取り繕ったりしないで『ネタ切れ』って書くとなんか清々しい気分
お前の知り合いかい。
そんな俺のツッコミはベルには届かず、諦めて傍観に徹することに決めた。 コンドロイチンカーニバル(思考放棄)
「嗚呼、お嬢様……お会いしとうございました!」
「ななな……なんでここにアズサが居るデス!?」
慌てるベルに意地でも離れまいと必死でしがみつくアズサとかいう名のメイド。 とりあえず今のところ敵ではなさそうだから放っておく。 まぁあれだね。 ジャッジメントパパイヤだよね。 ダメだ流石の俺もさっきまでの非日常の整理が遅れてる。 とりあえずお気に入りの水色シャツの裾が少し切れててしょんぼり。
「それは勿論、お嬢様にお会いするためでございます!」
アズサと言う少女……少女? 年齢はわからんが、多分ベルと歳は近い。 でも見た目と年齢が一致しないのってよくあるからなぁ……悠ちゃんとか。
黒髪短髪で背は普通、キリッとしたクールな顔立ち……だった。 うん。 ベルと再開してから面影とか消滅したけど。
ベルも突然の再開に驚きつつも嬉しいのか、頬を緩ませてアズサの頭を撫でる。 そんなアズサの顔はカオス。
やっと正気に戻ったのか、ベルから離れてその眼前に跪く。 後ろで音が下から振り向くと、さっきまで向こうで動いていた黒服達も同じ姿勢で整列していた。
「ベルフローラ・バレンタイン様、我らバレンタイン家専属身辺警護『律』只今参上仕りました」
成程この黒服集団は律という名なのか……つまりは莇もその一員、と。 違和感無いけどすげぇ違和感。 とりあえずベルのフルネームを久しぶりに聞いた。 お前そういやそんな名前だったっけ。
「遅れて申し訳ございません。少々処理に手間取りまして 」
「処理?」
「いえ、お嬢様には関係の無い事ですので、ご心配なく」
「?」
ベルはポカンと頭上にクエスチョンマークを浮かべてるが、要するにこういうことか。
本来なら護衛対象のベルに危険が迫った時は、その前に対応して気付かせないのがこいつらの役目だが、テロリスト共の対応に気を取られている間にこっちに数人来てしまい、結果としてはベルはテロがあった事すら知らないけどそうなってしまった、と……元々は莇が傍で直接、残りの『律』がその周囲からそっとって感じのフォーメーションだったんだろうが、莇は本日休暇のため今に至る、と。
これで納得した。 だからテロリストが五人しか居なかったのか。普通なら『組織』なんて名乗ってる奴らがそんな少数で来るとは思えない。 少数精鋭ならまだしも、あのリーダーを除けば、全員武器を手にした一般人に毛が生えた程度だったし。
つまりは『リーダー』は本当に組織の人間、それも内部の。 残りは雇われか、それとも欲に目が眩んだ一般人か。 そんなところだろう。 《ジュピター》は組織の人間でも、多分外部かそこら。 もしくは厄介払いだろうな。 一般市民の俺がこんなことになるとか生活から平和が徐々に失われていくのは呪いか?
「お嬢様、後のことは我らにお任せを」
「??? 宜しくデス?」
ベルは未だ理解が追いついてない様子。
「ではお前達、後のことは任せた。 私は念の為にここでお嬢様を御守りする。 散れ!」
「「「了解!」」」
アズサの合図と共に背後の黒服達が消える。 うわぁ素早い。 ちょっとカッコイイ。
「ではお嬢様、私と行きましょう。 大丈夫です、初めては痛いと聞きますが、この日のために私は痛みを和らげる技術を習得していますので。 再会を祝して、今夜は二人きりで夜を過ごしましょう」
「ちょっと待てお前お嬢様をどこ連れてくつもりだ」
ベルの手を握っていざゆかんとしたアズサの肩を掴んで止める。 『ここら辺にラブホはねぇよ』ってツッコミは今は置いておく。
「……貴方がお嬢様の手紙にあった『ソージ』ですか……」
なんかアズサに睨まれた。 俺何かした?
「これは自己紹介が遅れました。 私は白石梓、お嬢様の第2護衛であり、お嬢様を誰よりも知る者」
「頭のおかしい自己紹介どうも。 俺の名は知ってるようだから自己紹介スキップで頼む」
なんか握手を求めるように手を差し出されたが、俺はその袖の内側に光る黒い物を見つけたから拒否る。 お前何しようとした。
「私はお嬢様以外に興味が御座いませんので。 それと私は貴方が嫌いです」
「まさか初対面で真正面から濁さず『嫌いです』って言われるとは思わないよね」
俺も初めての事だからだいぶ動揺している。 動揺して童謡歌う俺ってどうよう? クッソつまんね。
「なので、私の肩に無断で触れたことを許しません。 千金以て不快を償え」
「シライシィレンドリングやめなさい」
ちょっと名前との語感が良いのが腹立つ。
「言っておきますが、お嬢様を愛しているのは私です。 貴方程度に渡しませんので」
「寧ろどうぞご自由にお持ちください状態なんで」
とっとと貫通式(意味深)でもやってこい。 そんでイギリスにでも帰って婿探ししてクソして寝ろ。
「だ、そうなのでお嬢様、私と共に行きましょう」
「なんでそうなったデス!?」
と、二人がはしゃいでるとポリスメン乗車のパトカーのサイレンの音を俺の鋭い五感が捉えた。 五感のうち聴覚一つだけだけど。
「ちっ……それではお嬢様、心苦しいですが私はこれで。 仕事をしてまいります」
白石も来たのが分かったのか、表情をベルと出会うその前までしてた真面目な仕事モードに変える。 でも今舌打ちしたよね?
「おーいっとれいっとれ」
俺はヒラヒラと手を振って見送る。
「本当に……心苦しいですがっ……」
白石は悔しそうに俯くと拳を握りしめる。 泣くくらいなら部下に任せればいいのに……
「おい貴様、悔しいが今の私はお嬢様の傍に居ることは出来ん。 私の代わりに貴様がお嬢様をお守りするのだ。 良いな!」
「俺にできる範囲でなー」
対応がめんどくさいから早く目の前から失せろの意味を込めて手をヒラヒラと振る。 早く仕事戻ってくれないかなぁ……
「ちっ……その余裕たっぷりな態度が気に食わんが、背に腹はかえられぬ」
俺は白石にとことんとんとこ嫌われている様だ。 初対面なのに。 酷すぎて泣けるよね普通なら。
白石は最後まで何が俺に言いながら去っていった。 そして取り残された俺とベルと後ついでに隅で隠れてる女性店員。 放ったらかしにしてたの忘れてた。
さて、これからどうするか……これから捜査やらなんやらでこの建物は封鎖されるだろうからここには入れれないし、というかBGならお嬢様を一般人の俺に任せるなし。
「ベル、これからどうする?帰る? 帰るか」
時間的にはちと早いが、帰ってゆっくりするにはいい頃合いだ。
「うーん……帰るデス!」
わーいわーいJ
わーい繋がりでYかXが出てくると思わせてからの無関係なJを出す高レベル低次元なボケ。
「帰ってソージの部屋でお部屋デートデス!」
「……うん?」
あれおかしいな。 帰って休むって意味だったんだけど。 ご休憩とかじゃなくて、文字通りお終い。
「もしかしてお前今日脳みそ入れ忘れた?」
「人の脳をお弁当のおかず感覚で言うなっ!」
ツッコミ代わりにチョップされた。 イラッとしたから指を2本掴んでゆっくりと限界まで開いてやった。 なんかゾクゾクした。 この扉も閉めておこう。
「お願いデス……うりゅりゅ」
「凄いね君。 自分から道を埋めてくスタイルとか初めて見た」
「うりゅりゅ」って口で言ってるのが腹立つし、そもそも目に涙浮かべてねぇしついでになんかさっきからベタベタ触ってくるのがクソうぜぇ。
「ソージィ……我願う」
「急にキャラ属性変えんのやめろ」
なんなのお前ボール7個集めたりしたとかそんな感じ? ギャルのパンツプレゼントして欲しいの? お前がギャルなんだから自分のパンツの匂いでも嗅いでろよ。
さて、最効率且つお互いに損が少ない選択肢は──
▶・断固拒否
・逃走
・諦めて受け入れる
あれ、選べる選択肢が無いぞ。 これ『受け入れる』以外に選べないじゃん。 世界は不平等。
よし、ここは受け入れよう。 エンハンス・ミトコンドリアパラダイスの精神で行こう。(思考のポイ捨て)
「よーし帰るか」
「YES! 高須! 家康!」
ガッツポーズをするベルを無視してスタスタと出口へ。 さっさとズラかろう。
「あー! ちょっ、まっ! 待つデース!」
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「たでーまー」
なんだかんだあったが帰宅。 重政以外に帰宅の挨拶するのって慣れねぇな……
「おかえり」
丁度自室に入ろうとしていた紅葉から挨拶を返された。 よく会うね君。
「奏士、暇?」
「悪いがこれから部屋でベルに付き合う予定でな。 遊ぶならまた後で」
「……」
紅葉は少し不機嫌そうだが今は置いとく。 後で何とかしよう。 ちなみにベルは先に部屋に行った。
「……で、何すんの?」
買った服やらなんやらが入った大量の袋をとりあえず壁際に置いて俺はいつも通りパソコン前のダラクッションに背を預ける。 ベルにはとりあえず座布団でも渡しておく。
「『ナニするの?』だなんて……キャー! ソージのエッチ!」
ニヤニヤしながらハイテンションで騒ぐベルを見てると……あれだな。 物凄く蹴り飛ばしたくなる。
「ちっ」
「マジトーンの舌打ちイクナイ」
ベルもマジトーンで返してるからお互い様ってことで。 いや、俺悪くないだろ。
「で、何すんだ? 何もしないなら部屋に戻れ」
「まぁまぁまぁ……とりあえずは二人でゲームデス!」
またかいゲーム好きだねベル君。 とりあえず生感覚でゲーム選ぶのどうにかならない? 別にいいけど。
「今回はNOアグネスYES高須!」
「もうわからん。 わからんけど多分アナログゲームって意味だろ」
ベルはどこから取り出したのか『イグザ』と書かれた帽子を俺の頭へ。 何この頭悪い帽子……というか高須まで言ったらもうアウトだろ。
「じゃ、とりあえずドミノかパズルかけん玉とかか?」
「何故全部一人用!?」
だって複数必要だと一人でやるの面倒じゃん。 俺は一人六役くらいで人生ゲームやるけどさ。
「はいはいジェ○ガでいいな」
「あるならそれを出すデスよ……」
という訳で(どういう訳で?) テーブルを引っ張ってきてカチャカチャと貯金の如く組み立てていざ開始。
「ふつふつふつ……」
「煮立ってんのか?」
『つ』を小さくしなさいよ。
「これに勝った方が負けた方に言うことを一つ聞かせる権利を得マス!」
「何それ初耳」
だいぶ勝負は進んでるのに今それ言う? だからお前さっきからバランス悪くなるような場所ばっか取ってやがったのか。
「……」
これ以上何をされるか分からないから俺も本気で相手をする。 つまり集中するために無言。
「ソージ……」
「ちょっと黙ってろ」
ちょいちょいと指先のノックで可不可を検査して一気に抜くためにバランスも考えて……お、ここ行ける。一本しかないけど、慣性の法則をガブ飲みして達磨落としの容量でやれば……行ける。 院長の様に慎重に備長炭……冷蔵庫に炭入れて脱臭……今っ!
「好き」
「んんんんっ!」
一瞬ベルに気を取られて力加減を間違えてしまった。 そのせいで高く積み上がったブロックは大きくバランスを崩し、盛大に崩れ落ちる。
「…………」
「…………」
無言の空気。 シンとした空気に擦れる木製ブロックの音、衣擦れの音だけが響く。 こ、こいつ……そこまでして……
「ふっふっふっ……はーはっはっはっは! ワタシのビクトリー!」
ベルが立ち上がってバンザイしながら高笑い。 武士は食わねど高楊枝。 似てるのは語感だけ。
「…………」
「ユウの言った通りデス! ソージは搦手一切無しの直接伝えられることに弱い! これからはこの路線で行くデース!」
ベルのドヤ顔が果てしなくウザイ。 しかし我慢だ……我慢だ俺……
「…………」
「んー? 黙り込んでどうしたんデスカソージ? ま・さ・か〜 悔しいんデスカ〜? まっさかソージもワタシがこの手で来るとは思わなぐっはぁ!?」
ついベルのにやけ顔に我慢しきれなくなって全力の頭突きをかましてしまった。 しかしなんかスッキリした。 とりあえずこいつは縛り上げてマジックミラー号か乱パ会場にでも放り込んでおこう。 たとえ暴力だなんだの言われても俺はたとえ女が相手でも顔面に容赦なく傷をつける男でありたいからそんなことは知らぬ。
「ちょちょちょ待つデス! ストップ! ストーップ!」
俺が自惚れするような素早い動きでベルを縛り付けると、やっと気が付いたのかベルからの静止が。 しかし俺は無視してついでに亀甲縛りをしてベルを担ぐ。
「……何?」
「いや、これ要るかなって」
そして紅葉の部屋に持っていく。 アスファルト合材と一緒に燃やす前に有効活用しなくちゃ。
「……描き終わったら返す」
「そうか、んじゃ」
「ちょっ、本気デスかソージ! 待って行かないでクダサ──」
そこでベルの声は途切れた。 紅葉が部屋のドアを閉めたんだろう。 さて、ようやく平和が訪れた。 何しようかしら。
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そこから更に数時間後。 飯を食ったり風呂入ったりアニメ見たりした。 紅葉はまだ部屋で作業してるみたいだったから、ベルと紅葉の二人(三人)分紅葉の部屋に飯を運んだ。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
久しぶりにウィスポで一人二役ベースボールをやっていると、襖が開き、ベルが息を切らしながらやってきた。 紐は解けてるみたいだ。
「本当に戻ってきやがった」
「よ、よくもやってくれたデスね……」
完全自業自得なんだが……今ここでそれを言っても意味は無いだろう。 とりあえず一時停止しとこ。
「今度はこっちのターンデス!」
おいおいまだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ。 まだ焼く作業が残っているだろう?
何をするのかと身構えたが、ベルは何故か座布団の上に座ってチョイチョイと手招きしている。 え、何? 来いってこと?
無防備に座って手招き……そこから導き出される答えは美人局か。 俺は引っかからんぞ。 だって引っかかりそうになって婆ちゃんにしばかれてる爺ちゃん見たから。 結局手は出してないらしいが。
俺がどうにか思考を読もうとしている間にも、ベルは手招きしながら自分の膝をポンポンと叩いている。 つまり美人局じゃなくて『ワタシのの膝にキスしなぁ!』ってことか。 膝も足の一部だし大差ないか。 そこじゃない。 というか普通に考えて足にキスするって汚い気がする。 俺の感想だけど。
とりあえず恐る恐る近付いみる。 カメラは見当たらない。 近くに人の気配も感じない。 本当にそういう目的なのか?
さらに近付いてみると、ベルが手を差し出して来たから足が痺れたのかと思って俺も手を差し出してしまった。 油断大敵なのに俺は油断していた。
「よっと……」
ベルは俺の手を掴んで立ち上がるが、一向に離す気配がない。 俺が離そうとしても、何故か離れない。 あれ、ベルってこんなに力強かったっけ?
「……捕まえた、デス!」
「おふっ!?」
俺の直感が危険を察知し、ベルからの距離を取ろうと重心を後ろへ移動させたその時、腕を掴まれて足払いを食らった。 俺が床に倒れ、起き上がる前にベル素早い動きで座布団を移動させてその上に座り、俺の頭を押さえつけて膝の上に乗せる。
「ふふん! ビックリしたデス?」
「うんまぁ確かにビックリするよね急に大外刈りされたら」
というか普通に危ない。 俺の受け身が間に合わなかったら大怪我してたかもしれないぞ。 面倒臭いから言わないけど。
「ソージは拒絶が凄いデスけど、一度こうしてやらせたら素直に言うこと聞いてくれるデスからね〜」
「頭撫でんな」
最初の方はベルの手を払い除けていたが、寝ながら重力に逆らって腕を動かすのが面倒になってきたからとりあえず放置する。 別に撫でられるのが意外と心地いいとかそんなんじゃない。 撫でられること自体初めてと言っていいからまずそういうのわからんし。 俺の残念な記憶力では2日前以降の記憶はほぼほぼ無い。
そのうちベルの顔を見上げるのが何となく居心地悪くなってきたから身体ごと背ける。 でかい乳が邪魔で顔ほとんど見えなかったけど。
それにしても、年頃の娘の肌はとても触り心地がいいって爺さんが言っていたなぁ……当時は『何言ってんだエロジジイ』って思ったけど、成程確かにこれはいいかもしれない。
俺も肌とか色々気を使ってそれなりに綺麗だと思うが、これは根底というかベースというか……元が違うな。 スベスベしてて柔らかいし、なんかいい匂いがする。
何でも年頃の女は『ラクトン』と呼ばれる香り成分を出しているらしい。 年齢とともに量は減るとも。でも悠ちゃん未だにミルクの香りするんだよなぁ……
ラクトンの匂いはピーチやらココナッツの様な甘い香りらしいが、確かにこれは直接の触れ合いが無い二次元では不可能なものだ。 脳内再現で行ける……か? 想像力は世界にすら影響を及ぼすと言うし、俺の力をもってすれば匂いの脳内再現くらい余裕だろ。
そのまま撫でられ続けてどのくらい経っただろうか。 徐々に頭がぼーっとしてきた。 これはどんな状態なんだろうか。 初めて……味わう……かんか、く……
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「……およ?」
奏士の頭を撫で続けていたベルが、何かに気付いて気になって奏士の顔を覗き込むと、目を閉じて動かない。 肩が規則的に動いている事から、どうやら寝ている様だ。
「寝ちゃってマス……」
くすり、とベルが笑う。 なんだかんだで、ベルは奏士が心地良いと感じてくれたことが嬉しくてしたかないのだ。
「それにしても、何度かソージの寝顔を見てみようと試行錯誤したデスけど……こうしてちゃんと見たのは初めてデス」
奏士はとても警戒心が強い。 そして何より、『目の前で起こった事実』ですら疑う性格だ。 それ故か、それ以外かは分からないが、『寝顔』という生物の最も無防備な睡眠状態を他人に決して見せない。 もし急に人が近寄っても大丈夫なように、自分の眠りの浅さを利用してどんな時でも即座に起きれるように身体に叩き込んである程に。
そんな奏士が、生まれて初めて、他人──しかも、自分の純潔的な意味で最も警戒しているベルの目の前で寝ている。 それも、ベルが顔を距離10cmまで近付けても起きない程深く。 これは奏士にとって大きな変化だろう。
「……意外と可愛い寝顔デス」
奏士の目の下の隈は濃い。 産まれてこの方、一度もまともに寝た試しが無い。 何度寝ようとしても夢を見、そして目覚めるからだ。寝るには薬で強制的に眠らせて夢を見ない方法か、薬を使わず自然と意識が落ちるまで活動して夢を見ないかの二択しかない。 しかしどちらも身体に負担が激しく、最終手段の『薬も使わず落ちず、そのまま普通に眠る』と夢を見てしまいこれまた負担がかかる。 柳奏士という男は、とにかく眠ることができない人間だ。
「普段からもうちょっと素直になるとか、せめて笑ってくれたらワタシも嬉しいですけど……」
「それを望むのは酷、デスね」とベルは呟いて再び奏士の頭を撫で始める。
「知ってるデスよ……ソージが巫山戯たことを言う時は、不安や緊張・恐怖を頑張って隠そうと、誤魔化そうとしてることを……ソージが、誰よりも強く見えて、本当は誰よりも弱いことを」
本人が聞いたら即座に耳を塞ぎそうな事を、ベルは次々に言う。ベルに『仕返しをしてやろう』とかそういう思惑は一切無く、ただ純粋な想い故、慈愛故の言葉だ。
「ソージは常に虚勢を張っていマス……だから、疲れた時は、ワタシがこうして癒してあげるデス……」
今のベルの姿を見たら、人はどう思うだろうか。 写真に収めたなら、コンテスト優勝間違いなしだろう。 絵にしたなら、その美しさに誰しも涙するだろう。 時代が時代なら、その姿は聖女と呼ばれるだろう。 そのくらい今の彼女は、愛する者に精一杯の愛を注いでいた。
この恋が叶うかは誰にも、それこそ神すらも分からない。 もしこの世界が何者かによって作られた物語だとしても、その作者にすらも分からない。
しかし、そんな中でも彼女は、ベルはただただソージを無償に愛する。 その理由を知るのはベル一人。
「大好きデスよ、ソージ」
ベルはそのまま奏士の頬に顔を近付けてちゅっとキスを──しようとしたが、胸が邪魔で届かず、諦めた。 愛する人のために大きくした胸を、さすがのベルもこの時は心底邪魔だと思った。
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「ん……やべっ!」
ベルに頭を撫でられてからの記憶が無い。 時計で時間を確認すると現在朝の4:38……やべ、マジでやべ。 時間的には普段起きるよりちょっと早い程度だから問題無いけどやべ。
というか待てよ? ベルに頭撫でられて寝落ちするとかマジでヤバいぞ。 莇に知られたら弱み握られたも同然だし、というか絶対ベルに寝顔見られたし。 油断した……
そこで、俺が布団に入っていることに気付く。 誰が敷いた? 俺じゃない。 重政には無理ってか、昨日俺が帰ってきてから姿を見てない。 ということはさっきから隣で聞こえる寝息の正体が布団を敷いたや奴か……いや、だいったい想像付くけど。
あれだろ? 実は重政が雄じゃなくて雌で、こうして人間の姿(耳と尻尾はそのまま)になって全裸なのに気にせず主人である俺の布団に潜り込んで寝てるとかそんなんだろ? だよなだよねだったらいいなうん。
覚悟を決めて隣を見る。 もし重政Ver.美少女だったらお互い知り尽くしてるから問題無く結婚出来る。 でもそれだと獣姦になるのか? いやでも身体は人間と大差ないんだし、問題無いか。 子供の名前は何にしようか。 名前ってオリキャラ作る時の一番の難点だから、自分の子供だとより悩むな……
隣にいたのはベルでした。
だよね、期待はしてなかったと言えば嘘になるけど、そんな気はしてた。 とりあえず重政は早う帰ってこい。
「むにゃ……! ソージィィィ!」
「朝っぱらからうるせぇ!」
目覚めの開口一番叫びながら腰に抱きついてきたベルの頭部を全力で掴んで全力全開フルパワーMEGA MAXアンリミテッド。
「イダダダダダダダダダダダダッ!?」
左手で頭を掴む俺の手を掴み、布団をパンパン叩いて降参の合図をするベル。 そんなベルを見てると──あれだな、もうちょっと力入れたくなる。 二度とこんな真似できないようにしてやろうか。
「痛いデスソージ……」
「だろうな、痛くやったからな」
ベル頭を抑えて唸っている。 とりあえず寝顔見た恨みを晴らした。
「昨日(日は跨いでた)はあんなに愛し合ったと言うのに!」
「妄想力凄いね君」
「嘘以外口にしないとも」
「その言い方だと嘘も誠も口にするのよ」
マジでどっちだお前。 さすがの俺も卒業式が睡姦はちょっと……あれ、意外とアリだな。 でもやっぱナシで。
「ほら、さっさと布団から出ろ。 何サラッと人に添い寝してやがる」
「あぁんいけずぅ」
布団を捲って追い出そうとするが、ベルは何がなんでも離れなまいと布団を掴んで抵抗する。
「それをワタシはまだ寝てる時間デス! という訳でおやすみデ〜ス」
俺から布団を奪い、人の布団で勝手に寝る簒奪のベルをどうしようか悩んだが、何となくこのまま放っておくことにした。 別に珍しくぐっすり眠れた礼とかじゃない。 でも何となくありがとう。 よしこれで礼は言ったなじゃあ後はいつも通りに戻ろう。
「さて、今日も一日始めますかっと」
パシッと膝を叩いて立ち上がって背伸びをする。 こんなにも朝が気持ちいいと感じたのは多分初めて。
人の布団と人の枕と人の服でぐっすりと眠るベルを見ながら、新たな日々の第一歩を──
「おおうっ!?」
第一歩目で足を滑らせた。 なんか紐みたいなの踏んだ。 ただでさえ畳は方向的に滑りやすいのにそこに太い紐まであったら滑るっつーの。 誰だしこんな場所に紐置……いた……の──俺だな。 そういや昨日ここに買った物置いたの俺だな。 いやーうっかリンゴン。
……こんなんで大丈夫かと思ったが、そういやいつもこんな感じだった。
こんにちは
こんばんは
ずっとサヨウナラ
はい、ということで念願の後書きターイム! ドンドンパフパフドンドンカッカッ
本編より後書きを楽しみにしてるって人も居るかと思います。 ……ほんとに居ます? 居たら『妥当ね』ってなりますけど。
今回でだーいぶ進んだ気がします。 何かが。話の内容には触れません。 でもそろそろクレームでも感想でも欲しい頃合……まだ話数三桁言ってませんし週のPV4、5桁行ってないのでそれも妥当ね。
とりあえず私は最近新作のゲームを買いました。 それはそうと積みゲーがあるのにセールやってると安いうちにゲームを買ってしまう癖をどうにかしないとダメですね。 でも5割引だっから致し方無し。 退路無し。
何が言いたいのかと言うと、冷蔵庫の煮付けが食べたいってことです。そんな話はしてません。 本当はこの話書いてる時も次回の分もそのまた次回の分も書いてる時、私は新作のゲームを我慢して書いてるということです。 早く続きがやりたい……
自分で決めた〆切に追われて、しかし無慈悲にも時間は止まらなくて……めちゃくちゃ遊びたい気持ちも融合し、半狂乱状態で書き上げたこの話は二つの意味でクルーエル(狂える)ってね。あんま面白くないですね。
そういえば散々ネタに使わせていただいてるシャドバでウマ娘コラボをやっていますが、皆さんはなんの鎧が好きですか? 私はアリサ一筋です。
それでは次回をご期待ください。 さよなら さよなら さよなら




