正月特別編 男は何時だって勝負パンツを履いておけ
後書きで『声優特番』とか言っておきながら今年無いことを忘れてたおバカな作者……良いんです。どっちにしろエンジョイしますから。マスカラ塗ってエンジョイしマスカラ。塗りませんが。
「なうんなー(あーそこそこ、お前マジで上手いな……)」
「…………」
朝から重政をモフる一日……最高っす。
本日は学園も休み。漫画も展開を考えるためにちょっとお休み。それちょっとじゃなくて一日丸々なんだよなぁ……明日から本気出す。とりあえず今は重政との触れ合いが大切。触れてるの主に俺だけど。
「とりあえず今日は重政の好物出してあげるからもうちょっとモフってもいい?」
「なう(うむ、よかろう)」
重政が寝そべりながら答える。よっしゃ、とりあえず俺はこの『座椅子代わりの俺をダメ人間にするクッション兼ベッド』に腰掛けるから、重政は俺の足の上で寝ててくれ。今日は朝から晩まで積みゲー(R18)をやる予定だから、これで重政を撫でながらゲームができる。重政の年齢的に、人間換算でも猫年齢でも18歳超えてるんだけど……まぁ、そこは俺の問題。一人で楽しみたいタイプ。ついでに俺は人に見られて興奮するような属性は無い。そういうのはベルに頼め。
「にゃーふ」
「お前、最近ちょっとコロコロしてきたな……運動するか?」
平日の朝昼はキャットフードだけど、夕飯は俺が手作りしてカロリーに気をつけてるし、重政は結構外で日向ぼっこや散歩している。運動は問題無いと思うけどな。去勢手術はしてないしーーストレスか? ストレス……俺、か? それとも急に人が増えたから変化に適応しきれなくて? はっ! まさか病気か! 動物病院……は、まだ開いてない! 重政がこうなったのは俺のせいだ……こうなったら休み返上で──
「なう(いや、普通に運動不足だから気にするな)」
あ、そうですか……俺の心配返せよ。つーかお前外で散歩してんじゃないのか? 誰かが飯をこっそり与えたか?
「なーん(それに、猫はちょっとばかしふっくらしてた方がモテるんだぜ)」
「言っておくが、お前は毛量普通で毛並みが良い白猫だから太ると身体のラインが崩れて魅力度ダウンだぞ。太っても愛されるのは毛が多くて長い一部の猫だけだ」
「なぅ!?(マジかよ)」
いや、お前馬鹿かよ。というか本当に猫かコイツは。知能高すぎるだろ。
そんな重政もまた可愛い。だって唯一の家族だもの。立ち位置が兄なのか弟なのか不明だけど。人間換算なら兄、猫なら弟、さて、どっち? 知らんがな。重政は重政だからどうでもいい。兄弟なんて呼称に過ぎないんだし。
いや、でも妹から言われる『兄』系列と、姉から言われる『弟くん』系列は格が違うな。やっぱりそこは別で。
「…………あ、スマン重政、ちょっとそこの冷蔵庫からドクペ取ってくれ。報酬は今日のおやつにジャーキー」
「なうっ!(契約成立!)」
気分転換にゲームを変えてレースゲームにしたら、手が離せなくなったので重政に頼んだら、無事に交渉できたようで、俺の膝の上からピョンと飛び降りて部屋に設置してある小型冷蔵庫まで走って向かう重政。そして器用に前足を使って開け、冷やされたドクペを転がして持ってくる。勿論、冷蔵庫の扉を閉めるのも忘れずに。器用だなー
あ、ドクペを頼んだのは、マッ缶を昨日切らして、そのままにしてしまったから。ポチっておいたから、多分今日届く。密林のお急ぎ便は便利だね。まぁ、当日お急ぎ便じゃないから今日届く確実性は無いけど。
「ありがとさん。ほれ、仮報酬に頭撫でてやる」
「にゃー(ちょっ、マジでやめれ。いいからおやつ! おやつ! つーか朝飯!)」
そう重政に言われた瞬間、俺の腹も鳴る。そういや飯食ってねぇな……
「朝飯食うか。行くぞ重政」
「な!(よし来たっ!)」
ピョンと飛び込んできた重政を抱き抱えて厨房へ向かう。重政重くなったな……しかし暖かい……猫枕してもいいか聞こうかな。でも重政嫌がるしなぁ……
重政は専用の席に置いて、俺はエプロンを装着して厨房へ。今朝は何を食べようか……重政は鶏肉が好きだし、親子丼──は今夜でいいか。とりあえず朝は無難にしよう。
そして10分ほど経過した頃、重政がそろそろ空腹で鳴く頃に出来上がった料理を食卓へ持っていく。そういやあいつら見ないな……まだ寝てんのかね。まぁ、まだ時間的に見れば早いし、俺ももうちょっと経ってからでいいか。今は重政の分だけ。
「……どうだ、美味いか?」
俺がそっと聞くと、重政は食いながら返事を返す。
「カフカフカフ……にゃっ!(美味いぞ、これを作ったシェフを呼べ)」
「お前の目の前にいるぞ」
そんなやり取りに、思わず食事中の重政の背中を撫でてしまう。しっかし、重政って美味そうに食ってくれるよなぁ……わざわざ手作りしてる甲斐が有る。重政に飯作ってカロリーとか栄養の計算するために勉強したからな。
対等な関係の家族と言えど、俺は人間で重政は猫だ。種族が違えば生命活動に必要な栄養も、不必要な栄養も変わってくる。まぁ、要するに知ってれば管理も容易いってことだ。
そして、重政が食い終わった頃、ほかの三人がやってきて俺たちの朝飯タイムとなった。重政は食後のデザートとして、林檎を細かく切ったものを食べている。最初に「重政よ、デザートは林檎(Dessert)と猫砂(Desert)どっちか選ばせてやろう」と言ったら、「なう(いいから林檎寄越せや。でも猫砂は在庫が少なくなってきたみたいだから買っといてくれ)」と言われた。後で買ってこないと。というか一声に含まれる意味が凄い。さすが重政。
そして食後
食休みついでに俺は読書、重政は何故かテレビで録画したアニメを見ている。
「……お前見てて面白いか?」
「……なーう」
今のは解読出来なかった。まぁ、重政が見てるってことは、お気に入りなんだろうな。尻尾が教えてくれる。
猫と人間では見えてる世界が違うと言うけど、重政はやはり何処か人間味がある。こうやってリモコン操作できる所とか。普通の猫は片手……片足か。片足で再生停止終了早送り巻き戻しなんて操作できないだろ。どうしてこうなった……というかやっぱりお前化け猫とか神の使いとかそんな感じの猫だろ。猫の平均寿命超えても元気に生きてる事とか。そこは長生きなだけかもしれんが。
そんなんで一時間ほどたった頃。俺が四冊目の本を読み終えた辺りで、アニメを見ていた重政がピョンとジャンプして俺の膝の上でバランスゲームし始める。おっとと……
「なんだ、終わったのか?」
「なー(飽きた。我と遊べ)」
生意気だなこの野郎。よかろう、貴様の児戯に、この我が付き合ってやろう
……成程、これ俺のせいだな。俺がこんなお巫山戯してるから重政もこうなるのか。なんだ俺の真似するとか可愛いじゃねぇか。あ、ペシペシしないで。遊んであげるから俺の踝ペシペシしないで。あいった! 地味にいった! お前ちょっとだけ爪出したろ。 腹立つのが俺に傷が付かないように調整してること。NO、ハムハムしない。作務衣の紐ハムハムしない。だからって俺の指を甘噛みしないの。ちょっと気持ちいいけど駄目です。今すぐ甘噛み辞めないと、お前を30分モフる。 ……そんなあっさり辞めなくても……
重政にフラれてしまったが、約束は約束。重政専用箱から、買って以来滅多に使わないからほぼ新品同様の猫じゃらしを取り出して、重政の目の前に垂らす。こいつにネズミ系の玩具は効果無い。だって野生が無いから。こいつ猫なのにゴキブリ見つけたら俺より先に逃げ出すし、外に出たら昼寝時々縄張り争い。完全に人間と大差無い。知能は高くても、猫らしくこういうのにまだ興味は残ってるみたいだが。
「…………」
揺らす猫じゃらしを、動かず、目で追いかける重政。
「一発で捕れたらご褒美をやろう」
「なうんなー(よし乗った)」
「あっふぁ!?」
その場から突然動き出した重政は、目の前の猫じゃらしーーを素通りして、その奥に座っている俺──の股間へ真っ直ぐ駆け、本気の猫パンチ。俺のムスコは潰された。
「お、お前……」
「なう!(どーだ一発で捕れたぞ)」
まさか将(猫じゃらし)を射るために馬(飼い主)を先に射るとは……こやつめ許さん。だいぶ痛みも引いてきたし……
「重政重政、御褒美だ。こっち来い」
座り直して、親指と人差し指を重ねて四角形を作って重政を呼ぶ。ここに顔を入れれば──
「にゃ? (なんだ?)」
「気功砲!!!」
「に゛ゃーっ!(貴様ーっ!)」
俺が叫んだ瞬間、重政が凄い顔して吹っ飛ぶ。ふぅ、気功砲は疲れるぜ。
「さっきの仕返しだ馬鹿者。というかノリいいなお前」
「なーお(気にするなべーイベ)」
復活した重政が前足を器用にくいっと曲げてサムズアップ。何だこの頭の悪いやり取り。猫も猫なら飼い主も飼い主だな。とりあえず俺の金玉殴ったことは許さないから、おやつは無し。
「…………」
辞めてそんな表面だけキラキラした目で見ないで。せめて底もキラキラさせて、すげぇ濁ってるから。分かったから、おやつはあげるからその目やめて。とりあえず三時になったらね。その代わり俺に付き合え。
そして、食休みしていたことも忘れて、俺と重政は遊びまくった。途中、依頼の通知が入って休憩タイムが入ったが、とにかく昼まで遊んだ。飯は美味かった。作ったの俺だけど。
そして昼食後
「キェェェェェ!!!」
「フシャーーーっ!!」
お互い唐突の威嚇。どうしてこうなったかは来月発売しないし存在しない第四巻同梱SSを見てくれ。発売しないなら意味無いな。というか四巻が出るとしたら今日の話は何巻収録? 何言ってんだ俺は。
「せめて苦しまず楽にしてやる……動くなよ重政ァァァァ!」
「にゃーっ!!(そうはいくか!)」
俺が身をかがめた低域タックルを繰り出すと、重政は軽やかなステップで回避、そのまま障子を蹴って庭へ出る。
「逃がすかぁ!」
そして俺も受身をとって起き上がる瞬間方向転換し、即座に草履を履いて庭へ出る。
塀に登った重政を併走して追いかけたり、枝を足場にして飛んで躱したり、壁を蹴って方向転換したり……家の敷地内全てを使って駆け回った。まるでパルクール。ハイスペックを自称する俺は、一般平均より高い身体能力を持つと自覚している。その上で、重政の性格と癖を理解しているからこそ身体能力に大きな差がある猫とこうして張り合えるのだが……一番の問題は一般平均よりも低い体力。こればかりはどれだけ筋トレしても、庭弄りしても変わらない。くそっ見失った。
切れそうな息を整え、重政発見のために限界まで気配探知のための気を張り巡らせていると、かすかに屋根の瓦を踏む音が鳴る。音の大きさからして、無機物や自然現象では無い。そしてそれなりに重いものが乗った。成程、そこに居るのか……
おそらく屋根の上に潜んでいるであろう重政捕獲の為に、気配と音を偽り、草履を脱いで匂いの染み付いた服は可能な限り脱ぐ。猫の嗅覚+長年の付き合いで、俺の匂いなんぞ重政には丸わかりだろうが、しないよりはマシだろう。衣擦れの音も無くせるし。
そんなんで、今現在俺は愛用のトランクスだけという大変変態大変態的な格好になっている。屋根の上に半裸の男……家の近くに他の家無くて良かった。
全身の筋肉と脳をフル活用して、近くの木へ飛び、太めの枝を掴む。そして鉄棒の様に反動を使ってその枝の上に着地。裸足だから樹皮が足の裏に食いこんで痛い。
そして一度周囲を確認し、枝から枝へ飛んで屋根へ音もなく着地する。重政め……元より存在しないであろう飼い主の威厳を手に入れる為、そして俺が基本ハイスペックなことを思い知らせるため、なんとしてでも貴様を捕まえてやる……
重政捕獲の前にもう一度気配探査。気配探査と言っても、魔力を薄く広げるだとか、超音波を発信させてだとかそんな大それたことじゃない。目を閉じ、その他の感覚を研ぎ澄ませてありとあらゆる情報を得る。微弱な音、電磁波、違和感……それ等を探るイメージで、自身を中心に感覚を広げる様に、意識的にそうしてるだけの、要は児戯みたいなものだ。だが、例え児戯だろうと、訓練すればそれなりに本物に近いものを身につけられる。要するにイメージが大事ってことだ。イメージが大切。大事な事なので2回言いました。
気配は屋根の棟を挟んで向こう側に一つ、動きは無い。兎のように寝ていやがるのか? 最後に亀は勝った。ならば俺の勝ちだ重政よ!
息を殺し、俺が存在する事実を消して忍び寄る。この向かい側に重政は居るはずだ。一度だ、一度で決着が着く。
そよ風が肌を撫でる。木の葉が舞い、静寂が訪れる。というか寒っ。春でも薄着は冷えるな……
集中の副産物か、己の心音が聞こえる。こんなに緊張したのは何時ぶりだろうか。思い出した、十年前にじっさま不在の時に、人生で初めて泥棒に入られた後、警察と対面した時だ。いやーあの時はすげぇ緊張した。
ちなみに何も盗まれていない。不在と思って侵入してきた泥棒が、事前に仕掛けておいた罠にかかって動けなくなっていたのを発展して、それから逃げようと藻掻く泥棒と多少のFIGHTがあってちょっとやり過ぎて怒られたっけか……懐かしいなぁ。っとと、今は重政だ。
チャンスを伺い、じっと待つ。5、4、3、2、1……今だ!
俺が動いた瞬間、目の前の電柱の鴉が飛び立つ。良い音消しになってくれた。
「つかま──えた?」
重政をつかもうと手を伸ばした先に重政の姿は無く、代わりにネズミの死体が。
「身代わりの術とは……やはり知能が高い」
つーかこんなもん屋根の上に置くな。後で処理しないと……
「なーん(ばっかでーw)」
後ろを振り向くと、こちらを嘲笑うかのように鳴く重政が。貴様……と見せかけてどーん!!
「にゃにゃにゃっ!?(なっ、貴様!?)」
馬鹿め、おびき寄せられた事にも気付かずにのこのこと姿を現しよって……この本命の一手で貴様の敗北じゃぁぁい!
「にゃっ……にゃにゃにゃ!?(マジかよ……うおやっべ!)」
驚いてバランスを崩した重政は、足を滑らせて屋根を転げ落ちる。あのままだと地面に!
「重政っ!」
意識的に肉体の制限解除をし、足の筋肉をフル活用して重政の元へ駆ける。そして重政を腕の中へキャッチしたが──
「あ、やっべ。着地どーしよ」
そこを考えていなかった俺の思慮の浅さを憎むべきか、この状況を憎むべきか、重政を抱き締めたまま、俺は屋根から落ちた。
「…………あーいってぇ」
俺の頑丈さはここでも発揮し、受け身も取れずに背中から落ちたが無傷だった。落下高度的には一階+屋根だから、二階とそう変わらないと思うが、それでも当たり所によっては死亡も有り得るから当たり所が良かったってことだろう。まぁ、慣れてるし。怪我の治りも早いから、これくらい別にどうとでもなる。
「重政ー 大丈夫かー」
起き上がるのも面倒だから、地面に寝転がったまま腕の中の重政に問いかける。すると「なーん(無事だぜ)」と返ってきた。よかった……本当に良かった。俺の最優先保護対象が無事で。
「なーお(つーか俺は普通に着地できるぞ)」
あ、そうか。猫だから空中転換できるか。そうだったな……まぁいいや。無事だし。
と、身体から力が抜けるとともに長めの溜め息が一つ出る。そして這い出てきた重政が、俺の頬をぺろぺろと舐めてくる。
「おいなんだ急に。甘えたいなら雌猫になって出直してこい。猫耳猫尻尾の美少女でも可。二次元限定な? あ、でもちょっと舌がザラザラして──うわっ、唾液臭っ! 歯磨きすんぞおい」
「なーん!(なんで!)」
足をじたばたさせる重政を抱き抱えて、俺と重政の身体中の土を払って家の中へ入る。そういや俺半裸だった……つーか舐められたとこほんとにくっせ。
重政に歯磨きをし、誰にも見つからないように服を調達して俺と重政のハイレベル鬼ごっこは幕を閉じた。鬼ごっこであの威嚇してたのよ。知らん人が見たらご乱心を心配される。
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漫画の原作として活動している俺だけども、知っての通り絵は描ける。絵が描けるのに『原作』なのは、瑠姫さんに聞いてくれ。
そんなこんなで金を稼ぐ為、そして趣味として別名義でイラストレーターもやっている俺だが、何故か今日は依頼のメールが多い。今までは月に数検だったのに、今日だけで四件も入っている。だーっ! だから原画は今受け付けねぇって書いてあんだろうが。後、今すぐVの全体絵を描いてと言われても、要望が分かりにくい! まぁ、猶予は一ヶ月有るし、とりあえず連絡先は分かるから、まだゆっくりでいいんだけどさ。俺の筆の速さはタキオン粒子並み。嘘です結構盛った。どこぞの虚乳生徒会長のパッドのように盛った。なんか殺気を感じる。
\ウィィィィーカチャン/
と、そこで部屋の電子ロックが解除される音がした。
襖に電子ロック取り付けたけど、普通に外せるから意味無い気がする。
「奏士、暇?」
入ってきたのは紅葉だった。ノックしろ。
「ねぇ、お前らなんで人の部屋のロック開けられんの?」
「……もしかして、丁度絶頂の瞬間だった?」
「もしそうなら隠蔽早すぎだろ。つーかそもそもこんな真昼間から抜くか」
そういうのは夜になってから。でも、15時頃が一番良いらしい。どっちにしろやらんけど。
「……とりあえず、それはあっちに投げといて……」
紅葉が箱のようなものを移動させるジェスチャーをする。俺の話題は遥か彼方へ吹っ飛んだみたいだ。結構重要なのに……というかジェスチャーとワードが合ってない。
「……もういいや。付き合った方が幾分かマシだな……で、何の用?」
諦めて溜息を吐き、身体ごと紅葉の方へ向けると、紅葉は俺が敷いた座布団の上に座った。
「遊ぼ」
「一人で遊べ」
ちょっとむっとする紅葉。でもね、俺忙しいの。金稼がないといけないのよ。そうしないと生活できないから。学生なのにこんなこと気にする必要があるなんて……まぁ、それは生い立ちがアレだからね。しゃーない。
「……遊ぼ」
今度はさらに近寄ってきて顔の近くでそう言ってきた。こいつ距離感バグってんのか? もしくは目が悪い。ついでに頭は確実に悪い。
「行け重政! 君に決めた! この子犬と遊んでやれ!」
紅葉を指さし、ボールが無いしそもそも入ろうとしないから出たままの、隣でゴロゴロ寛いでいた重政を呼ぶ。子犬の由来は、こいつ猫っぽいのに何処か子犬のような感じがするから。
「なーお(やだよ面倒臭い)」
あれ、重政? お前ここで裏切るのか。
「……もふもふ、もふもふ……」
重政が紅葉の魔の手に落ちてしまった。味方はいないのが強者の証。
\カチャン/
再び鍵か開く音が。今度はどっち?
「遊ぶデスソージ!」
「お邪魔します」
まさかの二人ともだった。帰れ。
「ねぇ、だからなんでお前ら鍵開けられんの?」
しかし、俺の問に解をくれる者は居なかった。そうか、触れちゃダメなやつか。
いや、そこ追求しないとダメじゃね? 俺の貞操とか危ないじゃん。一か月前まではこんな心配すると思わなかったのに……思ってたら思ってたでヤバいけど。それ抜きにしてもヤバい男、それが俺。
「遊ぶデース!」
ベルは俺のそんな考えも気にせず、というか我関せずといった感じでそのまま俺の横に座る。成程、距離感が掴めないとかお前ら目が悪いな? メガネかコンタクトの使用をおすすめするぞ。病院行け病院。頭の病院とかオススメ。
「……準備してやるから、ちょっと待ってろ」
やはり諦めるが楽。喜ぶベル達を背にして、準備を始める。えーっと、人数分のコントローラーは……あれ、アケコン入れた箱何処にしまったっけ?
「ほれ、あったぞ。受け取れ」
コントローラーを三人に投げる。何とか受け取ってくれた。あっぶね。
「最初は何するデス?」
「エ「それは個人でやれ」
紅葉が言いかけた言葉を遮って終わらせる。当の本人はムスッとしてるが、それだけは却下だ。
「普通に二人プレイの交代制で良いだろ。ストIIとか有るぞ」
二人プレイ(スーファミ)だけどな。俺が連続でやるの面倒臭いから交代制。
「……やった事ない」
「というか何故あるんですか」
「ソージの脳内年代はちょっと……古いデス」
お前ら喧嘩売ってんのか。俺は温故知新って言う様に、過去未来現在問わず、知識欲が高いんだよ。後、趣味柄、色んな知識が入ってくるんだよ。はい、とりあえず決定な。じゃ、あとはお前らでーー
「はい、最初はソージからデスよ」
フェードアウトしようとしたら、ベルに肩を掴まれて動けない。めんどくせぇ……じゃ、ちょっと俺の本気を見せてやろうとするか。とりあえず俺のアケコンは何処? スーファミだから使えるか知らんけど。スペック的に無理か。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぅ、さすがに疲れたな……」
あの後、スーファミセガサターンWiiにプレステ3DS最後にスイッチetc……機種・ゲームジャンル問わずに遊んだ。滅多にやらないXboxも引っ張り出して遊んだ。そしてまさか格ゲー20戦連戦するとは思わなかった……紅葉強すぎんだろ。俺、紅葉と十四回対戦したけど、二回しか勝てなかった。紅葉が自前のアケコン持ってきてる事から、割とガチめにやってるな……
「なー(おつかれ)」
休憩がてら後ろへ下がると、重政がお出迎え。アニマルセラピー……モフろうと手を伸ばしたら猫パンチで叩き落とされた。解せぬ。
「なーお(どうだ、楽しいか?)」
「……どうだかな。すっげぇ疲れるし、面倒臭いけど……何処か嫌いじゃないって部分もある感じか?」
「なー(俺に聞くなよ)」
そうだな。お前に聞いても仕方ねぇか。俺自身の問題だしな。
「なー(なぁ、奏士)」
俺は「なんだ?」と視線だけで答える。
「なーお(お前はずっと拒絶されて独りだったし、そんな現実に諦めていたお前も馬鹿だったけどさ……)」
そこで重政は視線を俺から、目の前の三人に向ける。
「なーん(こうしてお前と一緒に居てくれるような馬鹿も居るんだな)」
「……そうだな。本当に馬鹿の集まりだ」
それでも、俺を拒絶しないで、秘密だらけの俺と一緒に居てくれるだけでも、こいつらはだいぶ優しいのだろう。そして俺も、そんなアイツらを否定しきれない部分が最近できてきた。俺とあろう者が、他人に毒されてきたか?
「ソージ! 次はワタシとデース!」
「奏士、その次は私」
「えっと……ここをこうすればこの技が出て……あ、ちょっと紅葉殿、人が説明書見ている時にコンボしないでください」
三人が俺を呼ぶ声が聞こえる。つい最近まで俺の名を呼ぶのは悠ちゃんか、瑠姫さんか、担任しかいなかったのに、不思議な気持ちだ。
「……なー(俺もだろ)」
ああ、はいはい。お前も人間の言葉じゃないけど呼んでくれてたよな。つーかお前が一番多いな。一年の殆ど一緒に居るんだし。
ここに泉ちゃんも居たら、どんな風景になっていたんだろうか。泉ちゃんの事だから、操作がわからなくて焦って戸惑うか? それとも、逆にすげぇ上手いプレイを見せるか?
いや、ここに居ないし知らない以上、考えても仕方ねぇな。よし、切り替えよう。
「……はいはい、今行くからちょっと待ってろ」
「なーん(存分に負け恥晒してこい)」
重政が立ち上がろうとする俺を見上げながら笑うように鳴く。うるせ、お前はそこで寝ながら俺の圧勝伝説を見ていやがれ。
「ハーヤークー!」
ベルに三度呼ばれたから今度こそ行く。立ち上がる寸前、重政を人撫でしてから。
「今行くから待ってろって」
「なー(はよ行ってやれよシャイボーイ)」
「黙れ童貞」
「んなーっ!(お前も童貞だろ!)」
「んだこらやんのか?」
「シャーッ!(俺の不器用で武器用な爪で引き裂いてやる! 表出やがれ!)」
「ほらほらそこの御二方、他種族なのに言い争ってないでこっちに来なさい」
重政とメンチ切ったり威嚇しあっていたら、莇に注意されてしまった。莇程度に……しょうがない。行くぞ重政。
俺が立ち上がって重政に目線で合図すると、それを読み取ったのか、それともただの気まぐれか、俺にはわからんが、無言でついてくる重政。
なんて、ちょっとしたじゃれ合いもしながらお互い休日を過ごしたーー
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あ、ちょまっ……」
『FATALITY』とスピーカーから敗北を告げる音声が聞こえる。文字でわかる通り、死にました。はい。俺の圧勝伝説は塗り替えられました。問題は──
「なう(負け恥拝ませてもらったぜ)」
猫に負けたって事だな。意味わかんね。
「おぉー」
「ス、スゴいデス……」
「いや、凄いで済ませていい事じゃ無いと思うのですが」
後ろで見ていた三人からの拍手が送られる。俺にではなく、隣の重政に。
こいつ、暇そうにしてたから冗談で「やるか?」と誘ったら、両前足を器用に使ってコントローラー操作してゲームしやがった。熟練者の俺をあっさり倒すほどの腕前で。
「お前、本当な猫か?」
「……なぅ(……そうだぜ)」
重政がぷいとそっぽ向いて答える。なにか隠してないよな? 今更猫じゃないと告げられても知ったこっちゃねぇけど。だって家族だし。寧ろ家族だと思ってた猫が実は猫じゃなくて別次元の生物とか、神魔その他とかってなんか良くない? あ、そうすか……興味無いすか。
とにかく、元から存在しない俺の威厳はどうでもいいとして、俺の中で『重政猫じゃない説』が現実味を帯びて来たな……
こいつと出会ってから10年以上経過して、猫の平均寿命を超えても元気に生き続けてるいことは、まだ説明がつく。
だがしかし、その他がどうしても不明確だ。異常に高い知能、お互いに別種の言語で簡単な意思疎通どころか、より複雑な会話も可能な事。後者は俺の方にも何かあるのか、それとも長年連れ添った経験則からなのかはまだよく分からん。
俺は状況判断で重政の意志を読み取っているが、実際は理解が複雑過ぎる。高い知能は『人類が他種族の知能を解析できてないだけ』とも言えるが、それ抜きにしてもこいつは頭が良過ぎる。
……とりあえず、じっさまの知り合いに神社を家族経営している一家が居るから、『看破の儀』でもやってもらうかね。そういや、あの一家父息子娘の三人家族で、そこそこ大きめの神社なのに、どうやって経営してるんだろ……年間参拝者と、御守り等をお納めする金額と支出を概算してみたけど、かなりの大赤字になっていた。それを埋められるような割のいい収入あるなら俺も知りたい。あ、お祓いとか退治封印系は俺に能力が無いから無理だし、命とかかけたくないから勘弁して欲しい。俺配管工みたいに残機無いし……スペラ○カー並に弱いし。人間は脆い。
「……よく、奏士に勝ったね」
「ソージを負かせて偉い偉い、デス!」
「ですね。奏士殿程度、重政殿に勝てるわけなかったのですよ」
「お前ら表出ろコラ」
重政をやんややんやと褒めて撫でてついでに俺を貶す三人と一旦話し合おうと夜のデートに誘ってみたけど断られた。まぁ、話し合う(肉体言語)デート(行先はあの世)だけどな。デートってかデッドだ。
「ほう、奏士は私達全員を相手に一人で戦うと?」
「ソージに格の違いを見せてあげるデス」
「……フンス」
「なう(やーいやーいw)」
成程、とりあえず後で全員シバく。もしくは何らかの制裁を与える。というか前の二人は俺に買ってから言え。今のところ俺無敗どころか一本も取られてねぇよ。残基MAXのほぼノーダメ勝利しかしてないんだが? ん?
「全くの初心者、莇青葉!」
「中途半端、ベルフローラ!」
「にゃにゃうにゃー!(異次元の兵士、重政!)」
「……絶対女王、紅葉」
一人一人異名のようなものを叫んだ後、並んで決めポーズを作ってーー
「「「我ら(#♪€%∦四天王!」!」」
なーにやってんだこいつら。とりあえず同じ異名持ってんのが二人居たし、最後全員バラバラで何言ってんのかわかんねぇし。結局何四天王なんだよこの馬鹿共は。
「かかってこいやボケ共」
そして今、くだらない何かを賭けた温い勝負が始まる──
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ぐはっ!」
戦闘シーンを一コンマも見せずに敗北する莇
「くっ、しかし奴は四天王の中でも最弱……」
「奏士ごときに負けるとは、魔族の……魔族? ベル、私達は魔族じゃない」
「クレハ、そこはとりあえずそう言っておくデスよ」
「聞こえてんぞお前ら」
結局暇だから遊んでるだけなのね。とりあえず次
「あっ!」
そして続いて省略の為にシーンを削られるベル
「く、クレハ……私の、仇をっ……」
「……わかった。次は重政」
とりあえず死体は隅に避けとけ。はい、敗者はそこで見てなー
「なっ!?」
ベル戦の次、三戦目は、さっきまで強者オーラ全開だったのにあっさりと負けた重政。と言うか猫に二回も負けるか。一回負けるだけでもやばいのに。
「な、なうぅ……」
「重政の仇は、私が必ず」
「お前らそれ毎回やらないと駄目?」
そして最後のラスボス
「……準備は、いい?」
「……何時でもいい」
俺にとって最大とも言える壁、紅葉さんがお相手ですよ。なんかもうダルい。このテンションに付き合うの面倒臭い。
「それでは、第四戦目、ソージVS紅葉の最終試合を始めるデス!」
復活したベルが司会をやっていた。実況は莇……ではなく重政。そいつ「なう」か「にゃー」くらいしか言わねぇけど大丈夫?
「クレハ! ここで買ったら『一日ソージを好きにできる券』ゲットデス!」
「おい待て、なんだその商品。俺聞いてねぇぞ」
しかし、ベルは司会を続行する。
「それでは──」
「おい、聞けって話を。俺負けたら何されんの? そして俺が買ったら何があんだ? おい、聞けっての」
「FIGHT!」
開始のゴングが鳴る。俺が昔買ったゴングどっから取り出し──あ、そういや棚に置きっぱなしだったわ。
こうなったらやることは一つ、紅葉に勝って券を処分する しかない。ちくしょう無理ゲー過ぎる。
コントローラーを操作する音、スピーカーから聞こえるゲームの音、そして隣に座る紅葉が息を吐く音だけが聞こえる。やっぱり強ぇ……
お互い実力は互角──と言えない。明らかに紅葉が強くて、俺が並列思考と並列演算を使って何とか反応しているレベル。やっべぇこのままじゃ負ける。
お互い残り残機はゼロ。ここで負ければ俺の貞操が危うい。主に、絵のモデルとして危うい。流石に身内と昔馴染み以外の女の前で裸体を晒すのは抵抗がある。つーか紅葉の場合「ズボンとパンツ下ろして見せて」とか言いそうだから本気で危ない。やっぱりこの家にまともな人間は一人もいないんだ。俺含めて。
……ん? 別に正攻法で勝つ必要は無いよな? 俺の目的は『試合に勝つこと』じゃなくて『俺の自由券を紅葉達の手に渡らないようにすること』、要するに『勝負に勝つこと』だ。あ、じゃあいつも通りにやればいいのか。つつーっと。
「ひゃっ!?」
真剣な表情で、画面に集中している紅葉の、肩甲骨の間を首から下へ指先で撫でる。セクハラじゃない。その意図は無いからセクハラじゃない。そしてなんか今すげぇ可愛めな声出さなかった?
「……よし、俺の勝ち」
紅葉が驚いて怯み、動きが止まったその間に左手でコントローラーを操作して紅葉のキャラを倒す。この勝負は、俺が勝てば万々歳、もし不正と言われようと無効試合にしてしまえばどうとでもなる。
「…………」
おや、紅葉が顔を赤くしてこちらを睨んでいる。どうした、熱でも出たか? そんなオフショルダーのワンピース着てるからだぞ。
「ソージ……やる時はやる男だと思ってたデス……」
「えぇ、さすが卑怯の申し子ですね。セクハラまでするとは」
あ、あれぇ? いつもならなんてことないやり取りのはずが、俺が非難されている。というかセクハラ云々に関しては俺日々お前らに受けてるんだが?
「……エッチ」
紅葉が未だ顔を赤くしたまま、自分の身を寄せて呟いた。はい、アウトですね。ごめんなさい。
「はい、じゃあ今の試合は無効と言うことで」
「はいクレハ、約束の景品デス」
「あっれぇ?」
おかしい、色々おかしいのは今更だけど何故敗者の紅葉に券が渡されている?
「ソージには、ずるしたバツとしてワタシにも付き合うデス」
「え、嫌」
俺が素で断ると、ベルは指をパチンと鳴らした。
「……アオバ、アレを持ってくるデス」
「お任せを」
そして莇は即座に消え、三十秒後にやってきた。
「では奏士殿、連戦でお疲れでしょうから、こちらへお座り下さい」
「それ、前に石抱きさせようとした時の板に見えるんだけど」
莇が笑顔で指したその足元には例の十露盤板が。それは莇が預かっている物だから、莇の自室にあるはずなんだけどな……え、戻ってくるの早くね? 息切れてなかったぞ。
「さぁソージ、どうぞどうぞ」
「いや、絶対に嫌……待て、俺を掴んでどうする気だ。おい、まさか本当に石抱きすんのか? 流石の俺も初めてだぞ?まっ、いってー!!」
十露盤板の上に強制着地。脛に食いこんですげぇ痛い。腕を縛られて動けない。何この恐ろしいくらい解けない結び。
「さぁソージ」
「奏士、お願い……」
「「抱いて」」
人生で初めて女から「抱いて」と言われたのに状況が酷すぎるし、抱くの女じゃなくて石っていうね。だいぶ余裕があるな俺。
「では、一つずつ乗せます。せーのっ」
「乗せんの莇かよ。おい待て、その石もどっからあーっ!」
重っ!? 石重っ!? なにこれすげぇ痛い。あ、段々血の循環が……
「まだ余裕そうですね。では二つ目、せーのっ」
「おい、せめて覚悟とかそういうものをあーっ!」
二つ目になるともう感覚とか無い。あ、ちょっと暖かく感じる。
「では三つ目、せーのっ」
「…………」
慣れた。慣れたって言うか、感覚無くて、痛覚とか麻痺してる。
「……奏士に効果無くなった?」
「じゃあ、次は火攻めとかどうでしょう」
「それデス!」
え、ちょっと待って。これで終わりじゃないの? というか条例は? 大きめのゴミを処分する目的で焚き火はダメなんだぞ。自身をゴミと理解している俺って流石。
「待ってそんな物いつ作った」
莇が引き摺りながら運んできたのは木製の十字架。どこにあったそんなデカいもん。
なんてことを考えている間に、十字架は地面に突き刺さり、俺は両手両足を十字架に紐で括り付けられていた。よくできてんなー
「……奏士、辞世の句はある?」
「面白くない冗談だな紅葉。まるで俺が今から死ぬみたいじゃねぇか」
「……無いの?」
「いや、有るから待って」
うーん……前に考えたやつはどんなだったか……考えてある時点で頭おかしいのかもしれないけど、人生何があるか分からんし。準備はしっかりと。遺書も用意済み。俺の全財産は重政にーーといきたいけど、この国じゃペットは『物』としているから相続できない。なので、悠ちゃん達如月家の全員にしてある。判子もサインも日付も有るから効力は有る筈。
「…………10、9、8、7、6」
「焦らすな」
紅葉のカウントダウンが始まった。手にはチャッカマンが握られている。まずい──あ
「……我は不滅、この家有る限り、何度でも蘇ろうぞ」
「十字架に貼り付けられたままだともはや悪魔か邪神の最後ですね」
「……点火」
「ヨガ〜ファイヤー!」
紅葉の一言により、ノリノリで下に持った藁に火を着けるベル。待ってその火力はダメ。
「熱っ!? ホントに燃えてない? ねぇ、燃えてるよねこれ。熱っ! 熱いっ! 気分はまるで聖女ジャンヌ・ダルクの最後!」
燃え盛る藁と、飛んでくる火の粉、そして熱線が俺を焼く。熱っ!?
というかなんだろう、どっかのラノベで読んだ展開。俺は流石にあのレベルの馬鹿じゃないぞ。熱っ!!?
「おぉ、意外とよく燃えますね」
「コンロの下にあった食用油を、藁に染み込ませてある」
「おぉ、暖かいデス!」
「呑気なこと言って和んでる場合じゃねぇだろ。おい、段々十字架まで火が移ってんだよ! 熱っ!? 燃える、まじで俺の人生終わる! というか火攻めは初めて!」
根性焼きは何度か経験あるけど、こんな大胆な火攻めは初めてだから熱い。あ、なんか段々暖かく感じてきた。
「乙女の柔肌に触れたソージが悪いデスよ?」
「私は、とりあえずノリで」
「……エッチ」
俺の一生そんな理由で終わんの? いや、紅葉の件はともかく、莇は覚えておけ。いつか必ず潰す。
「熱っ!? おい、まじで十字架燃えてる! 俺の足も燃える! 裸足だからなお熱い! 髪も、俺の長いサラサラヘアーがアフロになる!」
「ご安心を、この十字架は安全のために、ある程度力を加えた、折れるように切込みが入っていますので」
莇に言われて気付く。十字架が段々バランス悪くなってきた。でも、これ折れたら腕縛られて動けない俺完全に顔面ダイブなんだけど。絶対痛い。下が地面にしろ、燃え盛る火にしろ。ピコナノマイクロどの単位でも安心できない。 単位でかくなってるけど。
「あ、折れる。折れるから火を消せ! そしてクッションかマットを下にあーっ!!」
俺が言ってる途中で完全に折れ、そのまま顔面ダイブ……からの大地のキッス。
「へぶっ!?」
何とか頭を使い(物理的に)、接触面を額にずらす事で俺のファーストキスは防げた。痛い。
「なぁーお(何やってんだこいつら)」
そんな重政の鳴き声をとベルと莇の笑い声、紅葉の満足気な吐息を聴きながら、俺はようやく開放され、休日は終わった。
正月特別編ですが、特別感はないですし、そもそも正月関係無いです。そしてタイトルも関係無いです。
というわけで、今回は奏士と重政、1人と1匹の一日を書いてみました。三人がやってくる前は、こんな感じの毎日だっただろうと言うことで、なんだかもはや恋人のような感じです。重政雄猫ですが。まぁ、家族ってことで良いですよね。異論は認めます。
そしておまけの容量ではないと言うそこの貴方、前回のタイトルに矛盾していると言うそこの貴方、時代は進むものです。昔は1GBで大容量のメモカも、今じゃ低容量になっているでしょう? そういうわけです。どういう訳かは自分ですら分かりません。
あれです、前回のは本誌の最後数ページのおまけみたいなもので、今回のはおまけのなんてことない日常を集めた短編集に載せるタイプのやつです。わかりやすく例えるなら精霊さんのアンコール、ニート教師の追憶日記、初回盤の付属冊子、エロゲクリア後のおまけコンテンツ、追加ストーリー……まぁそんな感じです。ところでおまけの追加ストーリーって購入タイプだと即買いしちゃいますけど後々になるとかなり高いですよね。割合的に。
……実を言うと、最後のゲームと十字架の件は付け足しです。最初は、重政と奏士の会話で閉めようと思ってました。だがしかし、流石に足りないと言うか、なんというか……付け足しました。作者、買ったゲームを始めるのを送らせてまで書いた話です。ぜひ、読んで感想を!




