか無いよな? ここに居るメンバーなら紅葉か悠ちゃんくらいにしか知られてないはずだぞ。 もし知られてたら別にどうもしないけど恥ずかちい。 クッソくだんね。
やはり俺の方へ飛んできたタワシを、手に持ったブラシの持ち手で上へ弾く。 タワシはベクトル変化により回転しながら頭上へ登り、その後重力に従って俺の手元へ落ちた。
「悪ぃ柳! 大丈夫か!?」
「俺は平気だー」
タワシをこっちに近付いてくる不知火へと投げ返す。 タワシって案外手にフィットする。
「遊ぶのもいいけど掃除しろよー」
「「「はーい」」」
そう言って掃除再開──再開? 開始じゃねぇの?
……掃除開始! アーンドキ○グ・クリムゾン!
その後は特に危なげなく進んだ。 時々飽きた紅葉が寄ってきて少し話したりもしたが、汚れていたプールはピカピカは言い過ぎでも、綺麗にはなった。 後は水が溜まるのを待つだけか……だいぶ重要そうな掃除の風景をバッサリカットするなんてストーンストリーム俺。
そしてお昼ご飯。 言い換えるとランチタイム。 もっと言い替えるとムチランタイ。 少佐。 多分『アナグラム』って言いたかった。
「途中言いたいことはあったが……掃除をしたご褒美だ。 存分に食え」
プールサイドの日陰にレジャーシートを広げ、その上に今朝作った人数分の弁当を置いた。 重箱で。
「……ごはん♪」
「ランチデース!」
何やらはしゃいでる二人に茶を飲ませて黙らせる。 元気だね君たち。 俺はそろそろ腰がやばい。 これが若さか……
「すっげー! これ全部柳が作ったのか?」
「相変わらず上手いわね……もう羨ましいとすら思わないわ」
「ん〜 私もお料理お勉強しようかな……」
不知火と皐月さん遥さんからも好評な様子。 お世辞だったら俺は泣かないけどちょっと自信が抉り取られる。
「私も作ってきたんだけど……お邪魔だったかな?」
天音先輩が大きな包みを両手で持ってやってきた。 重そうですね。 別に俺が代わりに持とうとかそうは思わないけど。 適役が居るし。
「あ、天音先輩も作ってきたんですか。 俺が勝手にやったことなんで、何か持ってきたんならご自由にどうぞ」
「だ、そうだぞ轟よ。 ここは後輩の言葉に甘えようではないか」
天音先輩の重そうな重箱をスっと受け取って持つ巌先輩の彼氏力とイチャつき具合は今日も見事です。 悪い人じゃあなさそうなんだが……二回滅べ。 転生したら路傍の石にしてやる。
「そう?じゃあ甘えさせてもらおうかな」
そう言って先輩二人もサンダルを脱いでシートに座る。 美化委員の人達が予定で帰ったとはいえ、普通に大所帯だ。 弁当足りるかなぁ……紅葉の分は別として、育ち盛り運動部男子が3人も居るし。 何故か頼金は飯より写真優先みたいだが。 あいつ掃除中もずっとパシャってたし、何しに来た。 校内新聞に俺を載せるなよ? 全力で回避したから1枚も写ってないと思うがな。
「じゃーん! お姉ちゃん特性愛情弁当を召し上がれ♡」
天音先輩が包みを解いて重箱の蓋を開ける。 一段目には和洋中問わず色とりどりの御菜が、二段目には大量の握り飯がぎっしりと。 流石板長の娘と言えよう。
……いや、『板長の娘』なんて褒め方は失礼だな。 これは天音先輩の腕前なんだし。そこに他者の力が加わっていようと俺にはどうでもいいから全部合わせて『天音先輩の力』とするけど。 俺は俺自身が食って安全なら基本的に食は問わないし。 この前蟋蟀食ってみたけどあんまし味しなかった……上手いと評判のワーム系に挑戦しようかしら。 ちゃんと調理されてるやつ。 活け造りの文化があっても、動くものを食べようとは思わないし。
天音先輩の弁当は皆に好評の様子。 とりあえず即効性の毒とか外見極振りのメシマズという訳では無さそうだ……
天音先輩には悪いが、俺の人間不信はかなりのものだ。 他人、それも殆ど知らない人の持ってきた飯を無警戒に口にはできない。 外食する時も、一応目と鼻で確認してから食うし。 だって虫とか毛とか入ってたら嫌じゃん。 何してくるか分からんし。 外面が良くても中身は救いようのない奴だって散々見てきたし。 ソースは俺。
しかし、周囲の反応を見る限り特に以上は無いみたいだ。 これなら食っても大丈夫だろう。 正直、板長の娘の作る料理の味が気になってたし。 俺も天音先輩も弁当の志向が『大人数向け』だからメニューがほぼほぼ被ってるけど。
「……ふむ」
とりあえず定番の唐揚げを一つ食べてみた。 特に代わり映えの無い味だ。 家庭の味とやらが出ると思ったんだが。
その後も出汁巻き卵、漬物、握りと食べてみたが、特に参考になるようなことは無かった。 強いて言うなら出汁巻き卵が甘めの味付けってことくらいか。 俺は甘いより塩っぱい方が好き。 あ、でもこの胡瓜の漬物美味い。 ごま油と醤油と……酢、それと少量の七味か。割合は何となく分かったから今度作ろう。 酒の肴に良さそうだ。 俺は酒を飲まないが、も助や瑠姫さんが来た時ように作っておくか。
そんなんでとりあえず目的は達成したから俺も昼飯を取り出す。 つっても、冷やしたトマトをパックに数個入れてきただけだが。 後ついでに塩。
「およ? ソージはお弁当を食べないデス?」
「俺は元々少食省エネだからな。 そこまで腹減ってない」
お握り一つ食えば三日三晩動けるくらいには省エネだ。 それと、一人暮らししてた頃と比べて食生活がかなり変わったから最近太ってきた気がするし。 でも、栄養補給と汗で流れた分の水分は必要だから栄養の塊トメィトゥを食べるのだ。 俺にとって強○薬みたいなもん。 これで三日戦える。 最早グレート超えてアンリミテッド。
「…………?」
紅葉が何か気になったのか、一瞬俺の方を見て首を傾げて目線を直ぐに自分の皿へと戻す。 誰も盗らないからお食べ。 食って食ってわたしのエサとなるんだよ。 俺は何処の悪魔女だ。ギャミスか。 伝わらんだろうなぁこのボケ。
「ほら若葉くん、あ〜ん」
「おっ、遥ちゃんったら大胆だね〜」
「あらまあ、年下に先を越されちゃった〜 じゃあお姉ちゃんも真似しちゃおうかな。 はい、賢星君、あ〜ん」
「轟よ、流石にそれは……」
「これは僕らものるべきかな? はい皐月、あ〜ん」
「へあっ!? い、いや……こんなみんなの前でそんな……」
「「……ちっ」」
唐突にイチャイチャタイム略して『イイイ』を開始する周囲の公式カプ共に俺と悠ちゃんは意見が一致した。 莇は黙って飯を食ってる。 飯時は静かだなこいつ。
「なぁ悠ちゃん、こいつら生コンと一緒にドラム缶に入れて沈めても罪にならないよな?」
隣で俺と同じくあいつらを眺めている悠ちゃんの耳元で小声で話しかける。
「奏士、協力は惜しまないぞ。 調達から隠蔽まで手を貸してやる」
「俺たちは運がいい。 丁度水を張ったプールがそこにある」
「塩素の代わりに毒素を混ぜるか?」
「いや、毒は鑑定でバレやすい。 沈めた後で埋める方がまだマシだ。 場所はどうする?」
「お前ん家の裏でいいんじゃないか? あそこはお前以外入らないだろ」
「じゃあ今日決行するか。 俺は各種道具を調達してくるから悠ちゃんは皆を誘導しろ」
「了解。 私達柳一族のモットーは──」
「「人の嫌がることは進んでやれ。 恨みは五十割増で返してやれ」」
俺と悠ちゃんは拳を合わせると即座に行動に移す。 今日は休日で、俺ら生徒会役員は俺の愛車で出勤だ。 あの広さの車ならドラム缶6つと生コンクリート程度余裕で運べるはずだ。 多分!
「おい奏士!」
悠ちゃんの声に振り返ると、小箱を投げられた。 それを受け取ると、それは有名なたけのこだった。
「それでも食って腹を満たせ! 腹が減ってはなんとやら、だ!」
ゆ、悠ちゃん……別に腹減ってないし寧ろトマト食って腹八分なんだけど。
しかしこれは有難く受け取ろう。 牛乳にぶち込んでクッキー部分が柔らかくなってきた頃に牛乳と一緒に流し込むと腹が脹れるからこういう乾燥系菓子は重宝する。 でもこれだけは言わせてくれ……
「俺きのこ派なんだが」
「は? たけのこ一択だろ二度と敷居を跨ぐなクソが」
「やべぇ従姉がたけのこ強硬派だった」
というか態々お前の家に行かねぇからその発言に意味は無いぞ。
「お姉ちゃん、ちゃんとお野菜も食べないと駄目、ですよ」
俺と泉ちゃんを引き離した(物理的に)悠ちゃんに、泉ちゃんが後ろから悠ちゃんの皿を持って悠ちゃんを捕まえた。 引き離したって言っても、俺と泉ちゃんの間に悠ちゃんが座っただけだが、許さん。 このハラミ、辛さは5で行くべきか……何の事だよ。 牛ハラミは辛さ関係ねぇし、そもそも俺は焼肉のタレは中辛派だし。 辛口も好きっちゃ好き。 これこそ何の話だ。
「う、しかしだな……」
どうにかして逃れようとする悠ちゃんに、皿の上の青椒の肉詰め、略して青椒の肉詰めを手に持った箸で上手く小さく分けて口元に近付ける。 略称が意味を成してない。
「ちゃんと食べないと大きくなれないよ?」
流石の悠ちゃんも、泉ちゃんにそれは言われたく無い。そう表情が物語っていた。 いや、ぶっちゃけると3サイズ的には泉ちゃんの方が上なんだよなぁ……無論、目測だから多少の誤差は生じるから正確とは言えないけど。
ちゃんと食べて泉ちゃんのように将来有望になるか、今のまま悠ちゃんのようにメスガキロリババアでいるか……悠ちゃんの乳が大きくなったら某艦に因んで『パーミャチ』と呼んでやろう。 悠ちゃんメスガキってよりかはクソガキって感じだけど。 乳も差があるし。 無乳・理事長・タイラー(笑)
悠ちゃんはいい加減相手を見つけてくれと常々思う。 知ってるぞ、悠ちゃんが最近婚活サイトとか婚活情報誌とか見てるの。 ついでにシュナイダーだかアルフレッドだかトメ吉だか名前は忘れたけどお気に入りのぬいぐるみと婚活パーティーの練習してるの。 いっそも助と一発ヤらせるか……お互い幼なじみ同士初体験捧げたら後はもう子作りと結婚一直線だろ。 2次元的思考だが。 俺は未だに初体験は処女相手を諦めてない。 そしても助が童貞かどうかも知らん。 風呂行って卒業したのか? もし卒業してたらあいつを骨にする。 遺骨は犬に食わせる。
最後のはともかく、も助も悠ちゃんも資金はあるし、問題はも助の父性と悠ちゃんの母性をどうやって育んでいくかだが……
「……仕方ないなぁ……じゃあ、私が食べさせてあげるから、お姉ちゃんはこれを全部食べれたら一つ言うことを聞いてあげる」
「……いや、それは辞めといた方がいい。 奏士が私を裏切り者を見る目でこっちを見てくる」
なぜバレた。 悠ちゃんもとりあえず埋めるリストに加えておくか。
それにしてもいいなぁ……悠ちゃん。
俺は基本的に羨ましいと思うことが少ない。 少ないと思う。 少ないんじゃないかな。
とにかく、なんでも出来るハイスペックな俺は、他人のスキルであろうとアビリティであろうと、一度見てしまえば真似できる。 流石にアビリティの方は身体構造の問題で限度が有るが。
世間を騒がす人気の絵師であろうと、プロスポーツ選手の動きだろうと、2次元での動きだろうと、現実で再現可能なものならなんでも出来る。自慢と捉えて貰っても構わない。
そんなだから、『あの人のあれ、羨ましいなぁ』と思うことは少ない。 物なら金払えば手に入るし。 当選限定品とかは除く。 結構除外多いね俺。 そういうデッキか何か?
とまぁそんな訳で、他人を羨ましいとかそんなに思わないってことよ。
でも、泉ちゃんの事だけは別。 あれは本当にどうしようもない。
泉ちゃんはかなり臆病……と言うより、人見知りが激しい。 異性は当然、同性相手でも慣れるまではとにかく震えて何も話せなくなるか、話せたとしてもつまる。 柚希──は男でも弟だから憎いけど除外するとして、悠ちゃんとはああやって普通に話せる。 幼なじみだから。
しかし、俺とはほぼ毎回初対面の様に接する。 俺は女じゃないことを除けば悠ちゃんと条件はほぼ同じ筈なのに。 何が違う……女装すればいいのか? 別にスカート履くくらい苦じゃないが、俺に合うサイズの服の調達が面倒だな。多分問題は違うけど。
まさかまさかの俺に惚れてるって話は無いよな? もしそうなったらどうしよう──泉ちゃんに『可愛い年下の少女』以上の興味関心好奇心は無いんだけど。 正直言って、性欲の対象では無い。 泉ちゃんでドキドキできない……泉ちゃんに罵られたらドキドキするけど。 興奮的な意味で。
俺はMじゃない。 ただ単に可愛い幼女もとい少女に罵られたいだけ。 本気の軽蔑じゃなくて可愛い範囲で。 俺の性癖(誤用)はともかく、泉ちゃんと恋人になった未来、か……
デートしてアレしてコレして柚希とは確実に揉めて……ワクワクとか無いな。 いつも通り自意識過剰ってことで処理しよう。 でも悠ちゃんは許さん。 俺だって泉ちゃんに『お兄ちゃん』とか呼ばれたいし、あーんとかされたいってかしてあげたい。 餌をあげる感覚だな。 泉ちゃんなら『兄さん』でも可。 『お兄』呼びはなんか違う。
でもなぁ……泉ちゃんがそんなことしてくれるまで親密になったらなったで面倒臭いな……縁切り。
俺はこれまで数え切れない程の縁を切ってきた。 単に数えてないだけだが。 だってその相手の顔も覚えとらんし、元から知らん可能性大だし。 縁切りってか、人事整理みたいなもんだけど。 不要な縁は切っておくに限る。 この世で1番不要な縁は親子の縁。 無駄にしぶといから面倒臭い。
ところで話は変わるけど、『神様は実体が無いから御神体に宿って現世に顕現する。 そしてその御神体は、神に由来のあるものが一般的。 縁結びの神は縁切りの神でもあるから、刃物……特に刀に宿るらしい』って話していい? もう聞いた? じゃあ二回目する。
というやり取りがあったため、俺と悠ちゃんの柳一族連合軍(2名のみ)は一瞬で消え去った。 俺は大人しくトメィトゥとたけのこぉをムシャポリうぇ味合わさって不味。 トメィトゥだけ食べてよ。
ごちそうさまでち。 さて、これは最後の『た』を抜いたのか、それとも某潜水艦か。 どっちとも取れる。 だからどうした。どうもしない。 唯単に噛んだってのは第8宇宙には内緒。
はい、ここまで来るのに10日かかっちゃいました。 遅すぎますね。 何が遅いのかは知らんけど。 とりあえず飯食ったからフラフラする。 今日は3時までには寝よう……睡眠時間2、3時間の日々を続けてりゃそらこうなるわな。
そして飯後、俺は日陰で食休み、も助は未だに熟睡中。 そろそろ焼けた頃合か……台詞が完全に悪魔女。
「……そろそろか」
椅子の横に設置した簡易テーブルに置いたスマホの時計を確認する。 時刻は13時、そろそろ予定時刻だ。
「……何が?」
それを、椅子の前半分を占拠して、持ってきたスケブにプールで遊ぶ少年少女の絵を描いている紅葉が訪ねてきた。 正直クソ狭い。 俺足折り畳んで背もたれに寄りかかって座ってるから窮屈なんだけど。 旧スクならドンと来い。
「気にするな。 水着は最終的に旧スクこそ至高だと改めて思っただけだ」
「……」
おっと紅葉君、君は俺をジト目で見る権利は無いぞ。 なぜならお前が今描いてる内容が完全に規制対象だからなぁ! でもその絵は保存したい。 脳内スクショで保存ぞんぞん保存層。
「お前はとりあえず退け。 この日陰スペースと椅子は俺の物だ」
「……ぷぃ」
紅葉は俺の文句も無視して再びペンを走らせる。 人の足に寄りかかんな暑苦しい。 あと純粋に重い。 無礼はお前だからもう一度言うぞ重い。 せめて体操服のままじゃなくて着替えてくるとかしてくんね? 夏服で生地が薄いからブラの金具とか当たって痛い。 あ、も助の白衣に蝉が留まってら。 至近距離の爆音でも寝ていられるってどんだけ眠いんだあの男。
それにしても……う〜ん……これは中々……
プールで学園指定の水着に着替えて遊ぶ面々を少し観察してみるが、最近の子は発育が凄いな。 泉ちゃんはあれが完成系だから発育が凄い判定。
遥さんとベルの水に浮かぶ立派なアレ、それがボールをトスするためにジャンプする度に揺れる揺れる。 実際の揺れってあんな感じなのか……やっぱり映像より生で見た方がわかりやすいな。 胸の浮き方も俺が描いたやつと若干違うし……身近にリアルモデルが居るってのは便利だな。 男の体型はともかく、女性の体型はそう易々と見れるもんじゃないし、ちゃんと記憶しておこう。 でもこれ怒られないかなぁ……
「紅葉はあいつらに混ざらなくていいのか?」
「日陰の外は……暑い」
そう言って紅葉はペンを止めるとこなく左手でテーブルをぺたぺた探り、俺の飲みかけジュースをひったくってごくごくごくごく……まぁまだ予備はあるし紅葉の行動は予想の範囲内だから別にいいけどさ。
「お待たせしましたわー」
おっとやっと来たようだ平野お嬢様ゲフンゲフン、平らなお嬢様が。
「……なんだがとってもイラッときましたわ」
「お嬢様早くも更年期ですか? まだお若いのに……」
「私はまだピチピチの美少女ですわ!」
美少女は多分だけどその表現しないんじゃないかなぁ……
小百合さんは一つため息を吐いて、扇子をしまってパーカーを脱ぐ。 中身はご存知の通りスク水です。 神鳴も既に着用済み。
「柳さん、今回はお誘いありがとうございます」
「お気にならさず。 礼ならベル達に言ってやれ」
「素直じゃありませんわね……態々電話で誘ったのは貴方でしょう?」
「俺は善意でやっただけだ」
小百合さんは「そういうことにしておきますわ」と言って脱いだパーカーを綺麗に折り畳んだ。 そう、俺は何もしてない。 ベルに頼まれそうだったから先にやっておいただけだ。 実際頼まれたし。 自分でやれと思ったけど口には出さない。
「リリィー! 早くこっち来るデース!」
リリィとはベル式小百合さんの呼び名である。 由来は文字通り。
「そんなに騒がなくても直ぐに参りますわ。 神鳴、行きますわよ」
「はいはい、今行きますよ……それじゃ柳くん、また」
「はいはい、いてらー」
ヒラヒラと手を振って二人を見送る。 気分は保護者。 俺が保護者だとすると、同じ場所にいる紅葉は……赤子? 園児? それとも〜 俺以外誰にも見えない類の何か? 斜め真下の回答で過ぎる。 『斜め真下』とかいう座標不明なワード。
それにしても……全員集合だな。 焔は用事があって来れないらしいが。 まぁ、男の娘キャラの水着というのは往々にして解禁が遅いものだから気にしない。 気にしないけどスリングショットで来たら全力でボコる。 上はいいけど下は違和感ないようにしよう。
「それで、皆さん何をしてましたの?」
「えっとね〜 男女に別れて水球勝負かな〜」
「男女別……人数差は女子の勝ちですが、大丈夫ですの?」
「う〜ん……巌先輩は轟先輩が抑えてくれるから、2対3だし大丈夫じゃないかな〜」
ちなみに泉ちゃんは、悠ちゃんと隅で悠ちゃんに泳ぎを教えている。 悠ちゃん泳げないからな〜 俺も泳げない設定で泉ちゃんに手を引っ張ってもらおうか。 ぐむむ……
「……奏士、さっきから奏士の足がもぞもぞ動いて気になる。 じっとして」
「蹴り落とすぞ」
とりあえずイラッとしたから紅葉のブラのホックを服越しで外しておく。 何か言われた気がするけど無視する。
「……着替えてくる」
頬を染めて両手で胸を抑えた紅葉が立ち上がって更衣室へ消える。 足を伸ばせるって凄い……
「ソージー! 暇なら審判やってクダサーイ!」
「やーだー」
ベルの願いは儚く潰えた。 俺は日陰から出たくないのだ。
すると、ベルがプールからあがり、俺の元へぺたぺた近づいてきた。
「断ったらソージがワタシの使用済み下着に触れてたことを広めるデス」
「何一つ間違っちゃいないけど不正解だらけなの凄いな」
普通に洗濯したお前のパンツ干してただけなのに。 表現次第って怖いなぁ……
しかし俺はベルの悪評に抵抗するで? 紅に染まった血塗られた赤きレッドボタンで。 降参してて笑う。
「じゃあ椅子とパラソル移動させるからちょっと待ってろ」
渋々立ち上がって左手に椅子、右手にパラソルを持って日陰のまま移動する。 椅子って持ち辛い。
「そんじゃ、始めっぞー」
「「「おー!」」」
プールサイド中央に移動させてどかっと座る。 皆拳を掲げて反応が良い。
プール中央に不知火と皐月さんが立つ。 ジャンプボールはあの二人か……このボール投げれば良いんだな?
「それでは……スタートっ!
「うぉぉぉぉ!」
「はぁぁぁぁぁぁ!」
──と言ったら始めろ」
「「げっほ!?」」
ちょっと引っ掛けると、全員足を滑らせて水面に顔面ダイブした。 いい気分。
「冗談だ冗談……それでは……始めっ!」
「「「スタートじゃないんかい!」」」
不知火、ベル、皐月さんにつっこまれた。 いいからさっさと始めろ。 俺は試合は食い入るように余所見して泉ちゃんをガン見するがな。
ブルマは正義だ文句あっか!!




