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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
第三章 三回目ともなるとだんだんめんどくさくなってくる
30/133

ゲーセンってのは一種の覚悟が必要 主に散財する覚悟が

まぁ、そんなこんなでゲーセン……もといゲームコーナーにやってきた訳だが……


「奏士、勝負しようぜ!」


「めんどくさいからヤダ」


少々悠ちゃんがハイテンションである。正直鬱陶しい。つーか帰りたい。


「それじゃ、各自解散な。2時間後に一階のクレープに集合で良いか?」


「……異論は無い」


「了解シマシター!」


「ええ、それで大丈夫です」


「わ、分かりました……」


紅葉、ベル、莇、泉ちゃんがそれぞれ順番に答える。よし、俺の自由は確保された。


「それじゃ、散開」


ぱん、と手を叩いて各自別行動へ。さて、俺は何をしようか……


DCDとか、カード排出系をやろうにも今は持ち合わせてないし、そもそもここに置いてないし……プリ○ラとかアイ○ツでもやろうかしら。いや、今は女児が遊んでるから怖がらせちゃうな……気を使って別の店で遊ぼう。


ならば太鼓でも叩くか……でも俺苦手なんだよな。他の音ゲーは得意なんだけど。


クレーンは特に欲しい景品が置いて無ェし……というか今はかなりの金使わないと取れなそうなやつばかりだし。


と、言い訳で消去法でメダルゲームに決定。荒稼ぎしてやるぜ……


早速メダルを購入していざ行かん! 俺レベルになると、大量購入しなくても百円で買える十枚程度でも十倍、上手く行けば百倍に増やせる。金もこんな感じでサクッと増やせればなぁ……投資は思うようにはなりません。


競馬とか、ギャンブルは系は賭けは無しで予想するだけ、もしくはジュース程度だとか、低リスクの物を賭けるだけなら悠ちゃん達とよくやるんだけど……金は賭けられません。だってハイリスクハイリターンだから。俺は低リスク中リターンの道を行く……あれだ、『1』払ったら『1.3〜1.7』返ってくる程度が丁度いい。金が欲しい……ついでに安寧が欲しい。しかし、幸せは歩いてこないと誰かが言っている……だから幸せ配送サービスとか無いかしら。歩いてこないなら別の誰かに送ってもらえば良いじゃないの。俺は……動くのめんどくさいから手足の届く範囲で頑張る。


「およ? ソージは何をしているデス?」


なんて何時もの如く不安定な思考を加速させていると、後ろから唐突に声をかけられた。なんだベルか……てっきり、ゲーセンで時々現れる、声掛けてくる謎のおっさんかと思った。ほんと怖いから辞めてマジで。


「見てわからんのか?」


「……台パンはダメデスよ?」


「しねぇよんな事」


というかお前台パン知ってるのね。本当にロクな知識持ってねぇな。


「隣に座ってもいいデス?」


「……好きにしろ」


そう言うと、ベルは隣の椅子じゃなくて同じ椅子に座ってくる。


「いや、お前何してんの?」


「隣に座ってるデス」


「俺と同じ椅子の隣じゃなくて、俺の隣の椅子に座れ」


しっしと手で追い払うジェスチャーをするが、一向に退かない。いや、狭いんだけど……


「ムフフ〜」


何故かご機嫌のベル。笑ってないで退けや。


「……はぁ、邪魔すんなよ?」


「ワッカリマシター!」


ビシッと敬礼をしながら元気よく答える。そんなことされたらさすがの俺も、無理矢理は出来ん……だってすげぇ嬉しそうだもの。流石の俺も、と言うよりかは俺だからこそ、そんな顔している奴に無理強いは出来ん。いや、普通に俺の言い分の方が正しいんだけどさ。『二つも席取って、片方は遊んでないのだから他の客の迷惑』とか正論言われたら完全敗北確定しちゃう。


それからしばらく、メダルの金属音と、筐体の音声と、隣に座るベルの息遣いとか衣擦れの音とか、ちょっと姿勢を変える時の椅子の軋みだとか、色々耳に入ってしまって周りと喧騒が全く聞こえない。おかしいな……ここはゲームコーナーの筈なんだが……あ、メダル詰まった。これなら大量獲得決定だ。


それからメダルを黙々と入れ続けること三十分。等々小型のメダル入れじゃ足りなくなった。


「ちょっとケース取りに行ってくる」


「行ってらっしゃいデースヨ!」


手を振っているベルを尻目に、メダル交換機へ向かう。さて、ケース残ってるかねぇ……


その後、大量排出が止まらなくて飽きてきたからベルに全部託して別のゲームへ移る。次はーー


「あ、これ取れるな……」


クレーンゲームでサービス代を見つけた。専門のゲームセンターよりも、デパートとかのゲームコーナーだと緩いとは聞くが、本当だったのか。ここディスカウントショップだけど。


いざ、硬貨を投入してレバーを操作。乱獲しまくって安く菓子を手に入れている俺の技術を舐めるなよ。この台詞に全俺がお互いを慰め合った。BL的な意味じゃなくて。ここ超重要。


表現が難しい音楽を鳴らしながらクレーンは動く。


「……よっ」


まずは一つ。確実に、正確に、ルール内で裏をかく。雪崩は無理でした。


その後もハイエナ行為を繰り返し、乱獲しまくって手持ちの袋はパンパンになった。これでしばらく菓子を買わなくて済む。俺は経費削減のために安く済ませられる男ーーやってることはカッコよくないけど。喧しいわ。というか普通に買った方が数を制限できる分、安く済ませられる気がする。ま、そこは状況次第ってことで。具体的には、『景品を買った場合-獲った場合の必要経費=差額が○○円以上』という感じの計算式で決めてる。基準差額は景品の値段によって変化するから変数にしてある。


「……」


「……何やってんだあいつ」


次の台を探していると、筐体の前で鞄から取り出したのか財布を手で持ち、景品をじっと見ている紅葉を発見した。おそらく欲しいけど取れる自信が無いのだろう。ならば俺のとる行動は一つ。


「……別の場所行こ」


見つかる前に去る! 面倒そうだから。フラグイベント? 知ったことかそんなもん。


そうじは にげだした。


「……どこ行くの?」


しかし まわりこまれてしまった。


いや、お前あの一瞬でどうやって移動したよ。残像か? さっきのは残像だったのか? 残像ってバトル漫画みたいに長時間残るようなものだったっけ……あ、あれか。反復横跳びみたいにやったのか。そんなことできるのはどこぞの先生かヒーローくらいだろ。


「すみません。人違いなんで離してください」


紅葉に掴まれ、身動きひとつ取れない。ちょっと力強すぎ。制服に跡残るから離して。あ、本当に力強い。ビクとも動かない。君って本当に乙女? 乙女ってこんな死後硬直並に動かない程の力有してたっけ? 恋する乙女は強しと言うけど、それって物理的な強さじゃない気がする。


「なんで、逃げようとしたの?」


「いや、俺の本能が逃げろと蚊の鳴くような声で叫び出したから……」


俺の本能はかなり優秀だが、いかんせん相手が悪い。というか、蚊の鳴くような声で叫ぶって意外と難しい。あ、できた。


「……で、何が欲しいんだ?」


俺は伝家の宝刀『諦める』を使った。伝家の宝刀と言う割には帯刀してないけど。常に抜刀状態。抜刀会心とか使えない。納刀スキルのために装飾品集めないと……はい、無理ですね、非効率だから。硬いもの同士がぶつかったら砕け散っちゃうから、片方は柔らかくないと。だから俺は諦めが早い。相手は大抵硬いから。そのくせ意思は柔らかいとか人を舐めてんのか。人のこと舐めてる暇があんならてめぇは自分のナニでも舐めていやがれハゲジジイがァァァ!


…………おっといけない。また不安定になってしまった。ちなみに今の『ハゲジジイ』は、以前半日一人カラオケしていた時、帰ろうとフロントに行ったらパソコンブースから出てきて唐突に説教と世間話始めたネカフェ難民らしき男のこと。絶対許さない。話聞いて無いから内容覚えてないけど絶対許さない。俺は報復復習制裁仕返し何がなんでもやられた以上、それが気に入らなかったら相手に必ず何かしらやり返す。それがその場でなくとも。


「……あれ」


気を取り直して、紅葉が指さした方を見るとそこには白猫のぬいぐるみが。なんだ、てっきり食いもんかと思った。微妙に失礼かと一瞬思ったが、普段の行いがアレだからしかたないと思った。


「あれ、かぁ……どう見てもクレーンパワー皆無なんだが」


特にアームを差し込んで引っ掛ける場所も見当たらないし、確定来ないと取れないやつだと思う。せめて尻尾が丸まってるとか、引っ掛かりが有るとかそれなら容易いんだけどな。


「……取って?」


「なぜ疑問形なのかは置いといて……欲しいのか?」


紅葉はコクリと頷いた。そうか……そんな子どものような目をされたら、取ってやるしかないよなぁ……さっきからちょこっと服の裾掴んだままだし。本当に、俺って弱いなぁ……断れる人間になりたい。


ところで、これって代金俺持ち? さすがに違うか?


はい、そんなこと言えるはずも無く、両替機でノグッチを分解して百円玉を大量生産する。財布が重い……まぁ、これも投資だと考えればまだマシ。この程度で恩義とか借りは無いと思うけど。


それにしても分解して生産とか錬金術みたい。一円も増えてないけど。錬成とかできないかな……


そうしていざ硬貨投入をすると、表現し難い音楽が鳴る。文字にすると『てゅるりてゅるりてゅるり』って感じの移動音。


「……」


一回目、少し景品がズレただけ。


「……」


二回目、景品の向きが逆になる。


「……」


三回目、景品が元の位置に戻る。だいぶイラッとした。


もうめんどくせぇや。後ろのやつ取っちゃえ。


そして四回目で猫のぬいぐるみ、略してにゃいぐるみをゲットした。予備の景品を支えているバーが丸ごと崩れ落ちたけど。見対策なのが悪い。


「ほれ、取れたぞ」


「…………」


取れたぬいぐるみを手渡すが、紅葉は何故か俺の事を冷めた目で見てくる。まるでチベットスナギツネのような目で。未だにラ○ドソルスナギツネとの違いが分からない。


「おい、なんだその目は」


え、喧嘩売られてる? ただでさえ見た目から冷たい印象あるのに、そんな目で見られたら氷点下行っちゃうよ。永久凍土ツンドラだよ。


でも、そんな永久凍土でも植物が生育する場所もあるらしい。ということは、似たようなこいつも優しい部分があるということだろうか。もしくは、そんな厳しい環境でも生存できる植物があるように、こいつみたいなやつでも一緒に居られるやつがいるということだろうか。生憎、俺には全く理解できないが。こんなどうでもいい連想ゲームしちゃうけど、そういうこと、嫌いじゃない。嫌いじゃないわ! 頭悪いのねッ、嫌いじゃないわ! やめて○水さん出てくるの。


しかし俺は、意地でも好きとは言わないその姿勢も嫌いじゃない。まーた話がズレた。


「……カッコ悪い」


「ばっかお前、効率的と言え」


だって正攻法でやって無駄に金を消費するよりはマシだろ。問題は、対策されてない場所でしか効果無いこと。最近はどこも対策済みで困るぜ全く……


「…………」


「なんだその目は? そんなに嫌なら返せ」


「……ヤダ」


取り返そうとしたが、紅葉がぬいぐるみをぎゅっと掴んで離さない。いや、頬を膨らませても効果無い言うとるやろがい。


でも、そんなことされたら取る訳にはいかんよなぁ……心做しか嬉しそうだし。いや効果有りまくりやろがい。俺は暇なのだろうか。暇ですねはい。


「……確かに、カッコ悪いかった」


「やっぱり喧嘩売ってるだろてめぇ」


よし、今すぐ外の公園で殴り合いしようぜ。俺勝てる自信ないけど。


「でも、取ってくれたのは嬉しかった……ありがと」


そう言いながら紅葉の口角がほんの少しだけ上がる。なるほど、普段能面のこいつが見せる笑顔が、永久凍土に咲く花というかなんというか……そういうことなのだろうか。わかんね。愛とか恋とか俺には程遠いし、『正』の感情を向けられる機会とか無いし……未経験には理解出来ん。あ、重政は両方しっかりと向けてくる。なんなら行動で示す。


とにかく、俺の解析係が《結果 喜び》を示しているのだから、こいつは一応嬉しがっているということで。


「ほれ、お目当てが終わったなら散れ散れ」


しっしと追い払うが、紅葉はそこから動かない。


「……まだ、残ってる」


「いや、自分でやれよ」


お前俺より金持ちだろ。俺の少ない財産を取るなよ。


その後、紅葉に連れ回された。俺の財布からノグッチが五名ほど旅立った。可愛い子には旅をさせよとは言うけど、旅しても戻ってきた時は別人じゃん。ノグッチ帰ってきた時は多分サブローになってる。というか、そもそも返ってくる保証ないじゃん。ちくしょうこれだから現実の女は金が要る……ぜってぇデートとか行っても完全自腹にしてやる。奢らない。金と人間関係の問題が一番めんどくさいから。ソースは俺の親と祖父。


「♪〜」


でもまぁ、紅葉はこんなにも嬉しそうにしている。それでまぁ、良しとしよう……でもさ、俺に荷物持たせるのはどうかと思うよマジで。俺はたとえ女とデートしても買い物袋を持ちたくない。


……そもそも行く相手居ねぇや。なら安心一安心。いや、油断は禁物。ベルとかが誘ってくるかもしれない。断固拒否の姿勢を崩さない。


紅葉と別れ、フラフラと目的も無く歩く。あ、ベルのやつ、まだメダルゲームしてら。なんかすげぇ増えてる。


「およ、奏士、暇か?」


「すげぇ忙しい」


そう言い残して退散するが、すぐさま捕まった。またかよクソが。


「まぁまぁ落ち着けよ。そんなに私と遊びたかったのか?」


「いや、こんなにもあんたと遊びたくなかったんだけど」


とりあえずお前も制服から手を離せ。皺が着く。駄菓子屋のババアの顔面の様に皺だらけになる。


「よし、ちょっと付き合え」


「付き合えってどこにあー」


悠ちゃんに強制連行ドナドナされ、着いたのはThe.太鼓。達人でも目指す気? 俺未だに十段なんだけど。


「ちょっと勝負しようや」


「俺、勝てない試合は怪我する前に棄権するタイプだから……」


そう言っている間にも、悠ちゃんは金を入れて始めてしまった。おい待てやコラ。


「問答無用だ、負けた方がジュース奢りな」


「……後悔するなよ?」


さて、勝つか負けるか大博打。と言っても、俺太鼓なんてゲーセンで遊んだ経験殆ど無い。これはほかの音ゲーも同じだが、音ゲーコーナーは一種の新参お断りの上級者だけのスペースになりつつあると思う。『始めたいけど周りは上手い人だらけでやりづらい→じゃあ誰も居なくなるまで待っていよう→暫く待ってもまだ遊んでる→帰る』が繰り返されて、結局上達しない現状。なんか畏怖するというか……正直ビビる。


だから上手くなりたきゃ誰も来ないような穴場を探すことだ。後は平日に行くとか? 俺は水戸のゲーセン行ってる。駅はダメだ。あそこは平日でも人が多い。


と、俺が考え事をしている間に悠ちゃんは曲を選び終わり、いざ開始。えーっと? ここを叩けば良いんだな。でもこれって意外と力入れて叩かないと反応しないから疲れるんだよな……撥も重いし。俺の筋力不足。筋肉ってあったとしても本人の器に合わなかったら宝の持ち腐れなんだよね。


曲は悠ちゃんらしくアニソンだった。これなら俺も知っているから感覚で叩ける。


「……」


「……」


譜面に合わせてお互い無心で叩く。腕だけが動き続ける。持った撥の残像が見えるほど太鼓を叩く。腕疲れてきた。


「そういや、これ勝敗はどうやって付けるんだ?」


「『良』の総獲得数で良いだろ」


その一言以外、無言で叩く。さすがに難易度おには難しい。


そうして叩くこと数分、全曲が終了し、それぞれの合計を算出するがお互い同じだった。というか、全てのスコアが同じだった。何この無駄な結果。


「どうする? 引き分けだが」


「そうだな、奏士の負けでいい」


「いや、何『私の負けでいい』風に言ってんのじゃ己は」


この人馬鹿じゃ……あぁ、馬鹿だった。


「そうか、ならば私が奢ってやろう」


「いや、それもいいや」


なんか裏がありそうで。


そして俺はさっさと逃げるように悠ちゃんと別れた。あのままだとまだ付き合わされる。


解散した後は、いよいよやることが無くなってきた。ビーマニとかチュウニとかWACCAとか置いてくれたらいいのに……そこら辺は基本的にガチ勢向けとか、年齢層高めの曲が多いからゲーセン行かないと無いか。今度水戸行ってこよ。ついでに駅前の納豆像観てこよ。


そんなんでフラフラと彷徨っていると、キョロキョロと首を振りながら不安そうに一人で歩いている泉ちゃんを見つけた。


「どうした?」


「あ、奏士さん……」


俺と目が合った瞬間、泉ちゃんが笑顔になり、安心したような雰囲気になる。眩しい……これだけで今日は頑張れる。今日残り半日も無いけど。


「実は、ゲームセンター? って来たことが無くて……それで、何したらいいのか分からない、です」


そうか、泉ちゃんは身体が弱かったから外出とか容易に出来なかったから、出かけたことも殆ど無いのか。


「奏士さんは、何をしていたんです、か?」


「俺? 俺は……」


ベルに付きまとわれ、紅葉に強請ゆすられ、悠ちゃんに勝負を挑まれ……俺満喫してねぇ。


「俺のことはいい。泉ちゃんは何かしてみたいこととか、気になったこととかは無いのか?」


「え、ええと……」


泉ちゃんがある場所を指さす。そこは仕切りが付いた大きな箱と、でかでかと印刷された女の顔。そう、男禁制のプリクラだ。別名プリント倶楽部


「あれはプリクラと言って、要はあの中に入って写真を撮って加工する場所だ」


そして皆でワイワイ盛り上がってモンスターを生み出す場所だ。なんで皆あんなに目をでかくしたり肌を白くしたりすんの? そんなに目をでかくして、お前らの顔の半分を目で埋めるとか化物かよ。化け物だったな。女はいつも化けている。 というかそんなに目のでかいヤツは二次元にもそうそう居ないってレベルででかいのなんでなん? もう作画崩壊の域だろ。こればかりはさくがたんとう、悪くない。


「プリクラ……奏士さんは、やったことあるんですか?」


「俺は無い」


そんなリア充みたいなことしない。第一、俺の顔はプリクラの加工技術を持ってしても変わらない。これ以上肌白くなったらいよいよ幽霊と間違われちゃうよ。影の薄さも相まって、お化け屋敷とかじゃ誰も俺の事を脅かしに来ない。さすがに素通りされて後ろのやつを脅かしに行った時は「何が楽しくてここに入ったんだろう……」ってなった。仕掛けを避ける俺も俺だけどさ。だって怖いじゃん幽霊とか。俺見えないし。もっと理解できるようになったら怖くなくなるんだろうけどな……見たいものも見たくないものも同時に見えてしまうこの眼が恨ましい半分役立つ半分。


と、ふと泉ちゃんを見ると少し恥ずかしそうに頬を赤らめ、スカートの裾を握っている。そんなことするとシワになっちゃうよ。直してあげるから一旦我が家行こうか。とりあえず戻るまでは……とりあえず大きめのガーディアンでも着とく? スカートの代わりになるし、俺も嬉しい。 カーディガンじゃなくてガーディアン。泉ちゃんのパンツを守護するという意味でガーディアン。ついでに俺の命を守護してくれるって意味でガーディアン。死亡理由は多分理性を保つための自害。


「な、なら……私もやったこと無いですし……一緒にやってみません、か?」


「あ、うん」


しまったよく考えずに返事してしまった。


でも無理じゃん。こんなこと言われたら了承以外に無いじゃん。殆ど話聞いてなかったし。あと顔真っ赤にして、ちょっと涙目で、震えながらも勇気を振り絞った泉ちゃんが可愛すぎる。


「じゃ、じゃあやってみようか」


「は、はいっ! 私の初めて、奏士さんにあげます……」


「うん、その発言は誤解を招くからやめて」


初めての意味が変わってくる。でも、とりあえず録音するからもう一回言って? 録音機どこにしまったっけ……


暖簾……もとい仕切りをくぐるとタッチパネルがあった。これが本物のプリクラ……俺もとうとうプリクラ童貞卒業か……


待てよ? 俺はプリクラ童貞を卒業、泉ちゃんはプリクラ処女を卒業、つまりこれはもう××××なのでは? 違うな。全く違う。バーカバーカ俺のバーカ!


隣の泉ちゃんを見ると、目を輝かせて興奮している。俺はっ……こんな純粋な娘に対してなんて想像を……まぁ俺も男ですし。本当の意味で卒業する気は無いし。あくまで言葉の綾ってやつだ。泉ちゃんを性的な目で見たことは無い。『一人の女』としては認識しているけど、性欲含めた恋愛対象だとか、そういう目で見たことは一度たりとも、一瞬たりともない。これはもう、柳の名に誓う。そこまで大層な家じゃないけど。


「す、すごいです……これがプリクラ……」


「そうだね。凄いね。俺の自制心が」


「えっ?」


「ごめん何でもない」


あっぶね声に出てたみたいだ。


「え、えーっと……どうすれば?」


「……とりあえず、台を持ってこようか」


泉ちゃんの身長的に俺と高低差があり過ぎる。家族写真みたいになる。すげぇキラキラに加工された家族写真。


台を用意して始めようとするが、俺もネットで得た知識以上のことは知らないので音声に従ってやるしかない。くっ、ここで予め経験しておけば……


いや待てよ? お互い初体験ならそれはそれでアリなシチュだな。前に『女はお互い初めての方が嬉しい』ってネットに書いてあったし。信用度皆無っ!


『は〜い、カメラの方向いて〜』


急に言われて焦り、二人して少し慌てながらカメラを確認して写真を撮る。


「加工もできるけど、どうする?」


泉ちゃんも一人の乙女、少しでも美しくありたい的なことを考える年頃だろう。今のままだ十分だけど。


「今回は初めてなので……そのままがいいです」


そう、ですか……消え去れ俺の煩悩よ。変換機能が壊れてるぞ。そうだ、般若心経を唱えよう。


「摩訶般若波羅蜜多心経 観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄  舍利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色……」


ハゲを、葬式の時に見たハゲを思い出すのだ……なんか木魚の代わりに叩かれてる。坊主ーっ!


「そ、奏士さん?」


おっといけねぇ。泉ちゃんを心配させちまった。いや、これただ単に隣の男がいきなり何かブツブツと唱え始めたから怖いだけだな。俺もそんなやつ怖い。


「ほら、写真できたぞ。後は好きな場所に貼れるし、切り取って保存しても大丈夫だ」


出てきた写真を手渡すと、泉ちゃんはとても嬉しそうにはにかんで、ぎゅっと写真を抱きしめる。可愛いので結婚しよう? 養うから。


「えっと……奏士さんにもこれ……」


そう言いながら、写真を分けようとしたのだろうが、ハサミも無く、手で切れる訳もなく、どうしようかと困ってしまった泉ちゃん。困ってしまってワンワンワワーン


しかし俺は犬のおまわりさんじゃない。解決策は出せないので解消策を出そう。いや、あの犬最終的になんかしたか?


「いや、それは泉ちゃんが全部持ってていい。大事にするも、捨てるも自由にしてくれ」


そもそも、俺は写真を撮られるのが苦手だ。なんというか、『俺』という記録が残ってしまう気がして。ほら、今回撮ったやつも無意識の内に写らないように消えようとしたのか輪郭がブレてるし。


「捨てないです!」


急に出た大声に自分もビックリしたのか、肩をビクッと震わせて徐々に小さくなる泉ちゃん。これ以上小さくなったら消えちゃう。ビッ○ライト使わないと……ガリ○ートンネルの方が良いか?


「奏士さん、との大切な思い出ですから……大切にします」


その泉ちゃんの笑顔は、俺が珍しく動揺するには十分だった。すみません先祖。俺は初めて、泉ちゃんで動揺しました。まぁ、先祖全員ロクな奴居ないと思うから別にいいか。


というか、こうも好感度高いと逆に怖いな……裏がありそうで。ダメだ、またそうやって人を信じようとしない……


そして、泣く泣く(泣いてないけど)泉ちゃんと別れ、そろそろ時間だと言う頃。


「おや、奏士殿」


「なんだお前か」


今日は全員とエンカウントするな。流石に連続は体力ゲージの減りが凄いぞ。別にトレーニングしてる訳じゃないのに減りが凄い。友人タイプ入れて調整を……そうか俺一人も居ねぇや。だったら、ちょっとはお休みにしようぜ。もしくはお出かけでやる気アップ……あ、これがお出かけか。その割にはやる気が凄い速度で下がってるけど。


「悪いがネタ切れだ」


「えっと……まだ何も言ってないのですが」


どうせ一緒になにかしようとか言う気だろ? 先手を打たせてもらった。やることねぇよ。


「で、何? もし女児を見つめていたなら通報するぞ」


「しませんよそんなこと。こっそりと見ます」


よし、通報だな。Heyポリスメン?


「ところで、あの台は一体どのような物ですか?」


莇が指さすその先には、エアホッケーの台が。


「あれは……相手のゴールにディスクを入れあって遊ぶやつだな」


「なるほど、二人以上専用のゲームですか……では、奏士殿に聞いても無駄ですね」


「喧嘩売ってんのかてめぇ」


確かにやったことないけどさ。二人で協力プレイのゲームも一人でやるタイプだもの。一人卓球とか、一人野球とか。なんならサッカーも一人でやる。それただの練習だな。しかし俺は、これでシュート技を習得した。シュートを習得ってか。くだんね。


「では、私とやってみますか?」


「上等だホモ・サピエンス如きが」


てめぇの顔面にディスク打ち込んでやる。


そうしてネタ切れを何とかして埋めるかのように、ついでになにか罰ゲームを、と『勝者は敗者に一度だけ絶対服従、その権利の使用は勝者が自由に決めることとする』 という物騒なルール追加で始まったエアホッケー勝負。お互いど素人だ。俺は電子ゲームでしか経験無いし、莇に至っては本当に未経験。この勝負、どっちが早く馴染めるかの安全な勝負……


「あ、手が滑った」


「甘い!」


にはならない。偶然を装って叩き込もうとするも、難なく右手に持ったスマッシャーで頭上へと軌道をそらされた。くっ、やはり下以外から相手側に送るにはネットの上の隙間を狙うしか無いが……それだと軌道が丸わかりだから対処が容易だし……どう狙うか……


「私も初めてなので間違えました!」


「故意だろ」


そして莇も偶然を装い、先程逸らしたディスクが落ちてきたタイミングで手に持ったスマッシャーで空中から打ち込んできた。なので俺は、戻ってきたディスクに向かってスマッシャーで少しだけ触れ、ほぼ同じ速度で同じ向きに移動させる。そして移動が止まる寸前にスマッシャーの縁でディスクを上に打ち上げる。するとディスクはかなりの速度で回転しながら頭上へ上がる。


「後ろに人が居るから動くなよー」


「何っ!」


そして俺も莇がやったように落ちてくるディスクを打つ。俺の絶妙なコントロールで放たれたディスクは、定規で引いたような直線で、吸い込まれるように莇の鳩尾へ。


「しかし私には無意味!」


しかし、ディスクは莇の制服とぶつかった瞬間、しない筈の金属音と共に台へ落ちる。


「だろうと思ったよ」


莇は仮にも社長令嬢の第一護衛役。普段着ている服には、外見は変わらずともありとあらゆる仕掛けが施されているのだろう。ならば制服が防刃素材の可能性も、防弾チョッキを来ている可能性も、ありとあらゆる可能性を計算し、現状から一番可能性が高い結果から行動を起こす。そしてその結果から確実に最終勝者になる為の順序を導き出せば俺の勝利は揺るがない。


「残念だが、今回も俺の勝ちだ」


莇に弾かれ、台に落ちたディスクは縁、仕切り、ネットにぶつかりながらやがて……


「っ! 狙いはそこでしたか!」


莇のゴールへと入り、俺に一点が入る。


入るのは一点だけ。しかし今この勝負だけは一点が勝敗を決する。


\ブーーッ!/


その瞬間、時間切れのブザーが鳴り、ゲームは終了する。一種のブザービーターだ。


莇は悔しそうに台に手をつき、俺は勝利の余裕を見せるためにスマッシャーを人差し指の先で回転させる。おっとと……


そうしてもはやエアホッケーという遊びではなく、殆ど盤外戦になり、というかホッケー版イナ○マイレブンみたいなことになったけど、お互い何かを得て何かを失った勝負は終わった。多分これはエクスカリバーの打ち合い。


「……何してるの?」


後ろを見ると、紅葉が居た。見てたんかい。


「いや、男の勝負を少々」


「完全にゲス同士の勝負だったデス……」


そして紅葉の後ろにベルが居た。ゲス同士って……


「待て、お前は誤解している」


「そうですよお嬢様」


「な、なんか責める時は息ピッタリデス……」


ベルは俺たちを見て少し引いてる。なぜだ?


「俺をこいつと一緒にするな」


「私をこの人と同じにしないで頂きたい」


「……仲良し?」


「息ピッタリ、です……」


紅葉の後に、泉ちゃんがトドメを指す。そんな……


「お、こんなところで全員集結とは面白い」


悠ちゃんが来た。めんどくさいのが来た。


「あ、お姉ちゃん」


「泉、楽しめたか?」


「うんっ、奏士さんが色々教えてくれたから楽しかったよ」


「ソージが色々教えた……何を教えたデスかねぇ〜」


ベルが何やらニヤニヤしている。


「ナニを教えた?」


「なるほど、奏士殿はバレるかバレないかのギリギリを攻めるのが好きな派閥でしたか……」


「んな派閥に入った覚えはねぇよ」


つーか失礼だなお前ら。


「見て見て、奏士さんとプリクラ? っていうのを撮ったの」


泉ちゃんが懐から先程の写真を取り出して悠ちゃんに見せる。


「ほう、あの奏士が写真を……」


んだよ。何見てんだこら。ニヤニヤすんな。


「ソージ……何故ワタシも誘わなかったデスカー!」


「いや、お前誘ったらウザイから……つーか揺らすな気持ち悪い」


ベルは俺の服を掴んでガクガクと揺らし、俺の首はそろそろイカれそう。うぇ、気持ち悪い。


「花伝は……結構取ったんだな」


「奏士が……取った」


「正確にはお前が取らせたんだ」


大切にしろよ? 俺のノグッチ五人分なんだから。帰ってこいよサブロー


「なんだ奏士、しっかりとラブコメイベントやってるじゃないか」


「クレーンで乱獲するのが攻略への一歩ならあんたは今頃俺の彼女になってるよ」


俺がどれだけあんたに取ってやったと思ってる。


「なるほど……ソージ! ワタシ実は取って欲しい物があるデス!」


「いや、お前の場合は幾らやっても好感度上がらねぇぞ?」


「なんとっ!?」


そんなに驚くことかね。今までの自分の行いを振り返ってみな。


「さて、ちょうどいい時間だ。下でクレープでも食べて帰らないか?」


「賛成」


「賛成デース!」


「では、私も賛成で」


「わ、私も食べたい、です」


「まぁ、それくらいなら許容範囲内だ」


Let's Go!○カチュウという感じではないが、ゾロゾロと皆歩いてクレープ屋へ。大勢で邪魔にならないかこれ。


「さぁ、好きなものを頼め。今日は奏士の奢りだ」


「舐めんなよクソガキ。誰が奢るか」


あのさ悠ちゃん。あんた毎回さも自分がやるかの如く俺に押し付けんの辞めれ。


「私、バナナチョコクリーム」


「私はカスタードクリームを」


「ワタシは……いちごクリームをクダサーイ!」


「じゃ、じゃあ私は……このみかんクリームを」


え、これ俺が奢る感じになってるの? 俺の財布を軽くする気? 俺の財布にダイエットは必要無いぞ。むしろもっと肥えさせろ。


「いや、奢らねぇからな? 自分で金払え」


「……ケチんぼ」


「男らしく彼女に奢るのが彼氏と言うものデスよ!」


「誰が彼氏だ」


「全くです。ここは何も言わずに財布を出すのが男でしょう」


「おめーにだけは絶対に奢らねぇよ」


「え、えっと……」


「あぁ大丈夫。今日は泉ちゃんの歓迎会だから、泉ちゃんの分は俺が買ってくるから」


「あ、ありがとうございます……」


……ダメだ、今すぐこの頭に手を置いて撫でたい。抑えろ俺。


まぁ、結局断り切れなくて俺が奢るんですけどね。悠ちゃんと莇以外。


「味わって食えよ。俺の財布に残り三百円しか入ってねぇ」


こんなもんスマイルあおぞらバスしか乗れねぇじゃねぇか。市営バスとか無理だぞ。今日車で良かったー


「うまうま……」


「美味デス! とても美味しいデス!」


「なるほど、これがクレープ……」


「甘くて美味しい、です……」


「なぁ奏士、お前の一口くれ」


「あんたは一口で全体の五分の二を持っていった前科があるからダメだ」


自分の食え自分の。


「ソ〜ジ〜」


ベルに呼ばれて振り向くと、口を開けて待機していた。


「あ〜ん♡」


「いや、あげないけど……」


「フラグクラッシャーめっ!」


「お前とのフラグなんて幾らでもへし折ってやる」


相変わらずこいつらはいつも騒がしい……食ってる時くらい、少しは静かにならんのか。


「…………」


「……なぁ、紅葉よ。背後から忍び寄って人のクレープを無断で食うのはどうかと思うぞ」


「…………」


それでも紅葉は俺のクレープを食べ続けます。


「いや食うなよ。食うなら食った分お前の寄越せや」


「……」


紅葉は目にも止まらぬ早さで自分のクレープを食べました。てめぇ……あ、口元にクリーム付着してる。ここでそっと拭ってあげるのが主人公。しかし俺はフラグをへし折るフラグ処分屋なので拭わない。


そして、紅葉の食欲にも慣れた俺はこれくらいじゃ動じない。念の為にと二つ買っておいたのだ。


「!?!?」


「なんでそんな『してやられた……』みたいな表情できるのかは知らんが、まだ甘い」


クレープだけに、まだ甘い。甘いぞ○戯! そこに○入れたら別の意味にならないかなぁ……


「ソージソージ、一口交換シマショー♡」


「いや、俺人が口つけたもん食いたくねぇし……」


だってなんか菌がついてそうじゃん。一回しっかりと洗って殺菌しているなら兎も角。他人関連では結構な潔癖なんだよ俺。


「そ、奏士さん……最近の学生は、男女でクレープを食べあいっこするのが一般的と聞いたので……一緒に食べません、か?」


「喜んでお受け致します」


しまったつい変な言葉使いになってしまった。何だこの騎士みたいなやつ。俺に騎士は合わねぇだろ。主人公が第一話で入る街の広場で、主人公が当たりを見回しているシーンで後ろを通った顔も描かれないモブが丁度いい……なんなら影しか描かれないモブが良い。でもボブは嫌だ。だって国籍絶対違うじゃん。ボブ良い奴だけどさ。だって俺にも笑顔で接客してくれるんだぜ? 営業スマイルとはいえ良い奴じゃん。


というか話戻すけど、菌は菌でも善玉菌と言うか、泉ちゃんのなら本望というか喜んで受け入れるというか……既に身体中が受け入れ態勢を整えている。そう、まるで前戯のあとの挿入シーンのヒロインのように。ごめんね食事中に下ネタ思考して。


「で、では……はむっ……美味しい、です」


少し照れながら口を動かす泉ちゃんは、この世のものとは思えないほどに……ああダメだ表現出来ない。なんかもう己の語彙力が憎い。


と、言うわけで俺も泉ちゃんのクレープを一口貰う訳だが……


「…………」


「? 奏士さん、どうかしましたか?」


やばい、緊張して身体がミリ単位で動かない。なんか変な汗出てきたし、心臓の鼓動はやばい事になってる。俺の血圧上がっちゃう。限界突破しちゃう。血圧の限界突破って血管の破裂とかで死んじゃうんだよな。別に未練とか無いけど。あー、でも重政の最後は見送りたいかな。やっぱりナシで。


「奏士さん、は……私のでは嫌、ですか?」


泉ちゃんを心配させてしまった。もう俺の血管くらいどうでもいい。泉ちゃんが最優先事項だ。


「……もぐ」


クレープというのは甘い食べ物の筈なのに、泉ちゃんのクレープは味がしなかった。緊張し過ぎ。


「……あ」


と、俺が何とかしてクレープの味を確認しようと解析しながら血管の強化を行っている(脳内想像だから効果は不明)と、泉ちゃんが何かに気付いたようにクレープを見ながら徐々に顔を赤くし、最終的には「顔色悪いよ?」とは真逆のレベルにまで赤くなった。多分触ったら熱い。


「こ、これって……奏士さんとの間接キス」


ああなるほどね……ふむ、いもうととおやつを分かち合うなんて二次元じゃ良くあることだし、セフセフだな。俺は何の罪も犯していない。犯したとすればーー


「ソージはワタシとは嫌だと言って、イズミとはOKと言って……」


やばい、ベルがシャドウサイドに落ちかけている。なんだよアークの回す向き間違えんなよ。あ、間違えたの俺か。


でも俺ウォッチなら初代派だから、四代目以降のウォッチはアニメでしか見てないから遊んだこと無ェよ。使い方覚えて無ェよ。


しかしまずいな。ベルが何やらブツブツと何かを唱え始めた。なんかすげぇ怖い。


要するに、これを作ったのは俺という事で、対処も俺、と。


「…………ベル、食ってもいいぞ」


「…………」


途端に今までの黒いオーラが消え、なんか花が咲き乱れた。ちょっと花粉飛んできそうだから除草剤とか撒いていい? マスクとか何処仕舞ったっけ?


「アーン」


ベルが目を閉じ、口を開けて待機している。あ、喉ちんこ見えた。


正式には口蓋垂って言うらしいんだけど、みんな大抵喉ちんこ言ってるよね。でも、あれはちんこじゃなくて金玉だと思う。そして多分、放送コードに引っかからない唯一の言葉。


「いや、自分で食え」


口を開けて待っていても、幸せクレープは歩いてこないぞ。自分から歩いてゆけ。


「……アーン」


「あの、話聞いてた?」


それでもベルは引きません。なんだよこのしぶとさ。大きなかぶなの? じゃあ残りのババア以下数名連れてくれば……猫以外連れてこれねぇじゃん。なんなら重政は来ない。つまりこれは俺のかぶじゃなかったベルの一騎打ちか。


「……うりゅ」


はい、降参します。だってベルちょっと涙目になってるもの。このシーン誰かに見られたら完全に俺が悪いことになるもの。


『よのなかねかおかおかねかなのよ』という言葉があるが、これが回文になるということは、どうしようと意味は変わらないということ。つまり世の中その二つを持っている人は優位に立てるという事。そしてベルは両方持っているということ。それ抜きにしても俺みたいなやつにこの世は厳しいけど。何? 死んだらゴーグル外されて実はシミュレーションゲームでしたみたいな某迷言みたいな展開ないの? もしその通りに「ハードモードとは通だねぇ」って言われたら俺はそいつを動かなくなるまで○○して××して△△したあとで□□する。何言ってんのか聞こえねぇ。


「……ほれ」


意を決してクレープをベルの口元へ近付けると、ベルは少しだけ頬を赤くしながら一口食べ、とても嬉しそうな表情を見せた。


恋する乙女、ということは要は好きな人にアーンして欲しかったという乙女心なのだろうが、生憎俺は愛だの恋だのとは二次元以外じゃ無縁なんでね。基本的に自分大切だし。


「さぁさぁソージ! ワタシのも一口食べるデス!」


「いや、俺とお前のクレープに大差無いから要らない」


「…………」


ベルは目が漆黒で埋まった。おまいはグレイか。いや、グレイの様に黒一色と言うより、なんというか混沌が見える気がする。人殺しそう。


「奏士、男ならガブッと行っちまえ」


「だからっていきなりのチョップは無いと思う」


悠ちゃんの不意打ちチョップスティックを受け止める。


「とりあえず今ここで一発かましてもよろしいですか?」


「許可得る前にやってる時点で確定だろ」


「ぐぁぁぁぁぁ……」


莇の目潰し用に繰り出されたチョキを指の間に人差し指と中指を入れてゆっくりと開く。指裂き。


「貴様ら……いきなり何をする」


「いや、なぁ?」


「えぇ、ですね」


悠ちゃんと莇はお互いに頷き合うと俺の方を向きーー


「「他人の幸せって反吐が出ないか?」出ませんか?」


「ああうん、ゲスが手を組んだことは理解出来た」


つまりあんたらがもし恋人云々ができた場合、俺は全力で邪魔をしていいということだな。よし、覚えてろ。こいつらの残念なおつむに期待しちゃあいねぇが。


「だってよ、奏士が珍しく他人とラブコメやってるんだぜ? そんなもん邪魔したくなるだろ」


「不安定か」


あんた人に「幸せになれ」だの、「彼女はできたか?」だの言った癖に邪魔するとか狂ってんのか。


「私はお嬢様の幸せと、奏士殿を天秤にかけた結果、『別にお嬢様の幸せ程度どうでもいい』という結論が出たので」


「それでいいのか護衛役」


あんた仮にもそのお嬢様を一番近くで守護する役目だろ。せめて一時の幸せくらい味わわせてやれよ。つっても、そう簡単に殺られる訳には行かねぇが。俺が死ぬなら道連れだ。


と、ちょっと騒いだが良い子は帰る時間です。俺は悪い子だからそこら辺は自由だけどお家大好きだから帰る。


……ベルのクレープ? そんなもんご想像に任せるぜベイベー


「泉ちゃんはどこに住んでるんだ? 家まで送る」


ついでに家を知っておけば何かしら理由をつけて行ける。別にストーカー目的じゃない。


「え、えっと……私は最後で大丈夫なので、皆さんから送ってあげてください……」


助手席に座る泉ちゃんが答える。


「いや、泉ちゃんからで良いよ。こいつらまだ目覚めないだろうから」


運転しながらバックミラーを一瞥すると、後部座席で紅葉、ベル、悠ちゃんの三人が肩を寄せあって寝ている。紅葉に至っては猫のぬいぐるみを抱いて寝ている。


乗車するまでは起きていたのだが、その後直ぐに寝てしまったようだ。そんなに疲れたのかね。莇は肘をついて外の流れる景色を見ている。今その窓開けたら猛烈な風入ってきて、格好つけてる莇の髪とか顔とかに被害甚大。実行しようかしら。


さて、こいつらが起きなそうなのは本当だが、本当のことを泉ちゃんに伝えて混乱させるのはな……


「で、ではお願いします……」


正直あいつら四人とも車から降ろして泉ちゃんとドライブと行きたい。


泉ちゃんに案内されること約十分、見慣れた住宅街に入る。なるほどここら辺か……


「あ、あのマンションです」


泉ちゃんの指の先にはちょい大きめのマンションが。よし、完璧に覚えた。後は泉ちゃんが入る部屋番号だけだな。


「そ、奏士さん……今日はありがとうございました」


車から降りた泉ちゃんがぺこりとお辞儀する。くそっ、シートベルトが邪魔でスマホがなかなか取り出せない。


「じゃ、また学園で」


「はいっ、ではまた学園で……」


泉ちゃんがペコペコと何度も頭を下げ、マンションの中と入って行く。バイバーイ


さて、と。次はこいつらどうしようか……


「あと少しで家に着くぞ。起きろ」


しかし、誰も目覚めません。


というわけでこのまま我が家へ帰ることにした。車庫にアレがあったはず……


「えーっと……あったあった」


取り出したのは大型の木製リヤカーだ。以前片付けなかった俺ナイス。折れない椅子。椅子を折るって相当だと思うけど。


「恨むなよ……よっと」


寝ている紅葉達をそっとしばかれない程度に抱えてリヤカーに乗せる。引きずって乗せてもよかったけど、それだと俺は重いし相手は痛い。


それにしても……三人とも軽いな。悠ちゃんは言わずもがな、小柄な紅葉や、平均的に見れば背が高く、身体の方も外国人宜しく成長しているベルでさえも軽く感じる。何時だったか、「女の子は雲のように軽いが、時としてオスミウムを軽く超える程重い」と言った人が居た。なるほど、確かにそうだな。


というか、紅葉もベルも、悠ちゃんとは身体の大きさが違うし、悠ちゃんみたいに全体的に脂肪が無い訳でも無いから……どうやって持てばいいのか分からん。姫抱っこは男だけでやるのはキチィと前に読んだ。あれって男が持つ以外に、女は男の首に手を回して重心を寄せる必要が有るらしいね。だって悠ちゃんですら重いと感じるし。あの時は落としちゃったけど、悠ちゃんが「やってみろ」って言ったんだから謝らない。思いっきしケツ打ってたけど、謝らない。


「ふげっ!」


ベルの鳴き声? みたいななんかすげぇ声が聞こえた。あ、悪い。砂利道だから振動すごいよここ。


「う、うぅ……なんか後頭部が凄く痛いデス……」


ベルが頭を擦りながら起きた。それはきっと、俺にアーンを強要した罰だ。


「ほれ、着いたから隣のバカ二人も起こせ」


ふう、さてと。いよいよ俺の仕事だ。なんかすげぇ疲れたけどやらなきゃ……というか歓迎会って言ってるのに泉ちゃんあまり楽しめてない気がしたけど大丈夫か?


「ソージ、二人とも起きないデス。起きないデストローイ!」


デストロイはアカン。ダメ、絶対。


「とりあえずベッドに放り込んどきゃ良いだろ」


そういうことでしょうがなく莇と一人ずつ運ぶ。では俺は悠ちゃんを……


「お待ちください奏士殿」


「なんだ莇殿」


ちょっと悠ちゃん抱っこしてるんだから肩掴まないでくださいな。


「幾ら私でも流石に紅葉殿を抱えるのは気が引けます。ここはやはり、奏士殿が運ぶ方が良いかと」


「いや、お前に悠ちゃんを任せたら何しでかすかわからんから安全策で俺は身内の悠ちゃん、お前は好みの対象外の紅葉で良いだろ」


うん、完璧だ。問題は、悠ちゃんをどこに運ぶかだが……まぁ、テキトーで良いだろ。適当の意味分かってる? ちょうどいいって意味だぞ?


「いえいえ、悠殿は私にお任せを。それに、紅葉殿も他の男に部屋に入られたくはないでしょう。やはり、何度も入っている奏士殿が運ぶべきかと」


「いやいや、ならお前が紅葉を部屋の前まで運んで、俺が悠ちゃんを運んだ後に俺が紅葉を部屋の中に運べば良くないか?」


「いえいえ、それだと奏士殿の仕事量が増えてしまうので、最初から紅葉殿を運ぶ方が……」


「いやいやいや」


「いえいえいえ」


「あーもう二人ともどっちでもいいからさっさと運ぶデス!」


しまったベル程度に怒られてしまった。


しょうがないので持っている悠ちゃんを莇にポイッと山なりに投げ、紅葉を抱きーー抱えるのは疲れるからおんぶする。あ、莇の骨が嫌な音を……


「ちょっ、いきなり投げないでください!」


「いや、そもそも投げちゃダメデスよ……」


しょうがない。この方が楽だった。


「失礼しまーす……」


紅葉部屋に入るのは何度かあるが、未だにそーっと入ってしまう。


「奏士……」


呼ばれた気がしたが、紅葉は寝ている。なんだ寝言か……


いや、ということは俺関係? 何見てんの?


「奏士の……小さい」


何が小さいって? 器? 器だよな? 息子じゃないよな?


「あぁもう涎垂らして……」


そばにあったティッシュで紅葉の口元を拭う。こいつ結構良いティッシュ使ってんなー


「む、むぐ……」


「ティッシュ食べないの。ペってしなさい」


紅葉が寝ぼけて噛み始めたティッシュを取ったら代わりに俺の指を甘噛みされました。いや、普通に噛まれた。だって少し痕残ってる。


「…………」


何となくイラッとしたが、なにかすることも出来ず部屋を後にする。ふぅ、耐え切ったぞ俺。


「……ん?」


自室に入った瞬間、スマホが振動する。なんだまた迷惑メールか? そんなにハンドクリーム推されても要らねぇよ。


と、思ったがどうやら泉ちゃんからのLINEだった様だ。そういやさっき交換したっけ……


『今日はありがとうございました』


ふむ……これってどう返せばいいんだ? いえいえ? いや、これだとなんか堅苦しいしどっちかってーと年上相手のような……あ


『楽しかったかいお嬢ちゃん』


うん、このハードボイルドスタンプなら問題無いな。


『楽しかったよパパ』


かわっーーいや、違う。これはあくまでスタンプだ。泉ちゃんが俺に対してパパ呼びしている訳では無い。


それにしてもパパ、か……家庭を持つことなど有り得ないと思っていたが、泉ちゃんなら娘に欲しい。


えっと……次はどう返せす? うーん……


『それなら良かったぜ我が娘よ』


……毎回思うんだけど、俺なんでこんな都合のいいスタンプ持ってんの?


えっと次はーー


『奏士さんはどんな女性が好みですか?』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今日は奏士さんと久しぶりに再開した。お姉ちゃんに言われてサプライズとしてちょっと時間は空いたけど、成功して良かった。奏士さんは昔と変わり無くて、あの頃のまま頼りになるお兄ちゃんだった。でも、奏士さんの周りに二人も綺麗な人が居たのはびっくりしたなぁ……しかも、学園一有名な生徒会長さんと、最近転校してきて瞬く間に有名になった外国の人。二人ともとても綺麗で、可愛くて、その……む、胸も大きくて。私もあんな風に馴れたら、奏士さんも私を女の子として扱ってくれるのかな? でも、私の身体は何時までたっても成長が無い。どうしたらあんな風に成れるのかな……そうだ、奏士さんにお礼言わなきゃ。


「えっと……今日は、あ、り、が、と、う、ご、ざ、い、ま、し、た……送信、で大丈夫かな……」


今日交換したLINEに初めて送ってみた。スマホはまだ使い慣れて無いけど、これで大丈夫だよね?


「わわっ!」


一分ほどたってから、奏士さんから返事が来た。何やらタバコを咥えたハードボイルドなおじさんが『楽しかったかい?』と聞いているスタンプだ。えっとこれはどう返すのが正解なんだろう。「楽しかったです」それだと硬すぎる気がするし、『はい』だけだと素っ気ない感じがするし……あ、そうだ


前に友達に勧められて買ったスタンプを送ってみる。すると即座に返事が来た。


『それなら良かったぜ我が娘よ』


と、今度は何やら渋い見た目のお父さんスタンプが返ってきた。奏士さんはよく、困った時はどこからか状況にあったものを差し出してくれるけど、こういうのってどこから仕入れてるんだろう。えっと次はどう返せば……えーっと、えーーっと……


どう考えても次の話題が思いつかない。このままだと『ろくに話題も作れないつまらない女』とか思われたりしないかな? 奏士さんならそんなこと無いと思うけど、もしそう思われたら……


そう思った瞬間、意志とは関係なく指が動いて、気づいた時には送信してしまっていた。


『奏士さんはどんな女性が好みですか?』


わーっ! 何やってるの私! 早く気づく前に消さないと!


と、あたふたしているうちに既読が着いてしまった。終わった……私明日から奏士さんの傍に居られない……


私が明日からのことを考えていると、通知音が鳴る。奏士さんは一体どんな反応をしたんだろう……軽蔑かな? それとも、ドン引きかな? 戸惑いならまだマシだけど……


『遠くに居るけど近くに居る、近くに居るけど遠くに居る。要は、どこに居ても同じで、気を弛めることが出来て安心できる人。今も身近』


……えっと? これはどういうことだろう。遠くに居ても近くて……? 私勉強できる自信が有るけど、これの意味はよく分からない……どういうことなんだろう……


「遠くにってことは引越しとか、遠距離恋愛ってことかな? それでも近くに居るってことは、国内か、それとも直ぐに連絡できる手段が有る場所か……それで、次の近くに居ても遠くに、の部分は逆ってことかな? でも、その後のどこに居ても同じってことは何時でも会えるってことだから、やっぱり国内で、それも意外と近い……ということは同じ県ってこと、だよね」


ということは『近くに居るけど〜』の部分の意味は気軽に会えないとか、そんな意味じゃないかな。


「そして最後の安心できる人、かぁ……」


奏士さん今も昔も常に気を張って休む暇が無さそうだったなぁ……そういう意味では、癒しを求められる人ってことかな?


「つまり、今までの答えを合わせると……」


奏士さんの身近で、お姉ちゃんは外すとして、引越し……私前に引越ししたっけ。それで奏士さんと一回離れ離れになったんだっけ。奏士さんは、あの時した約束を覚えてくれてるかな……


「いけない、まずはこっちに集中しないと」


えっと、それで『気軽に会えない〜』の部分、私前は入院していたから確かに気軽には会えない。奏士さんも一回か二回お見舞いに来てくれたけど、忙しそうだった。


そして最後の安心する人……そういえば、昔お父さんとお母さんが仕事で忙しかった時はよく奏士さんとお姉ちゃんが一緒に居てくれたけど、奏士さんはよく「安心する」って頭撫でてくれたっけ……それで今も身近だからーー


「えっと……奏士さんの好きなタイプって、私?」


そう考えると顔が熱くなってくる。良く考えれば全て私に当てはまる。


「いや、でもこれくらいならかなりの人が当てはまる筈だし……それに私の解釈違いの可能性も有るし……」


そう、本当のことは分からない。だってこれはあくまで奏士さんの言葉を私なりに解釈しただけだから。でも奏士さんってあまり人と接しないから身近な人って限られてるし、でももしかしたらあの二人以外にも居るかもしれないし……


「でもーー」


もし、もしもだけど


「奏士さんの好きな人が私だったら……」


そう呟きながらベッドにうつ伏せになって小物置き場の写真立てを見る。


「……ふふっ」


そこには、昔一度だけ撮った奏士さんとのツーショット写真が飾られていた。今日の写真と見比べてみると、やっぱり奏士さんはとっても大きくなった。私は昔とあまり差がない。


「このままだと、親子に思われちゃうのかなぁ……」


街を二人で歩いていると、道行く人からそう聞かれている風景を想像する。奏士さんと二人で歩いているのは悪くないけど、親子に思われるのはなんだか嫌な感じがした。


「泉ー! ちょっと手伝ってくれなーい?」


キッチンからお母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。早く行かないと。


「あ、はーい!」


そう返してベッドから降りる。そして部屋から出る最後に再び写真立てを見てーー


「今は後から付いて行ってるだけだけど」


いつか並んで歩けたら良いな、と小さく、誰にも聞こえない程度に呟いて私は部屋を出た。ベッドの写真立ては一つ増え、今日の写真が飾られていたーー


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「さて、泉ちゃんはわかるかねぇ……」


泉ちゃんから唐突に来た返信。一瞬何事かと思い、「いっそ今のうちに告白しちまえ! そして振られて絶望しろ!」と天使が話しかけてきたが、泉ちゃんのことだから急な告白は振られるのが明確だし、そもそも俺のは恋愛感情的な好意じゃなくて、こう……人としての好感だから無理。流石に無関係な人の思いを踏み躙るようなことはしない。というかはよ消えろ邪神。


あ、ちなみにあれの答えは解るかな? 勿論、答えは『二次元』でした。


『遠くにいるけど近くに居る』この部分は遠くに(他次元)に居るけど近く(身の回りは二次元だらけ)に居る。


『近くに居るけど遠くに居る』この部分はその逆で、身近にありふれてるけど俺たちは二次元にいけない。


『どこに居ても同じで』はさっきも言ったように、越えられない次元の壁が有るという意味。


『気を弛める〜』は二次元の美少女は、最初の範囲内以外で俺を裏切ることは無いから。全てを知って対応できる、不測の事態が無いから安心出来ると言うこと。


……これ、解釈しだいで誤解されないか? まぁ解釈は人それぞれだから。


「な〜〜〜」


お、重政か。疲れたからもふらせろ。


「にゃー」


重政の前に座って、前足を握って上下に動かしながら肉球をプニる。めっちゃあったけぇ……


「重政は好きな猫か人は居るのかえ?」


「んなーーう」


そうかそうか「少なくともお前以外」とは泣けるぜ。


「今のは異性としての恋愛感情抜きにして、親愛とかそんなんでも良いんだぞ?」


「ぬぁーご」


「尚更お前以外」とは舐めてるな? さては俺の事下に見てるな?


「ソージー!」


と、部屋の扉をノックしながら俺を呼ぶベルの声が聞こえる。「あいよ」と返事すると、部屋着に着替えたベル、莇、紅葉の三人が入って来た。


「なんだよ大人数で。カチコミか?」


「違います」


「じゃあガサ入れか?」


「……違う」


莇と紅葉が答えてくれたけど、じゃあ何用だよ。俺は今重政に対して殆ど無いであろう威厳というか立場というかそんな感じのふわっとしたやつをだな……


「遊ぶデース!」


「お前まだゲームする気かよ」


さっきまでゲームコーナーで遊びまくった後だろ。


「それはそれ、これはこれ、家には家の良さがあるデスヨシャイボーイ?」


「誰がシャイボーイだ。つーか今日明日までの課題出てただろ」


割と成績的に響く課題が出てます。


「私はクラス違うから問題無い」


「私も別に大した障害ではありません」


「えぇっと……明日見せてもらうからダイジョブデース!」


いや、アウトだよ。


「まぁベル一人留年しても説教食らっても俺には問題ないしな……で、なぜ俺の部屋?」


「……最初はリビングで遊ぼうと思った」


「ですが悠殿はまだ寝ていますし、三人だと全員で遊べる作品も限られてきます」


「つまりはソージも入れて四人で仲良く遊ぼう作戦デス!」


「そうか、本音は?」


「「「一番画面が大きいのがここだから」」」


「舐めんな」


だったら俺いらないじゃん。モニター貸すからどっか行け。


「アーソーブーデースー」


「離れろ体液まみれの顔を近づけんな」


鼻水と涙だらけで引っ付いてくるベルを何とか服に付かないように手で押さえつける。


「まぁまぁ、先程も申した様に、あの様な大きな場所で遊んだ後は家で遊ぶようなゲームが恋しくなるというものです」


「お前そもそもゲームで遊んだ事無いだろ」


デスゲームならやったことありそうだけど。主に主催者側で。


と、肩に置かれた莇の手を振り払って足にしがみつくベルを蹴り飛ばそうかと考えていると、服の裾が引っ張られる。これは紅葉か……


「……遊ぼ?」


「……近い」


こんな至近距離で言われると恐怖を感じる。というか何も見えない。


「分かった、遊んでやるから一旦全員離れろ」


「「「御意っ!」」」


なんだコイツら。馬鹿なのか?


「それで、何すんだ? ○ァミコン?」


「それ二人用じゃないですか……」


「……遊べるの?」


「遊べる。現役だ」


「ちょちょちょー!」


紅葉にコントローラーを渡そうと棚からファミコ○を探していると、ベルの横入りが。


「何、なんなの急に大声出して」


近所迷惑でしょ。一番近い家で数百メートル離れてるけど。未だになぜこんな住民以外人が殆ど来ないような場所を集合場所にしている人が時々居るのか分かんない。それより目立つ前のセイミヤ辺りに集まれよ。


「み・ん・な・で、遊ぶデス!」


「分かった、四人で遊ぶやつ出してやるから離れろ唾が飛ぶ」


実際ちょっと飛んだ。コラ重政、そんなばっちいもん舐めちゃいけません。いや、完全にこいつ理解してやがる。この唾の価値を。


というわけで最初は全員参戦で有名な対戦型アクションゲームをやることにした。ベルがノーパソを接続してエロゲーやろうとしたけど全力で止めた。それは一人でやるもんだろう。


「奏士は……ガノン?」


「扱いやすいからな」


一番使い慣れてるし。


「さぁ、レッツパーリィー!」


ベルが拳を上げる。うるさい。


「「いえーい」」


「冷てぇ……」


そこは最後までのってやれよ。俺は嫌だけど。


その後、夜中まではしゃぐ声が響いた。




「……あっ! 課題忘れたデス!」


「だから言ったろ」

今回は第三部最終回です。ちょっと長くなりました。でも満足してます。泉ちゃんのそれは恋なのか願いなのか……次回、第四部をお楽しみに

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