サブタイトルとか考えんの面倒臭いから毎回直感
俺は舐めていたのかもしれない。 女と買い物に行くということを。
「ソージソージ! コレとコレ、どっちが似合うデス?」
「右」
過去に悠ちゃんと一緒に買い物行ったことはあるが、悠ちゃんは女以前に子どもだし、性格的に男寄りだから参考にはならなかった。
「次はコレデス! どっちが好みデスか?」
「右」
知識としては知っていた。 女というのは、買い物が物凄く長く、ちょっとした事でも賛同を求め、どう答えても結局は自分で選んだ方を買うことを。
「お次はコレ!」
「右」
「……ソージ、ちゃんと考えて答えてるデス?」
「ちゃんと考えてるぞ。 右と左のどっちが文字数少ないか選んで言ってる」
「それは思考放棄デス!」
ベルと買い物を始めてから2時間程経過しただろうか。 ベルは目に入った店に入り、俺に意見を求めては購入、店を出たらまた別の店に入り意見を求めて購入、また出て購入また購入……そんなのが何回も続いた。
俺も最初の2、3回は普通に考えて選んでいたが、途中から面倒になって気力温存のための省エネモードに移行して、なにか聞かれたら『右』と自動で答えるようにした。 何度かベル以外の人に道か何かを聞かれた気がするが、それも右と答えた気がする。
「ソージ、次からちゃんと答えないと……下着を選ばせるデス」
「なんでお前の下着を俺が選ばなきゃならんのだ」
「アオバの」
「マジモンの罰じゃねぇか誰になんのメリットがあんだよ」
とはいえ、ベルならやりかねない。 だから仕方なく通常状態に戻す。
「つーか、そろそろ買うの抑えろ。 重い」
俺はベルが買った服やら靴やらを全部持って移動している。 カートは無いし、預けるコインロッカーまで行くのはなんか面倒臭いしどうせまた増えるだろうからってことで、結局俺が持つことになった。 ベルちゃーん? これ一体どうするつもり? 歩いて持って帰るのヤダ。 帰りはバスに乗るか。
「でも、持つって言ったのソージデス」
「いやまぁ確かに言ったけどさ」
ベルに持たせると周囲にぶつけそうだったし、俺が持った方が移動効率良いからそう言ったけどさ。 重いよ。 持ち手を工夫して負荷軽減してるけど、重いのよ。 肩外れそう。
つーかさっきから買いまくってんなー……金持ちめ。
そんなこんなで店を出、再び散策開始。 と言っても、俺は既にどの場所にどの店があるのか把握しているから新鮮味は無いが。 それでも未だに道に迷うのはこの宇宙だけの秘密。 宇宙規模とは驚かない。
そうしてベルを前に、俺は後ろを歩いていると、前を歩くベルが突然歩みを止めてとある店を指さした。
「次はあの店に行くデス!」
ベルが指を指す方を見なくても理解した。 もうね、店の空気から伝わるものが別格だね。 だって女性下着売場だもの。
「じゃあ行くぞー」
「アレっ!?」
しかし俺は躊躇せずに店に入る。
「もっとこう……『ここって下着売り場じゃん……俺が入っても良いのか?』的な初心な展開は無いんデスカ!」
「テンプレのセリフが地味に上手いのが腹立つが……俺にお約束を期待すんな」
女性下着売り場がなんぼのもんじゃい。 こちとら美少女の下着姿だとか全裸だとか裸ワイシャツNBYPだとか描いてんのじゃい。 というか、アニメ見てりゃ下着姿のサービス回はほぼ確実にあるし、エロゲーやエロ同人やら二次エロコンテンツで鍛え抜かれた俺の精神はこれしきのことで動揺しない。
という前置きはさておいてだ。 ぶっちゃけると、女の下着なんぞ現実で飽きるほど見た。 いやモテ自慢とかじゃなくて。 モテてたらこうはなってないと良いけれないけどそうじゃなくて。
悠ちゃん……を女性にカウントしていいのか議論の余地があるから省くとして、オフモードの瑠姫さんは基本的にダラしないし服もゆったりしたものを好むから普通にパンツ見えてるしで年上女性編はクリア。 後は紅葉やらベルやらの洗濯物で同級生・年下編もクリア。
という前置きもさておいて、三次元の女に性欲的興味が無いから下着にも性的興味が無いんだよなぁ……『女性下着』という物には知的好奇心からの興味はあるけど。 というか、基本的に知的好奇心以外の興味が無い。
その人の持つ技術、例えば紅葉で言うなら絵の技術には興味ある。 その人の行動・言動・思考回路には興味があるが、その人そのものには興味が無い。
あれだ、要するに俺には無い人それぞれの中身、俺の知らないものにしか興味が無いと言える。 声優の『声』は好きだけど『外見』には興味無いって人と近いな。 微妙な例えかもしれない。
「俺をそこいらの童貞と一緒にするな。 俺は上級者だ」
「激しく何言ってるか分からないデス」
同意は得られなかったようだ。 残念かどうかもわからんか。
「つーかお前、この前買ってなかったか?」
「実は最近またおっぱいが育ってきたデス……この前買ったのだけじゃ足りないデス」
話振ったの俺だけど聞いて損した気分。 絶対に悠ちゃんの前でするなよその話。
「じゃあ選んでくるデス! ソージは何色が好きデスカ?」
「さっきの話聞いてそれを俺に聞くあたりやっぱり頭おかしいよお前。 水色」
おっといけね口が滑った。
「龍一、ワッカリマシター!」
「なるほどじゃねぇのかよ」
龍一はなるほど違いだろうが大人しく裁判で弁護してろよ御剣。 違った御剣は検事だった。
とゆーわけで俺もベルに続いて入店。 なんか視線が痛い気がするけどそんな視線は『きらりんぶい♪』してやるうっ頭が。 自分で自分のトラウマ呼び戻してるの控えめに言ってクソボケおバカさんだと思う。 ということを自分で言ってるのも頭おかしい。 つまり俺は頭おかしいのか。 気のせいか。
さてさて、店に入ったものの、男の俺にやる事は特に無い。 店の商品を触る訳にはいかんし、かと言って俺が試着して買うわけでもウオロロロロロロ……とんでもなくキメェもん想像しちまった。 いい加減この無駄に高性能な想像の翼消し去りたい。 そうだ、堕天しよう。 ノリと勢いと『翼が邪魔だから』で主に背くのってなんかカッコイイよね。 こう、強者感がパない。 戦場で冗談言える奴は強いってのは常識。 何時いかなる場合でも心に余裕を持とう。 俺みたいに。
「うーむ……」
とりあえずなんか言われないためにベルの近くで待機。 そしていよいよ暇になったから目の前のベルが下着を漁ってるのをじっと見る。 すげぇやこの文だけ切り取ると、ベルが下着ドロで俺が発見者みたいだ。 普通逆じゃね? 下着ドロの執念と技術には興味がある。
「むむむ〜……これっ! ソージはどっちが好きデス?」
何かめぼしいのを見つけたのか、さっきまで唸っていたベルが両手に下着一式のハンガーを一つずつ持って俺の方を向く。 どうと言われても……
右手にあるのは、ベルのお気に入り色である緑系、ミントグリーンの下着。
左手にあるのは、俺が先程口を滑らした時に言った水色の下着。 さて、どうしようか。
正直に言うと、これを二次元に変換した場合どっちも好みだ。 三次元変換……うーんやっぱりどうでもいい。 そうだ、これを泉ちゃんに着せたらどうなるか考えてみればいけ──ねぇなうん。 だって泉ちゃんのこと性欲で見れねぇし。 あくまで妹分であり、唯一俺を慕ってくれる誰にでも優しい世界一の慈愛の持ち主逆無泉、通称イズミエルをそんな目で見るとは言語道断也。
という訳で道は消え失せた。 どーすっかな……とりあえず今回も右で良いや。
「じゃあ「両方デスカ! それなら採寸と試着をしてくるデス!」」
俺が言い始める前に、ベルは左に持っていたものを俺にほぼ強引に預け、近くに居た女性店員を呼んで試着室へ。 あの……俺はどうすれば良いの?
とりあえずやることも無いから渡された下着でも観察しよう。 より正確に、精密にイラストを描くために。 他意は無い。
ジロジロ見るのも怪しまれるだろうから手に持ったものを見下ろす感じで見る。 こうして改めて見ると、結構複雑な作りだな。 俺がそう思ってるだけだが、男物の『使いやすや・強度』重視とは違って装飾も色も段違いだ。 男物に装飾とか邪魔でしかないが。 ……ん?
観察していると、目に入ったサイズタグ。 そこには『F(70)』の文字が。
……うん、今の記憶は消そう。 残しておくとろくなことにならないだろうし。
と、記憶を消すためにポケーっと思考放棄で脳内Cookieを一部削除していると、通路の方から聞こえる人の声がやけに大きいことに気付いた。 盛り上がっているだとか、人が多くなったとかじゃない。 これは一人一人の声が大きくなっている。 しかも悲鳴だ。
一体何事かと思い、通路の方へ顔だけ出す。 はい、ひ○っこり
「はぁんっ!?」
「あがっ!」
俺が顔を出したその時、目の前に走る人が居た。 そしてお互い目を合わせると、そのまま慣性の法則に従って男は止まれず俺と衝突。 俺の首は後ろへ仰け反って嫌な音を出し、男も衝撃で後ろへ仰け反って足を滑らせて後頭部を強打しながら床を滑る。 おでこ痛い……男遺体……
「くっ、クソが! いきなり出てきやがって……」
文句を言いながら男は起き上がる。 遺体じゃなかった痛いのは男の服装だ。
男は何故か黒の目出し帽と、モスグリーンのコートを着ていた。 夏なのに。 年中長袖長ズボンの俺でも、流石に夏にコートは着ない。 変わった趣味の様だ。 まさか暑さすら快感に変えるタイプのMだとは。 あ、違う? なーんだ違うならそうと言ってよ。
目の前のドM男爵は、脳震盪が起こったのかフラフラしながら俺を睨みつける。 ちょいちょいそこの男爵、建物内で走っちゃダメでしょうが。
フラフラドM男爵からフラフラが抜け、ドM男爵に戻った。そして爵位剥奪で男に戻った。
男は、腰から刃渡り20cmはありそうなサバイバルナイフを取り出した。 ドMだからってこんな場所で公開自傷はダメだよ男爵。 自傷するなら先にド○ッドオーラとか回復系スペル用意するとかしないと。
冗談をぶつぶつ言っている間にも、男は何やら興奮MAXで息を荒らげながらナイフを持つ手を震わせている。 公開自傷に興奮するとかやっぱりドMを超えた度し難い変態なんじゃないかなぁ……だから狂乱相手は嫌なんだよ。 優位に立てるAF使いじゃねぇし。
という冗談を言っている場合じゃ無いらしく、ヒートアップした男はナイフを腰の辺りで持ち、叫びながら走って近付いてくる。 一瞬身構えたが、動きが素人同然だ。 これなら余裕綽々余裕伯爵だな。 男爵より伯爵の方が爵位が高いから俺の勝ちってことで。
素人もとい進撃の素人は最初から近接戦闘だけを仕掛けるようで、とにかく俺を排除……殺すことだけを考えている感じだ。 普通見知らぬ相手と1体1で戦う時は、遠距離から射撃で様子見するのが定石だろうに……というか刺す目的ならダガーナイフ持ってきなさいよ。 そっちの方が良いから。
「おっといけね」
じーっと男の挙動を見ていたらいつの間にか眼前まで迫っていた様で、男の刺突をとりあえず身体を捻って避ける。
「ちぃ!」
男は避けられたことに更に腹を立てたのか、ナイフを振り回す。キレやすさがコラボクエストのブ○キ並でナテラ生える。
「あぶね」
『振り回す』と言っても、計算されただとか、常人を超える膂力で高速高威力だとかそんな訳でも無い。 ただの一般成人男性程度の力、その上力の入れ方がなってないから分散されまくっている。 刃先が当たったら切れるだろうが、精々その程度だ。 死にはしない。 刺さらなければ。
「だーもうめんどくせぇな……」
それでも痛いの嫌いナノ! という訳で避ける。 武装の基準にもよるが、相手は武器持ち、俺は素手の無武装。正当防衛は成立する……と思う。 過剰防衛とかにならないよね?
先代が生きてる間に師範代の座を譲り受けたから、多分俺も武術家の一種だと思うけど、それだと俺はかな〜り手加減しないといけないんですが。 相手が格闘技とかの経験者であることを願おう。
それはさておき、相手がナイフ以外所持していないとは限らないから下手に手を出さず、近付き過ぎず離れ過ぎずの距離を保って避け続ける。 悪いがお前程度ならあの家に住んでれば時々来る泥棒で何度も味わっているし、というかアマンダさんの方が速いし疾いし強いし怖かった。
それに、喉越しスッキリ食べやすいことがウリのラーメンみてぇにあっさりと俺の挑発に乗ってくれたお陰で、思考も視野も狭まって動きが単調になっているから避けることは造作もない。 これぞ『柳流攻護術・序《お前のかーちゃんでーべそ》』だ。 頼むからもうちょっと技名どうにかなんなかったのおじいちゃま。 いや、『挑発』を表現するのにすげぇ相応しいっちゃ相応しいけどよ。 煽りが小学生レベルなのはさておき。
「んお?」
その時ポケットのスマホが振動した。 何かと思って避けながら画面を見ると、紅葉だった。 こんな時に何の用だ?
「俺だ」
『……奏士、今何処?』
「今外」
『何時に帰ってくる?』
「夕方には戻る予定だから……5時6時じゃねぇか? なんだいきなり」
『ちょっと……付き合って欲しいことがあったから』
「とりあえずその内容は帰ってから聞く。 今ちょっと手が離せないから切っていいか?」
『ん、またね』
そう言って紅葉との通話は終了する。 前から思ってたけど、何故か紅葉に懐かれてる気がする……
「クソがァ!」
痺れを切らしたのか、それとも俺の態度が癇に障ったのか知らんが、男はナイフをポイ捨てしてポケットから拳銃を取り出す。 現代的な半自動拳銃ではなく、何故か回転式拳銃だ。 なんでそっちチョイス? ロマンかマロンかロマネコンティか……あ、最後違う。
ま、大体想像出来る。
銃なんて余程威力控え目じゃない限り生身の人間一人殺す程度余裕だ。 殺せなくても『あいつは銃を持っている。 そして怪我を負わせた』と周囲に認識されればいい。 この国じゃあドラマやニュース、漫画やアニメ等で銃を見る機会はあっても、実際にこの目で見る機会なんてほぼほぼ無い。 その銃が本物だろうと偽物だろうと、持っているだけで抑止力になりうる。
それに、次弾装填に時間はかかっても、一般人相手なら大した支障は無いだろうし、その間を埋めるための道具もあると考えていい。さて……どうするかっぶね。 人が考え事してる時にナイフ持って襲うとか、親からどういう教育受けてんだお前。 親から教育受けてない俺ですらそんなことしねぇってのに。 不意打ちは喜んでするけど。
「ソージ? さっきから外が騒がしいデスけど、何かあったデスか?」
男が一旦離れて、丁度店の中からは見えない死角に移動した時にベルが更衣室のカーテンを少しだけ開けて顔を出す。 お前服着てんだろうな。
「お客様その姿でお外に出られると……」
中から店員さんの慌てた声が聞こえ、ベルは「oops!」と言うと顔を引っ込めた。 服着てねぇのかよ大人しく採寸されてろ。
「大したことじゃねぇから気にすんなー」
そう言って俺は再び男──よりもスマホの画面に向き合う。 ごめんね待たせて。 あの男は無視でも構わないでしょ。 Mだし。
「っち!」
男は間髪入れず射撃開始。拳銃の弾速は凡そ時速1500km、約音速だ。 発射後見てから避けるのは無理だから、男の視線と銃口、身体の向きと腕の位置やトリガーを引く指から軌道とタイミングを予測して、後は直感で事前に避けるしかない。 だからスマホは一旦仕舞ーう!
流石の俺も射撃回避をやったことはゲーム以外で無いが、何とか上手く避けれたやうだ。 なんでそこだけ古語。
何とかギリギリで巨大な植木の影に隠れることに成功。 これ撃ち抜かれないよな……
「避けんなァ!」
男が何か叫んでいるが、そんなことは頭に入らず、俺はただ周囲の音を拾うことに集中する。 残り3、2、1……0、今だ。
「っし」
男が弾切れのリボルバーを睨みつけ、シリンダーをずらして一本一本モタモタと装填している間に俺は身を低くして駆け、障害物で隠れて時々店の中を移動して死角に移動して近付く。 あーあ弾落としちゃって……銃持ってんならスピードローダーとか装填済み予備シリンダーとかも持ってこいよったく。
「はい、ちょっとビクンとしますよー」
背後に立った俺の声に気が付いた男は、慌てて振り向くも時既にお口。 お寿司じゃねぇのかよってツッコミは現在受け付けておりません。
男が突きつけた拳銃をとりあえず奪って、俺は男の絶対弱点であるタマ○ン──の上にある丹田に、柳流攻護術奥義『熊殺し』という名の螺旋掌底をぶち込んでその後でついでにトドメのタマ○ンスカイアッパーという名のトーキックをぶち込む。 技名がなんかに似てるのは気の所為。
「お……ごふっ……」
男はシンボルを両手で抑えながら蹲る。 さっきまで自分が上だと調子乗ってた奴が自分の前で蹲って震えているの見ると、なんか……土下座されてる気分。 ちょっとゾクゾクしてきた。 なんか目覚めかけてる。 とりあえず扉閉めとこ。
これだけでも十分無力化はできたとは思うが、念には念を入れ、絞め技で頸動脈を圧迫して男を落とす。 失神したことを確認したらズボンのポケットから手袋を取り出して指紋が付着しないようにしてから服を脱がせて武器類を全て没収。 スタンガンまで持ち込んでやがる。
「さて……どうすっかなぁ」
男の腕と足は、俺が予め携帯していた縄跳びを改造したロープで縛って動けなくし、危険物は全て取り上げた。 一つを除いて。
問題は男の腹に紐で巻き付けられた五本の直方体。 コードが伸びてる所を見ると爆弾か? いや、でもこれはなんか違う気がする。 ソースは俺の直感。
ふと気になってその物体を男の腹に巻き付けたまま匂いを嗅ぐ。 乳製品の香り……それと何故か甘い香り。 よく使われるC4なんかは無臭の筈だ。 それにこの導線、これよく見ると繋がってねぇし……起爆スイッチは見当たらない。 振動感知式かセンサー式かと思ったが、そんな様子も無い。 というかそれだとさっき男がぶっ倒れた時に爆発してるはずだ。
つまり……これはダミー。 見た目が似てるチーズや羊羹で構成された脅し用の偽物か。 うーわ蹴り殺してぇ。
すげぇ悔しい。 人を騙すことが大得意な俺がこんな手に騙されたことがすっげぇ悔しい。 やっぱり過剰防衛になるだろうけどここで1発蹴りぶち込んでおこうか……
「ソージー? 黒の紐パンと白の紐パン、どっちが好きデスカー?」
またもやベルがカーテンから顔を出して、両手にハンガーを持って聞いてきた。 お前こんな騒がしいのに気付かないとかマジか。
「なんで紐パンは固定なんだよ。 黒」
とりあえず白より黒の方が言いやすかったから選んでおく。 いや、白も黒も嫌いじゃないです。
俺が回答するとベルは再び試着室の中へ戻る。 なんだあれ……
さて、と。 俺はどうするか。 とりあえずサツに通報して……そうだ、こいつ気絶させる前にバックに誰が居るのか、単独か複数か聞いておくべきだった。 処理を急ぎ過ぎて冷静さを欠いたな。
と、俺がスマホでプルルしようとしたその時だ。
「動くな! ここは我々が占拠した!」
背後から男の声が。 振り向くと、群衆で見えにくいが武装した男が三名女が二名、何れも顔にマスク装着で素性確認不能。 というか君らなんで避難してないの危ないでしょ。 というわけで俺はこっそりと逃げます。 いけね、ベルがまだ試着室に居るんだった。 はよ出て来いや。
「【マーズ】と通信が途切れたと思ったら……まさかやられてたとはな」
リーダー格であろう白黒の仮面の男が、銃口を俺に向けながら近付いてくる。 何それコードネーム? じゃあお前何よ。 ジュピター?
「貴様か、我らの同胞を討ち取ったのは」
「人のデートの邪魔してくれたんでな。 文句なら急に襲いかかってきたそいつ……えーっと【マーズ】だったか? とりあえずそいつに言え」
口調は軽いが、俺の警戒心はMAXだ。 こいつはヤバい。 『同胞』と書いて『はらから』と言っちゃうその思考もヤバいけど、何より感じるオーラが別格。 なにこれ、俺の人生平和〜な日常系だと思ったら急にバトル展開入るじゃん。 ざけんなよマジで。
「経緯はどうでもいい。 貴様は我らに手を出した。 重要なのはそれだけだ」
「自己中ここに極まれりだな。 手ェ出されたくなきゃ人に手を出すなよな。 やってることがアイドルの恋路に口を出す面倒なアイドル親衛隊と同じだぞ」
冗談交じりで会話はするが、脳はフル回転。 スマホは通話状態にしてポケットに入れてあるから、サツが到着するまで時間を稼げば勝ちだ。 何か、方法は何かないか……
「そんなことはどうでもいい。 それにしても、まさか【マーズ】がやられるとはな。 あいつは我らの中で最も武器の扱いに長けた男ぞ」
「あの程度でトップクラスとか、お宅の組織レベルが低すぎだろ。 お遊戯会ならトップクラスかもな」
「ふん、貴様の挑発には乗らんぞ」
「はぁ~ 随分と冷静なこって」
警察が到着するまで約10分、その間ベルを守りながら俺は死なず、一撃も掠らず無傷でやり過ごす。 敵は武器持ち五人、何れも戦闘力不明。 目の前にはリーダー格の男が一人と女が二人、残りの男二人は群衆を人質に取って1箇所に集めている。 全員武器持ち俺は無し……ハンデには丁度いいなんて言えない。
あ〜こんなことならパソコンのデータと秘密部屋の鍵を跡形もなく消しておくんだった。 絶体絶命どっかに傘が緑の斑点のキノコか壊れないブロックとノロノロ動く亀居ないかなぁ……
しかしいくら目を凝らしてもそんなものは一ドットも見えない。 逃げられず、かと言って立ち向かうことも無理……え、俺の人生ここで終わり? 爺ちゃん、婆ちゃん、橘花、俺は今から其方へ向かいます。 途中閻魔大王に挨拶して地獄観光してから向かうから時間はかかるだろうけど。
さて、さっきまでの男と違ってこいつらはだいぶ冷静。 人を殺した場合の罪は跳ね上がるから俺は死なないだろうが……どうすっかなぁ。
と、お互いに覚悟を決めて構えた瞬間、急に目の前のテロリスト共が何かに撃たれた様に次々に倒れた。 えー現代的な日常系で唐突な超常現象? ファンタジーとか要らんよ……
完全かませ犬になったテロリスト共を優雅に棒立ちで鑑賞していると、黒い影が六つ、飛び出して来た。敵のおかわりかと思ったが、倒れた奴らを押さえつけて拘束している事から、違う様子。 おーおー見事な腕前だな。
「ΑとΩは人質の解放、Εと∑はこいつらを連行しろ。 Γは残党の確認、私はここで安全を確保する。 散れ!」
「「「「了解!」」」」
何故か黒メイド服を着た短髪の女性は、他の五人に指示を出すと俺の方へ歩いてくる。 突然過ぎるけど、何となく察した。 これはあれだな、この後がめんどくさい奴だな。
とりあえず気付いてない振りをして狙いが俺でないことを祈りつつその場から離れる。 女とすれ違うが、本当に俺じゃなかったようだ。
気になって観察していると、そのままベルの居る下着店へ直行する。 あ、丁度ベルが出てきた。 お前今までやってたのかよなっげぇ……
「お嬢様ー!♡」
そのままベルを見た瞬間、残像を残しそうな速度で駆け出し──
「WaT!? アズサ!?」
ベルに抱き着いた。 直感が告げている。 この女は別の意味でヤバい、と。
ピーンwwポーンwwパーンwwピィィインww
何わろとんねん。
というわけで皆さんこんにちは。 バレンタインデーにもホワイトデーにも縁の無い孤独なる異端者です。 ホワイトデーが6日前にありましたが、お返しする相手、される相手は居ましたか? 是非教えてくださいうーらーめーしーやー
冗談はさておき。
話の運行順調進行僥倖なんですが、季節の変わり目で天候が荒れまくりですね。 話の間をキンクリするのも慣れてきた頃合かと思います。
この調子だとちゃんと5話5話で区切れそうで慢心してます。 安心はできません。
それでは次回




