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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
第三章 三回目ともなるとだんだんめんどくさくなってくる
26/133

四次元ポケットの真似事をすると服が重くなる

今日もいい朝だ目覚めは悪い。だって眠いもの。この隈と顔色が全てを物語ってる。


そういや隈で思い出したけど、最近は悪夢を見ないな……以前は十回中七回くらいで見てたのに、紅葉達が来てからは五回に減ってるな。それでも半分は変わりないけど。


これも、誰かと過ごすことの影響かね……少なくとも、あいつらはまだ波長が合う……と言うよりかはお互い利害の一致で居るから楽っちゃ楽。それ以前にこの俺と長期間一緒に居るってかなりすごいことだぞ。


ただ、悪夢を見る回数が減った代わりに胃痛とか頭痛とか多くなったな……うん、あんまし変わりねぇな。くっそ眠いし。


それでも朝は早く起きて家事をするのが主の務め。「そんなに眠いならアニメ見てないで寝ろ」とか言うのは野暮ってもんだ。アニメはリアタイと配信とDVDで観るだろうが。Blu-ray? ああ、俺DVD派なんで。一応持ってるし、ちゃんと観れるけど。あとBlu-rayって画質良いけど高いじゃん。金が無いんだ。


今日はゴミ出しもあったっけ。全員前日にゴミ袋に入れて置いたよな?


……え? 今日は日曜日だって? そんなもんキンクリですっ飛ばしたよ。だって俺、本当に一日中掃除してただけだもの。あ、瑠姫さんはもう帰った。平和だ……


背伸びして、目を覚ましてからまずは洗濯機を回して、その後は着替えて道場へ。


我が柳家には、まだ隠された場所がある。その内の一つが、『柳流攻護術道場』である。要は、攻める為の格闘術や、護る為の格闘術、果ては剣術柔術杖術etc……なんでもやる道場だ。なぜそうなのかは、『全てを支配し者、真の勝者となる』というモットーの為であろう。あとは在り方として、『頬を打たれたら顔面を殴り、腕の骨を折られたら首の骨を折り返す、因果応報倍返し、何時だって受けた以上の報いを』と、大きく壁に書かれている。その姿勢、俺な好き。なお、門下生は俺といもうとの二人だけ。悠ちゃんは体験数分で音を上げた。全く運動不足め……


そして今現在、師範代の爺さんは死に、門下生のいもうとはここにはおらず、引き継いだ俺は師範代ではあっても教える人は誰も居ないから俺の鍛錬場と成り果てている。だから、そこらにありとあらゆる武器(模造品)や、トレーニング器具が置いてある。なんでこんなの作ったのか未だに謎。真実は闇の中。正しく、『真実はいつも秘匿』と言うやつだ。いや、俺も知らねぇから秘匿にしてんのはウチのジジイなんだけどさ。


一応道着は来ているものの、正直段位とか関係無しだから帯の色は白だし、道着自体も割とぼろぼろである。他の人が見たら「みすぼらしい」とか言うのだろうが、俺は気に入っている。ほら、ボロ布纏ってる系って絶対強いじゃん? そしてなんかカッコイイじゃん? 俺はダメジンとか絶対履かないけど。


そして鍛錬を初めて十分程経過した頃、道場の扉が開いた。道場破り?


「おぉ、この家はこんな物まで……」


「……なんだてめぇか」


現れたのはスポーツウェアを着た莇だった。あらお久しぶりの登場で。


「何しに来た」


「いえ、朝のランニングから帰ったら、何やらこちらから音がしたので」


そうか、こいつが朝居ないのはこういう理由か。待てよ? 一昨日は朝普通にベルと寝巻きで出てきたよな……もしかしてもう一回寝たのか?


「寝起きのランニングは危ないらしいからやめておけよ? せめて、何か食ってからにしておけ」


「大丈夫です。この『ぎょにくそうせいじ(何故か幼女ボイス)』を食べてますから」


そう言いながら、莇は懐から取り出す。あっ、はい……え、魚肉ソーセージを言い換えるの流行ってんの? 俺も人のこと言えないけど。


「ここは俺のーー我が家の道場だ。使いたければ好きに使え。どうせ盗まれるものなんて一つも無いから鍵は開けておく。換気と手入れさえしてくれれば、自由にしていいぞ」


まぁ、そもそもその盗っ人はこの家の敷地内に入った瞬間にお陀仏になるかもしれんが。大丈夫、頑張れば怪我だけでで済む。


「それはありがとうございます。では早速……」


そう言うと、俺が逆立ち腕立て伏せしている隣で、こいつも同じことしだした。


「……何、してんの?」


「いえ、ご自由にと仰っていたので」


「いや、離れろよ。汗だくの野郎と隣同士で居たくない」


あと野郎の汗は臭い。臭いのは嫌だ。くちゃいのも嫌だけどそれを幼女が言っているのは嫌いじゃない。二次元限定で。


「まあまあそう仰らずに」


えぇ……俺はどうすればいいんだよ。さっさと百回終わらせよう。


「ふっ……ふっ……」


「っくぅ……ふぅ……」


そして広いこの空間に、男二人の息遣いだけが響く。何だこの空気。とりあえず字幕に出したら誤解されそう。


「っ……ふぅ。終わりっと」


「私もっ……これでお終いです」


何時もより急がせたのにこいつも同じタイミングで終わりやがった。


さて、無視して次に移ろう……


今日は……短剣と片手棒術にするか。端的に換言すれば、ただ木製のナイフと単管を振り回すだけだ。だってほぼ喧嘩術だし。


「ここの模造武器はお借りしても?」


「好きに使えー」


一声返事して、まずは基本の型。そのあとはイメトレ。


「ふっ、ふ、はっ、は!」


「……」


無言で何をしているのかと振り返って見ると、丁度木製警棒を振っていた。あんなのもあったのかこの家……


ま、問題起こさなきゃ無視でいいか。再開しよ……


その後、久しぶりにした気がする会話と、途中何故か始まったルールほぼ無視の戦闘などで小一時間程一緒に過ごすことになった。なんて日だ。しかもなんの仕掛けも小細工も無いただの練習試合だから負けたし。やっぱり真っ向勝負は弱いな……


そして、鍛錬を終えた俺たちはすっかり汗だくだが、俺は今から風呂に入る時間が無いから汗ふきシートで我慢する。あいつはシャワーを浴びてくるそうだ。


……う、ちょっとベタつく。そろそろ夏場だし、もっと起きる時間早める必要があるな。一人暮らしなら朝昼くらい簡単に抜けるが、他に食べる人がいるとな……やっぱりめんどくせぇ。


で、俺は朝の家事を、ね。洗濯物も干さないと。ついでに干さないと。誰とは言わない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ふぅ、こんなものか。


弁当良し。洗濯物良し。朝飯良し。着替え良し。隣のゴキブリよ「死ねぇ!」


すぐ傍を彷徨いたゴキブリは即座に釘を投げて動きを封じてから冷凍スプレーで凍結処分しておいた。己ゴキブリめ……貴様はいつもいつも俺の邪魔をする!


そうして、俺が消毒作業をしている間にベル達が起きてきた。釘は消毒液に漬けてある。何故釘を取り出せたのかって? そんなもん、エプロンにホルダーを取り付けてあるからに決まっているだろうが。これでゴキブリを発見次第、即座に動きを封じられる。超画期的。難点は、釘を正確に投げられる技術を求められること。


「ソージィ……おふぁほよぉぉぉぁぁぁあ」


「おはよーさん。挨拶と欠伸は分けてやろうな」


「おはようございます、奏士殿」


「さっきもあっただろ……」


そういや、二人は兎も角紅葉が見当たらない。悠ちゃんは昨日瑠姫さんと家にかえったし……帰り道、襲われなかったかな。瑠姫さんに。あの人波の暴漢くらいなら対処できそうだし。


「紅葉は?」


「クレふぁぁぁはしぇはやないれすくぁぁぁぁぁぁ」


ベルが答えるが、その答えはやはり予想通りで……いや、何言ってるのか聞こえなかったけど、リズムと語感から察するに多分「部屋じゃない?」って言ってるんだろうな。


「……ちょっと起こしてくるから先食ってろ」


そういう残して、紅葉の部屋へ。気分は寝起きドッキリ。


「紅葉ー 紅葉さーん。起きてるかー?」


ノックをしても返事がない。ただのねぼすけのようだ。


また寝てるのかと思い、扉を開ける。するとやはり、机に突っ伏して腕枕で寝ている紅葉が。


恐らく、寝落ちするまで原稿描いていたのだろう。今日が休みなら、このままおやすみと行きたいが、あいにくこいつが「眠いから欠席」とかになったら俺の明日が無くなるので、ここは心を鬼にして起きてもらおう。ペンネームも鬼だし。おもんな。


「おい、紅葉〜 起きろー」


揺すっても呻くだけで目覚める気配はない。


「おーい! 紅葉ちゃーん! 起きなさーい!」


声を大きめにして起こす。


「う、うぁ……煩い」


「やすつなぁ!」


紅葉が寝ぼけて振るった超速の裏拳が丁度……俺の童子切に……俺も鬼だけど、こいつも鬼だった……あ、伊吹童子ならもしかしたら俺のは布都御魂剣か……もしくは名前違いで天羽々斬……どっちでもいい! この痛みが治まるならば!


「……うるさい。……? 奏士、何してるの?」


目覚めた紅葉が、目を擦りながら下でキン○マを抑えながら蹲ってる俺をぉぉぉぉぉ! また痛みが来たァ!


「い、いや……ちょっと化け物退治に失敗してな」


震える声でそう返事することしか俺には出来なかった。


「そんなにビクンビクン震えて……人の部屋で絶頂を迎えるのは辞めた方が……」


「そんなことしてない……」


「その羞恥オ○ニーはしない方がいい」


「言ってることが分からないって意味じゃない……」


あ、どんどん痛みが引いて……心做しか青空が見える。


ーーーーはっ! 危ない危ない。危うく昇天するところだった。まだ頭もキ○タマも痛いんだけどさ。あと脇腹。


「も、紅葉……早く顔洗って歯ァ磨いて……め、飯食べちゃいなさい」


「……ご飯」


即座に紅葉は居なくなった。


そして俺はしばらく動けなかった。畜生朝飯食う時間殆どねぇじゃねえか!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


バタバタしながら大急ぎで学園へ。俺が駐輪場にチャリを止めて戻ってくると同時に、ベル達も正門からやって来た。意外と早かったな。


「もうソージ、先に行くなんて酷いデスよ……」


「と言うか、お嬢様は疲れ過ぎでは?」


「……お腹減った」


朝からやかましい奴らだ。そして紅葉、お前またか。とりあえず、このドーナツあげるから持ちこたえなさい。


「ドーナツ……うまうま」


「俺の手まで噛むな」


ちゃんと歯磨きか、それか最低でもよくうがいはしなさいよ? 口の中ベタついちゃうから。それと、よくも俺の手を噛んでくれたな。今のところ、俺の中でのお前の評価は『ハイスペックなハングリー電波ガール』だぞ。なんだよその立ち位置。


紅葉を手懐けて昇降口へ向かおうとすると、こちらへ走ってくる足音が聞こえた。まだ余裕で間に合うというのに……


「そ、奏士さん……」


っ! この微かに聞こえる俺を呼ぶ可愛らしい声は!


その正体の答え合わせのため全速力で振り向くと、そこには俺がこの世一、全生命で重政と並ぶ最重要指定している我が愛しのいもうとが! やっべ、首と腰の関節やったかも。


門に寄りかかって息も絶え絶えだが、間違いなくこの少女はいもうとだ! だって可愛いもん! 俺がこの世で唯一そう口にするのはいもうとだけだもの!


ようやく息も整って来たのか、顔を上げる。うん、間違いない。


かかった長く明るい茶髪に、大きな双眸、144cmという平均より低めの身長と、とんでもなく溢れ出る全てを包み込む優しきオーラ(これは俺にのみ可視可能)


我が愛しのいもうとよ!


そう思い、いもうとのいる門まで全身の筋肉と脳をフル活用し、全速力で走り出すと余計な者アリコンまで着いてきやがった。


なので、背後に回って背中に跡を残すように蹴り飛ばすと、見事に転げ回るが、上手く受身を取られて逆に足払いを食らった。


俺はそれをジャンプして交わし、そのまま脳天へカカト落としを決める。


「くぺっ!」


その一撃が上手く入り、ノックダウンしたこいつに念の為にと死体蹴りを五回ほど行った後、再び全速力でいもうとの元へ。


「泉、ちゃん?」


「はっ、はい! そうです……逆無さかなしいずみです……」


うん、間違いない。このちょっと人と話すのに慣れてない感じ、この声、この泉ちゃん特有の近くにいるだけで何かが回復していく感覚……本物だ!


「え、ええと……」


さぁここで問題! 俺は久しぶりに出会ったいもうとの対応に困っている! ここはハグするべきか? でも人前だしな……ならば頭を撫でるか? それは人を選ぶ。女は頭を撫でられることはある程度高めの好感度が必要だと聞く。そして、俺の好感度を知るよしはない!


「お、お久しぶりです……奏士さん、大きくなってます」


……泉ちゃん、そのセリフもう一度言ってくれない? 今度はもっと高性能なやつで録音するから。この音声データはプライスレス。


「い、泉ちゃんこそ……観ないうちに立派になって……」


あれ? もしかして俺のラブコメはここで始まるのか? ベルはただの負けヒロインで、メインヒロインはここに居たのか……


「ねぇねぇ奥さん聞きました〜? あの男、いつも以上にデレっとしていますよ」


「ソージはあんな娘が好みデスか?」


「奏士……その娘誰?」


なんか背後で井戸端会議的なことやってるけど、うるせぇてめぇら。俺は今人生のピークかもしれねぇんだよ。 後、お前男だろ。何マダムのフリしてんだ。そして復活早いなおい。


あと紅葉よ。もしかして俺の分のドーナツまで食べてないよね? ね?


「えっと……泉ちゃんなんでここに? 入院してるって聴いたけど」


前にも説明したが、泉ちゃんは昔から身体が弱くて入院が多かった。全寮制のところ行っていると言ったが、ぶっちゃけ殆ど行けていなかったらしい。入院中に勉強はできたから成績こそ悪くないものの、「学園生活」とやらはあんましできなかったらしい。


「え、えへへ……見て分かりません?」


泉ちゃんがはにかむ。何もかも護りたい。守りたい。そうだ、うちに嫁に来ない? 衣食住以外も満たしてあげられる自信……はそんなに無いけど。ダメだなー


「見てって……俺は誰よりも泉ちゃんのことを観てるけど……あ」


あ、よく見たら着ている服が宿学ウチの制服だ。


「もしかして泉ちゃん……」


俺がそう言うと泉ちゃんはベルなんて足元にも及ばない程の笑顔になり


「はい……実は、ここの一年生なんです」


「え、ええ……いつの間に」


「お姉ちゃんには黙っておいて貰ったんです」


お姉ちゃん……ということは悠ちゃんか。まじかよ悠ちゃんこんなサプライズを隠していやがったのか……今回だけ許ぅす!


「え、えーっと」


と、話と頭に花を咲かせていたらベルが割って入って来た。ちっ、なんだよやかましい。せっかく俺が泉ちゃんとの青春ラブコメを始めようかと思っていたのに。始まらない? マジで? ちょっと神に直訴してくる。ちょっとどーゆーことやねん創造主。出てこいコラァ! 開けんかいコラァ!


「ソージ……その娘は誰デス?」


と、俺が想像の中でどこぞの府警のように謎の扉を叩いていると、ベルが近寄って来た。


違ったこいつヤキモチとかじゃなくて泉ちゃん目当てで気やがった。そういやこいつ半両刀だった。心做しか、泉ちゃんを見る目がちょっと怪しい。これこれ、泉ちゃんを性欲にまみれた眼で観るな。


そして、突然の参入にびっくりしたのか、泉ちゃんは兎のように縮こまって俺の後ろでプルプル震えている。俺も震えそうです。ソウルが。魂を、震わせろ!


「落ち着け、そこから一歩でも動いたら蹴り飛ばす。見ろ、お前が驚かすから泉ちゃん震え上がってるじゃねぇか」


「おっと! これは失礼シマシター!」


だからそれが原因だって。泉ちゃん初めて見る外国人にビビってるよこれ。泉ちゃん大丈夫だ。こいつ見た目が外国人なだけで、中身はただのバカだから。いや、ただのバカじゃない。こいつは近年稀に見る特別種のバカだ。


「とりあえず、ここではなんだから一旦生徒会室に行くぞ。泉ちゃんも、それで良い?」


俺はしゃがんで、震えて俺の制服の裾を掴んでいる泉ちゃんと同じ目線にしてから問う。前に本で『女の子と話す時は同じ目線で』って書いてあった。


「はっ、はい……奏士さん、がそれでいいなら」


ビクビクしながらも、はっきりと答えてくれるから泉ちゃんは好感が持てる。めっちゃ好感度爆増する。既にゲージ振り切って大気圏突き抜けてどっかの惑星に当たってるけど。


あ、やっべ。今の上昇で惑星串刺しになった。めっちゃ団子みたいになってら。俺の想像力ってすげー


と、言うことで五人で生徒会室へ。どういうことだ。


「あ、改めまして……逆無泉、です」


泉ちゃんが自己紹介をした後、ぺこりとお辞儀をする。可愛い。


『おぉ〜!』


「ん゛、んんんー!!!」


そして俺以外の全員からの歓声。なお、さっき蹴り飛ばした変態は厳重に縛り付けて猿轡と手枷をしてある。貴様は近付けさせない。


「奏士、この可愛い娘は一体何者? 人外?」


紅葉、お前の気持ちはよぉーく分かる。とても人とは思えないよな。人とは思えない可愛さと癒しのオーラだよな。


「ソージ……いえ、お義父さん! 娘さんを僕にください!」


「ならん! ワシの目の黒い内は、泉はどこにもらやん!」


キャラも忘れたのか急にカタコトが無くなったベルは、いきなりとんでもないことを言い出した。そして俺は腕を組んで父親あるあるで答える。いや、父親じゃなくてお兄ちゃんなんだけどさ。


「そ、奏士さんが私の事を呼び捨てで……」


ちょっと照れてる泉ちゃん。可愛い。やっぱり俺のところに来ない?


そして俺が気を抜いた一瞬の隙に、泉ちゃんの元で片膝をつき、胸に手をやって跪いているハイスペックド変態。


「泉……なんと良いお名前。これからは泉様と呼ばせて頂いても?」


「え、えっと……奏士さんっ」


突然現れて迫ってくる見知らぬ男に戸惑って震えながら寄ってきて、俺の背中に隠れて裾を掴む泉ちゃん。先程まで縛り付けておいた場所を観ると、解かれた縄と手錠と針金が。やっぱり持ち合わせが無いからって玩具の手錠じゃ甘かったか……いや、仮にもボディガードを自称しているのだし、開け方も理解しているのだろうか。


それにしても貴様……泉ちゃんによくも……


「てめぇは一生眠ってろ!」


「あぱっ!?」


泉ちゃんに少しの間だけ手を離してもらい、目の前の生き物に飛び蹴りを食らわす。上手く決まって吹っ飛んだ。


「青葉ぁー!?」


「……飛んだ」


紅葉とベルがピクピクしている生物だったものを謎の棒切れでつんつんしている。そのままそれぶっ刺せ。


「あんにゃろ……次やったら存在そのものを消してやる」


靴が少し汚れた気がするが、これしきのこと大した問題じゃない。


「奏士さん……乱暴なことしちゃ、めっ! です」


「ごめんなさい」


泉ちゃんに怒られたので素直に頭を下げて謝る。こんな時でも泉ちゃんは可愛い。


「ソージ……いつも以上にデレデレしてるデス」


「……珍しい」


青葉の死体つんつんに飽きたのか、こちらに来て泉ちゃんをハグして撫で回すベル……と、その光景をじっと見つめて連写であらゆる角度から写真を撮る紅葉。ベルは台詞と行動が会ってないぞ。紅葉はその写真後で送って?


「へ!? あ、あ……」


そして泉ちゃんは、突然のスキンシップに驚いて顔を真っ赤にしてまるで魚のように口をパクパクさせている。これこれ二人共……俺も混ぜなさい。


だがしかし、ここは頼れるお兄さんを演出するためにも、欲を抑えて二人を引き剥がす。


「ほらほらお前ら、俺のいもうとから離れろ」


「ああん!」


「……いけず」


変な声を出すな。


「奏士さんっ!」


パタパタと俺の元に来て背中に隠れる泉ちゃん。


「……前から思ってたけど、奏士、その娘を″妹″って……」


「ああ、″いもうと″だ」


お互いに無言が生まれる。なんかズレてる気がする。


「でも、苗字が違うデスよ?」


ベルが疑問を投げ、


「もしかして義妹?」


紅葉がぶっ飛んだ回答をあげ、


「いや、従姉妹の可能性も有るかと」


生きとったんかワレ。気絶するほど蹴ったのに。


「もしかして拾い子を妹呼びしている!?」


「調教プレイ!」


「イエーイ!」


うん、あのね……盛り上がってるところ悪いとは思わないけどさ……


「俺と泉ちゃんに血の繋がりも、戸籍上の繋がりもねぇよ」


確かに髪の色なんかは同じ茶髪で、よく懐いてくれてる(と、俺は思ってる)けど、泉ちゃんは明るい茶髪で軽いウェーブがかかってて俺は黒に近い……ダークブラウンって言うのか? 焦げ茶色でストレートだ。長さも、俺は肩甲骨までに対して泉ちゃんは太ももまで届きそうなくらいある。それに、俺にアホ毛は無い。泉ちゃんにはちょこんとある。


どっちかって言うと、泉ちゃんに似ているのは俺じゃなくて悠ちゃんだろう。髪色も、身長も、アホ毛も。姉妹なんじゃないかってくらい似ている。性格は似てない。


「それなら、なんで″いもうと″って言ってるデス?」


「『″い″つ″も″隣に居て、″う″そみたいに可愛くて″と″んでもなく優しい女の子』略して『いもうと』だ」


「……紛らわしい」


「結局、ただのヒロイン候補ってことデスネ」


二人がジトーっとした目で見てくる。そんな目で俺を見るな。


「いいや違うぞベル。この娘はメインヒロイン候補だ。お前みたいな降格ヒロインとは訳が違う」


「なんですとっ!?」


驚いたベルは俺に脳天チョップを繰り出そうとしたけど、これくらい難無く避けれる。


「……いって」


避けたつもりが、目測ミスって肩に当たった。ズキズキする。これまともに食らったらどうなってたんだろ……


……なんかまた肩外れた気がする。一応処置しとこ。


「……」


「どうした紅葉。泉ちゃんをじっと観て」


ただでさえ紅葉は表情変化が少ない。いや、結構変わってる気がするが、それでも一般基準で見れば少ないだろう。そして、そんな紅葉にじっと見られている泉ちゃんは、どうすればいいのかわからずプルプルしている。


「……」


「ふえっ!? あ、あのの紅葉さん!?」


何を思ったのか、紅葉は泉ちゃんをそっと抱き寄せて頭を撫で始めた。泉ちゃんも最初は戸惑っていたが、徐々に警戒が緩んで紅葉の腕の中で安心した表情になっている。いいなぁ……女同士ならあんなスキンシップも合法だから。ちょっと、俺も泉ちゃんにハグしてもいい? いや、俺は止めとこう。あくまで俺は頼れるお兄ちゃんポジに居るべきだ。


それにしても、人一倍警戒心が強くて人見知りな泉ちゃんをあそこまで……紅葉、貴様やりおるな。


そして、この神聖な百合百合シーンを邪魔するなよベル。お前さっきから何「ワタシは何時でもバッチグー!」みたいにしてんの? お前如きが入っていい領域じゃない。このイベントCGはスクショしておかないと……


と言うか……紅葉、お前ちょっと昇天しかけてね? 気の所為だよな。紅葉から何かが抜けていくように見えるのは気の所為だよな。『愛する人の腕の中で死ぬ』なんてのは多々あるけど、『天使イズミエルをハグして撫でたら尊死』なんて聞いたことが無い。あっても困るけど。


「はい、ストーップ。そろそろ離れような紅葉。魂戻しとけ」


「……はっ」


紅葉が気付いた……と言うより、帰ってきたかのように目を開く。そうか、お前もそうなのか。


「気が付いたら、川を挟んで喧嘩してる老夫婦を見ていた」


奪衣婆と懸衣翁何してんだよ。そしてお前後ちょっとで死ぬところだったのかよ。


「それにしても泉ちゃん、今はどこに住んでんの?」


「い、今は家族全員とこの町に帰ってきて……」


そうか、泉ちゃん帰ってこれたのか。親父さんの仕事の都合で引越しってたけど……


「家族全員……ってことは、もしかして柚希ゆずきも?」


柚希と言うのは、泉ちゃんの弟で……いけ好かないクソ野郎のことだ。


「い、いえ……柚希はまだ寮に居るので……」


そうか、あいつ居ないのか……それなら良し。


「そうなのか。柚希は死体で帰ってくると良いな」


「へ?」


「ああいや、間違えた。無事卒業できるといいな」


割と本気で間違えた。それにしても、あいつ本当に卒業できるのか? 馬鹿だもの。身体は丈夫な癖におつむが弱すぎる。姉に全て持っていかれた絞りカス……


「な、なんか……ソージの闇を再び垣間見た気がするデス」


「……抱えてるものが深すぎる」


「きっとあの人ブラックホールとか有りますよ。あれだけ闇だらけだと、光とか吸収してますよ、絶対」


「うるせぇぞてめぇら」


ヒソヒソうるさい。黙っとれ。その口糸と針で封じちゃうぞ。


\キーンコーンカーンコーン……/


っと、予鈴だ。そろそろHRが始まるな。


「とりあえず、他にも聞きたいことが有るから、もし時間があったら放課後にまたここに来てもらっても良いかな?」


「は、はいっ! 向かいます!」


胸の前でグッと両手を握る泉ちゃん……とりあえず、写真撮っとこ。


それじゃ、そろそろ遅刻するから解散としよう。


「それじゃ、放課後に」


「はい!」


泉ちゃんが廊下の角に消えるまでそっと見送る……ああ、これで数時間は会えない。なんであそこでクラスと出席番号を聴いて置かなかったんだ! バカだ……バカタレだ。


「ほぇ〜」


「どうしたベル」


隣で泉ちゃんの消えた方を見ながらなんか驚いてる。


「いえ、あの娘あんなに可愛いのに全然作ってる感じがしないデス」


「当たり前だ。泉ちゃんはあれが素なんだよ。キャラ作りなんて必要ないほどに完成してんだ。シンプル・イズ・ベストってやつだ。いつの時代も、優しくて癒しをくれる娘ってのは人気も高いし需要もある」


そして、俺の知る限り懐いている男は家族を抜けば俺だけってのがまた良い。しょうがない。可愛い子に処女性を求めてしまうのは男の性ってやつだ。泉ちゃんは間違いなく未経験。そう信じてる。


小さくて、優しくて、可愛くて、人見知りで……可愛い後輩の誕生だ。良かったね。


「……あっ!」


急に大声を出すベル。


「どうしたよ」


「宿題……やってくるの忘れたデス」


「お前……」


期待の眼差しを向けられても、俺は見せんぞ。


とはいえ、教えるくらいのことはしてやろう。時間使ったの半分は俺だし。そこは責任取ってって感じで。


そして、時間が迫っていることを忘れ、教室まで走る羽目になった。




「……ところで、何食わぬ顔で一緒に居るけど、お前手続きは?」


「ご安心を、もう終わっております故」


「よく見たらスーツじゃなくて制服だもんな。ということはお前今日が初日か」


「ええ、合法ロリだらけのハーレム部活は無いですか?」


「知るか」


隣で走ってる変態は、今日も変わらずだった。と言うか初日の制服に靴後つけたのか俺。こいつが悪いな。

これで残すところ主要メンバーはあと一人となりました。早いですね。そして、第三部後半は泉ちゃんで持ち切りです。長いね!

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