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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
第三章 三回目ともなるとだんだんめんどくさくなってくる
25/133

犬猫のご飯は意外と美味い

瑠姫様……もとい瑠姫さんという厄介者の一時参入があったが、何事もなく家事を一通り終えて縁側でちょっと休憩中。無事に午後を迎える事ができてよかった……


「ズズズズ……」


こうして部屋の隣の縁側で茶を飲み、作った苺大福を食い、爺さんの作った鹿威しの音を聴き、重政を撫でる……ジジくさいかもしれないが、俺はこんな時間が好きだ。主に心の休息に。二次元等のオタコンテンツで取れる休みも大切だが、これも俺にとっては大切なのだ……


そういや、鹿威しの音は人によっては苦手だとか聞くけど、誰も言ってこないな……単純に聞こえてないのか、それと平気なのか……これ夜でもなってるからな。俺でも時々止める。


「な〜う〜」


「重政、お前も食うか? 大福はやらんぞ。猫はジャーキーだ」


「な〜」


そう鳴くと、重政は猫用ジャーキーをハムハム。美味いか。


「猫にカフェインはダメらしいから緑茶もやらんぞ。お前には少量の麦茶をやろう」


「ふな〜」


普段は割と反抗的な重政も、こういう時はかなり甘えてくる。いや、猫だから自由だとは思うんだけどさ……こいつあんまり撫でさせてくれないんだよな……それにしても今回の大福は上手くできたな。苺大福の旬は冬だと聴くが、美味いものは年中美味いよな。苺の旬は春〜夏だし。


「あら奏士、何してんの?」


「……」


俺の休息、終了の知らせ。瑠姫さんが現れましたよコンチクショウ。


「……別に、茶ァ飲んでるだけですが」


「あら、ちょうど何か飲みたい気分だったのよ」


「……じゃあ、この湯呑みを使ってください」


そう言って、予め用意しておいた瑠姫さん用の湯呑みに茶を注ぐ。俺は予測して対応出来る男。瑠姫さんがここに来る確率は極めて高かった。何故ならこの人は俺が嫌がるタイミングで現れるからだ。


「私の湯呑みがここにあることに今更驚きはしないけど……相変わらずね。お茶、ありがと♡」


瑠姫さんは、何故かウインクしてから湯呑みを受け取って俺の隣に座るけど俺も既に慣れているからスルーする。ギャグじゃない。


「ズズズ……やっぱり人が注ぐお茶は美味しいわね……あ、お茶請けもあるじゃない」


瑠姫さんは俺の許可も一切確認することなく苺大福に手を伸ばす。だが俺はこれも予想し、予め多めに作ってある。なんなら、紅葉が来ても足りる位用意してある。


「うんうん、やっぱり奏士の作る和菓子は美味しいわね。また腕上げたんじゃない?」


「……別に、二人の真似事してるだけですよ」


「それでも、よ。あの二人の味をこれだけ再現できてるんだし、かなり上手いわよ」


「……そりゃどーも」


味を再現、か。それならまだまだってことだな。到底、あの二人には追いつけそうにねぇや……


それにしてもこの人は何しに来たんだ? ここに来るには、俺の部屋を横切るか、態々回って来ないと来れないようになってるから態々来る人は居ないと思っていたんだがな……


「それはそうと、今月の原稿の修正部分はちゃんと直ってたからもう大丈夫よ。あとは、イラストさんとの細かい部分の確認だ、け☆」


「そうですか」


ところで何年も思っていたんだけど、この人は一々色っぽくしないといけないのか? 今も最後に星かなんかついてた気がするし。一番の問題点は俺に通用しないこと。


「後、今夜はカレーが食べたいわ」


「残念だが今夜は生姜焼きだ。居候の分際でメニューを強請るな」


「ぶーぶー」


頬を膨らませて唇を突き出してなんか囀ってるが、毎度思うがやかましい。俺には効かんと何度言えば分かるのだ。


「そんなこと言ってもダメです。カレーなら明日作るのでそれで我慢してください」


「ちぇっ、まぁそれならいいわ」


何とか承諾してくれたので、仕方ないが良しとしよう。この人は姉ぶる癖に反応や仕草がどこか幼い。なので、対処法はこちらが折れてどこかで受け入れることだ。こちら側に損が無い部分で了承すれば、お互いそれなりに得をするということだ。丁度献立考える必要があったし。


それにしてもカレーか……めんどくさくて作って無かったけど、久しぶりにそれもアリだな。問題は凝ってスパイスを使って作るか、お手軽に市販のルーを使うか……レシピノートどこに置いたっけ。


何はともあれ、この人も隣で大人しくしているなら方って置いてもいいだろう。俺も、下手に刺激して騒がしくしたくないし。重政が盗られたのは……重政が美人好きということで。でもな重政、お前寝返り過ぎじゃないか? 一応、お前と一番長く居るのは俺なんだぞ。


「にゃう〜♡」


「ほらほらー ここが良いの?」


「にゃふふ〜♡」


ちょっ、お前俺の時よりいい声で鳴いてない? 俺の気の所為だよな? な? そんな猫撫で声俺の時出て無かったよな?


俺が飼い主の意地というか兄(弟)の意地というか……なんかよくわからんものを解析しようとしていると、床を歩く音がした。害意は感じられない。こちらに向かってくるな。この足音のリズムはーー


「……奏士」


「やっぱりてめぇか」


角から現れたのはやはり紅葉でした。何しに来た。


\ギュルルルル~/


「……」


「……」


紅葉の腹から盛大な音が。腹減ってるだけかい。


「匂いを辿って歩いたらここに来た」


「……食うか?」


紅葉は無言で頷いた。皿を渡すと、即座に隣に座り、食べだした。そんなに食べたかったのか。ほれほれ、そんなに急いで食べると喉につまるぞ。お茶も飲みなさい。


……なるほど、こういうところもジジくさいのか。完全に孫をもてなすお爺ちゃんだな俺。


「ねぇ奏士〜 お茶〜」


そして孫二人目。この人時々年上なの忘れる……というか俺と長い付き合いを保っている年上は全員同い年か年下に思える。俺が年寄りなだけか?


俺の休息はどこかへ旅立ち、紅葉と瑠姫さんという二人の孫の世話で時間が流れて行った。さらば、俺の休日。明日は家の掃除だ。


大福を食べ終わった紅葉はどこかへ消え、瑠姫さんは部屋に戻り、俺は洗濯物を畳んだあとは自室でゲームをピコピコ。パソコンでブラゲーだからピコピコもクソもないんだけどさ。いや、コンピュータゲーム全般を指す言葉らしいアリか? ちなみにうちはまだピコピコ現役。ちゃんとブラウン管テレビもある。


「ああクソっ、編成間違えた。順番的にこいつじゃないとダメじゃねぇか」


ミスにイラつき、


「クッソ、このゲーム内容はいいんだけど時間制限ありのバトルの時に最初のボスモーション要らんだろ……これで数秒削られるしなんで30秒じゃねぇんだよ……」


そして時々愚痴る。極めて一般的なゲーム好きの台詞だ。だいぶ荒んでると思うけど、しょうがない。こんなこともある。


「っと、もうそろそろか」


動画見たりゲームしたり本読んだり、重政撫でようとして猫パンチ食らったり反撃して肉球弄ったらまた猫パンチくらったり……俺嫌われ過ぎじゃね? そんなに嫌だったか重政よ。


とまあ、こんな感じで時間はすぎていく訳だが……正直一般的な夕飯の時刻がわかんない。同居始めて多少の時間は経っているが、未だに分からない。前は気が向いたら食ってたけど、基本的に夕飯は9時以降が殆どだったし……ネットで調べよう。『何時だって、役に立つ。何にだって役に立つ』

略して嫌な奴だ。すごい。全く頼もしくない。


……ふむ、なるほど、大体午後6時〜8時辺りなのか。軍人式にするなら一八〇〇ヒトハチマルマル二○○○フタマルマルマルだな。全く必要ない変換。


今日は豚のぉぉぉ生姜焼きぃぃぃを作ろう。俺に拳を入れた重政に対抗して俺も入れた。俺のは小節だけど。


エプロンを装着し、気合いを入れて厨房の暖簾をくぐる。毎度ながらデカいなぁ。


食材を取り出して調理に取りかかる。今回はアレを出すから減塩です。


「スンスン……」


「ジーーッ……」


「……」


なんか……視線を感じる。二人分。


「……」


「……」


いや、気の所為だ。紅葉とベルがひょこっと顔を出しているのは気の所為だ。


\バッチリミナー/


うるせえ議会の俺。わかってんだよ。つーかそのベルトどっから取り出した。カイガンとかしてもオレには成れないぞ。


「一応聞こう、何用だ」


「「っ!」」


俺がフライパンから目線を動かさずに声をかけると、ビックンちょと二人が動くのがわかる。えぇ……気付かないとでも思ったの?


「ソージソージ! 今日は何飯デス?」


「今日は白飯です。隣の献立表見ろ」


「ギュルルルル~……」


「腹減るの早いよ。さっきあれだけ大福食ったろ。俺の分まで」


「キュー……」


「だからって可愛めの音に変えても……え、今のどうやんの」


「……知らない。乙女のお腹の音は聞こえない振りをするのが、モテる男の秘訣」


「乙女は男らしく盛大に腹の音を鳴らして山盛りの大福を食べるのか」


後、モテる男になる気はねぇ。多分気を使えってことなのだろうが、お前に使う気は持ち合わせてねぇ。お前に使うくらいなら舞空術に使う。なんなら、気功波にも使う。かめはめ波放っちゃうぞ。練習したこと……な、無いぞ。


「……美味しかった」


「腹減ったならもうちょっと待ってろ」


「キュー……」


「音で返事するな」


紅葉は口数というか……文字数が少ない癖に他の意思疎通がうるさい。腹の音然り、動き然り。


「何か手伝えることはあるデス?」


「料理は必要無い。暇でどうしてもなにかしたいならテーブル片付けておけ」


「わっかりましたデース!」


ベルは敬礼ポーズをビシィッ!ととる。こいつは紅葉とは対照的に口数は多いしうるさい。そして動きもうるさい。漫画にするならオノマトペでコマが埋まる。なんならコエカタ○リン使えば最強レベルかもしれない。あれって声じゃなくてモーションオノマトペバージョンってなかったっけ? ほら、動くと出る擬音が固まるタイプ。無いか?


ベルは「早く行くデスよ、クーレハー」と紅葉を引き連れて去っていった。これで邪魔者は居なくなった。


豚肉の筋切ったり白い粉かけたりタレ用意したり……生姜焼きと言っても、米炊いて肉焼いて味噌汁作って付け合せにポテサラ作って盛るだけなので直ぐにできる。あ、アレを忘れてた。


業務用冷蔵庫から取り出すのはお手製の浅漬け。昨日漬けておいた。ぬか漬けと違って塩分も低めだし、普通に旨くて軽く食べられるから便利で良いよね。保存期間が短いのが難点だけど、短時間で作れてあとは盛るだけだからマジで楽。


最後は小皿に浅漬けを盛って夕飯は完成。さて、仮にも仕事目的でこの家に滞在している瑠姫さんを呼びに行かないと……そういや、莇はどうした?


「飯できたぞおらー」


両手両腕に皿を持って暖簾をくぐると、寄ってきましたはらぺこ紅葉とベルが。ベルだけ思いつかなかった。なんか良いのないかな。


「わーい!」


「……わーい」


両手を上げて喜ぶベルと、ぼそっと声に出して喜ぶ紅葉。活発なベルと無口な紅葉、髪の色は金と銀で対称的だけど、二人はどこか似た者同士。


「やっとご飯〜?」


「待ちわびました」


「奏士、早く持ってこい」


そして二人に意識を向けた隙に、悠ちゃん達は席に座っていた。いや、おめぇら少しは持とうとか考えねぇのかよ。俺今一人で七人分の皿持って歩いてんだけど。さすがにバランス取り辛いし、普通に危ない。


とはいえ、俺が作ってる間に箸は用意してくれていたようで、まぁ……助かった、のか? 別に俺がやっても仕事量に差は無いが、多少は減ったから良しとしよう。別に、持ち辛いだけで助けが必要な程じゃないし。


おっと、おかずだけ持っていってもダメだな。米と味噌スープを忘れてた。いかんな。ベルの似非外人が少し伝染ったか?


飯椀と碗を持って行くと、突如ベルが目を輝かせて立ち上がった。なんか頭の方に光り輝く発光ダイオードが見える。色は黄色。なのにものすごくいや〜な色。黄色に紛れて……いや、紛れてないなこれ。もはや隠す気もないくらい歪な色が見える。なにかよからぬ事、もしくはしょうもない事を考えていやがるな……


「ソージ! エプロンplease! pleaseエプロン! please please eat me!」


「え、あ、おお……そこにある予備なら使っても良いぞ」


というか最後は違うだろ。某ゲームのエンディングテーマの方なのか、それとも文字通りのことなのか……後者はどちらにしろ嫌だ。


「産休!」


え、今言葉違くなかった? おめでた? 誰と? 俺じゃないよね? 睡○とかそんな事無いよね? つい最近夜這いの現行犯になったばっかりなのにまたやってないよな? また俺の人生というゲームのレーティング上げるつもりか? あのイベントのせいで下手したらCERO Dが、Z指定されるところだったんだぞ。最近は厳しいから大変だ。それでも、少年誌で乳首を描き続け、見えそうなギリギリを攻める作家さん達は尊敬します。いや、そうじゃない。今その話はしてない。第一、俺自身は普通に少年誌じゃ表現出来ないものを描いているだろう。


なんて思考を巡らせている間にベルは居なくなり、『このまま消えれば良いのに』とか思っていると直ぐに現れた。黄緑色のエプロンを着けて。お前……イメージが黄色金色で、金髪に黄色のパーカーワンピを着て(下がどうなっているかは知らん)それで黄緑色のエプロン着たら……もはやタンポポだぞ。タンポポは基本的に他の植物が生きていけないような環境下でも咲いているらしいから、しぶといって意味では同じかもしれん。本当に俺のことはすっぱり諦めてくれないかな……


「Heyソージ! おかえりなさーい! ご飯にする? ライスにする? それとも……お・こ・め?」


「飯冷めんぞ」


案の定、新婚三択をしてきた。いや、新婚でもやらねぇぞそんなネタ。それにしても味噌汁の具は豆腐に限るな。じゃがいもとワカメも好き。


あと、どうせやるならカードゲームしようぜ。バトス○でもヴァン○ードでもヴァ○スでもなんでもござれだ。バディフ○イトなら負けねぇぞ。あ、もしかしてギ○ザ? ごめんさすがにそれを今取り出すのは面倒だわ。そしてまさかのマイア○スとか? これは知らねぇか。だって俺の知る限りやってる人居なかったもん。逆になんで俺はそれを持ってんのって話。おい、デュエルしろよ。俺のデッキはペンデュラムメインのリンク未収録デッキだけど。個人でやる分には公式ルールじゃなくても良いよね。リンク入ってからの公式ルールよくわからんけど。


「む〜 やっぱりソージは乗ってくれないデス」


俺が無視して味噌汁飲み始めたのが効いたのか、ガクッと崩れ落ちるベル。


「そんな時は……」


そしてそんなベルに入れ知恵をする悠ちゃんと瑠姫さん。あんたら何しようとしてんだ。


「なるほど! 次はそれを試せば……THANKS!」


「おい、おめぇら飯食わねぇならラップして冷蔵庫に入れるか紅葉の口の中に入れるかするぞ。はよ食え」


「おっと!」


「これは失敬……」


ベルは慌ててエプロンを脱ぎ出し、悠ちゃんはそんなベルを放って席に戻る。いや、ここで仲間? を見捨てるのかよ。俺ならそうするけど。


「あ、あれ〜? アレレ? レーレレーのレー?」


お出かけですか? 随分余裕だなこいつ。


いつまでもモゾモゾやられて鬱陶しいからしょうがないのだ。しょうがなく助けてやるだけなのだ。うん、しょうがない。生姜焼きが隣にあるけどしょうがない。くだんね。


「ほら、じっとしてろ奇怪生物」


「あ、ありがとうデス……え? 奇怪生物?」


気にするな。ありのままを言ったまでだ。


絡まって固く結ばれた紐と引っかかったボタンを取ってやり、エプロンを戻してベルはようやく食事ができる。飯を食うだけで何故こんなに俺は苦労してるんだ……


とまぁ愚痴ってみたものの、残さず食べるのだから良しとしよう。こいつらが住むことを了承した時点で覚悟はしていたことだ。


それに、こんなふうに態々誰かと食卓を囲むのは久しぶりで、かなりなれない部分も有るけど……ほんの少しはこれも悪くないとか思ってる自分が居たり、居なかったり。悠ちゃん達は基本、この家に来る時は酒を飲みに来ているから一緒に飯を食うなんて無かったから、本当に久しぶりだ。


「カフカフ……カフカフ……」


「美味いか重政よ」


俺の隣の専用のテーブルで飯を食ってる重政に聴くと、左手……左足? を上げて返事をする。この返事は美味いと言うことだな。逆にお気に召さないと机を四回叩く。そこそこだったら俺をちらっと見た後に食べ続ける。


人と猫、1人と1匹で並んで食べる者達。静かに綺麗に黙々と食べる者。おかずを盗られてからかわれてハグされてフラフラになる者。二人仲良く食べるもの達。この家に、こんなにも人が集まったのは初めてだ。俺は言わずもがな、爺さんもあまり家に友人を呼ぶ事は無かったし、会うとしたら盛大なパーティ位だったそうだ。本当に、あのジジイ何者だよ……俺からすればただの見た目はジジイ、中身は少年、毎日バカやって婆さんに怒られて笑って……無垢な子どもにしか見えない人だった。いや、あの人の部屋に隠された大量のエロ本とAVは無垢要素を消し飛ばしているけど。あれ、どうしよう……とりあえず、今は漫画とイラストの資料用に役立っているけど。あんまし資料として役に立った覚えないけどさ。なんせ一般向けじゃ使えねぇし。


いや、今更誤解とかないと思うけど、俺は三次元に興味無いですしおすし。エロ本読んでも別になんともない。興奮しない。なんであれで興奮出来るの? 俺が未だに知っても理解できないことの1つだ。


「あ、悠ちゃんはちゃんと人参も食べないとデザートは無いからな」


俺のはなった一言に目を見開く悠ちゃん。


「鬼畜めェ!」


そして箸を俺の目に投げつけて来るが、難なくキャッチして悠ちゃんの手に投げ返す。箸は吸い込まれるように悠ちゃんの指の隙間へと行き、元の場所に戻った。


「ちなみに食べられなかった時はデザートを用意してある」


「それはDessertじゃなくてDesertじゃないか?」


「そうだが? さすがに砂漠は用意できなかったけど、青森か鳥取なら行けるだろ」


旅費は出さないがな。


「? なんで青森デス?」


キョトンとしているベル。


「……多分、猿ヶ森砂丘のこと」


そしてその謎に答える隣の紅葉。便利だなこいつ。


「あそこは殆どが一般公開されてないぞ」


悠ちゃんが聞いてくる。確か試験場になってて極わずかしか入れないはずだ。


「なお、一人で行ってらっしゃい」


「くそぅ……私が反撃出来ないからって……頼むから一緒に行こうか」


悔しそうに歯ぎしりする悠ちゃん。簡単だ、その人参を食べればいい。そして日本語がおかしい。頼みたいのか命令したいのか提案しているのかどれだ。


「だってよ瑠姫さん。しばらく悠ちゃん貸してあげます」


「あら、奏士良いの? さぁ悠ちゃ〜ん……お姉さんとイ・イ・コ・ト♡ しない?」


やはり悠ちゃんにハグをする瑠姫さん。隣の席にしたのは正解だったな。悠ちゃんに面倒事を押し付けられる。


「あにゃーっ! 奏士、人参でもなんでも食べるからこの人を引き離せ! このままだと私はまた……おっ、ぱい……d」


徐々に小さくなる悠ちゃんの声はとうとう聞こえなくなった。


「あ、落ちた」


「20時32分、ご臨終です」


そして莇によって告げられる悠ちゃんの死。ちょっ、まだ死んでねぇ。瀕死なだけだ。所で葬式はいつやろうかな。


この後、悠ちゃんを思いっきり褒めたたえて調子に乗らせて、何とか人参を食べさせることに成功した。悠ちゃんも紅葉もベルも、対応は面倒だが対処は簡単だ。チョロい。瑠姫さんは無理。この人転んでもただじゃ起きない。転んだら受け身とってそのまま起き上がるフリして蹴りか足払いしてくる。


あ、デザートのフルーツ盛り合わせは何故か『アーン』が流行り、悠ちゃんに食べさせることになった。紅葉とベルは勝手に百合百合してた。どうなってんだこの家。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


食後はそれぞれ自由に過ごしている。俺のように洗い物をしていたり、ベルのようにリビングのテレビでゲームしていたり。よくもまぁ飯食った後にWiiでワリオなんてできるな……ダンスとか絶対やばいだろ。


さて、洗い物も終わったし、俺は何をしようか。ゲームはイベント周回終わってるし、レベルもカンストしてるし……今は漫画を描くの休んで大丈夫だし、そもそも今は気分じゃない。


と、部屋に戻ろうと歩いていると、紅葉の部屋の扉が少し空いていることに気づいた。何か話し声が聞こえる。


「……という感じで……」


「……なるほど……」


ん? なんの話だ? 声からして瑠姫さんと話しているようだが……


「……それで、先生からここは絶対にこうやってくれと」


「わかりました」


先生……俺のことか? ということはやはり……


微かに聞こえる会話をよく聞こうと、気配と音を消し去って扉の隙間に近付きーー


そっと、小型の盗聴器を仕掛けた。


いやほら、隠れて聴いてると大抵バレるのがお約束だから……これなら後でこっそり回収すればいいだけだしさ。俺の場合、朝紅葉を起こすときに部屋に入れるから比較的安全だし。入口のすぐ隣にある棚と壁の隙間に設置しておいたから見つかる可能性は低い。問題は、紅葉が発見機を持っていないかどうか。バレないカモフラ型小型を使ったし、もし見つかっても、「落としてどっかいったのを探していた。見つけてくれてありがとう」と言えば良いだろう。


さて、あとは受信機を使って聞くだけ。何を言ってるのかしらん?


……あれ、今思うとこれって立派な犯罪だな。まぁナイフ携帯とか普通にポリスメンに怒られることしてるし、今更罪に罪を重ねても変わらねぇか。罪という-にさらに罪という-を掛け合わせて+に変えるのだ。え、違う? -に-を足す? ならばもしくは発覚しない限り問題は現れない方だ。あれだ、シュレディンガーの猫ってやつだ。


『……と、言うわけで、ここはこの感じで』


お、聴こえた聴こえた。内容はおそらく作画の指定か?


『ふむふむ……』


そしてこの声は紅葉か。やっぱりこいつか……


『それと先生から、「ここだけはまじでこの色使いで」と言われているのでここは……』


ああ、そうそう。パンツの柄と配色でこだわりがあったからそんなこと頼んだな。パンツの柄はこだわるだろ。俺は縞パンも好きだけど、スカートの両端をパンツがギリギリ見えないくらい持ち上げた時に少しだけ見える紐パンの紐も、うっかり見えてしまった無地のパンツも好き。水玉は……イマイチ。やはりパンツは無地が一番だな。色は割と色素薄めが好き。白じゃなくて水色とか青とか薄紫とか。


なんだろう。紐パンは全部が見えてしまうより、紐のチラリズムが一番いいと思う。もしくは「今日のパンツは?」と聞かれた時に、「え、紐パンだけど? なんだ、気になるのか?見せるぞ」といった感じでサラッと恥じらいなく答えられた時の感じも好き。あれだ、男が進んでやるセクハラで見れるパンツより、男も女もちょっとした変なノリでバカ騒ぎした時にちらっと見えるパンツが至高なんじゃないかと俺は思う。恥じらいは大切。恥じらいがない後に恥じらいはもっと大切。なんじゃこれ。俺自身も何言っているのか理解できなくなってきた。


『なるほど……わかりました。ではそんな感じで』


『はい、よろしくお願いします。伊吹童子先生』


な、なんだってー!?


と、驚くことも無く予想通り。これで合点がいく。何故あいつの絵に見覚えがあったのか、何故あの二人に接点があったのか。やはり紅葉が俺の漫画の作画担当の『伊吹童子先生』だったか……それにしても名前凄ぇな。『千面童子』なんて名乗ってる俺も俺だけど。というか今更だけど両者鬼かよ。


それにしても……世界は小さいな。さすがの俺も学園の生徒会長が俺の漫画の作画担当という可能性は考えていたけど、それが現実になり、それも同じ家に住むことになるとは。


え? いやほら、なんか『生徒会長』って裏の顔ありそうじゃない? 似たような生徒会ものの会長だって、作画やってたし。あれ? よく考えたら二人とも似てね? 主な性格は兎も角。一番似てないのは、俺にはあんなタイプの可愛い妹は居ないということ。似た感じの悠ちゃんがいるけど、俺あの人に萌えたりはしねぇしな。


……俺みてぇなやつがラブコメ漫画描いてるのが不思議に思ったか? 残念だが、それが事実だ。事実は常に残酷也。


『原作:千面童子と、作画:伊吹童子の贈る実の兄妹愛と家族愛溢れる『何時だって君の傍で』は絶賛発売&連載中!』


唐突なダイマうるさい。うるさい黙れ。黙ってろ議会末端。末端と言っても同じ俺だけど。


さて、目的も達成したしそろそろ切るか。


「なーご」


丁度重政が帰ってきた。よーしよしよしよし。


「お、どうした重政よ。飯は食っただろ」


「にゃふ〜」


尻尾を左右に四回、足踏み五回。そうか、風呂に入りたいのか。そういや半年入って無かったしな。猫のくせに風呂好きとは珍しい奴め。


「それなら一緒に入るか?」


「なぅ」


プイっとされた。そうか……やはり野郎同士は嫌か。


「だがしかし、いとをかし。残念だが、お前は俺と入るしか道は無い」


「にゃうう!?」


えぇ……そんな驚かなくても。しょうがないだろ。風呂後の処理をするの面倒なんだぞ。他のやつにやらせたら、どうなるか……


とにかく、風呂に入る前に……


「耳も爪も大丈夫……だな」


「にゃ〜」


ちゃんと確認しないと。引っ掻かれたら痛いし。まぁこいつ殆ど放し飼い状態だから爪切りの必要は殆ど無いんだけどさ。それでも一応確認はしておきたい。


「ブラッシングするからこっちこいや」


「なー」


重政がトコトコと寄ってくる。こやつめ欲には正直者か。


えーっと……ブラシブラシは……あった。


「ほれ、ここがええんか? ここがええんやろ?」


「な、なぅぅ……」


重政が気持ちよくなる部分は既に熟知してある。ほれほれ、もっといい声で鳴くといい。


「…………はい、お終い」


そして今座ってる座布団は獅子舞。何でこの柄買ったんだろう……


「さっさと風呂行くぞー」


「にゃぅぅ……」


さっきまでご満足頂けたのに、急に残念そうにされても……俺だってちょっとは傷付くんだぞ。どのくらい傷ついたのか例えると、空気中に漂う原子にぷにぷにのゴムボールを投げた時くらい傷ついた。


……漂う原子にやっても無駄じゃね? つーかそれただ単にボールそこらに投げてるだけだし。


お詫びに重政を抱っこして風呂場まで運ぶが、扉は閉まっていた。隣のボードを見ると、『乙女の入浴中♡ by 悠』という文字が。乙女? 乙女って年齢じゃないだろ。年齢の定義は無いらしいけど、さすがに大人になって乙女は無いだろ。乙女ってかおっめぇよ。痛いよ。必死すぎだよ。つーか何時作ったよ。


「残念だったな重政。まだ先になりそうだ」


「にゃっ!」


わぁすげぇ嬉しそう。そろそろ怒っちゃうぞ? 具体的には肉球ぷにりまくる。1秒間に16連打する。名人級だ。今度スイカで試してみよう。ついでにスイカ割りもしよう。一人で。棒は……模造刀で良いか。切れ味抜群だぜきっと。刃はないけど。それスイカ切りじゃん。


どんな訳かは知らんが、そんなわけで部屋に戻ることにしよう。この際だから重政を思いっきり甘やかそう。そしてモフろう。でも、こいつ猫じゃらし見ても反応しないんだよな。基本、どっかでナンパして玉砕してそこらでゴロゴロしてるし。ざまーみろだ負け犬いや負け猫め。このまま振られ続けろ。去勢してないから子供は作れるのに作る相手が居ない地獄を味わうがいい。


「あら、奏士」


「げっ」


丁度紅葉の部屋から出てきた瑠姫さんと鉢合わせエンカウントした。嫌だなぁ……メラゾーマとか使いそう。もしかしたらベギラマとかも使う。スイカ割る? ベギラマ繋がりで。 もしくはいかづちのつえ使う? ちょうど木を削って作った模造品が部屋にあるぞ。なんでもあるなこの家。


…………いや、いかづちのつえ作ってもただの打撲武器じゃん。使えねぇし。


「今風呂は悠ちゃんが入ってるから使えませんよ」


「あらそう? だったら突撃しようかしら」


止めたれ。悠ちゃんが死ぬぞ。お亡くなりになるぞ。今度こそ宣告が本物になるぞ。つーか迷えよ。他の選択肢探せよ。


とりあえず、悠ちゃんの死体が発見されると面倒なので瑠姫さんを止めつつ、部屋の扉を開けるとーー


「あ、そうそう」


呼ばれたので振り向くと瑠姫さんが耳元まで近ずいてきて、こそっと呟いた。


「そうそう、盗聴器を使うならもっと上手くやりなさい。これ、返しとくわね」


そして、先程の盗聴器をこっそり渡してきた。なんと……


「紅葉ちゃんにはバレてないわ」


弱み握られた。まさかのメダパニ使って来やがった。そんな呪文覚えてねぇよ最近ドラクエやってねぇよ。そもそも最近のドラクエ買ってねぇよ。


ほんとなんなのこの人。俺の予想と張り巡らせた網を難なく交わして俺にダメージ与えてきやがって……もうヤダこの編集者。そして俺もこの人の予測をほぼ諦めてる節がある。


「これで貸し、1つね♡」


畜生この人嫌いだ!


身体中から吹き出る謎の汁と止まらない謎の震えを抑えながら俺は部屋に戻った。どうしようこれ……なんか手がすごい震えてる。恐怖で。


落ち着けぇ……落ち着け俺ェ。これくらいの恐怖ならもう既に味わったでは無いか。元のクールな俺を取り戻すのだ……


よし、落ち着いた。いつもの俺だ。いつものクールで冷静な動じない俺だ。ん〜 全部似たり寄ったり。


ちなみに、自分ではクールだと思っていても他人から見ればただの根暗だとかぼっちだとか陰キャだとか言われる可能性大だから気を付けよう。俺はもう慣れた。


でも、俺を童貞と呼び、それで盛り上がった中学の時の名も知らぬ小麦肌のヤリ○ン許さん。そいつがヤリ○ンかどうかは定かではないが、俺の事を童貞と笑えるなら貴様は卒業済みなのだろうなぁ? あ゛? 殺処分するぞ。焼却炉にぶち込むぞ。そのまま見知らぬ土地に埋めて俺は家に御札と塩を盛って結界を張る。ついでに除霊用の武具も近くに置いておこう。多分蔵に入ってる。


……はっ、また飲み込まれるところだった。落ち着け。


まぁ、その後なんやかんやあったけど、無事に悠ちゃんは生きて風呂を出れたし、俺は生きてアニメを観られたし、重政はすやすや寝てるし、もうこれ以上を望むことはやめておこう。死にたくない。だから俺は川の中に石があっても拾いに行かない。あれ、なんの話ししてたっけ? ま、いいや。


そうそう、瑠姫さんは悠ちゃんの無限大の生気を吸い取ったのか、いつも以上にツヤツヤしていた。あの人の肌がずっと若いのはそれが理由か……


そうだ、くすり飲まないと……間違えた、ヤクだ……ヤクをくれぇ! 俺もうあのヤクがないと眠れねぇよォ!


こっこっ、これだな!? くぁぁ〜 これだこれだぜ。


ふぅ、薬飲むと変なテンションになるな。つーかこいつか時々出てくるモヒカン。なんで世紀末だ。アタタか? アタタなのか?


さて、睡眠薬も飲んだし寝よう。無事に目覚めますように……いや、フラグとかじゃなくて。朝日がこのまま生きて見れるといいな。瑠姫さんから死亡宣告くらったし。

まじで、なーんも進んでません。結局何か食べてるだけの一日になりました。書いててなんだけど、悠ちゃんの幼児退行っぷりが心配…… そしてこの作品は百合ではありません。誤解の張本人のベルは半両刀ですが、瑠姫さんはただ小さくて可愛いもの……もとい、悠ちゃんみたいなのが好きなだけで、ノーマルです。そこんとこよしなに

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