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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
四階ってエレベーター使うほどでもないし、かといって階段使うと疲れるっていう微妙な階。でもゲームコーナーとかって大抵そこにある
34/133

ボーリングじゃねぇぞ、ボウリングだからな。地質調査じゃねぇから気を付けろ

「遊びにイキマショーっ!!」


「「「…………」」」


今日も今日とて生徒会に休みはない。いや、ついこの前あったばかりなんだけどさ。


仕事と言っても、夏休み前に残った行事はテストと終業式、あとは球技大会程度だ。だから強いて言うなら目安箱の投書の処理と相談事にのる程度。そして今は五人全員でその投書の処理中。まぁ、回答書いてるの俺と紅葉くらいだけど。莇、ベル、泉ちゃんの三人は投書の仕分け。


そんなんで、残りも少なくなってきた頃、ベルが立ち上がっていきなりなんか言い出した。あ、まーた送ってきやがったこの部活。マジでロシア語で書くの辞めろや。


「紅葉、これは何と書いてある?」


「……前に解るって言ってなかった?」


「俺が解るのはせいぜい『何を言ってるのか』くらいだ。要は身振り状況声色態度と単語から察してるだけで、正確なことは殆どわからん。だって独学だし」


英語同じく、外国語は『言ってること』は理解出来ても、『書いてある内容』は理解しにくいのと同じだと思う。まぁ、俺の英語のテスト基本的に90以上だけど。前の投書は、ロシア語だったけど、簡単だったから読めた。


「……『我らがロシア語研究部の発展のために、是非とも生徒会長を我が部に』……ヤダ」


俺が用紙を人差し指と中指で挟んでピッと紅葉の席に投げると、クルクルと回転しながら中を舞い、紅葉の頭上で勢いを無くしてヒラヒラと紅葉の手元へ落ちた。流石俺、無駄に洗礼された無駄の無い無駄な動きを特技とするだけある。「己を磨け」とじっ様はよく言ってたけど、俺が磨いてる布は多分牛乳拭いた雑巾か、すげぇ汚いボロ布だと思う。不変の宝石ダイヤモンドを、唯の炭素の塊に変える俺はもう『フルメタル・アルケミスト』を名乗ってもいいと思う。ダイヤを漢字変換で『金剛石』になるし。「鋼」と「剛」で意味も漢字も似てるし別に良いよな。ダメ? ならば諦めるが吉! そしてこんなこと考えてる俺はキチ!


で、そんな俺に慣れたのか、紅葉はスルーして手元の用紙をスラスラと読む。ロシアの血というのは本当だったのか。てっきり、キャラ付け又は銀髪=ロシア・北国の連想かと思った。


つーかあの部活割と真面目にやってたんだなぁ……いや、まだ評価は-だけど。というか発展って何? ロシア研究にロシア人 (ハーフ)追加しても意味ねぇと思うんだけど。ロシア研にロシアハーフ入れたらハーフ&ハーフでクォーターになっちゃって耳までもっちりになっちゃうし。ハーフ&ハーフって半分半分って意味だからクォーターにはならねぇけど。俺はクォーターってか狂っターだな、うん。


頭おかし。いとをかし。意味わかんね。


「とりあえず、『公衆の面前で土下座しても靴舐めても会長さんには効果無いので、山盛りの菓子類の献上、そして入部後は望むだけの菓子類を与える条件なら入部してくれるかもしれません』とでも返しとくか……」


「お菓子は、奏士の作った方が美味しいから、ヤ」


紅葉がぷいっとそっぽをむく。あ、そうですか……とりあえずベルはときめくのを辞めろ。紅葉の今の仕草はただ単に前髪のゴミを飛ばしただけだ。


というか、そこまで俺の好感度上がってたのか……いや、これ俺の好感度上がってるんじゃなくて、ただ単にお菓子生成機と化してるだけじゃね? 違う? 否定は難しい。とりあえず、『ただし、部費が無事かは知りません』と追加しておこう。


部費がブヒ……元い無事……上手くはないな。紅葉太ってねぇし、豚は体脂肪率低いし。紅葉の体脂肪は……そういや、紅葉って身長は平均的だけど、スタイルは良いんだよな。ベルや遥さんと比べるとアレだけど。


ただ、紅葉の身体が最近ちょっぴりムチッとしてしてきてる気がする。どうしよう、紅葉の食欲を優先すべきか、心を鬼にしなくても普段通りの心で菓子の量を減らすか……ちと面倒だが、工夫するか。俺も甘味だの塩辛いものは好きだけど、日々の鍛錬と摂取物の調整を怠ると直ぐに太るから紅葉みたいな肥えにくい奴がほんとに羨ましい……とりあえず、紅葉ちゃんは明日から食事の量を減らすわね。お願いだからそれで暴動とか起こさないで。これ紅葉に聞こえてないけど。ほらまーた話がズレた。


「そこっ、ノット無視! 無視するな、デス!」


そんな俺と紅葉のやり取りに、ベルがビシィ!と指を指して割り込む。何用だよホンママジで。


「あー、うるせうるせ。遊びに行きたいならそこの暇人ボディガードでも連れてけ」


「えっ、巻き込まれた……」


だってお前もう既に仕分けするどころか投書を折り紙扱いしてるじゃん。無駄に上手いのが腹立つ。とりあえず鶴合体させて新種を作り出すの辞めろ。ちょっと気になるけど辞めろ。いや、すげぇ気になるけど。


「それはドーデモイイから遊び行くデス!」


「……じゃあ、行く?」


おいおい紅葉さん、君は此方側だと思ったんだけどね。


「じゃ、じゃあ私もご一緒しても良いですか?」


「OKOK、カモンベイベーデス!」


ベルが指で輪っかを作ってニコニコスマイル。泉ちゃんまで……というかベルの似非外人っぷりが凄まじい。すげぇ胡散臭い。本当に純イギリス生まれのイギリス育ちなんだろうな? お前の親父といい、親子揃って頭おかしい。


「じゃ、俺は先に帰るから楽しんでーー」


「ソージも一緒に行くデスよー!」


「……強制連行」


「あ、ちょまっ、離せお前ら……あーっ」


危険を察知して荷物を片付け、バッグを持って立ち上がった俺を、紅葉とベルが両脇から取り押さえてそのまま引き摺られて連れていかれる。誘拐されちゃった。流石の俺も誘拐はされたことないな……誘拐ってか、拉致だなコレは。ハイエースは何処? 運転手は誰? というかこれから俺は何をさせるの? いーやーだー


「ドナドナドーナードーナー♪」


後ろからベルと紅葉の分の荷物も持って着いてきた莇が俺の姿を見て、歌い出した。


「俺は子牛か」


「ドクズをのーせーてー♩︎」


「OKわかったお前後で殺す」


どうやって殺そうか……撲殺毒殺刺殺焼殺呪殺偽装どれにしようか……とりあえず首元まで埋めるか。というか──


「えっと……では鍵を返しておきますので、お先に靴を履いててください」


そして泉ちゃんは生徒会室の鍵をかけて職員室へ。逃げられない。なにこれ魔王? 二人組とか絶望しかないんですけど。ウ○ザードリィだったら絶望不可避。


助けを呼べる相手が居るはずもなく、俺はそのまま昇降口へと連れていかれた──ねぇ、マジで何処連れてかれんの?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そうして強制連行されてやってきたのはまさかのミナミボウル。徒歩なら学園から結構な時間かかるのに……いや、俺の自転車荷物移動用に使われたからそれよか早かったけどさ……


「で、なんで急にボウリング?」


諦めた俺はもう溜息すら出なかった。だから事の発端であるベルに聞こうと振り向いたのだが──


「Hey店員サーン! 手続きオネガイシマース!」


「お嬢様、そんなにはしゃいでは他のお客の御迷惑になんと可愛らしい娘……ボールが重くてなかなか持ち上げられないとはなんと愛らしい!ちょっとわたくし、お手伝いできないか親御さんと交渉してきます。あ、ついでに自販機で水でも買ってきます」


「……チョコの販売機……懐かしい」


「あ、あのあの……まずは奏士さんに説明を……」


全員が好き勝手やってやがる。泉ちゃん困らせちゃダメでしょうが。


「……まずは落ち着けお前ら」


「ふげっ!」


「うっ!」


「あれっ、私だけ強い!?」


暴走した三人を落ち着かせるべく、とりあえず拳骨一発。莇には特別サービスで中指をちょっと出した。


「「「うごごごご……」」」


三人が頭を抑えてしゃがみこむ。その間に泉ちゃんは受付で用紙を受け取って持ってきた。


「落ち着いたか馬鹿ども。さっさと説明しろ」


「え、えっとですね……奏士さんにはいつもお世話になっていますし、最近どこか疲れている感じがしたので……皆さんで『奏士さんを連れて遊んで労わろう』って話になったんですけど、私もまさかこんなに早く実行に移すとは思わなくて……」


あー、泉ちゃんがプルプルしてきた。ただでさえメンタルだとか急展開だとかそういうのに弱いんだから、無理させちゃアカンでホンマ。俺茨城県民なのに関西弁多くね? 本場の人に行ったらしばかれそうだけど。文字通り鞭打ち。俺言葉責めは嫌いじゃないけど痛いのはなぁ……優しくそっとなら良いけど。言葉責めもツンデレもしくは背伸びしたがり優等生幼女にしてもらいたい。


というかどうしよう。すげぇ俺の事気遣ってくれたんだろうけど、正直ありがた迷惑。というかただ単に余計なお世話。ほっといてくれないかなマジで。


俺は一人もしくは独りだとイキイキしてるようなタイプだから。むしろ大勢(二人以上)だと徐々に何かしらの力削がれていくタイプだから。多分常時発動オートスキル孤独の強者ロンリーパワー』とか発動してる。効果は『一人の時、全てのステータスに+70%』


しかし……どう断ろう。もう目的地到着してるし、こっから態々帰るのめんどくさいし。というかこの前一人で来たばかりだし。


もう一階のゲームコーナーで遊んで帰ろうかな……いや、それも……むむむ……るるる……れれれ……あれ、なんか違う。


「ソージ……迷惑、だったデス?」


腕を組んで悩んでいる俺の裾をクイクイ引きながら、ベルが上目遣いで見上げてくる。その目には涙が。俺がまともな人間ならときめいていたかもしれない。


しかし、俺は俺。どれだけやっても効果は無い。そう、それはかくとうタイプの技がゴーストタイプに効果無しのように。俺がゴーストタイプ。俺のタイプは多分ゴースト・あくだと思う。ヤ○ラミか○カルゲみたい。なるほど、だからフェアリータイプの泉ちゃんが効果抜群なのか。そして唯一効果抜群なのも一致している。よって俺はゴースト・あくタイプ。Q.E.D.証明終了 何だこのクソみたいな結論。学会で出したら即ヤバいことになる。


そして、な、ベルよ。お前涙の演出するのはまだ良いけど、使った水のペットボトルを見える場所に置いておくのはどうかと思う。隠せよ。せめて隠せよそれは。尚更効果ねぇよ。あと、紅葉は無言で書類に記入しない。まずは話が先だろ。あざ──あの変態は知らない。俺は赤の他人だ。


なんて長々と考えたが、というか最初以外ほぼ無関係だが、考えた。そして俺は諦めがいいことに定評がさしてない。無いのかよ。ないんだな、それが。


「……はぁ、わかった。遊びに付き合ってやるよ」


「アイ・アムビクトリー!」


俺の返事を聞いたベルは、即座に泣き止んでブイサインをしながら紅葉の元へ駆け寄る。俺って甘いな……あまちゃん。人生なめて、飴ちゃん舐めよ。ぺろぺろぺろりんちょってな。うわ気持ち悪。桜桃なら『レロレロレロレロレロレロレロレロ』とやれるのに。いや、どっちにしろダメな絵面だけど。


「奏士、靴のサイズは?」


「……忘れた」


紅葉がジト目で見てくる。だって覚えてねぇもん。俺靴とか服とか予め大きめの買って数年使うタイプだから。今着てる服も、確か三年前に買ったやつ。物持ち良いと言うよりは、捨てるの勿体なくて、ついでに金を使いたくないからボロくなったら治して使うから。スリッパとか布がボロボロだし。まだイける。まだ耐久値残ってるからまだ履ける。


「とりあえず27センチって書いとけばいいんじゃねぇの?」


平均に近い数字書いときゃなんとかなる理論で通そう。少なくとも25.5よりはデカい筈だし。


「ん」


そしてさらさら〜と全員分の記入を済ませて各自靴を借り、席に荷物を置いたらボール選び。さて、俺は時たま一人で遊びに来るが、マイボールを持っていない。マイシューズなら持ってる。安いの買おうかしら……つーか言ってくれたらシューズ持ってきたのに。


とりあえず適当に14ポンドの青緑のボールを選んで席に着くと、俺以外の全員は既に座っていた。紅葉……お前チョコ買いすぎ。そしてボール重い。選んだの俺だし、いつも使ってるのとほぼ変わらないけど重い。


と、俺も席に着くと莇が立ち上がり、ボールリターンの横にたってお辞儀をした。何、今から何が始まるの? デスゲーム? じゃあ主催者殺してクリアしよう。で、主催者誰? 泉ちゃんだったらどうしよう。泉ちゃんと俺以外全員殺せばクリアできる?


「では、僭越ながら私がルール説明を。まず初めに、これはあくまで奏士殿の慰労会的な感じの遊びです。ルールとマナーを守って楽しくデュエルしましょう」


なんというかすげぇふわっとしてる。俺のための会の説明すげぇふわっとしてる。すげぇ嬉しさ感じない。


「今回はガター有り、妨害禁止、2ゲーム制、最終成績の一番高い者が勝者となり、勝者は敗者に一つだけ命令できる権利を得ます!」


「イエェェェェイ!」


「いえーい」


「い、いえーい……」


莇のその一言にベルが大声を出しながら天高く拳を突き上げ、紅葉が普段通り抑揚無い声で拳を頭まで上げ、泉ちゃんが少し照れながら拳をあげる。俺このテンションについていけないよぉ……


「……ちょっと待て、お前今なんつった?」


なんかとんでもなく不穏なワードが聞こえた気がする。


「ですから、ガター有り妨害禁止の2ゲームセット、と」


「そこじゃねぇ。その後だ」


「あぁ、何でも言う事聞かせる権利のことですか」


なん……だと。そんなとんでもない権利をこの紅葉ベル莇アホどもが入手したら、それはもう空腹の肉食獣の群れが入った檻に子羊一匹放り込むようなものだろ。俺が子羊、ンメェ゛ー!!! これは……何としても負ける訳にはいかねぇ。しかし、妨害は禁止なんだよな……妨害『は』、禁止なんだよな。よし、故意じゃなきゃセフセフ。そうと決まれば早速準備とーー


「最初はソージデス!」


「えマジで?」


クソっ……これじゃ用意ができない。ゲーム始まったら、途中で席を立つ人はかなり目立つ。いっそ本気でやるしか……いや、常に本気を出さず、舐めプ上等煽りプレイで屈辱を与えるのが俺のやり方だ。なら、今回も──いや、それでは確実性が無い。やはり、マジプレイをするのが一番か。


「……ふぅ、行くか」


覚悟を決めて席を立ち、穴に指を入れていざ投球。


「「「ガターガターガターガターガターガターガターガターガターガターガターガターガターガターガターガター……」」」


なんか背後から三人分の呪詛が聞こえる……事前に反転結界張ってなくて助からない。


「お前ら妨害禁止と言っておきながら早速ルール無視すんな」


「うわぁーお!?」


「おがっ!?」


「……びっくりした」


投球のフリし球が後ろへ回った瞬間、三人の足元へ落ちるように計算して指を抜く。そしてそのボールは見事計算通りにベル達の足元へ落ち、というか莇の足に直撃して落ちた。ベルはさながらWiiスポーツのCPUのみたいに飛び跳ね、莇は足を抑えて蹲り、紅葉は席から一歩と動かず、微動だにしなかった。


「黙ってろとは言わないが、せめて自分で決めたルールは守れよ馬鹿共が」


「奏士、後ろが仕えてるから早く投げて」


「そうだ紅葉、ピンの代わりにならないか? 穴掘って、そこに紅葉の頭だけ出るように埋めるんだ。顔面ピンってことで、家帰ったらボウリングしようぜ」


なんかよく分からん理由で文句言われたから煽ったらそっぽ向かれた。というかチョコを飲み物のように流し込むなよ。そして丸呑みはしないでちゃんと噛むのな、わかんね。


「…………ふっ」


俺の洗礼された無駄のない無駄な動き……という訳でもなく、普通のフォームで投げた球は床を滑って、滑りすぎてほぼ無回転で並んだピンへ向かっていきーー


『Strike!!!』


ピンを全て倒し、電子版にそう表示される。後ろを振り向くと、パチパチと拍手が。なんか接待されてる気分。


「ソージジャーズデス!」


「じゃ、じゃーず?」


多分上手って言いたかったんだな。そう思うことにしよう。サメの方だったらどうしようもない。いや、今の流れ的にそれはおかし──ベルならやりかねん。


「奏士、意外とボウリング得意?」


近寄ってきた紅葉がクイクイと俺の制服の肘の部分布を引く。伸びるから辞めれ。


「ボウリングは時々暇潰しに遊ぶんだよ。自慢じゃないが、昔丁度プレイに来ていたプロボウラー(自称)に『君はプロボウラーを目指さないかい?』と言われたこともある」


今思うと、今思わなくてもあのおっさん胡散臭かったな。ついでに加齢臭もした。そして何より無駄に渋いイケボで、目が無駄にキリッとしていた。すげぇイラッとした。イケボと目が。


「ほぇ〜、そんな人にソージは……妻としてハナタカデス!」


「誰が夫だバカタレ」


フフンとドヤ顔をするベルに、反射的にツッコミ入れたら、そんなことを無視して莇、ベル、紅葉、泉ちゃんと続いて投げていく。危うくベルのウザさにボウリングの玉を投げつけそうになったけど、踏みとどまる。事件になっちゃう。後、証拠隠滅が面倒臭い。血って落とすの面倒臭いのよマジで。


「ふっ」


「良かったな、スペアで15点だ」


「ふんぬっ!」


「ガターだし隣のレーンに飛ばすな」


「…………」


「…………無言でこっち向くなよ。本数微妙なんだから感想ねぇよ」


「……えいっ」


「やったな泉ちゃん、初めてなのに八本も倒せたじゃん」


「ちょっと待って」


俺が泉ちゃんをベタ褒めして、さらに褒めまくろうと思っていると、紅葉に肩を掴まれた。


「なんだ? 俺は今忙しい。再来年にしてくれ」


「私と泉の扱いについて話がある」


あ、俺のボケは無視ですか……結構辛い。


「いいか紅葉、男は、可愛い娘にはキチィ裏があってもとりあえず優しくしちまう生き物なんだ」


「…………?」


俺がそう言うと、紅葉は泉ちゃんを指さし、そして自分を指さし、そしてまた確かめるように泉ちゃんを再び指さしてコテンと首を傾げた。え、何?


「……可愛い娘」


「……『俺から見て』可愛い娘に変更する。実際と感覚は違うからな」


「…………」


「……無言で俺の手の甲引っ張らないでくれる? 皮伸びちゃうでしょうが」


それでも紅葉は俺の手の甲の皮を無言で引っ張り続ける。あ、だんだん痛みを感じなくなってきた。つーかちょっと不機嫌になると子どもみたいな仕返しするの辞めなさい。ほらほら、お前も一般的に見れば可愛い方だと思うから。学園内人気ランキングトップなんだからそうなんじゃないの? ソースは頼金。 ほんとに便利だなあいつ。


「何何何なんなのお前は」


ぺいっと手を振り払って紅葉から少しだけ離れる。しかし紅葉はその離れた距離をすぐさま埋めてくる。あのね、俺、異性の対応は慣れてるけど立派なニート寸前の童貞だからね? というか異性(身内・昔馴染み・じっさま知り合いの年寄り・スーパーのレジのババア)だから、歳が近い異性との対応とかは慣れてないんですほんとに。悠ちゃん? 悠ちゃんは……年齢は近いけど、どっちかと聞かれたら年下とか、同世代とかそんな感じ。要は身内故に無効。


「……私は、可愛い?」


近づいてきた紅葉が、さらに顔を近づけてくる。しかし表情はいつもと変わらぬ真顔。いや、ちょっとだけ照れが見えるな……というか俺が後ろに逃げて紅葉が追いかけて……ぐるぐるその場を回ってる。俺とかもうムーンウォークやってる。なぜできるのか、それは昔暇だからと練習したことがあるから。暇だとつい無駄な技術とか身につけちゃうよね。ない? ないか? ある方向で進めよう。


「…………」


そんな紅葉への返答に迷い、黙っちゃった俺。さて、と。どうしようか。


嘘つきの俺でも、基本的に人を傷付けるような嘘は言わない。いや、『傷付ける』の定義もころころ変わるから一概には言えないけど。まぁ、要はなんだ。『可愛い』ものを『可愛くない』とは言わんし、『好き』を『嫌い』とは言わないってことだ。はいそこ「だったらそう言えば?」とか言わない。だって普通になんか恥ずいじゃん。俺にも一応羞恥心とかはある。特に他人に自分の感情を真っ直ぐに向けるのは苦手。


しかしなんというか……こう、紅葉の俺に対する懐き度? というか好感度はただの友人だとか、知人の枠を超えている気がする。いや、友人じゃ無いけどさ。ついでに知り合いっていうレベルに入ってない。まだ知らないことが多すぎる。


話はそれたが、紅葉みたいなやつは下手な嘘、というか俺の十八番である「受けて次第の曖昧発言」は無意味だろう。こいつ一応頭は良いし、何より性格的に効果が無い。無意識だったが、自然とそう思った。


というわけで、ここは諦めて俺が折れるのが吉。セリフは用意した。あとは俺の覚悟だけ。こればかりは非売品だからな……そうか、吉だからこそキチィのか。よし、僕頑張れ。ファイトだ童貞レッツゴー俺。


「あー、その、なんだ。可愛い方なんじゃねぇのか」


はい、覚悟が中途半端だった為、多少弄れた感じは出ましたが何とか言えました。俺は今夜布団の中で叫ぶ。心が叫びたがってるんだマジで。


「…………」


紅葉は表情一つ動かさないが、なんだか少し嬉しそう……というかなんか好感度上がった気がする。やっべ下げないと。


「そうだな、『世間一般で見れば』可愛いんじゃないか?」


「…………」


あ、好感度ちょっと下がった。というかなんだかケモ耳とケモ尻尾の幻影が……へにょりしてる。さすがにやりすぎたか……


「あ、うん……可愛いと、思うぞ? 多分」


「…………」


紅葉の子犬耳が少しピコピコ動いた。後もう少しか。


「…………」


手が震える。この行為は一歩間違えれば好感度だだ下がりどころか警察沙汰になりかねない。しかし俺の眼と解析班によれば「そうはならない」と判断された。だから俺は一歩、否、四歩くらい踏み出して頑張る。紅葉よ恨むな。俺の勝手な都合で悪いな。


「…………?」


紅葉の頭に手を置いて、そのまま左右に動かす。所謂いわゆる『アッターマ=ナ=デナデ』ってやつだ。どこの偉人か知らんが、「少女の頭を撫でるそれ即ち萌え也」とか頭の悪いこと言ってたのを思い出した。そんな奴いない? はい、高確率で居ません。そうです逃げたよ状況に耐えきれなくて逃げ出したよそれの何が悪い。


いや、童貞が頑張ったと思えば俺は褒められるべきなんじゃないかね。ほれほれ、褒めたまえ。いや、やっぱりやめて。自分自身を評価されるとか慣れてないんです。


「…………」


俺が頭を撫でている間も、紅葉はそこから動かずじっと立っている。色々猫っぽかったり、子犬みたいな奴だけど、結構な猫っ毛……すげぇサラサラでちょっとうらやま。


「…………」


紅葉が徐々に落ち着いてきた。表情に変わりはないが、どこか嬉しそう。成程、これくらいの好感度はあるというわけか……いや、高くね? 異常な程高くね? お菓子パワーなのか、それ以外なのか……考えんのやめとこ。


何はともあれ、好感度はちょっと戻って最初より少し低いレベルにまで戻せたから良しとしよう。というか紅葉はなにか喋れや。俺一人馬鹿みたいじゃん。馬鹿なんだけどさ。


「お二人共そこでイチャついてないで次、投げてください」


「誰もイチャついてねぇわ」


……そうだよな? 多分まだセフセフラインだよな。うん、そう思おう。


「…………(パシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ)」


「撮るな」


スマホのカメラをこちらへ向けて、連写しまくってるベルに紅葉の持ってたカップの中のチョコの粒を一つ拝借して投げつける。見事にH・Sでワンキル。ちょっと赤くなってるけど、自業自得ってことで。


「ほれ、離れろ紅葉。次俺の番だ」


頭を撫でる手をどうにか頭から離して、そのまま気が変わる前にボールへ。危ねぇ……あのまま撫で続ける所だった。下手したら好感度上がっちゃう。理想の好感度は『近くに居ても気に求められない・不快にならない』範囲。そう、理想の扱いは大気。だから俺は彼女作るとか色気付かない。だって大気だもの。色付いたらダメでしょ。でも色付きスモークとかは割と便利だな。つまり俺が色気付いたら便利ということに? ならねぇよばーか。


ボールを持ってレーンへ上がる時、ちらっと紅葉を見る。紅葉は、撫でられていた頭を手でそっと触れながら少し考えてる様子。自分がなぜそうされたのか、困惑半分嬉しい半分ってところか……あれ、もしかしてやっちゃいけなかったやつか?


「…………」


成程、ね。そういうわけか。これなら放置しても良さそうだな。いや、別にめんどくさいとかじゃなくて、紅葉とこれ以上関わったら後戻り出来なくなりそうだからって意味。


そう言い訳して、ふっと一息吐いて投球する。そのままピンを倒してストライク。ダブルだ。


「やっぱり上手いですね貴方は」


「俺は昔、Wiiスポーツのボウリングでパーフェクトを録ったことがある」


「凄いですね。先程と比べると信用度がガクッと下がりました」


まぁ、ゲームだし。現実殆ど関係無いからほぼ無意味だよな。でも俺はあの春の日を忘れない。やること無くて暇つぶしにパーフェクト出そうと何度も挑戦したあの二日間。暇人すぎる。




その後はどうなったか。無論、俺の圧勝だった。まぁ、地が違いすぎたってことで。俺はゲームは得意だしな。特に個人種目。団体は逆に戦力外。


というか泉ちゃんが予想以上に上達早かった。まさか最後は三連続ストライク出すまでになるとは……身体大丈夫かしら。無理しても今は車ないから送れない。


「じゃ、俺はカスミ行ってから帰るから」


しゅたっと手を上げてボウリング場を後にする。ベル達は、まだ別の場所で遊んでから帰るそうな。泉ちゃん、付き合わせてスマン。


「……なんでいんのお前」


いつの間にか隣を歩いていた紅葉に、前を向いたまま問う。いや、普通に遊んでけば?


「?」


お前が疑問符浮かべても俺は知らねぇから。お前だけだから。


「私も、行く」


「あ、そう」


ならばご自由に。俺は徹底的に他人の振りをする。そう、奇行に走るゴールドシップを見て他馬のフリをするジャスタウェイの如く。


そのまま歩くこと約20分ほど。多少遠いが、無事に到着。セイミヤでも良いんだけど、何となくカスミの気分。家がめっちゃ遠いのが難点。悠ちゃんに車持ってきてもらおうかな……


カゴ良し、カード無し、エコバッグ良し、ルート予測良し、いざゆかん。


紅葉と入口で別れて、食材をカゴに入れて効率良く。あ、そろそろストックが足りなくなるものもあったな……


レジへ向かうとちょうどばったり紅葉と遭遇。どうぞどうぞとお互い譲り合い、進まないけど。


「あら、二人ともお若いのに一緒にお買い物? もしかしてアベック? カップル? もしかして一緒に住んでるの? お若いわねぇー」


「やかましいわくそババア」


レジでカゴの商品のバーコードを高速でスキャンしてレジを通す皺だらけの顔のくそババア……元い、妖怪・顔面タイムマシン整地はこのスーパーのベテランである。性格はあれだけど仕事は早いのがムカつく。


俺がよくセイミヤを利用する理由の一つは、近い以外に、レジにこのババアが居るから。そして何故かほかの列に並ぼうともこのババアの元へやってくる羽目になる。


「それにしても綺麗な銀髪だこと。お人形さんみたいで良いわねぇ〜 大事にしなさいよ」


「いいからはよ金受け取れやババア」


今俺が口悪いのは完全このババアのせい。俺は今悪くない。このババアの性格が原因。


買い物一回でどっと疲れた。しかしこれで家に帰れるし、しばらく来なくて済む。


「じゃ、帰るか」


「……ん」


「…………持つぞ?」


「……病気?」


そんなに酷い返しある? さすがに重そうだから持ってやろうと俺の微かな善意が……


「……ありがと」


「……別にこれくらいっ!?」


持ってみたら予想以上に思い。何入ってるのこれ。スーパーで売ってるものだよな? セメントとか入ってないよな?


「……大丈夫?」


「気にするな。男が一度言った以上はやり遂げる」


荷物を持つ右手右肩が悲鳴をあげてるけど、何とか顔に出さずに持つ。一種の男の意地みたいなやつだ。辛い苦しい表に出さない。俺の場合は嬉しい楽しいすら表に出さないけど。


そして持った後で気付いた。紅葉の好感度が上がったことに。しまったどうしようか。どうやって調整しようかな。


「…………」


ま、紅葉が嬉しそうだし、今は諦めよう。野暮なことはしない。というか俺も紅葉に甘くなったなぁ……いや、『甘い』とはちょっと違うんだろうな。それでも、今だけはこのことを気にしないようにしよう。紅葉の機嫌が良さそうだから。


紅葉と夕焼けに照らされながら歩く道。全く会話は無かったが、何となく、居心地は良いと感じた。

今年も残り僅か。作者はバイトバイトバイトです。フリーターだからしょうがないのです。だって就活めんどくさくて……後、どうにも働くことに適正皆無で。前はバイトも半年で辞めて転々としてましたし。


作者語りはどうでもいいです。次回はちょっと変えて31日投稿。読んでくれよな! 一日はどうしようかしら……

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