表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
5って割と区切りやすいから便利だよね
43/133

男ってのはどんな奴でも女の前ではカッコつける生き物

月日は過ぎ、土曜日。 たかだか数日程度で大袈裟にも程がある。


正直土曜日は家でゴロゴロして、出かけるなら日曜が望ましいが……あのままでは皐月さん達陽メンを呼ばれかねなかったから致し方無し。 退路無し。 言い訳しまくりのカゲロウさん。


手な訳で、俺は重い腰を上げて普段着の作務衣を脱いでお洒落着を装着。 マトモな服なんぞ持ってないと思っていたが、探してみたら一着だけあった。 確か……二年前くらいに買ったやつ。 なんのために買ったんだったか覚えてない。 サイズは大きめを買っているから今の体型で丁度合っていた。


まぁ、お洒落着と言っても俳優や陽キャ愛用のジャケットとパンツとかは持っていないし、俺の好みでは無いから普通に白Tの上に水色のシャツ着て、ベージュのチノパン履いてるだけなんだけどさ。 後は長い髪を軽くゴムで纏めてある程度。 夏だけど長ズボンなのはとある事情があってだな……詳しくは過去のサムネをチェックすればいいんじゃね? 人生の過去のサムネの見方を知らないけど。


ベルと一緒に家を出ても良かった。 というか俺はそっちの方が楽でいいんだけど。


ベルにその事を言うと、


『ソージはスーパー前のバス停付近で待っててクダサイ!』


と、押されて何も言えず、俺は先に出ることに。 女は色々準備があるし、どうせ家が同じだから待ち合わせイベントできないとかそんな事でだろう。 考えなくともわかる、俺はこういう事を考えてるからな。 だってラブコメ漫画の原作者だし、二次元大好きだし。そんなだから考えちゃうのも致し方無し。 退路無し。 流石に同じネタを使い過ぎたな……


乙女心が分からないとよく聞くが、案外簡単だと思う。


何事にも、解が存在するならそれに行き着く式がある。 なら、逆算すればいい。式が無数にあるなら、全て計算検証実験して不正解を排除する。 残った式から更に不正解を除外して、最後に残ったものが答えとなる。 別にイキってない。 イキってないからこういう事許して。 要するに、乙女心も男心もどっちも単純だってこと。 難しく考える必要は無い。


「ふーむ……」


家を出る前に自室の姿見で確認してみる。 俺は自分にベタ甘自分大好きアイライクミーだが、この服装は結構気に入った。 というか、俺は素体が良いからな。 大抵の服は似合う。 別にナルシストじゃない。 事実を言っているだけだ。


「なーお(控えめに言ってキモイなお前)」


なんてことを考えながら決めポーズをとってみると、後ろでゴロゴロ寛いでいた重政に言われてしまった。 うん、俺もこんなやつ見たらそう思う。


「そう言うな重政よ。 俺はこれから人生初のイベントを消化してくる。 CGは無いが」


「なー(何言ってかわかんねぇけど頑張れよ)」


「お前……そう思うならズボンの裾噛むの辞めろ」


俺の裾をハムハム甘噛みするキュートな重政を定位置のクッションに移動させ、俺は家を出る。 目標は無事帰還。 もしベルからホテルに誘われたら置いて全力逃走だ。 念の為に今日は寝る時は部屋の扉を外から開かないようにしよう。


そうして待ち合わせ場所でスマホを弄ること約47分巫山戯んな。


いや、確かに俺は約束の時間よりも早く出たよ? だってそれがマナーだもの。 早めの行動は大人の常識だもの。


でもさ、約束の時間が9時半で、現在時刻は10時24分なのよ。 時間かかる言うても限度があるのよ。 成程、デート大好き陽キャ共は毎回これを味わっていたのか。 だからといって許すとは限らないが。 なんだ午後か? 待ち合わせは午後ですか? 小銃に弾丸込めて片手に持っていようか……


というか午後9時待ち合わせは完全に裏あるのよ。 その時間から何するんすかって。 なんだホテルか? 家出て直ぐに直行ですか? ヤだよそんなムードもクソもないやつ。 いや、どっちにしろ行かねぇだけどさ。


「ソージー!」


その後、時間にして凡そ五分。 先日練習を始めた譜面を脳内再生でイメトレしていると、駆け寄る足音──は流石に聞こえないが、俺を呼ぶベルの声が聞こえてきた。


声のした方を振り向くと、灰パーカーに桜色のプリーツミニスカートにスニーカーといういつも通りのコーデのベルが、手を振りながら走ってくるのが見えた。 上下じゃなくて左右に手を振りながら走るのは疲れるだろ……そういや左右で思い出したけど、俺は今まで生きてきて一度も『女の子走り』というものを実際に見たことが無い。 男を覗いて。


いや実際、体育の授業で何度も走る機会でなんてのは幾らでもあったが、その走り方をしてるのは巫山戯てる男子しかいなかったし……男の俺には分からんが、あれはそんなに走りにくいのか? 男と女では骨盤の形状が違うから、プロアスリートは矯正すると聞くし。


「ヘーイソージ! 待ったデス?」


「うんすっごい待った。 後12秒遅れたら帰宅が決定」


現在時刻は午前10時29分48秒、1時間は待ってやる。 もしくは3分間舞ってやる。 3分だろうと1秒だろうと突然踊り出したらそれはもうキチと変わらんのよ。


「ごめんデース。 でも、こうしてデートに遅れて走りながらやってくる展開をソージは好きだとユーが言ってたデスよ」


「ちっ、またあのアマか……待って、悠ちゃんに聞いたって……今日のこと言ったのか?」


「あ、あー……ワターシ、ニホンゴワカリマセーン? あー……I don’t speak english」


両手で耳を塞いではぐらかそうとするベルの頭を両手で鷲掴みして動きを止める。


「急にバカになっても言い逃れできんぞ。 そしてなぜに疑問符付属? ついでにenglishじゃなくてJapaneseだろ」


俺が顔を近づけてベルの目を覗き込む。 白状させるには、とにかく無言で見つめることが効果的だ。


すると、突然ベルの顔から一切の表情が消えて口だけが動いた。


「只今電波が悪く、繋がりにくい状況となっています。 ご用事の方は、再び掛け直すか、ベルフローラの唇にチュッとキスをすると改善されます」


「うわなんだこいつろくな日本語覚えてねぇな。 つーかしれっと欲望を混ぜんな靴の中に小石敷き詰めるぞ」


「それはもう嫌がらせじゃなくて足ツボマッサージデス!」


ツッコミを入れることで咄嗟に作ったキャラを捨てたのか、元に戻るベル。 突然の足ツボマッサージは嫌がらせの部類だと思うが……


その後も、ベルの目の奥を見るようにじっと見つめる。 するとようやく折れたのか、それともベルのくそざこ防御力では好きな人の視線に耐えきれなかったのか、人差し指を合わせ、頬を染めてモジモジする。 自分で言っててキモイことこの上ないな。


「じ、実は……ユー以外にも、サツキやハルカ、それと男の子が喜ぶ服装の参考に、ワカバ達にも……」


「おぉう……」


思わず顔を手で被って崩れてしまう。 何とか踏みとどまったが、全身がガクガクいってる。 あれー? 変な汗が出てきたんだけど。


「で、でもでも! クレハとイズミには言ってないデス!」


「その二人だけ言わなくても意味無いんよ……」


ベルは頑張ってフォローしようとしてくれているのか知らんが、全く役に立ってないし、元凶お前だし。 まさかの公開デートである。 あの暇人達のことだ。 面白がって後を着いてきてるに違いない。


もし紅葉はが着いてきたなら、興味津々で着いてきているな。 そんで絵の参考にしてくれるなら俺も喜んで力になる。 泉ちゃんは……多分顔真っ赤にしながらも興味津々で着いてくる。


最近わかった事だが、泉ちゃんはかなり想像力豊かな方だ。 いや、妄想力と言うべきか……とにかく、色々想像してしまい、顔を赤くし、それに照れた結果、顔を赤くするという無限ループに陥る。 ありがとうございます。 照れ顔見れるから俺的にお得なのよ。 どのくらいお得かっていうと、レッドエーテル補填期間くらいお得。


ちなみに、ソースは俺と紅葉の会話を聞いた生徒会室での泉ちゃん。 いや、エロトークはしてない。 ただ、今期アニメの感想を言い合ってたら、偶然泉ちゃんが入ってきた時にお色気枠のアニメの話をしててだな……それを聞いた泉ちゃんの顔は熟れた果実の如く真っ赤になってた。 もう一度見たい。


「……」


それはそうと、スマホを取り出して素早くパネルをタップして悠ちゃんに電話をかける。 すると、2コールで繋がった。 相変わらず出るのが早い。


『もしもし、どうした奏士』


该死ガイスー


『なんで中国語!? ちょっと待てお前、今なんつt』


悠ちゃんが言い終える前に通話を終了させる。 帰ったら記憶消去を施さないと。 で、それってどうやんの? 頭殴って脳に障害負わせるとか? そこ、既にお前が障害負ってるとか言わない。 それだとお前も俺なんだからお前も障害負ってるじゃねぇか。 一人で何やってんだ俺。


ちなみにさっきの言葉は、中国語で「くたばれ」とか「くそったれ」って意味らしい。 前に本を読んだ時に書いてあった。


そんなことより、だ。 俺が悠ちゃんのスマホにかけた瞬間に近くで聞こえた読経、そんなもん着信音にしている奴は俺の知る限り悠ちゃんしか居ない。 さっき悠ちゃんに電話した時になんか聞き覚えのある声聞こえたし。 絶対着いてきてる……帰ろうかな。 もしくは還りなさい、私に。 ルフランになっちゃった。


「……!」


ベルが何やらパタパタと見えないはずの尻尾を振っているのが見えた。 睡眠不足がとうとう幻覚を見るレベルに達したか……いや、これ紅葉の時も見えたな。 じゃあ手遅れじゃん俺が土に還ろ。 間違えた家だった。


しかし、なぁ……ベルがこの日の、俺にとっては土曜に出かけるというただ面倒な時間の為だけに準備してたのを知ってると言うか、知っちゃったというか……


俺は、自分が時間をかけて準備した計画が崩れるのがとても嫌だ。 突然追加されるバイトのシフト、予定に無い残業、メンコで何もかも総崩れのコンボ……その苦痛を知っているからこそ、ベルの楽しみを奪うことを躊躇う。 最後のメンコはお互い様だけど。


「…………」


俺がしゃがんで熟考しだした事が不安になったのか、ベルの表情や雰囲気がしとしと落ち込んでいく。 あ、耳が……なんか見える犬耳がへんにょり垂れてる。 さっきまで残像が見える程振り回してた尻尾も、今は下がって動かない。


耳ペタに下がった尻尾、上目遣い……まんま犬が不安や緊張を示す動作である。 逆の可能性もあるが、状況的にこっちだな。


「……はぁ」


俺がため息を吐くと、ベルはビクッと肩を震わせる。 あぁ、そんなに警戒しなくていいから。 いや、俺に対して『警戒するな』は無理な話か。 泣く子も(別の意味で)黙る奏士君。 まぁ、迷子だから珍しい親切心で近付いたら更に泣くとは思わなかったよね。 仕舞いにはまた警察のお世話になりかけたし。 だから俺は唯の善良な市民だと言うとるのに……仇で返ってくる親切心とか為替レートどうなってんだ。 インフレ起こりまくって、そのうち三百兆で一円レベルの事件が起きる。


俺は約束したからには必ず守る男。 『来れたら来いよ』と言われたら絶対行かないが、『行く』と行ったら可能な限り行く。 自分からしたなら破らない。 一応、こんなでもそうありたいと思ってる。 なんというか、俺というロクデナシで人として何もかも欠けてる人間でも、これすら守れなかったら人ですらなくなってしまう。


まぁ要するにあれだ。 過程はどうあれ、デートは俺から誘ったんだしこのまま続行する。 ちゃんと今日一日ベルに付き合って、俺は無事に童貞のまま今日中に帰宅して、あいつらの飯を作る。 ベルは愛しの奏士君とデートできて嬉しい。 これでWINWINでいこう。 痛み分けの気がするが無視する。 というか『WINWIN』は基本的にこっち優勢と時にしか使わない。


「……何やってんだお前」


「……へっ?」


ベルがポカンと間抜け面。 すげぇ馬鹿みたいな顔してる。 『みたい』じゃなくて実際バカなんだけどさ。


「いや、だからだな……ただでさえお前のくっだらねぇ策略で時間潰れてんだから、こんな所でモタモタダラダラしてる訳にはいかねぇだろ。 時間は待ってくれねぇぞ」


「…………はっ!」


数秒考えてやっと理解したのか、ベルの表情が明るくなる。


「んもー、ソージったら照れちゃったんデスねー? 恥ずかしくてそんな事言っちゃったんデスかー」


「うわ立ち直り直後からうっざ。 はよくたばれ」


「ぬっふっふー! ソージったら照れ屋さん!」


牧場に行こうぜ……久しぶりに……きれちまったよ。 今家畜見に行ってなんの意味があんだよ。 というか何処で喧嘩しようとしとんねん。


いや、目の前のベルに対して普通に殺意湧きまくりだ。 山の湧き水の如く滾滾と湧き出ちゃうね。 これを抑える為にはどうすればいいだろうか。 沈黙!! それが正しい答えなわけねぇだろボケ。


「やっぱ帰るわ。 一人かそこに隠れてるバカ共と楽しんでこい」


「NOーッ! ジョーダン! ジョーダンデスソージ! 恋する乙女の構って欲しい可愛いちょっかいじゃないデスカー!」


ベルが我が家へ踵を返した俺の腰に、半泣きでしがみついてくる。 汚い、涙汚い。 俺の一張羅が涙でぐっしょり処分対象になっちゃうから離れろ。


「何が『可愛いちょっかい』だボケ。 全く可愛くねぇしこっちは普通に迷惑極まりねぇんだよ」


振り払おうと身体を捻っても、引き摺って行こうにも、ベルはただ抱き着いているように見えて地を踏ん張っているのか、ビクとも動かない。 どうなってんだこいつの力。 地面に縫い付けてるとか根を張ってるとかそんなんじゃねぇだろうな。 助走剤散布しとこ。 なんだその毒薬。


「とにかくノーカウントっ! no count! Sem contagem!」


「ハンチョウかてめェは! 他人に伝わりにくいボケをするんじゃねぇ!」


伝わるのは俺か悠ちゃんかも助か瑠姫さんくらいだ。 だいぶ世代が違う。 というか言語を変えるな。 最後だけなんでポルトガル語で言った。 そして俺は久しぶりに大声を出したぞ。 すみませんね通りすがりのメレッセン北村さん。 一瞬誰だと思ったけど、そういやあの人四軒隣の光村ベヌエットさん家にホームステイしてるおっさんだった。 どうしよう、両方知らない。


というか、顔合わせたの一度だけだし、あの人達が引越し挨拶に来た時だけだし。 外国人なのかは知らないけど、くれた手土産が何故かタオル類じゃなくて段ボール箱二箱分のエロ本とAVだったなぁ……しかも熟女モノが大半という正しくゴミを押し付けられた。 俺の守備範囲外だし、普通寄越さないしで対処に困ったなぁ……爺さんのコレクションだったことにしたけど。 今更だけどゴメンねまー爺。


「う〜……」


未だ腰にしがみついたままのベルが涙目+上目遣いで訴えかけてくる。 しかし、俺を舐めるな。 二度もそんな手に引っかかる訳が無い。 一度目そのものも無いが。


「ソージ……」


「…………」


しまった俺はともかく周囲の視線とひそひそ声が痛い。 他人からの評価なんぞ気にしない俺が痛いほどの視線……あ、いやあれサクラだな。 ざけんな悠ちゃん後で素敵に御逝去させてやる。


周囲は雇われサクラだから気にしない。 気にしなーい。


しかし、だ。 今にも泣きそうなベルを見ているとこう……あれだな、めんどくせぇな。 結局は男が折れた方が早いって卑怯だと思う。 いや、卑怯って思うと俺が歯医者になってしまうな。 勝手に虫歯削ってろよ。 正しくは『敗者』な。 ハァ…ハァ…敗ボクサー? どっちにしろ負けてて雑草生え散らかす。 草でよくね? しかも俺笑ってないし。


マイケルはさて置き、心優しい俺ちゃんは泣いてる少女を放って無視するが、こうも執拗いと流石に無理そうだ。 さて、どうしようか……あ、俺に可能で一番楽な手段あるじゃん。 いやしかし……これはどうなんだ? 大丈夫じゃないな。 背に腹をかえるなら避けるのが俺だけど、避けきれないなら死を受け入れよう。 でも背中の傷ってめちゃくちゃ痒いんだよなぁ……やっぱり受け止めよ。


「……ほれ」


「……え、えーっと……これは?」


「いや、だからほれって」


「……あ!」


やっと理解したのか、ベルの頭上に浮かんだ丸型LEDに光が。 それだとあの世行きみたいになっちゃう。 悠ちゃんの前にベルが素敵に御逝去しちゃった。


「にっへへ〜……えいっ!」


俺の差し出した右手を、ベルがギュッと両手で掴む。 しまった日本は左走行だから左手握らせた方が良かったな。 ま、そのうち変えればいいだろ。


「……何?」


ベルがニヤニヤ正直キモイと思うレベルで表情を崩して


「ふへへ……なんでもないデスヨー」


と、ウザイくらいの幸せオーラをぶちまけてる。 うーわ俺の天敵が現れやがった。 眩しいというか普通にウザイからとりあえずその顔やめろ。


「ソージがデレた……つまりはチャーンス!!」


「あ、そのぶら下がった贅肉押し付けて籠絡しようとしたら俺はこの手を離すからな」


「そんな殺生な!」


念の為に予め釘を指しておく。 しかし、ベルが残念そうにしたのも一瞬、直ぐにいつもの幸せすぎて何も考えてませんよフェイスに戻る。 うわウザっ……なんか精神的に痛いんだけど。


「というか贅肉じゃないデス! これは夢と希望と欲望とJUSTICEの結晶……」


そう言いながら、ベルは何故かショルダーバッグの紐の位置を弄り、俗に言う『パイスラ』なるものを作って俺に見せてくる。 くたばれ。


「何その業の深い結晶。 そんなの絶対触りたくねぇ」


「ソージ限定で触ることを許可シマス!」


「胸張って言うことじゃねぇし触りたくねぇ」


「……ユーの言う通り、ソージは貧乳好きデス?」


「またあのアマか! 嘘吹き込みやがって!」


あんのメスガキ……本格的に悠ちゃんの逝去を考えなくてはいけない。 会場どうしようか。 式は挙げなくてもいいよな。 遺影は後で撮っておこう。 従姉まで手にかけるのか……少しワクワクしてきた。 ヤバいのは俺だった。 いや、ジョーダンだけど。 ジャクソンだけど。


「…………」


ベルが俺の目をじっと見つめてくる。 これは答えないといけない展開だな? それなら答えは一つ。


「確かに大きさとか形に拘りはあるっちゃあるが……相手が俺の好みならどうでもいい」


「……え? それってつまりどういうことデス?」


あ、理解できなかったのね。 最期の一文がまとめのつもりだったんだけど。


「立方体に興味無いからどうでもいい」


「身も蓋もNothing!?」


「安心しろ、お前は好みじゃないが嫌いじゃない。 立ち位置的には『無関心』だから、これから評価が下がることはないんだからいいだろ」


「代わりに評価上がらないじゃないデスか!」


そんなこと言われたって……無関心なだけまだ良いだろ。 嫌いな奴は永遠に下がったままなんだから。 そういう意味では、俺の中でお前はだいぶ上の位置に居るぞ。 やったねベルちゃん!


というか、さっきから断固手を離さないのなんなん? 動くなら離れて欲しいんだけど。 凄いよね、いつの間にか俺の腕を抱いてるんだから。 これは胸を押し付けてるのか、腕を抱く過程でそうなったのか判別し辛いから辞めて欲しいんだけど。 ほら、腕を抱きながらって意外と歩き難いって聞くし。 確かにスニーカーだからヒールみたいに転ぶ危険性は無いかもだけど、もしバランス崩したら両方巻き添えで転ぶかもしれないし、何より若干恥ずかしいから辞めてもろて。


常に堂々……としているかはさて置き、俺にだって最低限の羞恥心は残ってる。 いや、裸見られることに関しては悠ちゃんやら瑠姫さんやらに何度か見られてるから対して気にしないんだけどさ。 前に紅葉に見られた時は、初めて身内以外に見られた事に対する驚きとかではなく、ただ単にそうするべきだと思ったからやった。


ま要するに、だ。 慣れてないのよデートって。


悠ちゃん瑠姫さんとは二人で何度か出かけたことはある。 あるが、悠ちゃんは従姉だしそもそも遊びと買い物が大半だしラッキースケベなんてありえないし。 瑠姫さんとは極稀に遭遇した時に行くくらいだし、そもそも瑠姫さんに休みとか形式的にあっても事実上存在しないからそんな時間無いし。 前に家に来た時は驚いたけど。 だって原稿はデータ送信、催促も電話なのに、家に来るなんて……仕事だとか用があるって言ってたけど、多分嘘混じりだろうな。


それはさておき、そんな訳で単独行動一人暮らし友人0人童貞歴=年齢のプロ童貞恋人は次元の向こう子供は数十人という一人を満喫している俺にとって、こうして同級生……同級生か? 年齢は色々あって俺の方が上だから同級生じゃないな。 でも同級生の意味は『クラスメイト』だし……じゃあ同級生か。


で、話を戻す。 同級生、しかも異性で俺に好意を寄せる女ときた。 そんな奴と殆ど脅し同然だが、俺から誘ってデートをしている。 俺と同じ経歴でこの経験あるやつが居るならどうぞ俺の目の前に現れてみろよ。 盛大な拍手と共に迎えた後で消し飛ばしてやる。


だから、童貞の俺にとってベルみたいなのは天敵なんだよね。 紅葉みたいにある程度対応策が分かってて、何となく波長が合うタイプじゃなく、泉ちゃんみたいによく知ってる間柄というよりほぼ兄妹の間柄だから気にする必要が無い訳でも無い。 突如現れた自分に好意を寄せ、それでいてアピールが容赦無く、好きになってもらう為に何でもするのかと思ったら普通に好感度下げる様な事もして、そして何より自分の知られたくない過去を知っている素振り。 要警戒対象確実なのに、どこか警戒しきれない。


はい、ハンマーカンマー言ったけど、要するに押し付けられる胸の感触が未経験過ぎてアレって事だ。 三次元は対象外と言っても、俺も男である以上避けられなかったという事だ。


それにしても感触はこんな感じなのか……これは漫画に生かせるな。 いや、兄妹モノだからその機会少ないんだけどさ。 イベントで出す同人誌の表現の参考にしよう。


「あーもううるせぇ。 さっさと行くぞ」


自分の中で殆どを強引にまとめて歩き出す。 凄いよね今の今まで待ち合わせ場所から動いてなかったんだから。


「そんなにワタシとデートしたいデスかー? んもぅ、しょうがないデスネー!」


「うっわ今押したら車道に出ないかなこいつ」


丁度右手で手を繋いでるし、お隣は車道だからグイグイ押していけば頭と車がこっつんこ。 後処理大変そうだから辞めとこ。


「で、どこ行くんだ?」


「ん〜〜……ソージはどこ行きたいデス?」


「ん〜〜じゃあお前を地獄に案内してあげようかな」


「ノー! せめて異世界にお願いするデース!」


「転生ミスって羽虫になればいいのに」


というかいい加減抱き着くのやめてくんない? 腕引っ張られる。 うーんこの乳もぎ取って悠ちゃんに付け替えてぇ。 ウザイから。


「ワターシ、コッチノコトワカリマセーン」


「カタコトうぜぇ……え、前にボウリング場行ってただろ」


「あれは調べておいたデース。 ついでに言うと、サツキ達と買い物言った時は教えて貰いながらだったデース」


ふむ……莇から聞いた話だと、こっちに荷物が届くの遅れて、その間ベルはホテル泊で観光していたらしいが……その時はどうしてたんだろう。 スマホ使ってたのかねぇ……


「じゃ、ジョイ本隣のクルーズでも行くか?」


「クルーズ……ファッションクルーズって奴デスカ?」


そうそれ。 デート場所に迷ったらとりあえず行けば便利とデート未経験の悠ちゃんが以前言っていたのを思い出したのだ。 未経験がデートを語るって、女を語るチェリーみたい。 俺は違うぞ。 いや童貞なんだけど、女のことはある程度知ってるから。 語らないけど。


「とりあえず映画でも見てその後飯食って買い物すれば時間潰せるだろ」


「楽しむって考えは!?」


いや、だって帰りたいのは変わりないし……夜まで居たら何されるか分からないし。


「いいからさっさと行くぞ」


「ソージ待つデスよ〜」


しゅっとなるべく擦らないように握っていた手を離し、ポケットに手を突っ込んで先に行く。 すると、ロールターンの如く華麗な動きで右から左へ移動。 俺の左腕に抱きついてきた。 あまりにも素早い対応と動きでちょっと引いたのはここだけの秘密。


というかミニスカートなのによくあんな動きできたね。 君やっぱり頭おかしいと思う。


まぁ、恋は盲目という事で何も見えないベルちゃんは放っておくとして、とりあえず『ベルを左側に移す』という当初の目的は達せられたから良しとしよう。 ここまでが俺の計画通りだ。 我が……あれ、何流だっけ? とにかく柳流でいいや。


我が柳流格闘術あ、間違えた。 『攻護術』だった。


TAKE3 アクション!


我が柳流攻護術は流れを掴む流派、流れを掌握し、自らの思いのままに進める事を主とする流派だ。 それは戦闘に留まらず、こういった日常生活でも活用される。 特に意味の無い会話をし、それとなく左側へ行くように持っていく。 最後は予想外だったが、結果的に望み通りなのだからオーライオーライオーラリーだ。 泉の中に潜んでろよ。


回りくどいと言われたらそこまでだが、だってなんか言い難いじゃん。 『車道側は危ないから歩道側歩け』と言えってか? 無理だジョー。 俺にそんな能力は無い。 というか普通に黒歴史認定だからヤダ。


ハイスペックな俺は、何をやらせても一定以上の成果を出す。 デートの基礎も理解している。 それを行動に移す訳では無いが。 恥ずいし。 あれよ、昔からさりげなくやる癖が着いちゃってんのよ。 気付かれずにやる、それが流儀。 クソどうでもいいしイキってる様にしか見えない。 良いの、男はカッコつけてなんぼだから。


初めてのデートにドキドキしている自分が居るかと聞かれたら居ないと答える余裕はある。 『三次元に興味無いと言ってる八割は女に誘われたら頷く』と言う説があるらしいが、俺はそんな腑抜け共とは違う。 正真正銘興味が無い。 全く意識して無い。だからこそ生まれる余裕、それと金。 交際費必要無いから貯まるよね。 収入なんて重政代と維持費と趣味費用と貯金で殆ど消えるけど。 食費は削れるし、光熱費は充電とかの電気代が高いくらいで後は抑えてるから安い。 金欲しいなぁ……


常に冷静な自分が居るからこそ、俺は常にいつも通りで居られる。 という訳でこんなCGが無いデートイベントも直ぐに消化して見せよう。 次の選択肢までスキップできないみたいだし。 なんてことない、ただ主人公の顔が見えないギャルゲーやってるだけだ。 これがエロゲーじゃなくて心底安心する。


「つーかお前いつまでくっ付いてるつもりだ。 いい加減離れろ暑苦しい」


「いつまでも離れないデスよー!」


「やべぇお祓いしないと」


「誰が美少女悪霊かっ!」


「美少女の部分は言ってないんだけど」


……大丈夫だよね? 余裕あるよね?

キッパリと言います。 今回は大丈夫です! ……多分。


夏篇入って初めての章の前半部分はデート会ということで、これから少し続きます。 主人公の奏士きゅんの読者からの好感度は上がるかどうかの半博打、下がったら見直して次でどうにかしてみようかと。 上がったならわーいわーいタバスコと生にんにくのオーロラソースだげえっほごっほうぇげっほ


…………誰か慰めて。 下の方じゃなくて、普通の意味で慰めてください。 猫さんなら大歓迎します。 猫と暮らす余裕無いんですよ……猫カフェはなんかアレですし。


そんなクソどうでもいいことはさて置き、以前の話中で宿木学園の全体図をざっと出したのですが、ノリと勢いと深夜テンションと睡眠不足過多で決めたものなので、改めて考えてみると物凄くやりにくいですね。


 なので、大きく変更しようと思います。 大幅改築と思ってください。


 所々変わらない部分もありますが、主に学園の敷地形状と校舎等の位置を変更しようと思います。 全体図を簡略化したものをTwitterの方でupしようと思いますので、気になる方はそちらの方もお願いします。 次回の投稿日……3月10日頃にupしたいと思います。 スマホのお絵描きアプリもしくは紙にシャーペンで描いたものをパシャって投稿なので、見にくい方がいらっしゃるならリプでもDMでも仰ってください。 しっかりと対応させていただきます。 具体的には、『許してちょ♡』と返します。 嘘です。


という上司の話並に長い前置きは置いといて、小説の話を……


最近シャドバネタが増えてきたと思います。以前はお気付きの方もいらっしゃるでしょうが、オレカ(KONAMIさん)ネタが多かったです。大人気作品の作者様はこういうのも考えて入れてるのでしょうが、大人気()作品の作者である私は全く考えてません。 ある程度ネタジャンルを纏めていたりしますが、ほぼ直感頼りです。 それでも所々散りばめてあるので、全部分かったよって人は暇なんですね。 と後書きに書きますが、本音を言うと、限られた時間の中、この話を読んでくださる読者様は大変感謝感激雨あられからの顔sゲフンゲフン、エターナルブリザードです。 ワームホールも打ち破って見せましょう。 では、次回も何卒


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ