長い付き合いの果てに選んだ女よりも見た目でサクッと選んだ女の方が長続きしたりする。ソースは作者の親
放課後、それは学生にとって何より待ち望む時間。面倒な授業から解放され、各々が青春()を楽しむ時間。バイト、部活、買い物、遊び、デート、デッド、殺戮、断罪……あ、最後辺りはまだやる時間じゃないな。
とにかく、放課後というのは『学生』にとっては夢の時間なのだ。学生『は』──
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授業も終わり、既に放課後。教室に残っている者もちらほら居るが、概ね帰宅か部活に行っている為、校舎内に人影は殆ど存在しない。稀に教師とすれ違う程度だ。公務員と言えど、『帰っていい』だけで『帰れる』かどうかは別の話なんだよな。
そして、俺ら生徒会役員は放課後こそ仕事仕事仕事……もうマヂ無理…リス化しよ
そうじは リスかを くりだした!
……どんぐりおいちい
そうじの ちのうが がくっと さがった!
さて、少々やる事があったから俺は遅れたが、他のメンバーは既に生徒会室に着いているはずだ。泉ちゃんと莇を合わせるのが心配。もし指一本触れていたら、莇の指を詰めなきゃならん。血を落とすのは面倒だからやりたくないので、触れないでいておくれ。
そんなんで、廊下を一人でてこてこ歩き、生徒会室が見えてきた。しかし、扉の前に何故か役員4人が隠れるように中を覗いている。何やってんだあいつら。
声をかけようと近寄ると、俺に気付いた莇が高速で瞬きを繰り出してきた。え、何? とうとう脳に異常が?
と、思ったが、瞬きが不規則過ぎる。回数からして、モールス信号のようだ。えーっと……
『な か に ふ し ん し ゃ』
中に不審者……それくらいなら莇一人で対処できるだろうから学園外からの可能性は無いな。武器持ちでも圧勝できるだけの実力はあるし、何よりこの学園を作ったのは、性格が悪い我が柳家の全当主『柳誠』だ。あのクソジジイが、不法侵入を許すとも、無事に帰すとも思えん。何かしらの精神的ダメージを与えるはずだ。発狂するレベルの。
つーことは、俺の中で不審者と間違われる人物は一人しか居ない。未だに結婚できず、何度も出会い系で騙される愚か者。そして、恥ずかしながら我が知り合い。ほんとに恥ずかしい。『移動する羞恥物』として知られてないし言われてもない俺ですら……ねぇ? 作家やってるくせに言葉が出てこなかった。辞めちまえとか言うな。傷付くだろうが。ダイヤモンドハートなんて言っても、ダイヤは衝撃に弱いんだ。ハンマーで砕けるんだ。所詮は炭素だから。原子の並びが普通とは違う炭素だけど。
本音言えば近付きたくないが、仕事を始められないから意を決して扉の前へ。声を出すとバレるから、莇にはハンドシグナルで
『俺 突入 お前 待機 報告 待て』
と送った。気付けばいいが、読めるかこれ……
いざ突撃。
扉を開ける時、最初はそっと開けず、自然体で開けよう。そっと開けると逆に音がするし、何より違和感を感じさせる。そよ風が吹いても気にしないのと同じく、流れに溶け込み、違和感を消す。まぁ、ここで声を出すのも良くないから、無言で。
「…………」
扉を開けると居た。いつも使ってる机じゃなくて、応接用のソファにもたれかかって魂が抜けてる一つの死体が。
「……おい、起きろ」
魂が根元まで抜け駆けていたから、掴んで強引に肉体へ戻して目覚めさせる。頬をぺちぺちしても反応が無いからちょっと強めにビンタしてみる。
「…………」
へんじがない。ただのしかばねのようだ……
A.E.D. 救命失敗オワタ
「へへ……もうマヂ無理…リス化しよ……どんぐりおいちい」
寝言か、それとも辞世の句か、虚ろな目で笑みを浮かべながら呟いた。それを聞いて理解した瞬間、激しい不快感に苛まれ、頭が痛くなった。だってこいつと同じ思考をついさっきしたから。俺こんなのと同じレベルなのか……
とりあえずちょっとイラッとしたから無理矢理現に戻そう。
「オラ、起きやがれ」
「だぼくっ!?」
全力で頬を平手打ち。手首のスナップ効かせたやつをお見舞いしてやると、やっと目が覚めた。俺の手が、大事な大事なスベスベおててが真っ赤になっちゃったじゃねぇか。
「ほあっ、 何!? それともさっき見ていた幸せな家庭は夢!?」
何やら戯言わもうしておるわ。いや、というか遂に幻覚まで見始めたか……
「ようやく目覚めたかボケ」
「ん……あ、奏士か? 何やってんだこんな所で」
目の前の男は、みっともなく垂らしてた涎を裾で拭き、脱げかけてた白衣を着直して身嗜みを整える。寝癖はそのまま。
「あんたこそ何やってんだこんな所で」
「何って……お前流石に人が入ってるトイレの個室に入ってくるのはどうかと思うぞ」
「周り見ろ周り! 何処だと思ってんだてめぇ」
言われてキョロキョロと周囲を見、もう一度俺の顔を見て
「……ここは何処だ?」
あんた何処かも知らずに入ったのか。どうせ『お、丁度よさそうなソファあんじゃん』的な思考回路で入ったんだろう。
「ここはこの学園の生徒会室だ」
「生徒会室……納得したわ」
「はっはっは」と笑いを付け足す目の前の男。トイレに居たならそのまま流されればよかったのに。そしてそのまま糞まみれになって屎泥処で糞食ってろ。等活地獄に落ちないとは思うが。
「それにしても……なんというか、お前と学園で話すの久しぶりな気がするわ」
「そりゃ、学園じゃ赤の他人で通してるからだろ。俺もあんたに関わりたくないし」
「ひっでぇや。ま、俺はお前が楽しくやってるなら別に良いけどさ。どうせお前ん家よく行くし」
「それな……そうだ、来るなら帰る時に片付け手伝え」
「え〜っ、だって俺がやるよりお前がやった方が綺麗だし、早いし、楽だから良いじゃん」
「本音表したなゲスが。もし次来た時片付けなかったら、お通しを出さん」
「そこで『二度と来るな』って言わない所が優しいねぇ……というかお通し出さないだけって……」
いや、まぁ……色々世話になったし、何より悠ちゃん達との集まりの場だし。流石の俺もそこまではしない。
「なぁ、奏士」
懐から出したタバコの箱から、おっさんの様に叩いて一本取り出して、ライターで火をつけながら聞いてきた。すげぇ……一連の流れに全く違和感を感じねぇ。隙だらけなのに。
「……何」
「……彼女、出来たか?」
「……正気か?」
「いや、割と真面目な──おい、割と本気で心配そうな顔をするな。俺の額に手を当てるな。熱は無いぞ」
……本当に熱は無い。ということは煙草とアルコールの過剰摂取による脳の障害か……だからあれ程タバコは控えろノンアルを飲め運動しろと言ったのに……
「いや、だってあんたなら俺の好みを知ってるだろ」
「シージの好みとな!!」
突如、外で俺からの指示が来るまで待機していたベルが扉を開けて飛び出してくる。あっぶね、びっくりするところだった。
「え、えーっと……バレンタインが何故ここに? おい奏士、説明くれ」
「それはこの部屋を見ればいいんじゃないか?」
ベルに続いてぞろぞろと残りの三人が入ってくる。奏士ダョ! 全員集合!! いや、奏士俺一人だけど。
「莇に、花伝……それと逆無か? どうしたどうしたぞろぞろと」
「だから、見りゃわかんだろ」
顎を撫でながら、俺を含めた五人を見て熟考している。この学園に通う学生と職員なら分かるはずだ。いや、俺は分からないけど。
「素行不良者への直接指導……じゃねぇな。バレンタインはともかく、莇や逆無のそんな話を聞いた事無ェし、奏士程度の話も聞かねぇし……」
OK後でこいつを殺そう。とりあえず今すぐに三発は殴りたい。
というか、転校して間も無いのに、ベルはそこまで目をつけられてるのか……まぁ、居眠り多いし、外国人とはいえ、見た目は派手な部類だし。特段、奇抜ではないけど。
「……分かった! 複数プレ「ふっ!」きゅう」
とんでもなく失礼極まりないことを言おうとしたから、左フックで顎を殴って脳を揺らして気絶させた。と言っても、数秒もしくは永遠の間だけだが。
まぁ、もし永遠でも、これの子孫を残すことは人類にとって不利益にしかならないから別にいいだろう。ぶら下がってるソレを使う予定はあっても、実際に使う機会は無いだろうし。うん、泉ちゃんを守れたから良し。あ、でも恥ずかしそうに顔を赤くしてそれを必死に隠す泉ちゃんも見たかった……
「……はっ! 俺は一体──」
「目が覚めたかセクハラ教師」
「俺がセクハラ? 何言ってんだお前。俺がセクハラなんかしたら問答無用で豚箱行きだろ」
「疑う余地が無いのがすげぇよあんた」
やっぱりこの人ダメだ。
「なーんて冗談、お前ら生徒会役員なんだろ? んで、奏士は副会長」
「知ってたのかよ」
だったら最初からそうしろ、と言いたいが、この人に言ってもどうにもならないのは昔から知っている。
「えーっと……この人だれデス?」
「確か……あ、私たちの担任ですよ」
お前ら……覚えてやれ。
「はい、俺は担任の霜月でーす。気軽にしーちゃんでももっちゃんでも下関条約でも呼んでくれて良いぞ」
この男、姓を霜月名を……なんつったっけ? とりあえず俺ら昔馴染みの中では『も助』と呼ばれてるし、それでいいや。名前とか呼んだ覚えないから忘れちゃった。
先の会話からわかる通り、俺の知り合い──と言うには知りすぎてる。まぁ、要は幼なじみというか、悠ちゃん繋がりの関係である。悠ちゃんと幼なじみで、俺がガキの時に出会って……まぁ、そのまま。ちなみに、昔馴染みとは『俺・悠ちゃん・も助・瑠姫さん』の四人である。腐れ縁も腐りきって逆に強固になっていやがる。
それと、最後の渾名(?)は逆に長いし虐めと誤解されるぞ。
「Heyもっちゃん先生! なんでここにいるデス?」
「おっ、バレンタイン元気が良いねぇ! それはな……」
「ふっ」と、急激に元気とか気力とかが消失し、再び燃え尽きたようにソファへもたれ掛かる。
「また、ダメだったのさ……」
他の4人はきょとんとしてるが、俺には分かる。そうか、またか……
「なぁ、いい加減そろそろ諦めたらどうだ?」
「だってよぉ! 見ろよこれ!」
半泣きでスマホの画面を見せてくる。 えーっと……
「やり取りを見るに、上手くいってると思うが?」
この人と、被害者であろう御相手とのやり取りは、普通に順調。趣味の話、食事の話、デートの話……どれも噛み合って、上手くいってる。
「だろ? そんでデートに誘ってみて、来たのがこれよ!」
画面をフリックして開いていた写真アプリの画面を見せてくる。そこには──
「「「oh……」」」
全員の声がハモった。これは流石にこの人が被害者だな。
画面に表示された写真には、『青髭アフロスネ毛二重アゴデカいホクロタラコ唇厚化粧etc……』と、明らかに混ぜてはいけないものを混ぜて、新たな混沌を創り出したかのような……人? 多分人。まぁ、チンパンジーでも、遺伝子的な違いは殆ど無いけど。とりあえず同じ霊長類が写っていた。何より、女じゃなくて、ゴリッゴリのおっさんだった。タラコ唇とアフロは女でも似合う人は似合うけど、ベースが自然豊かな大地じゃなくて、干上がって荒れ果てた干魃地帯だからなぁ……
「……とりあえず飲みに来いよ、な? 飲んで忘れようぜ」
流石の俺も同情して、肩をポンと叩いて誘う。これはトラウマ案件だ。
「うぅ、奏士ぃ……」
久しぶりに優しくされたのか、それともトラウマを思い出したのかは分からんが、目に涙をうかべてプルプル震えているも助。一応言っておくと、涙目で震えているからといって、可愛いかどうかは全くの別。全く可愛くない。だっておっさんだし。
「ソージがいつにも増して優しいデス……」
「……奏士はそっち?」
「なるほど、だからお嬢様如きがアプローチしても効果無かったんですか……」
「アオバ……ちょっとこっちに来るデス」
後ろが煩いけど無視しよう。いつもの事だ。
「よーしよしよしよし、とりあえず酒飲む前にジュース飲んで落ち着けよ、な? 下に自販機有るから買ってこい」
「おう! 行ってくるぜ!」
「あばよぉー!」と叫びながら生徒会室を出ていくも助……チョロい。
「やはり、そのくらいドクズな方が奏士殿らしくて安心します」
「「うんうん」」
莇の一言に即、同意するベルと紅葉。貴様ら人のこと言えんのか? 特に莇。
さて、邪魔なも助は外行って戻るまで時間かかるし、部屋の鍵を閉めよう。
ガチャりと閉錠し、自分の席に着いて目安箱を開ける。さーて、お仕事お仕事……
\ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……/
「んだよ、鍵かかってんじゃねぇか」
ノブを捻る音が聞こえるが、内側から鍵がかけられているので開くことは無い。鍵を持っていなければの話だがな。
さて、無視して仕事しよ……いかん、いつの間にか仕事することに拒絶反応を示さなくなっている。このままでは俺の一部が俺でなくなってしまう。俺は何時だって働きたくない。楽して生きたいのだ。
\……コンコン/
ノブを捻る音が聞こえなくなってから数分、扉ではなく、窓をノックする音が聞こえた。おかしい……ここは地に足の着く1階ではないのだが……ゴースト? まさか何度も想像した『幽霊とのラブコメ』が現実に? マジかー……ということは今ここで初体験? いや、それは同人とかだけだから、全年齢版だとまずは告白からの同棲だな。あ、既にベルという前例があったわ。マジか俺。
つーか無理。俺人前でヤるとかそんな恥辱プレイは無理! 二人きりの時にじっくりとしたいです、はい。経験無いから童貞の願望もしくは願いor夢か戯言ですが何か? いいだろ想像したって。
俺だって男だ。二次元限定とはいえ、性欲はある。エロゲーだってやるし、エロ同人だって買うし描く。AV・エロ本は──参考資料程度にちょっと見ることはあるけど無反応だから却下。
で、紅葉達三人は怖いのか、動こうとしない。莇は興味が無いようで、気にすることなく読書を続けている。読書(幼女イラスト集)だけどな。家で読めとは言わない優しさじゃなくて諦め。
しょうがないので、消去法で俺が行くことに。マジかよ……美少女幽霊来い。二次元みたいな!
ガラッと窓を開けて確認するが、どこにも人は見えない。なんだよ畜生。
「……ぉぉーぃ」
と、閉めようと窓に手をかけた瞬間、下の方から声が聞こえる。もう一度顔を出して見てみるとそこには──
「やっと開けてくれたな」
「……ふん!」
「あちょ待っ」
不審者が見えた気がしたから即座に殴って落としてしまった。大丈夫、あれは見間違いだ。
「……今、誰か落とさなかった?」
「気のせいだろ」
紅葉の問は軽く流して窓から離れる。が──
「ったく……急に落とすなんてひでぇじゃねぇか」
も助が再び登ってきた。落ちたはずなのに、何事も無かった様に戻ってきたその姿に、ここに居る俺以外の全員が若干引いている。
「だったら壁登ってくんな。クレイジー○ライマーか」
それ以前に、裾が邪魔でしかない白衣を着て、よく登れたものだと感心する。
と、俺とも助が談笑(笑ってるのはも助のみ)していると、ふと違和感を感じた。そうだ、ツッコミが来ない。
「……奏士達の異常っぷりにはつっこまない」
紅葉からのツッコミ(放棄)は辛辣な一言だった。異常だと? それは俺に言ってるのかいシルバーガール? 否定できない。
「まぁ何はともあれ、こうして無事なら良いじゃねぇか。ほれ、お前の飲み物」
ポケットから缶を取り出して、手渡しで渡そうとしてきたから受け取ろうと俺を手を伸ばす。が、も助の手は止まり、変わりに反対の手が伸びて来て──
「380円」
「山頂か」
代金をせびってきた。いや、金払うのはまだ良い。価格設定がおかしい。
「自販機価格でもせいぜい160円かそこらだろうが。何吊り上げとんのじゃ己は」
「いやほら、人件費移動費俺の煙草代……その他諸々を割引して490円ってことで」
「サラッと煙草代混ぜ込んでんじゃねぇよ。自分で買え自分で。ホープでも買ってちまちま吸ってろ。あとさらに吊り上げるとか頭いかれてんのか? 何、ショックで脳みそ落っことしたのかお前」
「冗談だ冗談、今回は俺の奢りだから安心して飲め」
はっはっはと笑いながら手に持った缶を手渡してくるも助。飲み物1本貰うのにすげぇ疲れた。つーか昔馴染みとはいえ、教師が生徒に煙草代強請るとか本当に頭おかしい。創設者・理事長からして頭おかしいからかなぁ……俺の知り合いろくな人いねぇなホントに。
「ったく……ん? そういえば自分のは?」
渡されたのは俺の分1本、そして白衣や、その他のポケットに入ってる様には見えない。自分の分は買わなかったのかしら。
「あ、俺にはこれがあるから」
そう言いながら懐から取り出したのは、銀色に輝くスキットル。よく見る水筒だ。
「勤務時間中に酒飲もうとしてんじぇねぇよ」
「安心しろ。この中身はただの可燃性の液体だ」
「液体で可燃性なら酒か油くらいしかねぇんだよ。油飲んでんのかお前。ディーゼル機関車か」
「冗談だ。普通に茶色い液体が入ってるだけだ」
「ウイスキー飲んでんのか! んな度数高ぇ酒飲むな!」
「安心しろ。これも冗談だ。中身はただの麦茶、これで飲むとすげぇ美味いんだよな」
ぐいっと上を向いてごくごくと喉を鳴らしながら飲み、「ぷはーっ!」と、一声。酒飲んでるようにしかにしか見えん。
「このつ……アルコホリックニコ中が」
酒と煙草の飲みすぎ吸いすぎで腹から腸はみ出してくたばればいいのに。
「いいだろ別にー 酒と煙草は、俺の数少ない趣味みたいなもんなんだから」
「そんなこと言って、健康診断で痛風だのなんだの言われでもしたらどうすんだ。ちゃんと休肝日作ってんのか?」
「あたぼうよ、何事も休み休みってな。酒は百薬の長とは言うが、薬も毒と変わらねぇだろ? そういうこった」
それを聞いて一安心。俺も昔馴染みだけの飲み会(俺は酒を飲まんが)になんだかんだ付き合ってるし、それが原因で不健康にでもなったら責任とらにゃならん。具体的には彼女探し。絶対嫌だ。
自分の恋路ははなくそぺっ、他人の恋路はドンニャコンニャパッパ。洗濯バサミの画期的な使い方の方がまだ興味引かれる。
で、こんなどうでもいいことは宇宙の彼方へポイっとやっちゃって……
「じゃ、早く仕事に戻れよ」
未だ生徒会室にて存命中のも助に、しっしと手を振って追い払う。
「おい、その手は俺を野良犬扱いしてんのか? 残念だが俺にはそんなの効かん! なぜなら俺は常に負け犬だからな!」
も助の発言は、握り拳を作って胸張りながら言うことかどうかはさておき、こんなこと言われてしまったら流石の俺も言わなきゃいけない。
「ヤダもう、も助ったらとってもカッコよくない」
俺の遠回しに見せかけた直接的なディスりにも、慣れているのか「フフん」と鼻を鳴らすも助。俺のやってる事と大差無い。
というか、俺もこういう罵りは言われ慣れてるけど、傍から見たら割と痛いな。それを見て俺が直すかはさておき。というか直す直さないの問題じゃない。全ては、俺を慣れさせた周囲の人が悪い。うん、俺悪くない。
「ま、冗談はよしこ様って事でね……」
「ネタが古いしなんで様付けしたよ」
「俺の趣味だ」
それは、とってもキモイキメ顔と、見事にそそり立つ親指だった。歯を見せるなキメェ。無駄に白いのが腹立つ。
それよか、他の三人が話についていけてない気がする。あのベルですら話しかけてこない。
「俺も用があって来たのよ。簡単に言うと依頼、もっと簡単に言うとお頼み申す」
「簡単の意味を調べて出直せ。つーかなんだよ頼み事って」
「へ? 俺の嫁探し」
「今すぐ相談所行けバカタレ。ここは紹介所でも出会い系サイトでもねぇんだよ。バカか? この学園の在籍者はバカばっかりか?」
運命だのなんだのはこの際どうでもいいが、自分の相手くらい自分で探し出せよ。それこそ、神に祈るとか整形するとか。
「ソージ、それくらい探してあげるデスよ。ワタシも手伝いマース!」
にゅっと、俺の肩に手を置いて背後から現れたベルに、空気を壊された。この俺が背後からの接近者に気付かない、だとっ!? まだ俺も未熟ってことか……いや、とりあえず離れろ。徐々に近づいてくんの辞めろ。 乳押し付けんなクーパー靭帯切り落とすぞ。
心の中で何を言おうと、相手には伝わらないから意味が無い。そして、俺がこれを面と向かって言えるかは別。流石に面倒臭い。
というわけで、ベルを振り払うのも面倒だから放置することにした。もう一度言う、面倒だから諦める。他意は無い。無いと思う。無いんじゃないかな。自信なくなってきた。
「大きな仕事も無いですし、暇つぶし程度にはなりそうですね。私も参加します」
莇はもしかしなくても、生徒会の仕事をゲームのイベントか何かだと思っているのではないか。 そんな思考が浮かんだが、俺は考えるのを辞めた。インフィニティパパイヤ
パパイヤが一つ、パパイヤが二つ、パパイヤ〜ンの娘が一人、鈴木が一人……あれ、途中から違う。なんなら最初から違う。
「私も、その依頼を引き受けることを推奨する」
紅葉まで乗ってきた。定員オーバーだから降りてくれないかな……
「皆さんが参加するなら……私もお手伝いします」
泉ちゃんまで……え、なんで全員俺の事見んのよ。 こっち見なおいベル、てめぇなんで目線を下に向けてる。
「さぁ、残るは奏士だけだ。お前は未だ独り身の兄を独身貴族童貞勇者のまま終わらせないよな?」
誰がお兄ちゃんだ。 と言いたかったが、この人の立ち位置が悔しくも兄であることに変わりないから黙っておいた。
「あのなお前ら……コレの結婚相手見つけるとか、対物ライフルの弾を至近距離かつ親指一本で弾けって言ってるよなもんだ。要するに、実質攻略不可能の無理ゲーってこと。分かる? カザフ間違えた、アンダスタン?」
「あの人今カザフスタンって言い間違えかけましたよね」
「奏士は時々頭悪い時があるからな。その時が狙い目だ」
「なるほど、その時が既成事実作成の機会デスね」
「結婚式はいつやるの?」
「あ、あのあのっ……皆さん、奏士さんがスコップと金属バットを取り出し始めたのでそろそろ……」
皆が人のミスをひそひそ話で盛り上がって話がズレ始めた頃、俺が無言で生徒会室のロッカーから鈍器と埋める道具を取り出した時、泉ちゃんが全員を止めた。なぜ止めるんだ泉ちゃん。大丈夫、返り血は泉ちゃんに一滴足りともかからないから。血が出ない程度に頭蓋骨粉砕して、意識失ったところを首から下埋めるだけだから気にしないでいいんだぞ。首から上はカラスにドリルくちばしでもされればいいと思う。
「……はぁ、一応相手に求める条件だけは聞いてやる」
なんというか、何もかも面倒くさくなってきた。だから俺は、一刻も早くこの人を職員室に帰すか、もしくは土に還すかのどちらかに変更した。後者希望。
「おう、バッチコイ」
頭痛がする頭を抑えて、頭の中で質問を整理する。定番意外大穴……どうしようか。念の為にノーパソも起動しておこう。メモ代わりに使えるし、整理しやすい。
「じゃあ、ソージもついでにやるデス!」
「え、なんで?」
ベルちゃんったら本当にもう頭おかしいんだから。俺の聞いてどうする気? もうお前はどうにもならんぞ。FDに期待しても無理なレベルだから、攻略ヒロインに昇進することは無理無理の無理。
「ふふーん!」
「うわぁこの顔は『そんなこと言わせないでよ恥ずかしい』って顔だ絶滅すればいいのに」
「え、絶滅?」
ベルがドヤ顔を辞め、素で聞き返してくる。やっべ本音言っちった。
「じゃ、奏士もやるか。俺も気になるしな」
「何故だ。これはあんたの依頼だろ」
「じゃ、以来変更ってことで」
「この人に『二の腕の内側にニキビができる呪い』をかけたい……」
「ちょっと気になって終わりだろそれ」
も助につっこまれた。そうか? 割と気になると思うんだが。
「しゃーねーな。ただし、俺が何を言おうと質問は無しだ」
さぁ始まりました『自分の好みの女』を暴露するという、素面状態なら公開処刑に等しい拷問が。進行はベル、解説は私、奏士第二人格議長がお送りします。なお、これはあくまで奏士の脳内かつ無意識領域の為、誰一人として聞こえることはありません!
「最初の質問者は〜クーレハー!」
「……最初は無難に、年上か年下かで」
珍しく興味があるのか、紅葉がペンを置いて椅子に座った俺達を見る。あれ、なんか紅葉の目見ながら嘘つけない気がする。目を閉じよう。
「どっちでもいい……って訳にもいかんか」
ぶっちゃけ、年齢なんて対して気にしてない。もっと言うと、見た目が若いなら100歳だろうが1800歳だろうがどうでもいい。2次元だったらそれも普通にあるから。3次元なら全員対象外なので諦めて下さい。
しかしはぐらかすのは悪手、誰かと協力しよう握手、そいつ風呂入ってねぇな悪臭
さて、クソみたいな韻踏みをやってみた所で、俺はどう答えよう。ぶっちゃけ、2次元だったとしても、年上年下同い年とどれも当てはまる。一般なら大抵年下が多いが、エロゲーなら18歳以上としか表記されないから年齢不明者多数……よし、ここはダーツで決めよう。ダララララ……
「「そうだな……断然年上だな」選ぶなら年下」
お互い途中までハモっていた。最後で綺麗に別れたが。
「なんと! ソージは年下が好みデスカ! ということは年上も同い年もOKってことデス!」
「頼むから同じヒト科の言語で喋ってクレメンス」
ベルちゃんは何を言いたいのか。とりあえず、ものすごく強引に持っていかれた。司会辞めちまえ。
「あれ、あんた年上好みだっけ? 家に置いてある祖父コレクションのAV視聴割合は年下モノ多めだろ」
「いや〜AVの年上モノって、どれもかなり老けてる感じして、熟女にしか見えんのよ。俺の好みは若くて年上だってのに……」
すげぇ知ったこっちゃねぇと言いたけど、頑張って我慢した。だって話が進まなそうだから。
「では〜お次はアオバ! Hey C'mon!」
莇は、俺が貸した写真集(内容は言うまい)から、面倒くさそうに頭を上げる。断りたいけど主に呼ばれたからやらなきゃいけないし面倒臭いと思っているのだろう。
「野郎の好きなタイプとか興味関心意欲全く無いのですが……じゃあスタイルで」
「特に指定無し。肌が綺麗で普通に痩せてて、最低限整ってるなら別にいい」
「おおっとぉ! ソージはおっぱいが大きくてわがままボディの美少女が好みとの事! イヤンソージ、そんな遠回しの告白よりも、直接『好き』と言ってくれるだけで、い・い・デ・ス・よ♡」
「あれ、もしかしてお前言語中枢腐ってる?」
とりあえず、ベルが最後に戯言を申した時、指を左右に振っていたが、それを90度にへし折りたいと思った。物理的に骨抜きにしてやろうかこいつ……骨は骨粉にしたら再利用できるかしら。
「俺は爆乳で腰がすらっとしててこう……素敵な御御足の持ち主だな。具体的には、柔らかそうな太腿が有るとなお良し」
も助は、いつまでもぶれない人だった。空気ぶち壊すの得意だね。
というかその条件どこかで……思い出すのめんどくさいから後で。
「さぁ、お次は〜〜イーズミー!」
ベルはノってきたのか、ありもしないマイクを持って泉ちゃんを呼ぶ。普通に煩いし、普通にこれ辛いんだけど。主に隣の男の好みを聞くのが。
「は、はい……頑張ります」
そしてなぜ張り切ってるのか分かりたくないが、身体の前でグッと拳を握って気合十分な泉ちゃん。泉ちゃんもやんのか…… 激辛なんだけど。激辛坦々麺なんだけど。文字同じだから紛らわしい。
「よっし、何でも良いぞ」
隣で何時もより気合十分な腐れ縁を見て、溜息を一つヨガファイヤーと──つきたかったけど俺にそんな能力は無いから普通に「ふぅ」と吐いて、天井を見上げた。
「じゃ、じゃあ──」
泉ちゃんが何か言い始めたが、俺の耳には届かなかった。
はい、更新日ですねぇ……1週間で書き上げるって、意外と大変ですねぇ……何故か今週忙しかったですし。3日ほど仕事を休みたいです。とりあえずもしゃもしゃします。何かを。
話はまだまだ続きます。今回は強引に区切りましたが、次回もあります。次回もあります。御汰盧志身二
あ、感じ直さなかったのはわざとです。なんかネタなかったんで、とりあえず。




