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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
第二章 第二の始まり。それ即ち、面倒事の増大也
20/133

レーティングはいつどこで変わるか分からない

紅葉を生徒会室まで運び、目を覚まさせて再開させた仕事は予想より早めに終わった。


「……今日はもうお開き」


「そうだな、そろそろ時間だし帰るか」


窓の外を見れば、そろそろ日は落ち、この世ならざる魅が現れる逢魔が時だ。ちょっと痛い感じに言ったが、要はもう夕方だ。洗濯物を取り込む時間だ。もし冬場なら冷気で洗濯物が冷えて地獄。


「お疲れ様デース」


全員で戸締り確認をし、学園を後にする。外に出ると、照らす夕日が暑く感じる。そろそろ春が終わり、虫が覚醒超えて限界突破する夏だ。俺の一番嫌いな時期。


俺は自転車で、紅葉達二人は歩きなので、一緒に帰る訳も理由も無く、俺は一足先に家に着く。


そして俺が部屋で物の整理をするために紐で縛っていると、玄関のチャイムが鳴る。


俺は即座に来客の整理をする。悠ちゃんはそもそも普通に無断で入ってくるし、その他はそもそも来ると連絡来ていない。紅葉には上鍵開けているから自分で入って来いって言ってあるはずだし、何か通販を頼んでもいない。何か当選したのかね。でもDMとか来てなかったしな……


そう思いながらインターホンのカメラを確認すると、そこには何故かベルが居る。


不審に思いながら念の為に小型武器を袖に仕込んで玄関を開ける。ほら、世の中物騒だから、ね。念の為。もしもに備えて。備えあれば嬉しいな。


「何しに来た」


「いやデスね〜、ちゃんと事前に知らせておいたじゃないデスか」


俺が聞くとベルはニコニコしながらあらやだ奥さんスイングで手を振る。はて、なんかあったか? とりあえずそのスイングウザイからその手下ろせ。


と、俺が考えていると何故か引越しのトラックが我が家に来るのが見えた。


「お待たせしましたー」


「あ、こっちデース」


何故か家主を無視して荷物が運び込まれる。よく見れば紅葉の時の担当者じゃねぇか。


「兄ちゃんまたかい。 男一人でこんな美少女捕まえて……しかも二人目とは……いよっ! プレイボーイ!」


そろそろこいつ会社に連絡入れて首にしてもらおう計画を実行するべきか……


「ありゃっした〜」


「ありがとデース!」


遠ざかるトラックに手を振って礼を言うベル。


「さてソージ、、部屋に案内よろしくデス」


「うん、ちょっと待てコラ」


ひとまずは家に上がろうとするベルを捕まえる。色々聞きたいことがあるが……


「何をしている?」


「引越しデスよ? 見ればわかるじゃないデスか」


それは見ればわかるわボケェ! とツッコミそうになったが何とか留める。話が進まない。


「何故、俺の家に引越ししている?」


「? 事前に連絡したじゃないデスか」


人差し指を頬に当ててキョトンと首を傾げるベル。あざとい。


「はぁ? 連絡なんてどこにも……」


「おかしいデスね……ちゃんと事前に手紙を送ってあるってDadが言ってマシタ」


「手紙?」


そこまで聞いて、俺は一つ思い出す。そういや今朝、悠ちゃんがポストから新聞を取って読んでいたような……


俺は大急ぎでリビングのテーブルまで走り、今朝の中身を見る。するとその中にはエアメールと思しき封筒が。


「あ、それデスそれデス」


まさかと思いつつも、封をペーパーナイフ (日本刀型)で開けてみる。中の手紙には筆記体で書かれた英文が。今どきタイプライターとかPCを使う時代にアナログの手書きとは珍しい……


「Dadはロマンとかそういうのが好きなので、雰囲気出すために手書きデス」


愉快な親父さんだな。って言ったら「ンもう、親父さんじゃなくて、″お義父さん″って呼んでも良いんデス、ヨ?」って言ってきたので外に追い出して玄関の鍵を閉めたら裏口から入ってきた。ピッキングで。やっぱり女子学生には流行っているのか?


とりあえず不法侵入社に塩投げて俺は手紙を読む。内容を日本語に訳すと、


『奏士君久しぶり、元気にしてるかな? 今度、娘がそっちの学園に通うことになってね。 私は仕事でイギリスを離れることはできないから、君の家に下宿させて貰うことになったんだ。 もちろん、その際の費用はこちらで払わせてもらうよ。悠にもよろしくね。 ロバート・バレンタイン』


だそうだ。多分、俺に話が来てないことを踏まえると、また悠ちゃんがやったんだな。後で説教してやる。


それはそうと久しぶりってことは過去にあったことあるみたいなんだが……俺にその記憶が無い以上はジジイ関連で一度か二度ってところだろ。あの人知り合いと友人は多かったし。


「ソージ?」


ベルが少し戸惑うように聞いてくる。そうだな……俺は普通にお断りしたいが、こいつは住むつもりで来て、多分何も準備はしてないだろうしな……つまり、こいつはこの件に関しては今のところ悪いところは無い、と思う。さて、どうするかな……


「…………」


「あ、あの……迷惑、ならどこか別の場所で……」


ベルが少し泣きそうな雰囲気で家を出ようとする。また俺が折れればいいだけの話か……


「分かった、分かったから。お前は住めばいいだろ」


「ーー!」


驚いたようにこちらを見上げるベル。


「ひとまずはお前は悪くない。悪くないなら捌くことは無いできないし、何も咎められることは無い。だから……」


さすがに少し歯がゆくなってそっぽを向いてしまう。これくらいはカッコつけさせてもらおう。男だもの。


「お前は住んでいい。少なくとも、卒業まではその気でいたんだろ?」


やっぱりこういう時はカッコイイ、イケメンセリフを普通に言って安心させるべきなんだろうが、どうにも口に出せない。むしろ吐きそう。今日の昼飯を。ちょっとトイレ行ってきていい? そしてそのまましばらく消え去りたい。まさか短期間で二回も痴態を晒すとは思わなんだ。


「ソージ……」


ベルはスっと立ち上がり俺に近づいてくると、向日葵のごとき笑顔を浮かべると、


「永住してもいいデスか?」


そうほざいた。もちろん、俺の答えはただ一つ。


「ダメに決まってんだろ」


ベルは「ちっ」と舌打ちをすると、両手を身体の前で交差させて頭を下げた。


「これから、よろしくお願いするデス」


「ああ、はいはい。とりあえず、部屋に荷物置いて荷解きしてこい」


気恥ずかしくなった俺は、ベルを追い払うように首を触りながら「しっ、しっ、」と部屋に追いやった。その際、ベルが「ぬふふ……ソージの照れ屋さん」なんて呟いたように聞こえたが、全力で聞こえないふりをした。また反応したらめんどくさい。


「なーう」


俺がため息を吐くと、足元で重政の鳴き声がした。こちらを見上げている。


「重政か……」


俺はしゃがんで重政の前足を持って重政を伸ばしたり、手をピコピコさせたりして癒しを得た。脳内イメージだと、水色の気力ゲージが超速回復している。やはりアニマル・・・・!! アニマルは全てを解決する・・・・!!


「なうんなー」


「そうだなー、ずっと俺たちだけだったのに、あっという間に二人も増えちゃったなー」


「なーう」


こうして俺にさえもちゃんと接してくれるからアニマルは良い。人間より何倍も、何京倍も良い。


ご褒美に重政にはいつもより良い飯を食べさせて、俺は部屋に戻って今日の飯のことを考えつつクッションに寝転がる。


「とうとう三人目、か……」


俺は対人耐性がかなり低い。業務上、形式上の数秒、形だけ程度なら問題は無いが、こうして日常生活にまで及ぶとなると、かなりヤバイ。なんせ、去年は悠ちゃんと担任以外とは学園で話さなかったくらいだ。別に友達が居ないからって訳ではある。あるんかい。それよか日本語がおかしい。


とにかく、現に俺は胃薬、頭痛薬、アニマルセラピー、etc……を使ってこの状況だ。また一人、それも紅葉以上に厄介な存在だと思っている。そんな奴とすごせるか……ま、倒れたらその時はその時用に杖を用意しよう。転ばぬ先のなんとやらだ。杖は無理だとしても、転んでも受け身で回避してすぐに立つことができるようにしておこう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして、飯作りにリビングの方へ行くと、荷造りが終わったらしいベルと紅葉が重政で遊んでいた。あのオス猫モフられるフリして二人のスカートの中見てやがる。


キッチンのロッカーにかかっているエプロンを身につけると、それに気づいたのか二人がこっちに振り向いた。


「! ソージがご飯作るデス?」


俺が「そうだけど何か?」って表情 (後に聞いたらほとんど変わってなかったらしい)をすると、ベルは「にへ〜」と笑う。


「夫婦揃って料理上手だと、どっちかがダメになっても安心デスね。子供達にはちゃんとしたものを食べさせたいデスし」


ベルの戯言ざれごとはさておく。ただでさえ頭痛が痛いのだ。意味は理解できるけど理解不能。


「夫婦?」


今日のことを知らないであろう紅葉は頭の上に「?」を浮かべてキョトンとしている。


「気にするな、こいつは頭がだいぶおかしくて妄想癖があるんだ。戯言だから気にするな」


「え、今ワタシの将来を戯言って……」


ベルが驚いているがそれも無視する。


「? ……分かった」


そう言って紅葉は再び重政をモフりに行った。問題は一時的にだが消え去ったので俺はキッチンへ。


「あ、ソージソージ、はいコレ」


ベルが封筒を渡してくる。なにコレ


「なんじゃこりあ……」


開けてみ ると中からは分身したゆきちが。まじかよこの分身全てが実態を持ってるぞ。「ふっ、馬鹿めそれは分身だ!」とか言わない?


「……あ、これ親父さんの言ってたヤツか?」


「イグザクトリー」


ベルがサムズアップしながら何故かイケボで答える。なんやこいつ。


「それにしても多過ぎるわ」


見た感じ、ざっと十枚は入っている。いや、うち三人しか居ねぇし俺も紅葉も稼ぎがあるから余分なんだけど……確かに俺の稼ぎは少ないけどさ。


「あ、それは今月の生活費と来月のワタシのお小遣いも入ってるデス」


「え、これ俺がどうしろと?」


とりあえず中から二〜三枚ベルに渡しとけば良いのか?


「そこら辺はソージが考えてください」


「うわぁ丸投げ」


とりあえず、扱いに困るので一時的にエプロンのポケットに入れておく。どうしようこれ。気分的にライブに行く電車に乗ってる時の気分。


……あ、アイドルライブじゃなくてアニソンとか声優とかゲームライブだから。ゲームライブ以外はあんまし行ったことないけど。某フェネストラそふととか、柑橘系とか。チケット当選が前提だけど。なんの話しをしてたんだっけ?


とりあえず話は飯を食ってから。そういうことで俺の脳内十人会議で決定されたので、切り替えて厨房へ向かうことにした。向かう途中にふと振り向いてみると、紅葉は一人でまだ重政と遊んでいた。


飯を食ってる最中にふと気になって「紅葉と打ち解けるの早かったみたいだが、仮にも好きな人が他の女と同じ屋根の下に住んでて大丈夫なのか?」聞いてみたのだが、「ソージがワタシ以外のガールフレンドを作っても別に構わないデス。一夫多妻は、『ハーレムは男の夢』と聞きマスし。ワタシは、ソージの『大切』の中に含まれていればそれでいいデスから」と、言われてしまった。なんと心の広いことか。この時ばかりは、ベルの背後に後光を感じた。恋する乙女は強しってか?


俺はその姿勢に少しの尊敬を覚えた。覚えかけたのだが……


「それに」


「ん?」


まだ何かあるようだ。一応そのまま聞いてみる。


「ソージが手を出せないチキンだということは知ってマス」


「……俺の尊敬の念と時間返せよ」


せっかく稼いだポイントを一瞬で無効にするベルに、俺はどことなく哀れんだ。


なお、料理はベルにも好評でした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


風呂が沸いたので、二人を呼びに行くと、紅葉はやることがあるらしいので、ベルを先に入れることにした。俺は常に最後。最後に掃除とかするから。


「おーいベル、風呂湧いたぞー」


扉をノックすると、中からベルの返事が聞こえた。


「ソージ、ちょっと待ってほしいデース」


「なんかしてたのか?」


「ちょっと今脱ぐから待つデス」


「そう来たかおのれ」


まさかの対応である。というか、部屋で何する気だ。


「 ナニする気デス」


「人の思考を扉越しに読むな。……え、お前今なんつった?」


もしかして、俺がこの扉を開けたら俺のとっても大事なものが奪われる気がする。


「いいからさっさと風呂いけボケ」


「ブー、ソージのいけず……」


「そうだ、お前の部屋を交換してやる。確か蔵に棺桶があったはずだからそれで寝ろよ。防音性・遮光性に優れた寝具だ。……もしかしたら・・・・・・一生の寝具になるかもだけどな」


「埋める気デス!?ワタシを遺棄する気デスカ!」


扉の向こうから叫び声が聞こえる。冷静になると俺は扉の前で何をしてるんだろう。


その後、何とかして服を着たまま風呂に行かせて、その後俺も風呂にありつけた。入って疲れを取った筈なのに入る前よりも疲れている感じがする。


「さて、と。そろそろ寝るか」


アニメ見て感想呟いて色々やっていたら、時計の針は既に夜の二時を指していた。 (俺にとっては三時~四時半までが深夜)


明日(今日)は昨日以上に疲れることが容易に予想できる。したくないけど、鮮明に予想出来た。泣ける。


「おやすみ重政」


俺は敷いた布団に加速をつけて入る。ちょっと敷布団がズレた。


「なーう」


重政は自分の寝床に入って一声鳴く。ちゃんと挨拶してくれる当たり、なんだかんだで付き合いの良い奴だ。俺とは大違い。


俺は飲んだ薬の効果が現れ始めたのか、眠気に抗わずに眠りの海へと沈んだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……失礼するデース」


何者かの気配を察知して目が覚めた。気づかれないように時計を見ると、現在は深夜三時二十四分。良い子も悪い子も眠ってる時間だ。一部を除いて。


首を捻って襖の方を向くと、ベルの顔が見える。はて、なして?


「ソージは……寝てるデスね」


俺は咄嗟に襖とは反対の、ベルからは顔が見えないように身体の向きを変える。


ベルが近づいてくる気配がする。何だ、まさかだけど本当にーー


と、俺の布団の間近まで気配が迫った時、ベルの動きが止まる。するとーー


「ん……しょ」


衣擦れ音が聞こえる。まさかの予感が的中した。人間嫌な予感度当たるもんだよな。


無意識のうちに現実逃避をしている思考を排除して脳をフル回転させる。ベルの目的は本当にそうなのか。そもそも何故入ってきた。何故俺だ。本当にベルか? いや、実は別人なんじゃ……


フルに回った思考は一度混乱すると連鎖的に崩壊していく。どんどん分からなくなり、不明の輪廻にハマってしまった。とーー


「むふん……ソージィ……」


ベルが馬乗りになってきた。油断した俺はベルを見てしまった。


「やっぱり起きていたデスね♡」


「な、なんで……」


一糸まとわぬ裸体かと思ったが、下着はまだ着けている。よし、まだセーフだ。まだ責任を取らされるレベルじゃない。


ベルのほんのり赤くなった頬と白くハリのある肌。身に纏う下着は昼間とは違って水色。そして少し涙が浮かんで月光が反射してキラキラと輝く緑色の双眸。


待て、俺はいくらセクハラにもエロトークにも慣れているとはいえ、未だ童貞だ。このリアル展開の対処法とか記憶にございません。


……ただ、この状況でも一切の反応を示さないジュニアと俺の脳はそろそろ心配した方がいいのかな……いや、やっぱりいいや。使い道は多分、きっと、おそらくないだろうから。絶対と言いきれないのは多分男としてほんの少しだけ残った意地か何か。


俺が再び現実逃避と動揺している間にも、ベルは唇を突き出して構わず迫ってくる。残された猶予は後数秒だけ。一体どうすれば……


俺は数多のエロゲー、ギャルゲー、ラブコメ、エロ同人、一般向け、イラスト、etc……読んで書いて描きまくってきた。その中からこの状況下における最前の選択を選択。そして俺が導きdーー


「待て待て待て待て」


「むむむ〜」


すぐそこまで迫っていたベルの顔を掴んで押し返す。普通こういうのって考えている間は動きが止まるとか超ゆっくりになるとかそういうもんじゃないの? 現実は非情である。


「何してやがる」


「いえ、既成事実を作っておこうかと」


「既成事実とな」


それはもしかしてあれですかい? お互いの初体験を捧げて(俺は奪われるけど)種とか唾とか付けといてそのまま責任取って入籍って感じですかい? ダメだ、俺の脳も処理落ちを始めてる。思考が止まり始めた。


「……そこまでウマくないデス」


「んだとてめぇ」


個人的には上手いと思ったのにな。いや、そんなことはどうでもいい。


「さぁソージ……今からワタシのファーストキスを捧げるデス……」


近づきながら目を閉じるベル。


「どうせ既に経験済みの中古品だろ」


必死に抵抗する俺。


「ワタシの身体はシスターになれるくらいに純潔デス。さぁ、唇のファーストキスは唇で、下の口……はソージに無いので、ワタシの部屋の入口でファーストキスをしマショウ♡」


それでも向かってくるベル。


「そんなかつてないほどに酷すぎる誘いに応じると思うか?」


見た目こそ冷静な俺だが、内心は俺ら・・の思考領域を全て使って必死に解を探している。脳内会議も騒ぎまくって何がなんやら分からなくなってきた。ダメだ、頭痛くなってきた。脳を酷使するから使い過ぎると頭痛がするのがこれの難点だ。


「そうデスね。キスは唇でするものデスね。だったら、入口は入口でも、ちゃんと唇でキスをシマセント……陰、唇、で♡」


やばい。そこじゃないってツッコミを入れたいけどそんな状況じゃない。


「さぁソージ、始めマショウ。楽園を作るのデス。ワタシ達がアダムとイヴに、日本で言う伊邪那美・伊邪那岐になるのデス……」


ベルの力がさっきまでよりも強くなる。馬乗りになられている俺は、万が一の事とか物理的な傷をつけないことを考えて普段の力が出せず、徐々に押されていく。


「今日はアノ日ではないので、膣奥・・に出しても平気デスよ?」


それは確率が低いって訳であって確定では無いのだが……今ここでは些細なことだ。そして専門的な方で言ったのは故意的だろう。


「待て、どうしても本番に行きたいなら、次元を一つ変えて出直してこい」


「ソージ……四次元はさすがに……」


「二次元だよバカタレェ」


なんで俺がちょっと引かれなきゃならんのだ。俺が引く立場だと思うの。


何故だ、俺の人生は全年齢向けだったはず。なぜこんな十八禁展開が始まろうとしている。くっ、万事休すか……


とうとう、ベルの顔が鼻先数センチにまで迫る。ああ、こんなところで失ってしまうのか……さらば、俺の童貞……俺の純潔……


と、俺が覚悟を決めたその瞬間、ふと閃いた。くそっ、間に合うかーー


その日、叫び声が響いたが、これを聞いたものは当人達以外に居なかったーー


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


朝、いつもの時間に目が覚める。さっきはとんでもないことが起こったが、いつまでも引きずってはいけない。俺は気持ちを切り替えて、服を着替え始めようとタンス(という名のプラスチックボックス)へ向かった。隣のを見ながら。


「ん゛ん゛ん゛ん゛ー!!! んんん!! ん゛ぐぐぐー!!!!!」


布団に包まれ、紐で厳重に縛られたその生物……いや、物体はくぐもった声を発しながら身体をうねうねじたばた動かしてどうにか拘束を解こうとしている。芋虫みたいでキメェ。


さっきは危なかった。キス寸前、油断したのかベルの力が緩んだ一瞬で何とか抜け出してその場の布団で包んで縛り付けることができた。紐を片付けなかった俺グッジョブ。


それにしてもやっぱり前に比べて縛る技術が上がったよなぁ……間違いなく|先人(悠ちゃん)と練習台

のせいだよな……あんまし嬉しくない。

「そうだ、これは棺桶に入れて埋めておかないと」


「んん゛!? んん゛ぐむー!!! ぐむむーっ!!」


抗うようにさらに声を荒らげるベル。


そろそろ本格的にウザくなってきたので、俺はとりあえず紐の拘束は取り外す。


「んんん? ……ぷはっ! ソージ! なんてことするデスか」


「当然だろこの淫乱痴女が」


入居当日に夜這い仕掛けて来たんだから当然だろ。むしろ、これでも優しい対応だろうが。下手したら警察沙汰&退去だぞ。


「もう一度聴くが、何故夜這い未遂に至った」


正確には夜這い″未遂″ってレベルじゃないんだけど、そこは俺のせめてもの情けと俺の純潔が未だ健在ということで、名前だけは減刑である。


「む〜……だって……」


「だって?」


もし本当にろくでもない回答なら昨日の俺の発言を取り消す。そう覚悟して聴いてみたがーー


「だって、ソージと、好き人と同じ家に住めて、一緒に居られると思ったら……なんか止まらなくなったデス……」


…………どうしよう、思ったより乙女な解答で対応に困る。こうして好意を直接ぶつけられるのも対応に困る。本気でこの対応法を知らない。誰か、誰か教えてYah○o知○袋!!


「……はぁ〜……」


「……ソージ?」


俺は結局頭を抑えてため息を着くくらいしか出来なかった。本当に、こいつは……


「今回は見逃して……やる訳では無いが、次からはないと思え」


「ソージ……」


次やらかしたら追い出す覚悟だ。もしくは棺桶にinする。


「やっぱり、ソージは……ツンデレ?」


「お? やっぱり一回地中を体験してみるか?」


ベルは「たははー」と笑って誤魔化した。


「おら、さっさと着替えて飯にするぞ」


ベルを解放して部屋の外へ追い出す。すると、時期を察したのかようやく重政が現れる。


「ななう、ふにゃーっ!」


「……テラ痛てぇ」


俺がしゃがむと同時に大ジャンプからの猫パンチを食らった。声色だけではわかり辛いかもだが、実際はめちゃくちゃ痛い。鼻がすげぇ痛い。良かった俺に耐性があって。まぁ猫パンチが当たる直前に頭を引いたから少しは軽減されたのもあるけど。


「てめぇ何しやがる」


とりあえず首が痛くなるから重政を机の上に上げて話す。


「にゃにゃにゃ! ふしゃー!」


重政の言葉を要約すると、「お前あんな可愛い娘とヤレたっていうのに何してやがる! 羨まし許さん!」って言われてたみたいだ。


「ざけんな。俺があんなんで籠絡すると思ってんのか」


「にゃにゃにゃにゃ! (籠絡とか別にいいから一発ヤって大人になっちまえよ! 俺なんか日頃から女の子探してナンパしまくってるのに一向にたたないんだよ!フラグも、ナニも!)」


なお、これからは同時翻訳でお送りします。


「てめぇ日頃からふらっと居なくなると思ったらそんなことやってたのか……よく考えたら一匹も捕まえられてねぇ負け組じゃねぇか」


「にゃにゃにゃうにゃー (羨ましかったらお前も経験して見せろよばーかばーか)」


「んだとてめぇ」


傍から見れば、猫がにゃーにゃー鳴いて、それに大の男がキレてるだけにしか見えないだろうが、今俺たちの間ではこんなことが起こっていた。なお、重政の翻訳はあくまで経験と分析から導き出された結果と感覚なので、正確かどうかは定かではない。


「……ダメだ、猫と喧嘩してる場合じゃねぇ。おら、今日は自分で歩け」


重政を連れてキッチンへ向かう。途中、重政に足を殴られたりしたけど、渋々餌をやったら紅葉を起こして飯食って学園へ。


「ソージ」


玄関を出たところで、ベルが振り向いて話しかけてきた。


「んだコラ」


俺は機械的に返答する。何故か無意識の返事が大抵これだ。


「これから、正式によろしくお願いするデス」


昨日も似たようなことをやった気がするが、ベルなりに考えがあるのだろうか。


とりあえず俺のとる返事は一つだけ。


「……おー」


気の抜けた、曖昧な返事だった。


「……ふふっ」


ベルがクスリと笑った。


「んだよ」


「別に、なんでも無いデース」


ベルは、後ろ手を組んで、どこか機嫌良さそうに歩き出す。「クーレハー!!!」と叫びながら紅葉にハグして。紅葉も、少し嫌そうな表情を浮かべるが、振り払おうとはしない。よく見ると、少し頬が赤い。わかるぞ、慣れていないだけなんだな。


それにしても、後ろ手を組むのって『自分はあなたより上の立場だ』とか『私に触れるな』とかそういうことを表してるって本に書いてあったんだけど、これは違うよね? 俺、早くも見下されてないよね? ちなみに見下され最速記録は一秒未満。ヤベーイ!ハエーイ! なお、あのフォームは素の速度ではタンクの方が速い模様。


閑話休題


俺は、今朝つけた線香の火を落として、もう一度合唱してから再び家を出る。


「……じっさま、行ってくる」


思いもよらない出来事から、あっという間に増えた同居人もこれで二人目。これからどうなるのかは知らないが……そんときはそんとき対処すればいい。


……ただ、これ以上俺の胃に穴が開かないことを祈る。


「ソージー」


ベルが俺を呼ぶ声が聞こえる。


「あいよー」


まだ始まったばかりだけど、これからが少しだけ、ほんの少しだけだが、気になる俺がいた。


「あ、さっきのよろしくはワタシの身体もよろしくってことデスよ?」


「お前らはどうしてそう綺麗に締められないんだよ」


「失礼なっ! ワタシの締まりはいい方デス!」


「知ったこっちゃねえ」


「奏士……ようやく性欲に目覚めた?」


「よっしゃ紅葉、お前とは一度よく話し合う必要があるみたいだな」


「話し合うって何でデス?」


「……肉体?」


「身体で語るってやつデスか!」


「……やっぱり本当に棺桶使って埋めたほうがよかったかな……」


朝からいきなりの猥談で興奮しながら盛り上がる二人を見て、「やっぱりさっきのは気のせいかも」と思った俺だったーー


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「くっくくくくくくくくく……」


暗がりに一人の男の影が一つ。


「ようやく、ようやく見つけましたよ」


男の視線の先にはベルの存在が。


「待っていてくださいね……くふふふふ……」


その存在に気づくものは居なかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あ、カッコつけて笑ってるとこ悪いが、お前の出番は次回からだぞ」


「ええっ!? せっかく味をだして見たのに!?」



予告通り、今回で二部は終わり、三部が開始されます。三部で、この作品の4大キャラが出揃います。次回は……まぁ、とりあえずサイクル通りにやりますので。お楽しみに。

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