愛は真心 恋は下心とは言ってもどっちも似たようなもの
何かを取り出すベル。その正体はーー
「ソージ、ちょっとこれを持っててクダサイ」
「なして?」
ベルが取り出したのは何故か割り箸。一応言うと、ここには既に箸がある。さっきまで使っていたのは俺の持参した箸だから、『あんたの使った箸なんか汚らしくて触りたくもない』とかそういうのは無いだろう。 さすがに無いよね? もしそうだとしたら泣くぞ。
「どうやら、ソージはこの後私が使うことによる関節キスもできないCherryなので……これで出来マスネ☆」
「そういうことじゃない」
「あれー?」
違った、単なるアホなだけだった。さっきの授業といい、今といい、こいつの残念すぎるおつむがちょっと心配。つーかてめぇ今俺の事チェリーってバカにしやがったなこの見た目ビッチが。
「いいじゃないデスカ〜減るもんじゃ無いデスよ?」
「減るぞ。俺の残り寿命が」
ほら、今だってベルの後ろでなんかスコップ持ってる奴居るもん。というか用意できたんだな。仕事早いなおい。
「なら、コウシマショウ!」
「……言ってみろ」
人差し指を立てて、自信満々にしているベル。とりあえず話だけは聞いてみよう。
「先ず、今すぐにチュッと私とソージでKissをシマス」
「そうか、『先ず』の時点で既におかしいな」
「その後に、アーンをすれば、何も気にする必要は無くなりマス」
「既にそれ以上のことしてるからな」
「私はソージとKissが出来て、ソージは私にアーンを出来る。万事解決デス!」
「うん、それお前以外得してないよな。主に俺が不幸だよな」
とんでもないクソ理論を聞かされた。俺の時間返して。
「さぁ! Come on!大丈夫、怖いのは最初だけデス。二回目からは怖くないデスよ〜」
「一回目があると思っている時点で間違いだな」
「あつーいベーゼを皆に見せつけてヤりマショウ!」
「てめぇそれは変換ミスか? それとも最初からそれが目的かこの羞恥プレイ好きが」
「でも、ハジメテはお互いの布団の上で〜」
「話聞けよ」
両手を赤くなった頬に当てて身体をくねらせるその動きが果てしなくイラッとくる。俺の代わりにこいつを埋めたい。
「そもそも、俺の人生ゲームは一般向けなので、十八禁展開はお断りです」
ソ○倫 (俺の人生出版社)もこれを十八禁に指定した覚えはない。あれ? メ○ィ倫だっけ?
「エロゲやって同人誌読んでオ○ニーしている時点で既に十八禁だから平気デス!」
「残念だが、最近じゃそういうことも上手くぼかして一般向けにできる」
エロゲの移植版とか。まぁ、あれ一応CERO『D』だけど。『具が見えなくて本番行かなきゃ一般向け』っていう超理論があるからセーフ。今どき、乳首は普通に描かれてるし、下なんかスジの記入が無いだけで殆ど見えているぞ。某オタ教師漫画の作者なんか少年向けにツルツルを描いていたし。
「ぐぬぬぬぬ……」
両拳を握り、悔しそうにするベル。常に二手三手先を読んで受け流すのが俺よ。
ようやく諦めたのか、ベルは自分の弁当を食べ始める。よかった、俺の命が無事で。
「次は絶対に……」
なんか物騒なこと言っているけど、とりあえずその次が無いことを祈って、ついでにもしもに備えて準備はしておこうと決めた俺だったーー
毎回思うんだけど、何故昼飯の直後に体育をやるのだろうか。
今は四限目の体育の時間。2クラス合同なので、2-Aは|2-G(紅葉のクラス)と合同で、体育館にて男はバスケ、女はバレーをやっている。俺? 俺は……ベンチでプロのベンチウォーマーをやっている。もうね、子供の頃からのプロだから。超ベテランだから。俺レベルにもなると、貫禄が凄い。そんなことないって思うやつは多分正常。俺がおかしい。
俺が運動できないとかじゃなくて、単純にやる気がないだけ。現に、俺より出来ない奴が普通にスタメンだし。まぁそれが体育の便利なところなんだけどさ。「人数の都合です」って言っておけばベンチでサボっていても特に何も言われない。さらに俺はベンチウォーマーをしながら審判もやっているので「ちゃんと授業に出てますよ」感を出せるのだ。ソースは俺。
ほんと、審判とか超便利な仕事だよな。無心でただただ得点追加していればいいんだから。あとは流れ玉に注意することだけ。
とりあえず審判やっててわかったことは、うちのクラスはバスケが強いみたいだ。いや、まだ一試合しか見ていないが、確実に一人だけ別次元の動きをしている奴がいる。はい、うちのクラスのいけ好かないイケメン君です。一年の頃からスタメン入りして、現在はエースとして活躍する (って言ってたのが聞こえた)イケメン君 (略してI君)は他とは違った、素人の俺から見てもかなり上手い動きをしている。ほら、また点が入った。
というか、I君は俺より背が低い (目測175cmくらい?)のにボスハンドダンク決めてやがる。ジャンプ力すげーな。さすがの俺もダンクはやったことない。
と、バスケに飽きてきたので視野には入れて置いてバレーの方へ意識を分ける。ちょうど、アタッカーの紅葉が相手コートにボールを打ち込んで、リベロのベルは取れずに転んでいた。さすがの運動能力。相変わらず超人の紅葉さんです。
と、こちらに気がついたベルがVサインを送ってきたが、俺は無視した。いやお前、さっき思いっきりミスしてただろ。
というか、さっきから紅葉とベルが動く度に揺れるアレと一緒に揺れる男どもの目と顔が視界に入ってうざったい。ほらそこ、試合中に余所見しない。また点入ったよ。
結局、殆どI君が点を入れまくってバスケはうちの圧勝となった。バレーは僅差で負けたらしい。なんかクラスのみんなが一箇所に集まってガッツポーズとかして汗まみれで笑いあっているが、何もしてない俺は混ざる気も無く、終わってもポケ〜っとしていた?いや〜一滴も汗かかない体育って良いね。ちなみに、焔は何故かバレーをやってた。まぁ、わかるけどさ。お前男だろ。
その焔は授業が終わって更衣室に戻る時に、
「いやー揺れた揺れた。すごい揺れてたよ! 間近であれを見られるんだから、役得役得……それに、汗をかいた体操服の女の子って良いねぇ〜汗をかいてもなんかいい匂いがするし」
って言ってきた。ちょっと? ここに健全な男が居ますよ。次から出禁にして貰え。
その言葉に対して
「そのいい匂いってのは汗に反応する柔軟剤の香りじゃねえの?」
って言ったらなんか怒られた。わからん。ちなみに紅葉のやつはそれ。うちで使ってるやつ。
そして放課後
「Heyソージ! 放課後デートデス!」
「放課後デッドなら受け入れるぞ」
担任の挨拶が終わると同時にベルがなんか戯言を言ってきたが一掃する。マジでこいつ埋めたい。
「それに、俺は今から仕事だから一人で帰んな。そんでもって人気のないところ歩いて種○けおじさんにでも相手してもらえば?」
「そんな展開はエロ同人だけで十分デス」
なんか虚ろな目と真顔の即答を貰った。俺が悪かったからハイライト入れとけよ作画担当 (ベル自身)
「ソージが仕事……掃除デスか」
「しょうもない駄洒落言ってないではよ帰れ」
今思うと一度も掃除ネタされたことない気がする。そもそもしてきそうなやつが殆ど居なかったが。……いや、確か一回だけされたことがあったな。もちろん、悠ちゃんに。
「ふむむ……ソージ、それって私も一緒に行ってもいいデスカ?」
「え、おまえ来んの? ちょっとそれは勘弁して下さい」
俺は両手を前に出して後ろにちょっとずつ下がり、いかにも嫌そうな声と顔をして拒否の反応を見せる。
「そんなこと言わずに〜」
しかし、ベルには効果が無いようだ。笑いながら右手を『あらやだ奥さん』のスイングで振っている。なんやこいつ。
というか紅葉だけでも大変なのにこいつまで合わさったら俺の胃が蜂の巣どころか穴の空きすぎで跡形もなくなりそう。
「そうか……なら仕方がないな」
「うんうん、やっとその気になりマシタか」
ベルが両腕を組んで頷く。ああ、こうなったら仕方ない。
「ベル、しょうがないから……また後でな。バイバイ」
「あ、Bye! デス」
そう言って俺はベルに別れを告げて何食わぬ顔で教室を出る。そして即座にコ○ケモードへと切り替えて世界記録も塗り替えるレベルの競歩を開始しようとした。だがーー
「ちょちょちょちょちょちょ!」
ちょっとしたところでベルが追いかけてきた。ちっ。
「Hey! そこのかっこ……いい? お兄さん! ちょっといいかな?」
違った。ベルじゃなくてただの客引きだった。なら俺は関係無いな。というかそこ籠もるなよ。はっきり言うか最初から諦めろ。
そう決めて足を止めることなく俺は生徒会室へと向かう。
「そこのお兄さーーちょっと待ってソージ!」
「……んだよ」
諦めてベルの方へと身体を向ける。足はそのまま。
「その前に、足をstop! 」
そう言われたので足も止める。
「ソージが生徒会? って言うのに入っているのは知ってマス」
なるほど、また悠ちゃん繋がりか。
「と、いうワケで……私も入りマス!」
「ん、どういう訳?」
日本語がおかしいな。話が一気に飛躍したぞ。
「詳しいことは部屋で話マス!」
ベルは「Let’s Go〜♪」と言いながら俺を引っ張って生徒会室へと向かった。なんでこいつも紅葉も力がこんなに強いのでしょうか。
「しっつれいするデ〜ス」
ベルがタ○ちゃんのような口調で生徒会室の扉を勢いよく開ける。
「……ノック」
液タブで作業をしていた紅葉はその音にちょっと驚いたのかビクッと肩を震わしたが、何事も無かったかのようにそう言った。
「生徒会に、なにか用事? ……転校生のーーベルフローラさん」
「なんと! 既にご存知デスか」
そりゃこんなに目立つやつが居たら嫌でも視界に入るしそもそもお前らはついさっきバレーやってただろ。その事すら忘れたのか、もしくは覚えてなかったのか……多分こいつのことだから前者だな。
「それと……奏士?」
「おう」
未だに襟を掴まれている俺を見つけた紅葉。
「……趣味?」
「こんな趣味あってたまるか」
女に引きづられて喜ぶような趣味はねぇし、俺が望んでやったことじゃない。
「おいベル、いい加減に離せ」
「おっと、忘れてマシタ」
ようやく自由になった俺はすぐさまベルから離れ、机の向こう側へと逃げる。腰抜けと言われようと背に腹はかえられぬのだ。
「それで、何用?」
紅葉が手元の液タブから視線を動かさずにベルに聞く。
「Hi! 私も生徒会に入れてクダサーイ!」
ものすごい笑顔で答えるベル。入る動機は不純極まりないのにその顔だけは超純粋である。『水』違いだけど多分電気とか通さない。
「それではまず、この書類に必要事項の記入を」
そう言って紅葉が机の引き出しから取り出したのは「会員証」と書かれた一枚の紙。え、俺あんなの書いてないんですけど。
「これでいいデスか!」
即座にベルが記入する。早いなおい。
「……判子が無い」
「Oh!」
ベルは『しまった!』とばかりに自分の額をペチンと叩いて大袈裟な反応をする。なんかイラッとくる。
「今は判子が無いので……血判でもいいデスか?」
「ダメ」
とんでもない提案をするベルに紅葉は呆れたような表情で即答する。血判はダメだろ血判は。冒険者ギルドの登録認証か。
「それじゃあ明日持ってくるデス」
「それなら今日は『仮』ってことで……」
何故かトントンと話が進んでる。というよりさっきから気になっていることがあるんだか……
「なぁ、役員って会長が勝手に決めても良いのか?」
「……役員の任命は会長直々の任命と、投票の二つがある。そして、会長には集める義務がある」
「つまり、お前は今まで仕事をサボっていたってことか」
紅葉は否定するようにプルプルと首を振る。
「サボってない。別に必要なかった」
うーんタチが悪いことにこいつ何も問題を起こしてないどころかちゃんと成果出してるんだもんなぁ……いや、何を言おうと結局はサボってるな。そういやこいつも普通にいつも一人だな。|取り巻き(半ストーカー)は多いけど。
「でも、会長の任命はお互い同意が必要」
「あ、なら俺辞任してもいい?」
「ダメ」
ダメでした。あれー? さっきお互い同意が必要って……あ、俺一度渋々とはいえ同意してるわ。ちっくしょぉー! ……たった今頭の中にどこぞの太夫が浮かんだ。
「と、言うわけでこれであと一人」
あと一人……あ、そういやそんなこと言ってたな。意外と早かったな。まさか俺の入会が引き金か? 考えすぎだな。 ……フラグじゃないよねこれ。
俺ごときの反抗は無意味なので、諦める。というわけで切り替える。
「で、こいつの役職は?」
今のところは紅葉が会長・議長・書記で、俺が副会長をやっている状態だ。会計・監査・庶務・広報とかは二人で分けてやっている状態だし……普通に今の状況で回ってるし……
「……何か得意なことは?」
「ンー……特には?」
「なら、俺の役職をプレゼントトゥーユーしてやる」
「副会長を押し付けない」
紅葉にダメだしされた。だって副会長とか俺に合わないし。そもそも仕事すること自体が俺に合わないけど。こちとら社会不適合者の烙印を押されたんだぞ。
「そもそも、副会長は二人まで可能」
「えまじで」
「ならヤリマス!」
まじかよおい。思わず区切りすら付けずに反応しちまったよ。
「あ、ヤリマスは今すぐここでナニを始めるって訳じゃないデスよ?」
「やっぱこいつ入れるの止めようぜ」
「…………」
紅葉は無言である。頼むからベルを今すぐに家じゃなくて土に返す許可を誰か寄越せ。そしてその後地に落ちろ。
嬉しそうに笑顔でニコニコして「でっへへ〜」なんて声を出してるベルと再び無言で液タブで作業を続けた紅葉を見ていると、ある一つの感情が浮かんでくる。締め付けられる感覚と、二人から目が離せなくなる。そうこれはーー
ストレス性の頭痛と胃痛だ。それと苛立ち。また薬飲まなきゃ……
そうして俺は頭痛のする頭を押さえながら舌打ちをしてこのイライラを収めようと一人努力するのであったーー
はい、お察しの通り入会者参上です。奏士が早くもそろそろヤク中になりそうで心配です。持ってくれ奏士の身体……




